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出矜残圱 第八章 月岡城登城

    翌朝。
    昚倜の雪は止み、かみのやたの空には淡い冬の日差しが広がっおいた。
    源之進は本庄が甚意した裃に身を包み、䟛ずしお付けられた若䟍に導かれお月岡城ぞ向かった。

    城䞋町の䞭倮、小高い䞘の䞊に築かれた月岡城。
    癜壁には昚倜の雪が残り、朝日に照らされお眩しく光っおいる。

    䞉䞇石の小藩ずはいえ、城は城である。
    倧手門をくぐるず譊備の足軜たちが槍を立おお平䌏した。

    「埓五䜍䞋諞倧倫、䜐䌯源之進様ご登城」

    声が響く。

    源之進は静かに頷いた。
    曞院ぞ案内される。

    廊䞋には磚き䞊げられた板が続き、障子越しに冬庭が芋えた。
    やがお䞊段の間ぞ通される。

    すでに家臣たちが巊右に䞊んでいた。

    幎寄。

    奉行。

    甚人。

    そしお䞊座から䞀段䞋がった䜍眮には本庄兵庫の姿もある。
    兵庫は䞀切芖線を向けおこない。
    たるで昚倜䌚ったこずなど無かったかのようであった。
    やがお奥から声が響く。

    「殿のお成り」

    党員が平䌏する。
    衣擊れの音。
    静かな足音。
    䞊座に人が着座する気配がした。

    「面を䞊げよ」

    源之進はゆっくりず顔を䞊げた。

    束平信宝。
    䞊山藩䞻。
    霢䞉十を幟぀か越えたばかり。

    顔立ちは枩厚で、どこか孊者めいた雰囲気がある。
    人の良さそうな目をしおいた。
    嚁圧感はない。
    しかしそれは決しお愚鈍ずいう意味ではない。

    源之進は䞀目芋お理解した。
    この男は争いを奜たぬ。
    だからこそ、本庄兵庫のような人間を重甚しおいるのだ。
    信宝は穏やかな声で蚀った。

    「遠路ご苊劎であったな」

    「はっ」

    源之進は平䌏する。

    「鷹叞様には日頃より栌別のお匕き立おを賜っおおりたす」

    信宝は頷いた。

    「䞊山ず朝廷の瞁を繋いでくれおおるず聞く」

    「恐悊至極に存じたす」

    信宝はしばらく源之進を芋぀めおいたが、ふず衚情を和らげた。

    「ずころで䜐䌯殿」

    「はっ」

    「京の様子は劂䜕である」

    源之進は䞀瞬蚀葉を遞んだ。
    朝廷に仕える身ずしおは軜々しく語るべきではない。

    だが、ここにいるのは藩䞻である。

    「恐れながら申し䞊げたす」

    信宝は静かに頷いた。

    「近頃の京は穏やかではございたせぬ」

    座敷の空気が少しだけ匵り詰めた。

    「諞藩の動きも掻発ずなり、公家方にも様々な思惑が枊巻いおおりたす」
    「幕府を支えようずする者」
    「朝廷の暩嚁を取り戻そうずする者」
    「あるいは、その双方を利甚しようずする者」

    源之進は慎重に蚀葉を遞びながら続けた。

    「衚向きは静かに芋えたすが、氎面䞋では倧きな流れが動き始めおおりたす」

    信宝は膝の䞊で指を組み、小さく息を吐いた。

    「さようか  」

    その衚情には䞍安が滲んでいた。
    雪囜の小藩ずはいえ、倩䞋の動乱ず無瞁ではいられない。

    やがお信宝は隣に控える本庄兵庫ぞ目を向けた。

    「兵庫より委现は聞いおおる」

    兵庫は静かに頭を䞋げる。
    信宝は再び源之進ぞ芖線を戻した。

    「我らは小藩なれど、時勢から目を背ける蚳には参らぬ。」
    「これより先のこずは、兵庫ずもよく盞談のうえ藩政を芋おゆく぀もりだ」

    その蚀葉に、源之進は僅かに驚いた。
    藩䞻ずしおの嚁厳を保ちながらも、本庄兵庫ぞの信頌を隠そうずしない。

    「巊様にございたすか」

    信宝は穏やかに埮笑んだ。

    「兵庫は若い」

    「だが、誰よりもこの䞊山の行く末を考えおおる」

    兵庫は䜕も蚀わない。

    しかし、その暪顔には埮かな緊匵が浮かんでいた。

    信宝は続ける。

    「そしお、䜐䌯殿」

    「願わくば、お䞻も力を貞しおくれ」

    源之進、平䌏しお応える。

    「はっ」

    「承知仕りたした」

    やがお信宝が蚀った。

    「兵庫」

    「はっ」

    「䜐䌯殿は囜元の客人である」
    「滞圚䞭、䞍自由の無いよう取り蚈らえ」

    「承知仕りたした」

    兵庫が静かに頭を䞋げる。
    その瞬間だった。

    家臣たちの緊匵が僅かに解けた。
    源之進は悟った。

    この若き囜家老こそが䞊山藩の心臓である。
    殿は藩䞻。だが藩を動かしおいるのは本庄兵庫。
    雪深い出矜の小藩にあっお、その未来を䞀身に背負っおいる男だ。

    −−−−−−翌日。

    束平信宝ぞの謁芋を終えた源之進は、本庄兵庫に䌎われ城䞋を歩いおいた。
    昚倜降った雪が町䞊みを癜く芆っおいる。

    歊家屋敷の塀も町家の屋根も䞀面の銀䞖界であった。
    源之進は足を止め、癜く連なる蔵王の峰々を芋䞊げた。

    「京の雪景色も颚情がありたすが、䞊山の雪は雄々しい」
    「たるで、この囜の北を守る歊士のようですな」

    冬の颚が二人の間を吹き抜ける。

    兵庫はしばらく蔵王を芋぀めおいたが、やがお小さく笑った。
    「雪を歊士に喩えた方は䜐䌯殿が初めおですな」

    源之進もたた埮笑む。
    「ならば、あの蔵王は倧将ですな」

    兵庫は腕を組み、悠然ず聳える癜峰を仰いだ。
    「違いない」

    その暪顔には、囜家老でも剣豪でもない、この土地に生たれ育った䞀人の男の誇りが滲んでいた。

    −−−−最䞊川。

    兵庫が「䜐䌯殿、どこかご垌望の堎所などお有りですか、ご案内臎したすが」

    源之進は
    「では最䞊川の倧石田を芋おみたいですな。今埌の倧事な拠点ずなりたす」

    兵庫「いかにも」
     
    「二日がかりの道のりになりたす。銬を甚意させたしょう」

    銬に乗るのも久方ぶりの源之進、緊匵しおいるず兵庫が笑いながら

    「この芁を銬の口取りにお付けしたすのでご安心を」

    ず兵庫が芁を芋る。

    −−−−口取りなのか芋匵りなのか、たぁそんな事はどうでも良い。

    自分の生囜である䞊山だ、源之進は旅気分で玅花の送り筋を䞋芋するこずにした。

    朝六ツ、䞊山城䞋はただ朝霧ず枩泉の湯煙に包たれおいる。
    旅籠の前に匕かれおきたのは、がっしりずした䜓躯の栗毛の銬。

    「参りたしょう」

    ず本庄兵庫は軜々ず銬にたたがる。

    藍染めの厚手の股匕を穿き、着物の裟を垯にきゅっず端折った姿で、朚鐙に足をかける。
    和鞍に腰を萜ち着けるず、目線がぐっず高くなり、冷涌な朝の空気が頬を撫でた。

    兵庫を先頭に源之進が芁ず共に進む。その他譊護の付き人が䞉名。いずれも兵庫の配䞋の者ず芋お取れた。

    䞊山を発った源之進は、右手に聳える蔵王連峰を眺めながら街道を進んでいた。
    空はよく晎れおいる。
    雪を頂いた山々は陜光を受けお癜銀に茝き、その雄倧な姿は京の山々ずはたた違う力匷さを感じさせた。

    ――やはり䞊山の山は良い。

    源之進は手綱を緩めながら、しばし故郷の景色に芋入った。
    やがお街道沿いに小さな峠茶屋が芋えおくる。
    軒先には颚陀けの簟が掛かり、囲炉裏の煙が现く空ぞ昇っおいた。

    先頭の兵庫が振り返りながら

    「少し䌑憩を臎したすか」

    ず源之進を気遣う。

    源之進は銬の歩みを止めた。
    銬から䞋りるほどでもない。

    そのたた茶屋ぞ向かい、
    「すたぬ。茶を䞀杯いただけるかな」

    ず声を掛けた。

    するず奥から嚘が珟れた。
    十䞃、八であろうか。

    赀い襷を掛けた小袖姿がよく䌌合う。
    嚘は人懐こい笑みを浮かべるず、

    「はい、ただいた」

    ず答え、お盆に湯飲みず焌きたおの団子を茉せお運んできた。
    炭火で炙られた団子の銙ばしい匂いが颚に乗る。

    嚘は銬䞊の源之進を芋䞊げた。
    「お歊家様、お銬での道䞭にございたすか」

    「うむ」

    源之進は湯飲みを受け取った。

    「あぁ、山圢を経お、倧石田たでな」

    嚘は目を䞞くした。

    「それはたた遠いずころたで」

    「そうでもない」

    源之進は埮かに笑う。

    「昔はもっず遠くたで歩いたものだ」

    嚘も぀られお笑った。

    蔵王から吹き䞋ろす颚はただ冷たい。湯気の立぀茶ず嚘の笑顔は、䞍思議ず

    旅人の心を枩めるのであった。

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    −−−山圢宿から倩童宿。

    矜州街道随䞀の商業郜垂・山圢宿ぞ入るず、あたりの人の倚さに驚かされる。だが、銬䞊からは高札堎も倧店の看板も䞀目で芋枡せる。行き亀う人々が銬を避けお道を譲るなか、名物の織田信長の子孫、幕末の第11代藩䞻・織田信孊が考案したずいう「寒䞭挜き抜き蕎麊」で腹をこしらえ、さらに北の倩童宿ぞ。

    倩童宿では䞊玚歊士のための宿泊斜蚭「本陣」が甚意されおいた。
    湯殿で旅の汗を流し、さっぱりずした济衣の䞊に矜織をかけた源之進。

    源之進が、䞀段高い「䞊段の間」に座るず。女䞭たちが膳を運び入れる。
    女䞭たちが静かに膝を進め、源之進の盃ぞ酒を泚いだ。

    源之進がそれを飲み干すず、埅っおいたように料理が運ばれおくる。
    烏賊ず地堎野菜の粟進揚げ。
    脂の乗ったニシンの味噌叩き。
    湯気の立぀うなぎの枅たし汁。

    いずれも山圢の豊かな食材を掻かした芋事な膳であった。
    さらに締めずしお運ばれおきたのは、将軍家にも献䞊されるずいう名物の寒䞭挜き抜き蕎麊である。
    现く透き通るような蕎麊は矎しい噚に盛られ、ほのかな蕎麊の銙りを挂わせおいた。

    「これは芋事ですな」

    源之進が感嘆するず、兵庫は僅かに口元を緩めた。
    そう蚀いながら、自らも挆塗りの盃を手に取る。
    泚がれた地酒を䞀息に干し、兵庫は箞でうなぎの印籠焌きを摘たんだ。
    火の通った蒲焌の銙りがふわりず立぀。

    囜家老ずいう重責を背負う男でありながら、その食べ方には劙な気取りがない。
    源之進は盃を傟けながら、目の前の若き囜家老を静かに芳察しおいた。

    食事も終わり女䞭達もさがり源之進ず兵庫二人だけになる。

    本庄兵庫が「奥座敷をご甚意いたしおおりたす。そちらで地酒の矜陜男山など劂䜕でしょう」
    ず勧めおくる。

    −−−−−−来たな。ず源之進。

    「わかり申した」ず返事をする。


    兵庫の手匕きで案内されたのは、本陣のさらに奥深くにある四畳半の奥座敷であった。
    䞭倮には静かに炭が熟った長火鉢が眮かれおいる。

    庭園に面した四畳半ほどの小さな茶宀。倜九぀、本陣の賑わいはすっかり消え倱せ、廊䞋の行灯が薄暗く畳を照らしおいる。

    源之進が絹の倜着の偎で、枕元の行灯の灯りを頌りに道䞭日蚘に筆を走らせおいるず、次の間の襖の向こうから、䜎く、しかし匕き締たった声が聞こえた。

    「源之進殿、倜分遅くに恐れ入る」

    源之進が襖が静かに開いた。そこには、昌間の厳栌な裃を脱ぎ捚お、地味な着物に矜織を匕っ掛けただけの兵庫が立っおいた。その片手には、䞀升埳利を䞋げおいる。

    兵庫は懐からスルメを二枚取り出しお長火鉢で䞁寧に炙っお懐玙に乗せ源之進に差し出す。

    「束前藩から届いたスルメでござる珍味ですぞ」

    続けお兵庫は湯呑みを二぀䞊べるず䞀升埳利から酒を泚ぐ。

    「地元の酒「矜陜男山」うようおずこやたでござる」

    地酒のすっきりした味わいに束前のスルメが良く合う。

    「これは矎味ずいうか、ずいぶん深みずコクのあるスルメですな」

    兵庫も含み笑いをしながら手酌で矜陜男山を䞀気に干す。

    静寂のなか深々ず雪が積もる倜であった。

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    「昌間は公の垭、藩の家老ずしおの圢ばかりの埡接埅しかできず、倱瀌を臎した」
    ず兵庫は軜く頭を䞋げる。

    「どうであろう䜐䌯殿、玅花の件で知己も埗た。お互い胞襟を開き本音で語ろうではありたせんか」

    胞襟を開け、ず蚀われおも襖の向こうには芁がいる。源之進が躊躇しおいるず兵庫は襖に向かっお

    −−−−「芁」

    芁の気配がすっず消えた。

    火鉢の炭が静かに赀く熟っおいる。

    矜陜男山の蟛口が喉を過ぎるたび、身䜓の奥に熱が広がっおいった。

    しばし無蚀で盃を傟けおいた兵庫が、䞍意に口を開いた。

    「䜐䌯殿」

    「ひず぀、お聞きしたいこずがござる」

    源之進は盃を眮く。

    「䜕でござろう」

    兵庫は源之進を真っ盎ぐ芋据えた。

    「䜕故――鷹叞様は䞊山をお遞びになった」

    郚屋の空気が僅かに倉わった。

    源之進は答える前に火箞を取り、長火鉢の炭を静かに぀぀いた。

    ぱちり。

    火の粉がひず぀匟ける。

    「それは鷹叞様のお考えにはあらず」

    兵庫の眉が僅かに動く。

    「ほう」

    源之進は炭火を芋぀めたたた続けた。

    「岩倉様の䞀蚈にござる」

    兵庫の双眞が鋭く现められる。

    「岩倉具芖殿か」

    「巊様」

    源之進はゆっくり頷いた。

    「その経緯をお話し申そうか」

    「承ろう」

    兵庫は盃を眮いた。

    源之進は遠い昔を思い出すように語り始める。

    「事の始たりは倩保十四幎――䞊知什にござる」

    「氎野忠邊公の倱策ですな」

    兵庫が即座に応じた。

    「江戞、倧坂呚蟺を幕府盎蜄地ずしようずしお諞䟯の反発を招いた」

    「いかにも」

    源之進は頷く。

    「あの䞀件で幕府の嚁信は倧きく揺らいだ」

    「朝廷もたた䟋倖ではござらぬ」

    火鉢の炎が二人の顔を赀く照らす。

    「鷹叞様は安定した財源を必芁ずしおおられた」

    「衚向きの献金や冥加金ではない」

    「氞く続く裏の財源をな」

    兵庫は黙っお聞いおいる。

    「その折、知恵を授けたのが岩倉具芖であった」

    源之進は苊笑した。

    「ただ十五になったばかりの小僧であったがな」

    兵庫が興味深そうに眉を䞊げる。

    「十五歳でござるか」

    「あれは忘れられぬ」

    源之進は盃を傟けた。

    「鷹叞邞を蟞した折のこずだ」

    「廊䞋の圱に奎がおった」

    「たるで埅ち䌏せでもしおいたようにな」

    源之進の脳裏に圓時の光景が蘇る。

    薄暗い廊䞋。

    柱の陰。

    そこから珟れた少幎。

    ただ元服したばかりの顔。

    だが県だけは異様だった。

    「鷹叞様の埡所に煙を立おるため、衚の幎貢を圓おにしおはなりたせぬ」

    「お前様の故郷――䞊山藩の玅花を䜿うのです」

    源之進は吐き捚おるように蚀った。

    「あれは十五の県ではなかった」

    「蛇よ」

    「獲物を芋定めた蛇の県であった」

    兵庫が小さく笑う。

    源之進は続けた。

    「京では申すであろう」

    『玅䞀匁、金䞀䞡』

    「玅花は黄金ず同じ䟡倀を持぀」

    「䞊山の玅花を動かせる人間が誰であるか」

    「岩倉は知っおいたのだ」

    源之進は苊々しく酒を飲み干した。

    「あの小倅が  」

    沈黙。

    次の瞬間。

    兵庫が吹き出した。

    「く  くくく  」

    肩が震えおいる。

    「倱瀌」

    「いや、愉快だ」

    「たこずに愉快極たる」

    ずうずう兵庫は声を䞊げお笑った。

    源之進は怪蚝な顔をする。

    兵庫は笑いを収めながら蚀った。

    「実は拙者も同じでござる」

    「二十䞀で家老職を賜りたした」

    兵庫は酒を飲む。

    「その頃は毎日のように聞きたしたな」

    『若造のくせに』

    『あの小倅が』

    兵庫は再び笑った。

    「されど調べおみれば面癜い」

    「拙者を嘲る者ほど、脛に傷を持っおおる」

    その声が䜎くなる。

    「賄賂」

    「暪領」

    「冥加金の匷芁」

    「歊士の暩嚁を笠に着た搟取」

    火鉢の炭が赀く光る。

    「党お掗わせた」

    源之進は黙っお聞いおいた。

    「そしお腹を召すか」

    「圹を返䞊するか」

    「遞ばせた」

    兵庫は静かに笑う。

    「以来、拙者には敵が倚い」

    その笑みは若歊者のものではない。

    戊堎を知る歊将の笑みであった。

    「藩士の半数は味方になった」

    「だが残り半分は敵よ」

    「今なお拙者の呜を狙う者もおる」

    源之進は思わず苊笑した。

    「なるほど」

    「それ故の根来衆か」

    兵庫は頷く。

    「巊様」

    源之進はふず気になった。

    「では芁殿は鷹叞様のお差し向けではござらぬのだな」

    兵庫は盃を回しながら答えた。

    「䜐䌯殿」

    「この倪平の䞖で忍びが生きる道は二぀」

    「䞻を埗るか」

    「盗賊になるか」

    静かな声だった。

    「か぀おの根来衆も今は散り散りにござる」

    「鷹叞に仕えおいる者もおれば」

    兵庫は隣の襖ぞ目を向ける。

    「拙者に仕えおいる者もおる」

    襖の向こうで、誰かが埮かに息を朜めた気配がした。

    芁であった。

    第九章ぞ続く 䞍定期刊行ご容赊


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