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無意識からのおくりもの

     先日、横尾忠則の『運命まかせ』を読んだ。精神世界や夢、UFOについて興味深く読んだ。高校生の頃、ユリゲラーやノストラダムスがはやっていたことを思い出した。そういえば、大学生の頃、金沢のアトリエで作品を制作しているのを見たことを思い出した。そのときのサイン本は宝物になっている。ユングや河合隼雄も好きで昔から夢やシンクロニシティについてもよく読んでいた。
     還暦で退職し2年が経つ。これからの過ごし方も迷いがある。しがらみから自由になり、とてもゆったり過ごせているが、残りの人生をどのようにしていこうか考えている。今までやっていなかったが、寝ているときの夢を書いてみようと思った。歳のせいかもしれないが、夜何回か起きる。夢を覚えている限り書いてみる。確かに夢を思い出してみると、今の気持ちが整理されるような気がする。だが、自分一人では夢の解釈も出来ないので、思い切ってカウンセリングを受けようと思った。何か方向性が見つかるといいと感じている。
     
     (ノックをして入る。白が基調の部屋だ。きれいな部屋だ。少しだけBGMが聞こえる。モーツァルトと思われる。カウンセラーの先生の後ろには箱庭もある。そういえばいつかやってみたいと思っていた。めがねをかけた男性の先生で、とても話しやすい印象を持った。先生に促されたので座る。)

    Jin:
     こんにちは、よろしくお願いします。Jinです。高校の英語の教員を還暦で退職して2年になります。まだ働けたのですが、97歳の母の世話もありますし、考えるところもあり、退職しました。週一日は大学で非常勤講師をしています。妻は教員をしています。息子二人は自立して家にはいません。先日父の三回忌が終わりました。

    カウンセラー:
     そうですか。長いことお勤めご苦労様でした。いろいろ大変だったでしょうね。確かに先生の仕事は感情労働と言われます。生徒の悩み相談から始まり、保護者対応など休む暇がありませんね。私も学校にカウンセラーとして行っているので分かります。
     また、お母様のお世話もされているのですね。きっとお母様は大変心強いのではないかと思います。

    Jin:
     ありがとうございます。そうですね。あとどれくらい母と一緒にいられるかわかりませんが、家事を含めて無理なくやっていきたいと思います。
    今まで仕事をメインで考えていたので、家事などは手伝ってはいましたが、妻には感謝しています。働いていた頃は、一時期部活指導もあり、土日はほとんど家にいないことが多かったです。
    そんなこんなで、少し余力のあるうちに一区切りをつけようと思いました。退職してからは、97歳になる母の病院通いの運転手をしています。食事、洗濯、掃除など一通りのことをやっています。
     時間ができたときは、映画に行ったり、本を読んだり、休日には仲間と趣味のソフトテニスをやったりしています。最近、昔のようには身体が動かなくなってきましたね。

    カウンセラー:
     そうですか。退職したとはいえ、家事全般をやっているのですね。ご苦労様です。ご家族も助かっていると思いますよ。ご自身の時間もあるようですね。今まで周りに気を遣ってきたのでしょうから、自分の時間を大切に出来るといいですね。
     運動不足は私もそうですね。何とかしないといけないと思っているのですがね。

    Jin:
     ところで、最近、夢を書き留めておくようにしています。働いていた頃は、夢も見ていましたが、特に気にすることはありませんでした。ですが、河合隼雄さんの本も好きで夢に興味をずっと持っていました。
     退職して2年が経ちますが、ようやく自分のことに気持ちを向けられるようになってきました。同時に何となくモヤモヤした気持ちもあります。仕事をしていないという疎外感とも違うのですが、つきあう世間が狭くなったからなのからでしょうか。うまく言えないのですが、貢献感が感じられなくなったという気持ちになることもあります。
     もうひとつきっかけがあるのですが、横尾忠則さんの本からの影響もあります。読んでいると、夢の話がよく出てきます。横尾さんの作品も好きですが、精神世界やUFO、シンクロニシティなどの話も納得しています。
     
    カウンセラー:
     時間でできて、内面の充実を図るのはとてもよいことです。退職をされて虚無感のような気持ちになるのもよくわかります。
     また、夢は深層心理をあらわしています。抑圧された感情や意識していなかった気持ちが夢にあらわれます。その夢を見つめ直すことで、ご自身の人生がより充実したものにもなります。何だか人生を2倍生きている感じがしますね。

    Jin:
     はい。この3月末から夢を書き始めました。印象的な夢から話したいと思います。
    ゴリラのぬいぐるみを抱えた人がいました。大きなぬいぐるみでした。そして突然黒いアヒルが出てきて、私が追いかけています。多分一羽でした。追いかけられ、逃げていると私は戦車の上に乗っていました。

    カウンセラー:
     なるほど、面白いですね。強さと優しさがアンバランスですね。ゴリラは強靱な精神力・権威・バイタリティをあらわします。ぬいぐるみは、安心感・癒やし・孤独を埋めるものを意味します。ぬいぐるみを持っている人は、あなたの知っている人でしたか。

    Jin:
     いや、知らない人でした。

    カウンセラー:
     もし、そうならその人はあなた自身の投影です。今まで教員としていわゆる教員らしくないといけない環境だったと思いますが、本当はもっと気楽に、誰かに甘えたい、安心したいという心のバランスをとろうとしているのかもしれません。

    Jin:
     そうなのですね。そんなことは考えたこともなかったです。

    カウンセラー:
     ゴリラという野生の動物がぬいぐるみになっている状態は、あなたの衝動やストレスをうまくコントロールできているとも考えられます。
     また、黒いアヒルはとても個性的で強いメッセージが感じられます。アヒルは愛嬌や日常を象徴します。また黒は神秘、未知、強い意志をあらわします。
     総合して考えると、これからの独自の視点や新しいアプローチを探そうとしているサインかもしれません。また、アヒルは白が普通ですが、黒という自分だけの色を受け入れる時期にきているとも読みとれます。あなたの個性を活かす時期ですね。
     また、アヒルは家庭円満や豊かさを象徴しています。黒いアヒルはこれまでの常識を覆すようなポジティブな変化が訪れる前触れかもしれません。

    Jin:
     ありがとうございます。何かアウトプットをしてみたいという気持ちが沸いてきています。先程もお伝えしたかもしれませんが、英語教育を深めていきたいという気持ちもあります。また、夢やシンクロニシティなどにも興味があり、ユングや河合隼雄の本は読み続けています。また横尾忠則のファンでもあります。精神世界など目には見えないけれども大切なことがあるのではないかと思っています。
     今日こうして、勇気を持ってお伺いできたのも、自分の内面についてカウンセラーの先生のお力を借りながら、内省を深めていきたいという思いもありました。横尾忠則さんに背中を押されたのかもしれません。

    カウンセラー:
     目に見えないことを大切にしたいという思いを大切にしてください。神様もそうですね。心の中で大切にしたいものがあるのはいいことです。一緒に考えていきましょう。
     それと、戦車に乗っている夢ですが、あなたの今の状態を考えると、足元を固めて、新しい一歩を踏み出す準備ができている状態だと思います。夢は無意識の領域、つまり心のエネルギーの現在地を教えてくれます。

    Jin:
     なるほど、よくわかりました。とてもすっきりしました。やはり自分一人ではここまで踏み込んで解釈ができません。勇気を持って伺った甲斐がありました。もう一つ夢をお話ししてもいいですか。先程の夢から一週間後くらいの夢です。

    知らない野球部員を乗せて私はバスを運転しています。田舎道や浅瀬を進んでいます。バスの中は賑やかでしたが、他人が乗ってきて静かになりました。

    カウンセラー:
     夢は自分一人ではなかなか解釈できません。一緒に考えましょう。野球部員は規律や学校組織の記憶や人間関係の象徴です。バスで田舎道や浅瀬を進んでいく様子は退職後の正解のない手探りの道を懸命に進もうといているあなたの歩みと一致します。
     また、賑やかだったバスの中が静まりかえったというのは、賑やかな学校を一歩引いて見ている他人の世界となっている段階です。あなたの心が受け入れ始めているサインかもしれません。

    Jin:
     確かにそう考えると今の気持ちと一緒ですね。とても面白いですね。そういえばこの夢を見た一週間後にまた野球部の夢を見ました。実際一度部員を応援にワゴン車で行ったことがありましたが、結構野球部の夢を見るのですね。
     野球部の応援に4人で行っています。乗った軽トラが焼けてしまい、直して乗ろうとしています。近くにワゴン車があったので、そっちに乗った方がいいのでないかというところで目が覚めました。

    カウンセラー:
     やはり象徴的な夢ですね。今回は応援する側なのが印象的です。当事者から一歩下がった立場で関わろうとしているのがわかります。また4という数字は、安定や全体のバランスを意味します。心の中のバランスが整い、次の行動を起す準備ができていることを表わしています。
     焼けた軽トラはあなたの現役時代の象徴かもしれません。直して使おうという姿勢は、未練や責任感の表れと考えられますね。ワゴン車に乗り換えるという考えは、内なる合理性や新しい生き方へのシフトを促す声が、この気づきとなって表れています。
     ここで目が覚めたというのは、修理という過去への執着から、乗り換えという未来への選択との間で移行が進んだということかもしれません。また、新しい手段がすぐ目の前に用意されているのかもしれません。

    Jin:
     なるほどありがとうございます。そのように解釈できるのですね。やはり自分一人ではそこまで考えられませんでした。確かにこの1年で少しずつ気持ちの整理がついているのかもしれません。
     もう一ついいですか。不思議な夢なのかどうなのかわからないのですが、先日浅草にある待乳山生天にお参りに行きました。数日後夜寝ていたら、「きたよ」とはっきりした声が聞こえました。これは何かの知らせなのでしょうか。
     
    カウンセラー:
     そうですね。ユングはこのような声は「無意識の世界」からのコンタクトと考えました。「きたよ」という声は、何かアイディアが形になった合図や、新しい自分の訪れを告げているのかもしれませんね。目に見えない世界とのシンクロニシティである可能性もあります。予兆的なメッセージとも受けとれますね。ひとまず、この気づきを大切にして、あなたのこれからの前向きな力にしてほしいと思います。
     また、一ヶ月後、いらしてください。いろいろな夢を書き留めておくことは大変かもしれませんが、きっとあなたの内面を豊かにしてくれます。自分で解釈せず、ありのままの夢をまた教えてください。

    Jin:
     いろいろありがとうございました。こんどまた一ヶ月にお伺いします。お伝えしたい夢はまだ他にもあります。トイレに行った後、書き留めておくことにも慣れてきました。ただ、書き殴っているので自分でも読めないことがありますが、何とか解読してみたいと思います。
     今まで、たくさん夢をみてきたと思いますが、書き留めておかなかったことが何だかもったいなく感じてきました。深く考えすぎると何も出来なくなってしまうので、ありのままを書いていきたいと思います。本日はありがとうございました。とても気持ちがすっきりしました。また、よろしくお願いします。

    〈一ヶ月後〉
    (とても落ち着く部屋で、今回もかすかにモーツァルトが聞こえている。夢を話すのは、心の奥底まで見られているようで少し抵抗があったが、この先生なら、話しても一緒に考えてくれると信頼できる感じである。)

    カウンセラー:
     この一ヶ月どうでしたか。お変わりありませんか。

    Jin:
     そうですね。またいろいろな夢を見ましたが、自分なりに今の状況と照らし合わせながら考えるきっかけになりました。
     さて、お伝えしたい夢ですが、耳から白いミミズが出てくる夢を見ました。痛みがあるわけではありませんが、不思議な夢でした。

    カウンセラー:
     見たときにびっくりしましたか。これは浄化とデトックスと考えてみてはどうでしょうか。耳は情報を受け取る場所です。そこからミミズが出てくるのは、あなたの中にたまっていたストレスや悩み、あるいは自分にとって余計な情報が外に流れ出てすっきりすることを暗示しています。特にミミズが白い場合、幸運や事態の好転を意味する吉夢であることが多いです。
     古い自分を脱ぎ捨てて、よりクリアな視点を持とうとしている過程にあるのではないでしょうか。

    Jin:
     そうなのですね。ありがとうございます。最初はびっくりしましたが、少し安心しました。確かに自分自身ももう一度還暦も過ぎたので、行き直そうと思っているところです。
     ところで、少し怖い夢を見ました。学校にいて、自分の家がボヤだとわかり消しに行きました。ですが、他の家は強風のため、大きく燃えているのを見ました。これは何を象徴しているのでしょうか。

    カウンセラー:
     確かに怖い夢と感じてしまいますね。学校はあなたが勤務していた組織や役割を象徴することが多いです。そこであなたは火事を目撃しています。
     家がボヤになるのは、一見不穏ですが、あなたの中に新しい情熱や内的な変化への強いエネルギーが芽生えていることを示唆します。
     あなたが消し止めたということは、冷静さやコントロール力を維持している証拠です。その一方で、無意識から湧き上がってきた、これから始めたいことを理性の力で少し押さえ込もうとしている状態、あるいはまだ爆発させるわけにはいかないという抑制を意味しているのかもしれません。
     強風は、個人の意思ではコントロール出来ない、運命の連鎖や時代の空気、あるいは無意識からの強い揺さぶりを象徴しています。
     ユング心理学では、夢の中の他人は、自分自身の側面であると考えます。つまり他人の家の全焼は、古い価値観や過去の役割が激しいエネルギーによって焼き尽くされ、リセットされたということの身代わり、つまり投影である可能性が高いです。全焼は恐ろしいですが、破壊と再生を意味する前向きなシンボルと捉えることができます。
     つまり、これまでの古い枠組みを手放し、新しい自分としてスタートする準備が整ったという無意識からのゴーサインの表れなのではないでしょうか。
     自力で火を消せるほどの冷静な理性を持ち、内なる変革の嵐は確実にあなたの世界を新しく塗り替えようとしています。

    Jin:
     確かに、そうかもしれません。今までの延長ではなく、新しい自分を探している時期ですし、その準備が整ったということですね。
     そういえば、以前勤務していた学校が全焼した夢を見ました。やはりそれも、過去の解放と考えていいのですか。

    カウンセラー:
     そうですか。そんな夢も見ましたか。勤務していた学校が燃えてしまう夢もびっくりしますね。あなたの感じたように、職場や環境への重圧がきれいに焼き尽くされている最中なのかもしれませんね。退職を機に、言葉に出来なかった思いが一気に解放されているサインかもしれません。これから新しいあなたを形作るサインと捉えてみてはいかがでしょうか。
     火事の夢は逆夢とも言われます。あなたのやりたかったことや新しい創造的な活動に打ち込める最高のスタートラインに立っていると考えてください。

    Jin:
     そうなのですね。ありがとうございます。今までも火事の夢は見たことがあるかもしれませんが、すっかり忘れてしまいました。あるいは見たことがなかったのかもしれません。
     学校では、楽しく充実していましたが、やはり気を遣いながらも気を張っていたのでしょう。仕事から解放されたというのは大きいのかもしれません。
     スピード感を感じる夢を見ました。一つ目ですが、自分は運転していないのですが、ジェットコースターのような橋の上を車で走っている夢です。

    カウンセラー:
     スピードがある夢ですね。恐らく人生の過渡期を意味しています。新しい生き方や自己実現へ向かいたいという無意識の強いエネルギーが動いているサインですね。
     運転していないということは、無理にコントロールせず、運命や無意識に身を委ねてみようというリラックスした信頼感が芽生えている可能性があります。やはり新しいステージへの移行を表わしていますね。

    Jin:
     もう一つの似たような夢なのですが、トンネルを自転車に乗って猛スピードで下っています。トンネルが二股に分かれていますが、空いているほうのトンネルを選んで、ブレーキをかけずに猛スピードでどんどん走っています。車とぶつかりそうになるがぶつからずに走っている夢です。

    カウンセラー:
     一つ目の夢が受動的な感じのする夢でしたが、今回は非常に能動的でスピード感とスリルに満ちていますね。
     さて、ユング心理学において、トンネルや地下に降りていく道は、深層心理への参入を強く象徴しています。トンネルは、産道という意味もあります。下り坂で進むのは、変化がすでに加速していて、逆らえない流れになっていることを示しています。
     すいているトンネルを選ぶということは、他人の意見に流されず、自分の意思で進もうとしている現れです。ブレーキをかけないのは、自分の直感や無意識の衝動に全幅の信頼を置いている状態かもしれません。
     ぶつかりそうになりながらぶつからないのは、どんなに危険な状態にあってもコントロールできるという自己信頼感があることを示しています。
     この二つの夢を聞いて、今の状態を恐れずに突き進めという無意識からの力強いエールのような感じがします。
     何か今やってみたいことなどはありますか。

    Jin:
     そうですね、何かアウトプットをしてみたいですね。これまでの経験や今の悩みをお伝えしたいですね。いわゆる第二の人生ですが、その心持ちのようなことをお伝えできればと思っています。

    カウンセラー:
     おもしろそうですね。今はいろいろな発表の仕方がありますね。デジタルでの発表も簡単になってきました。ぜひやってみてください。読者の反応もきっと励まされるのではないでしょうか。

    Jin:
     本も好きで読んでいるのですが、読んでいるだけでは飽き足らない気持ちが芽生えています。何かアウトプットをしてみたいなと感じています。ありがとうございます。背中を押していただきました。
     まだ、もう少し時間があるので、夢を分析していただければと思います。あまりいい夢ではないかもしれませんが、よろしくお願いします。
     以前もお伝えしましたが、父の三回忌は終わりました。母は97歳で一緒に暮らしています。
    ここからが夢ですが、母が以前乗っていた車に骨壺が二つ置いてあります。骨壺は私の両親と思われます。父はダイニングにいて、私がご飯を食べさせています。亡くなっているせいか、すべてこぼしてしまいます。
     妻は別の骨壺を二つ居間に置いていて、他の骨壺に移し替えています。何とも不思議な夢でした。目が覚めたとき、何とも言えない気持ちでした。
     
    カウンセラー:
     確かに不思議な夢ですね。この夢は過去の役割や遺産を整理し、新しい関係性や生き方を移し替えるという過渡期を強く暗示しています。
     奥様が移し替えているというのは、これまでの人生で一区切りついたことを新しい形へ整理・収納しようとしていると考えられます。
     また、お父様の復活と食事をこぼす姿は、社会的規範としての父親をあらわしています。そのお父様がご飯をこぼしてしまうのは、あなたが働いていたときの規範が、もうフィットしていないことを象徴しているのかもしれません。

    Jin:
     そうなのですね。実際、父が施設に入る前は、私が隣で食事の世話をしていました。そのことも思い出したのかもしれません。それと現在の私の状況が重なり合って夢に出てきたのかもしれません。

    カウンセラー:
     そうですね。あなたのお父様の様子が心に残っているのでしょうね。それとお母様の車を探すという意味ですが、車はセルフコントロールの象徴です。以前の車は、過去の家族的な絆やあなたが背負ってきた優しさや責任感を意味します。その車を探しているということは、自分はどのようにこれから進めばいいのだろうと模索している状況を反映しているのでしょうね。

    Jin:
     はい、まさにそうですね。これから私自身がどう生きていったらいいかを考える、いいきっかけになっています。
     還暦で退職して、収入は大きく減ってしまいました。そのことも気にはなりますが、今後の生き方を考えるにはとてもよいきっかけだと捉えたいです。

    カウンセラー:
     まったくその通りだと思います。人は必ず死にます。そして一人で死んでいきます。他人の人生を生きるのではなく、あなた自身の人生を生きていってください。そのためにも夢を書き留めておくことはとてもいいと思います。潜在意識が夢になってわかりやすい形であらわれます。それが何を意味しているのかを一人で考えるのは難しいです。

    Jin:
     ありがとうございます。また、一ヶ月後に夢を聞いていただき、教えていただければと思います。
     夢を分析していただきましたが、破壊と再生が私のテーマだと感じました。今回はお伝えしていませんが、元の同僚や学生時代の恩師が出てくることもあります。過去の清算なのだろうと感じていますが、ぜひ聞いていただき、伴走していただければと思います。
     本日は、本当にありがとうございました。また来月よろしくお願いします。

    カウンセラー:
     わかりました。夢を書くために寝るわけではありませんので、軽い気持ちでいてください。忘れてもかまいませんよ。あなたの心に残っていることは、形を変えて夢に現れます。目が覚めたときに覚えていれば書き留めてください。また一緒に考えていきましょう。こちらこそありがとうございました。

     (丁寧にお礼を申し上げ、部屋を後にした。帰りにコンビニに寄ってコーヒーを買い、駐車場で忘れないうちに振り返ってみた。)

     退職で生活が変わったが、少し落ち着いてきた。終活を含めた片付けもしなければならない。母も老いていく。今後のことも多少は不安である。
     不安もあったが、夢をカウンセラーに聞いてもらうことで、自分を見つめ直せている。深く内省できるのがありがたい。来月また伺うが、まだ伝えていないこともある。ときどき、心の深いところでチクチクすることがある。昔を思い出して何とも言えないときもある。来月までにどんな夢を見るのか楽しみでもあるが、不安でもある。
    お酒でも買って妻と飲みながら話してみよう。

    #創作大賞2026 #エッセイ部門

     
     

    Jin

     
     
    ユング、横尾忠則、河合隼雄、シンクロニシティなど、魂や心、夢など、見えないけれども大切にしたいことに興味があります。

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