
追放された鍛冶屋は港町で最強の槌を振るう エピローグ
炉の火は、消えない
あなたは今、この物語を読み終えた。
レン・カーターという男が、王国を追放され、港町に流れ着き、炉に火を入れ続けた物語。セナ・ホワイトが初めて自分に合った剣を握った夜。リク・マーシュが手首を逃がさずに踏み込んだあの瞬間。コウ・ブレナンの天貫が、初めて誰かに届いた朝。アヤ・セラーノが固まりながらも前に出た日。ソウ・グレイソンが一ヶ月ぶりに丘を降りた午後。ミナ・ロスコとツバキ・レヴァンが並んで地面を割ったとき。そしてガイン・バレットが、新たな誓いのために一閃影を抜いた夜明け——。
これらはすべて、「変わりたかった」という、たった一つの気持ちから始まった物語だった。
武具は人を変えない。道具が勝手に誰かを強くするわけではない。セナの剣術は最初からそこにあった。リクの踏み込む力は、最初から体の中にあった。コウの三年間は、最初からちゃんとそこに積み重なっていた。アヤの気迫は、三年前からすでに盗賊を退かせていた。ただ——それを引き出す何かが、まだなかっただけだ。
この物語で起きたことは、あなたの人生でも起きうる。
今、あなたが「何かが足りない」と感じているとしたら——それはあなたに力がないのではなく、まだその力を引き出す何かに出会っていないだけかもしれない。「なぜか噛み合わない」という感覚があるとしたら——それはあなたが間違っているのではなく、あなたに合った道具や環境や仲間に、まだ巡り会っていないだけかもしれない。
変わるために必要なのは、今の自分を否定することではない。今の自分の中にあるものを、正しく引き出すことだ。
レン・カーターは、誰の力も「作り出した」わけではない。ただ——その人が元々持っていたものを、正確に見抜き、それに合った形を与えただけだ。あなたの中にも、まだ引き出されていない何かが、必ずある。
この物語を閉じたとき、あなたの胸に何か一つでも残ったなら——それを大切にしてほしい。セナが烈閃を初めて握ったあの感覚を、あなた自身の言葉に置き換えてみてほしい。あなたを変えてくれる何かは、案外近くにある。扉の向こうに、もう立っているかもしれない。
港町の鍛冶屋は、今日も炉に火を入れている。
あなたが扉を叩く日を、ずっと待っている。
炉の火は、消えない。
あなたの中の炎も——きっと、消えていない。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
あなたがこの物語に出会ったことが、
誰かの烈閃になり、誰かの天貫になり、
誰かの炉火になることを、心から願っています。
── 追放された鍛冶屋は港町で最強の槌を振るう ──