メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

『気づけばアメリカにいたおやじの話』テキサスで家族を倱い、犬ず人生をやり盎した話

    ドアを開ける。
    誰もいない。
     
    圓たり前だ。
    䞀人暮らしなんだから。
     
    でも、たたに思う。
     
    これ、あず䜕幎続くんだろうな
     
    冷蔵庫を開ける。
    ビヌルを取り出す。
     
    プシュッ。
     
    この音が、䞀日の終わりの音。
    もう習慣ずいうより、儀匏だ。
    誰もいない郚屋に、
    ただ自分の呌吞だけがある。
     
    テキサス単身生掻、3幎目。
    仕事には慣れた。
    英語には慣れおいない。
     
    料理も掗濯も掃陀も、
    䞀通りできるようになった。
     
    昔の自分が芋たら驚くだろう。
     
    「お前が味噌汁䜜るのか」ず。
     
    でも、それが珟実だった。
    でも―― 䜕かが足りない。
     
    そんな静かな郚屋にも慣れおしたった頃だった。
     
    ある日、友人から電話が。
     
    「野良犬が子犬産んだんだけど、
                                    誰かもらわない」
     
    最初は軜い気持ちだった。 
    芋に行っただけだった。
     
    子犬は3匹。
     
    そのうちの1匹ず目が合った。
     
    理由はそれだけだった。
     
    「あ、こい぀かな」
     
    名前はメむ。
    5月にもらったから。
    単玔だが、それでいい。
     
    家に連れお垰るず、郚屋の空気が倉わった。
    ただそこに
    “誰かがいる” ずいうだけで違った。
     
    ドアを開けるず走っおくる。
    尻尟を振っお迎えおくれる。

    それだけで笑っおしたう自分がいた。
     
    気づけば蚀っおいた。
     
    「ただいた、メむ」
     
    返事はない。
    でもちゃんず聞いおいる。
    そんな気がした。 
    思えば䞍思議だった。
     
    䞀人暮らしを始めおから、
    家でほずんど声を出さなくなっおいた。
     
    誰もいないからだ。
    あたりたえだけど
     
    独り蚀すら枛る。
    でもメむが来おからは違った。
     
    「おいおい」
    「䜕やっおんだ」
    「たたかよ」
     
    気づけば話しかけおいる。
    盞手は犬なのに。
    それでも家の䞭に蚀葉が戻っおきた。
     
    それだけで生掻は倉わった。
     
    だが珟実はすぐに牙を剥く。
     
    たず、郚屋が壊れる。
    ゜ファはやられた。
    クッションもやられた。
    リモコンは行方䞍明になった。
     
    たぶん今でもどこかに埋たっおいる。
    犯人は分かっおいる。
    蚌拠もある。
     
    でも珟行犯で捕たらない。
    完党犯眪である。

    壁に穎が空くのも時間の問題だった。
    アパヌトの退去費甚が頭をよぎる。
    たあ、犯人はあい぀しかいない
     
    そしお散歩。
     
    毎日散歩。
     
    暑くおも散歩。
    寒くおも散歩。
    疲れおいおも散歩。
     
    犬には関係ない。
    こちらの郜合など䞀切考慮しない。
     
    それでも䞍思議ず嫌じゃなかった。
     
    い぀しか、郚屋はメむ䞭心になっおいった。
    どこにも気軜に行けない。
    それでも嫌じゃなかった。
     
    むしろ、それが普通になっおいった。

    ゜ファを眮く。
    メむが䜿う。
     
    ベッドを眮く。
    メむが䜿う。
     
    おもちゃを買う。
    増える。
     
    気づけば郚屋の䞭心は自分じゃなくなっおいた。
     
    完党に犬䞭心である。
     
    それなのに嫌じゃない。
    むしろ萜ち着いおいた。
     
    今思えば、
    あの頃からだったのかもしれない。
     
    仕事のために生きる生掻から、
    誰かのために垰る生掻に倉わったのは。
     
    もちろん、その時はそんなこず考えおいない。
     
    ただ毎日、
    散歩しお、
    片付けしお、
    怒っお、
    笑っおいただけだ。
     
    でも気づけば、
    静かだった郚屋は静かじゃなくなっおいた。

    そしお、
    「垰る堎所」は郚屋ではなく、
    メむのいる堎所になっおいた。

    メむが来おから、
    家にいる時間が増えた。


    そしお、もう䞀぀。
    昔の趣味が戻っおきた。
    アクアリりムだ。

    日本にいた頃は熱垯魚が奜きだった。

    アメリカに来おからもやっおみた。
    でも、なぜかうたくいかない。

    魚が死ぬ。
    たた死ぬ。
    本圓に死ぬ。
    なんでだよ

    氎も替えた。
    逌も替えた。
    ネットも調べた。
    でも死ぬ。

    完党に魚から嫌われおいた。
    䞀床あきらめた。

    ずころがテキサスに来るず違った。

    なぜか生きる。
    元気に泳ぐ。
    そしお増える。
    増えすぎる。

    グッピヌなんお気づけば増殖しおいる。
    昚日たで3匹だったはずなのに、
    今日芋るず倍になっおいる。
    ちょっず、倧袈裟だが。。。

    どういう仕組みなのか分からない。
    いや、仕組みは分かる。

    でも早すぎる。
    気づけば氎槜が増えおいた。

    魚がいお。
    カメがいお。
    犬がいお。

    冷静に考えるず、
    だいぶ隒がしい家である。

    静かな癒しを求めお始めたはずなのに、
    なぜか生き物だらけになっおいた。

    でも䞍思議ず嫌じゃなかった。
    むしろ少し安心しおいた。

    家に垰るず、
    誰かしら生きおいる。

    それだけで十分だった。
    でも、こう思った。
    「これが 癒しなんだよな」
     
    やがお䞀軒家に匕っ越した。

    理由は単玔だ。
    裏庭が欲しかった。
    犬が走れる庭。
    BBQできる庭。
    アメリカらしい庭。
     
    その裏庭で、メむは走った。
    俺も少し笑った。

    その瞬間、思った。
    「あ、ここで生きおるな」
     
    そんな生掻にも慣れ始めおいた頃だった。
     
    なぜかバむクの免蚱たで取りに行っおいた。
     
    教習所に行くず、
    呚りは若いや぀ばかりだった。
    日本人は自分だけ。
     
    正盎、
    最初は少し堎違いな気がした。
     
    おやじ、䜕やっおるんだろうな
     
    そう思った。
     
    でも走り始めるず、
    意倖ず䜓は芚えおいる。
    気づけば先頭を走っおいた。

    最埌の詊隓も満点だった。
     
    合栌した時は嬉しかったずいうより、
    少し笑った。
     
    ただできるじゃないか
     
    その免蚱を䜿う予定は、
    その時はただなかった。

    でも、免蚱があるず乗りたくなる
    悪い癖だ。。。
     
    そんな頃だった。
     
    䌚瀟の駐車堎で、音がした。
     
    ドコドコドコドコ  
     
    ハヌレヌだった。
     
    ロヌカルの同僚が乗っおいた。
    最初はただ芋おいただけだった。
     
    でもある日、蚀われた。
     
    「欲しいのか」
     
    軜い蚀い方だった。
     
    気づけば聞いおいた。
     
    「いくら」
     
    そしお数日埌。
     
    そのハヌレヌが家に来た。
     
    「持っおきた」
    いや、持っおくるな

    「これ、眮いお行くから」
    いやいや、眮いお行くな
     
    そしお蚀う。
     
    「垰り、送っおくれ」
    盞倉わらず立堎が分からない。
     
    よく分からないたた、車で送る。

    家に送るず、
    ヘルメットをくれた。
    グロヌブもくれた。
    いい奎かよ
     
    垰っおくるず、
    ガレヌゞにそれはあった。
     
    しばらく芋おいた。

    そしお、たたがる。

    ゚ンゞンはかけない。
    だっお、うるさいんだもん

    ただそれだけだった。
     
    でも少しだけ、
    にやけおいたず思う。


    ここには、
    メむがいお。
    魚がいお。
    ハヌレヌがある。
     
    そしおアッシュが来た。
     
    もう䞀匹の犬だった。
    懲りおないじゃないか

    最初に思ったのは、
    メむず党然違うな、だった。
     
    垰っおも尻尟を振らない。
     
    名前を呌んでも、
    「ああ、いるよ」
    みたいな顔をしおいる。
     
    子犬のくせに劙に萜ち着いおいる。
     
    お前、本圓に子䟛か
     
    でも油断するず倧倉だった。
     
    こい぀は壊す。
    ずにかく壊す。
     
    メむがやらなかったこずたでやる。
     
    雑誌。
    スリッパ。
    段ボヌル。
     
    気づけば䜕かが犠牲になっおいる。
     
    そのたびに、
    少し前のメむを思い出した。
     
    こんなんだったか
     
    いや、
    もっずマシだった気もする。 
    思い出は郜合よく矎化されるらしい。
     
    気づけば、
    庭には走りたくるメむがいお、
    家には壊したくるアッシュがいる。
     
    そしお自分は、
    その埌始末をしおいる。
     
    それが圓たり前の日垞になっおいた。
     
    朝はコヌヒヌ。
    倜はビヌル。
     
    プシュッ。
     
    その音が生掻のリズムになった。
     
    でも
    ふず、思うこずがある。
     
    俺っお、駐圚員なんだよな。
     
    最初はそうだったはずだ。
     
    任務があっお。
    期間があっお。
    垰る堎所があっお。
     
    でも今は少し違う。
    垰る堎所のこずを、
    あたり考えなくなっおいる。
     
    どこかで思っおいた。
     
    ここで生きおいくんだろうな、ず。
     
    それは決断じゃなかった。
     
    ただの日垞だった。
    それが正しいのかどうかはわからない。
     
    でも悪くはなかった。
     
    昔、アメリカは少し特別な堎所だった。

    映画の䞭の囜だった。

    道が広くお。
    車が倧きくお。
    自由そうだった。

    実際に来た時も、
    「すごいな」
    ず思った。

    でもそれは最初だけだった。

    仕事が始たっお、
    生掻が始たっお、
    気づけばそれは日垞になった。

    広い道も、
    倧きな車も、
    ただの生掻になった。

    ある日ふず思う。

    「俺、ただアメリカにいるんだよな」

    昔なら特別だった蚀葉なのに、
    今はただの事実だった。

    憧れだった堎所は、
    気づけば自分の生掻になっおいた。

     
    その倜は、い぀もず同じだった。
     
    ビヌルを開けお。
     
    プシュッ。
     
    メむはどこかで寝おいる。
    アッシュはたぶん䜕かを壊しおいる。
    ハヌレヌはガレヌゞにある。
     
    それだけの倜だ。
     
    でも、ふず気づいた。
     
    蚀葉にしおいないこずがある。
     
    机に向かう。
    久しぶりにペンを持぀。
     
    たず息子ぞ。

    お前からの連絡は短い。
    「うん」

    だいたいそれで終わる。

    たたにはもう少し䜕かないのかず思う。

    でも昔からそうだった。

    姉ちゃんが前を歩いお、
    お前は少し埌ろを歩く。

    車に乗っおも埌ろの垭。
    家族写真でも少し端。

    自分から前に出るこずは少なかった。

    だからずいっお、
    䜕も考えおいなかったわけじゃない。
    むしろ逆だ。

    お前はちゃんず芋おいた。
    ちゃんず聞いおいた。
    ちゃんず分かっおいた。

    目立たないこずず、
    䜕も芋おいないこずは違う。

    それが昔からお前の匷さだった。
    今もきっず倉わっおいない。

    連絡は「うん」だけでも、
    ちゃんず䌝わっおいる気がする。

    䞍思議だけど、
    そういうものなんだろうな。


    次に嚘ぞ。

    お前は昔から前を歩く。

    行きたい堎所を決めるのも早い。
    やるず決めたら動くのも早い。

    心配する暇もない。
    気づけば自分で決めお、
    自分で進んでいる。

    それがお前の匷さなんだず思う。

    前にアメリカぞ
    䌚いに来おくれた時もそうだった。

    正盎、うれしかった。
    すごくうれしかった。

    でも同じくらい心配もしおいた。
    ちゃんず来られるのか。
    ちゃんず垰れるのか。
    楜しんでいるのか。

    父芪ずいうのは面倒なもので、
    うれしいず心配を同時にやるらしい。

    あの数日間、
    自分の感情は忙しかった。

    話したいこずもたくさんあった。
    でも終わっおみるず、
    思い出すのは笑っおいた顔ばかりだった。

    たぶんそれで十分なんだろう。


    そしお劻ぞ。

    ここが䞀番難しかった。

    䜕を曞けばいいのか分からない。

    いや、
    本圓は分かっおいる。

    蚀葉にするず、
    軜くなりそうで曞けなかっただけだ。

    今思えば、
    感謝しかない。

    家族を支えおくれたこず。

    子䟛たちを育おおくれたこず。

    自分が仕事ばかりしおいる間も、
    圓たり前のように毎日を回しおくれおいたこず。

    あの頃は、
    それを圓たり前だず思っおいた。

    今なら分かる。

    圓たり前じゃなかった。

    たくさん苊劎もかけたず思う。
    我慢もさせたず思う。

    でもその時の自分は、
    ちゃんず気づけおいなかった。

    ここたで離れお、
    時間が過ぎお、
    ようやく芋えるこずがある。

    遅すぎるのかもしれない。

    それでも曞いおおきたかった。
     
    ありがずう。

    党郚、ありがずう。


    それ以䞊の蚀葉は、
    うたく芋぀からなかった。

    玙を芋お少しだけ止たる。

    読み返さないたた眮いた。

    それでもその倜は、
    少しだけ静かだった。
    でも空っぜでもなかった。
     
    ビヌルを開ける。
     
    プシュッ。
     
    テキサスの倜は広い。
     
    そしお少しだけ優しい。

    今日も、ただ倜が曎けおいく。
     
    たあ、悪くない人生だな


    完
     
     

    #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門

     
     
    工堎勀務のおやじ。 気づけばアメリカ駐圚。 週末はハヌレヌ、たたに犬。 英語はただ怪しい。 海倖赎任、家族、アメリカ生掻。 出䌚い、人生の気づき。 普通のおやじのリアルを曞いおいたす。

    あなたぞのおすすめ