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タイムカプセル&スパイラル【進藤編】十四話 決心

    ホームレスか……。
    やり直すには、ここから始めた方がいいか。
    仲間内には、キャッシュカードの残高も、単車の免許も黙っておこう。
    この残高があれば、家を借りることだってできた。
    だが、そうはしなかった。
    未だかつてない絶望に打ちひしがれていたからだ。
    この街は違う。
    彼らに会えれば、僕はもう一度、光の差す道へ進めるはずだったからだ。
    空き缶を、いつしか拾うようになっていた。
    生きるためだ。
    そう自分に言い聞かせた。
    ルートを少し変えるだけで、他の一・五倍ほど集められる。
    こんな日々も、すぐ終わる。
    僕はそう思っていた。
    ある日、希望の光と出会った。
    そう、相田君だ。
    髪は明るい色になっていたが、僕はすぐに気付いた。
    一歩、一歩近づく。
    僕の声は小さい。
    だから、聞こえる距離まで行かなければならない。
    すると、隣にいた男が吐き捨てるように言った。
    「おい、相田。なんかアイツ近づいてくるぞ。マジで気持ち悪い。」
    男は空き缶を僕へ放り投げた。
    「ほらよ。これが欲しいんだろ?」
    缶は僕の額に当たり、中身が流れ落ちた。
    甘い匂いがした。
    「さっさと行こうぜ。」
    男は相田君の肩を叩き、歩き出そうとした。
    相田君は、
    「もしかして、し……」
    僕の名前を呼びかけた。
    だが、その声は最後まで届かなかった。
    「何言ってるんだよ。ホームレスと話すなよ。」
    相田君は、その渦に巻き込まれるように、足早に僕の前から姿を消した。
    僕にとって、その男は僕と相田君を引き裂いた死神だった。
    しばらくの間、僕は考え込んだ。
    今は三日に一度しか風呂に入れていない。
    それも、もう一度立ち上がるために金が必要だからだ。
    それでも、死神の態度は僕を呪い続けた。
    「相田君を助けたい。」
    そう思いながら、段ボールの布団で身を温めた。
    何週間後だろうか。
    僕は空き缶を拾い続けながら、一組の男女とすれ違った。
    間違いない。
    室井和也君だ。
    死神は、まるで僕に取り憑いたかのように、声を奪った。
    彼は、進藤智樹なんて最初から存在しなかったかのように、僕の横を通り過ぎていく。
    全てを失った僕が、この街へ帰ってきた理由?
    決まってるだろ。
    タイムカプセルがあるからだよ。
    だって、約束したじゃない。
    **「人生最大のピンチは助け合う。」**って。
    アイツらは来なかった。
    僕は、それを知るためにこの街へ帰ってきたのだろうか。
    「証明」。
    その言葉を、僕は魔術のように唱え続けた。
    新聞配達へ戻った。
    一日一時間の勉強も欠かさなかった。
    アイツらなんて、僕の人生には必要ない。
    そう言い聞かせた。
    その甲斐あってか、いつしかアイツらのことも忘れていた。
    それでも、一つだけ忘れられないことがあった。
    やはり、死神を消してやる必要がある。
    友として。
    それから月日は流れた。
    思い出す必要なんて、なかったんだ。
    新聞広告に、
    『税制改正セミナー 講師 相田 正一』
    という文字を見つけるまでは。

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