【エッセイ】煮込みハンバーグ
明日は母の誕生日だ。
母は物持ちがよく、服も趣味の卓球用品もいつから使っているのか分からないくらい同じものを使っている。
今年は兄と相談して卓球シューズをプレゼントすることにした。
母の日にラケットをプレゼントしたので、
今年母の卓球装備はかなりバージョンアップする。
まだ兄が実家に住んでいた頃、家族の誕生日には外食と決まっていた。
その日の主役が食べたいものを父が運転する車で食べに行く。
兄が大学入学で一人暮らしを始めてからも私が社会人1年目くらいまでは“誕生日は外食文化”が残っていたけれど、
私も段々と友人やパートナーと過ごすようになり、
誕生日ご飯はいつもより少し豪華な自宅ご飯に変わっていった。
母は料理が得意な方だと思う。
リビングで台所の音を聞いていると、
ネギがジャクジャクと刻まれる音やキュウリがトントンとリズムよく輪切りにされる音が響いてくる。
小学生の頃はその音を聞きながら宿題をしたり、
祖母への手紙を書いて過ごしていた。
母は料理が得意だ。
けれど、母には苦手な調理工程がある。
恐らく、おにぎりやハンバーグのような、握る、まとめる、形作るという作業が苦手なようだ。
おにぎりは食べ終わるまで形状維持するくらいギュッと握られているし、ハンバーグはこれでもかという程に肉々しさを感じるくらいにギチギチだ。
本人にはどうしようもなく、その仕上がりになるらしい。
私は料理が苦手ではない。
誰かと食べるために料理をするのは好きだけれど、
得意と言えるほどではない。
けれど、おにぎりとハンバーグだけは私の方が上手に作ることができる。
おにぎりはふんわりと食べ進めると少し型崩れするくらい、ハンバーグも箸でホロホロと崩せるくらいの柔らかさ。
私の生真面目で頑固な(本人的には不満だが)性格とは真逆の出来栄えに仕上がる。
母はハンバーグが好きだ。
家族でステーキハウスに行っても1人だけハンバーグを頼むくらいに好きらしい。
そんな母からのリクエストで、明日はトマト煮込みハンバーグを作ることになった。
トマト缶としめじを使った煮込みハンバーグは、私が作る料理の中で母のお気に入りらしい。
午後、母は週に一度の卓球に出かける。
私は合い挽き肉にパン粉に牛乳、卵と玉ねぎをいれてタネを作る。
粘りが出るまで優しくこねて、母と私の普通サイズのハンバーグと父が食べやすいサイズのミニハンバーグのいくつかに丸める。
帰宅に合わせて焼き上げ、ソースで煮込む。
母はきっと
「やっぱりハンバーグはあんただよねぇ。」
と言うだろう。
満更でもない私は、
「そうかなぁ?」
と答える。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
明日は母の誕生日。
今年もきっと、いつものようにハンバーグを作ります。
「やっぱりハンバーグはあんただよねぇ。」
そう言ってもらえるのを、実はちょっと楽しみにしています。
