ビヨンセはなぜ“マイケル・ジャクソンの後継者”と呼ばれるのか ― 憧れから比較される存在へ
1.はじめに
Michael Jacksonの伝記映画公開を前に、改めて彼の功績に注目が集まっています。
そしてMichaelと後の世代のアーティストを比較するとき、たびたび名前が挙がってきた一人がBeyoncéです。
英語圏の音楽メディアでは、BeyoncéをMichael Jacksonの「heir(後継者)」や、それに近い存在として論じる記事が以前からありました。
さらに2021年にはJAY-Zも、BeyoncéについてMichaelの「evolution(進化形)」という表現を使っています。
もちろん、これはMichael本人がBeyoncéを「後継者」に指名したという話ではありません。
では、なぜ二人はこれほど比較されるのでしょうか。
歌とダンスを高いレベルで両立しているから?
巨大なライブを作るから?
世界的なスターだから?
それだけなら、ほかにも当てはまるアーティストはいます。
Beyoncéの場合、もう一つ大きいのは、本人がMichaelから受けた影響を繰り返し語ってきたことです。
しかも二人は、憧れる側と憧れられる側として遠く離れていたわけではありません。
Destiny’s Child時代から、実際に同じ場所に立つ機会が何度もありました。
この記事では、まずBeyoncé自身がMichaelについて何を語ってきたのかを確認します。
そのうえで、二人の実際の接点と、後にBeyoncéがMichaelと比較されるようになった理由をたどっていきます。
2.Michael Jacksonは、Beyoncéを変えた
BeyoncéがMichael Jacksonから大きな影響を受けたことは、後世の評論だけから生まれた見方ではありません。
本人が、かなりはっきり語っています。
Michaelの死後、Beyoncéは自身の公式サイトに追悼文を掲載しました。
そこで振り返っているのが、まだキャリアを始めたばかりの頃のことです。
当時のプロデューサーは、Jackson 5時代のMichaelが「Who’s Loving You」を歌うライブ映像を、Beyoncéに何時間も繰り返し見せたといいます。
Beyoncéは、その経験からMichaelに教えられたことについて、技術だけではなく、時にはすべてを忘れて感情のままに表現することだったと振り返っています。
そして最後には、Michaelが自分を変え、現在のアーティストになる助けになったという趣旨の言葉を残しています。
これは、二人を比較するときにかなり重要な証言だと思います。
Michaelの影響というと、ムーンウォークや衣装、振付のような目に見えるものを想像しがちです。
しかしBeyoncé本人が語ったのは、もっと根本的な「どう歌い、どう表現するか」という部分でした。
さらに2006年のWorld Music Awardsでも、BeyoncéはMichaelを紹介する際、彼がいなければ自分はパフォーマーになっていなかったという趣旨の言葉を語っています。
BeyoncéにとってMichaelは、単に好きだったスターではありません。
自分がステージに立つ理由そのものに関わるほど、大きな存在だったことが本人の言葉から分かります。
3.2001年、憧れていた人の前で歌う
二人の実際の接点をたどると、Destiny’s Child時代までさかのぼります。
2001年9月、ニューヨークのMadison Square Gardenで「Michael Jackson: 30th Anniversary Celebration」が開催されました。
Michaelのソロ活動30周年を祝う公演です。
Destiny’s Childも出演し、「Bootylicious」を披露しました。
Beyoncéは、子どもの頃から強い影響を受けてきたMichaelを祝うステージに、自分自身が出演する側として立ったことになります。
そして同じ2001年には、Michaelが中心となったチャリティ曲「What More Can I Give」の録音にもBeyoncéが参加しています。
この曲は、もともと以前から構想されていましたが、9月11日のアメリカ同時多発テロ後、被害者支援のためのチャリティ企画として進められました。
Beyoncéは共同作曲家や共同プロデューサーだったわけではなく、多数の参加アーティストの一人です。
それでも、少女時代から見続けてきたMichaelの企画に、今度は自分が歌手として加わるところまで来ていました。
4.Michael と同じ舞台に立つようになった
MichaelとBeyoncéの接点は、2001年だけではありません。
2003年のRadio Music Awardsでは、BeyoncéがMichaelを紹介し、Humanitarian Awardを授与しました。
この頃のBeyoncéは『Dangerously in Love』でソロ活動を本格化させたばかりです。
子どもの頃に画面の中で見ていた人物を、自分がステージ上で紹介する。
二人の関係を考えると、かなり印象的な場面です。
さらに2006年のWorld Music Awardsでも、BeyoncéはMichaelへDiamond Awardを贈る役を務めました。
そこでBeyoncéは、Michaelが自分を含むパフォーマーたちに与えた影響について語り、最後に「I love you」と伝えます。
Michaelもスピーチの中で、
“I love you, Beyoncé.”
と返しました。
ただし、この一言から「MichaelがBeyoncéを後継者として認めていた」とまで考えることはできません。
今回調べた範囲では、Michael本人がBeyoncéの歌唱力やダンス、スター性について具体的に評価した一次資料は確認できませんでした。
つまり、確認できるのはこういうことです。
BeyoncéはMichaelから非常に大きな影響を受けていた。
そしてキャリアを重ねる中で、Michael本人と何度も同じ場に立つようになった。
ここまでは事実としてたどることができます。
【ここからは有料です】
では、Michaelの死後も、なぜBeyoncéは彼と繰り返し比較されるのでしょうか。
ここからは、「Michaelから受け継いだ」と最初から決めるのではなく、二人の仕事を実際に並べながら、その理由を見ていきます。
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