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#創䜜倧賞2025 応募䜜 ほんずうの自分に、今、䜕を蚱しおあげたい―楓がキャプテンになった倏―

い぀からだろう。
私たちは「こうあるべき」ず、無意識に自分を瞛るようになった。

でも本圓の自分は、ずっず静かに叫んでいたのかもしれない。
「もう、そんなに頑匵らなくおもいいよ」っお。

これは、自分自身に蚱しを䞎える、小さな物語。

♊目次

  • 第1章キャプテンになった倏

  • 第2章汗ず叫びず逃げたい気持ち

  • 第3章りのちゃんの文字

  • 第4章鏡の䞭の自分が怖い

  • 第5章倧䌚ず埌悔

  • 第6章クリスマスの倜に

  • 第7章最埌の春

  • 終章あの倏を思い出す朝

涙をこらえおいたあの日。

もしも誰かが「そのたたでいいよ」ず蚀っおくれおいたら――

そんな、過去の自分に宛おた物語です。


🏐第1章キャプテンになった倏

âž»

芁玄

高校2幎の倏、楓は突然、バレヌボヌル郚の監督からキャプテンに掚薊される。
心の準備もないたた、重責を背負うこずになり、耇雑な想いを抱える。
呚囲は「すごいね」「期埅しおる」ず蚀っおくれるが、それがプレッシャヌにしか感じられない。
同じクラスには曞道郚のキャプテン・りのちゃん。目立たず控えめな圌女の存圚が、どこか安心できるものずしお心に残る。
ただ打ち解けおはいないが、りのの攟課埌の静かな背䞭を芋お「自分ずちょっず䌌おるかも」ず思い始める。

âž»

心情

暑すぎお、空気が透明じゃないみたいだった。
駅たでの道を走りながら、汗が目に入っお痛い。
なのに私は、どうしおも立ち止たれなかった。

「  楓、キャプテン、お願いできるか」

あの日、監督が口にしたその䞀蚀が、
私のなかの“なにか”をぐしゃっず朰した。

嬉しかった。怖かった。逃げたかった。
でも、誰にもそんなこず、蚀えなかった。

âž»

本文

「すごいじゃん、キャプテン 楓なら安心だよ」

攟課埌、䜓育通を出るずき、埌茩のミナが無邪気に蚀った。
私は笑っお「ありがずう」ず返しながら、ペットボトルを握る手に力が入っおいた。
嬉しくなきゃいけない。
でも、内偎では“ちょっず違うかも”っお声がしおいた。

キャプテンっお、もっず声が倧きくお、みんなの前で堂々ず指瀺ができる人がなるものだず思っおた。
私はそんなタむプじゃない。
それなのに、監督が私を遞んだ理由は、「党員に目が届いおるから」ずか、「責任感があるから」ずか、そういう蚀葉だった。

本圓にそうなのかな。
ただ、呚りに流されずに無難にやっおきただけじゃないのかな。
なんか 遞ばれたずいうより、流れで決たったっお感じ。

駅のホヌムで電車を埅っおいるず、ふずLINEが光った。
「今日、なんかあった」
送り䞻は、翌だった。
どうしおわかるんだろう。䜕も蚀っおないのに。

「ちょっずね」ずだけ返しおスマホをポケットにしたう。
そしたらすぐに、「ちゃんず垰っお寝ろよ、明日も暑いらしいから」ず返信がきた。

 こういう時、ちょっず泣きそうになる。



翌朝の教宀、窓際の垭にりのちゃんが座っおいた。
同じクラスになったのは2幎からだけど、話したこずはほずんどない。
曞道郚でキャプテンをしおいるず、友達から聞いた。
い぀も静かに、萜ち着いた雰囲気で、䞀人で昌䌑みを過ごしおいるこずが倚い。

「キャプテン同士だね」っお誰かが冗談っぜく蚀ったけど、りのちゃんはただ笑っお「うん」ず返しただけだった。
でもその笑顔が、䞍思議ず印象に残った。

その日、垰りのホヌムルヌム埌に、りのちゃんが䞀瞬だけ私を芋た気がした。
目が合ったのはたぶん2秒くらい。
でも、「あなたも倧倉だよね」っお蚀われたような気がした。

 なんでだろう。蚀葉はないのに、ちょっずだけ、救われた気がした。

âž»

🔥第2章汗ず叫びず逃げたい気持ち

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芁玄

キャプテン就任埌すぐの緎習詊合。呚囲の期埅を背負いながらも、チヌムは思うように動かない。
「なんで蚀った通りに動いおくれないの」ずいう苛立ちず、「私の指瀺が悪いんだ」ずいう自己吊定のルヌプに陥る。
その倜、垃団の䞭で声を殺しお泣く楓。
スマホを開くず、翌から「ちゃんず寝おるか」ずいう短いLINE。
なにも蚀っおいないのに、今の自分を芋透かされた気がしお、涙が止たらなくなる。

âž»

心情

「  なんで、できないの」
自分の声が、自分じゃないみたいだった。

緎習詊合の最䞭、みんなの顔が怖くお芋られなかった。
こっちを芋おる。私のせいっお、思っおる。
実際そうなのかもしれない。

指瀺が遅い、声が小さい、空気が読めない。
私がキャプテンになったこずで、逆にチヌムがバラバラになっおる気がした。

倜、垰宅しおシャワヌを济びたあず、
ベッドの䞭でタオルを顔に抌し぀けお泣いた。

スマホを開くず、翌からのLINE。

「ちゃんず寝おるか」

それだけの蚀葉で、壊れたみたいに涙が出た。

âž»

本文

「タむム 䞀回萜ち着いお」

私の声が䜓育通に響いた。けれど、誰の顔もこっちを芋ない。
タむムアりトの円陣でも、みんなは氎を飲みながら各自の目線で別の方向を芋おいた。

「もうちょっず、声出しおいこ 連携、ずれちゃっおるから 」
そう蚀いながら、自分の声の震えに気づいた。

バレヌっお、こんなに孀独だったっけ

監督も、ベンチの倖から䜕も蚀っおこない。
たぶん、私がどう采配するかを詊しおるんだ。

だけど、コヌトに戻っおも雰囲気は重いたた。
次の䞀本で私のトスがたた少しズレお、レフトが打ち切れなかった。

負けた。

緎習詊合だったけど、負けは負けだ。

誰も責めおこない。
でも、責められるよりしんどかった。

「お぀かれ」
ミナが笑っお声をかけおくれたけど、私にはそれが遠くで響いおいるようにしか聞こえなかった。



その倜、シャワヌの音だけが救いだった。
鏡に映る自分の顔は、キャプテンらしくなかった。

リビングからは、テレビの音ず、母の笑い声。
孊校のこずなんお、家では話さない。話しおも通じない。

ベッドに朜っお、タオルを顔に抌し぀けお泣いた。
声が挏れないように、喉の奥で我慢した。

スマホが震えた。

翌だった。

「ちゃんず寝おるか」

たった䞀文。
絵文字もスタンプもなかった。

でも、今の私を芋透かされたような気がした。

『ねえ、もうダメかも』っお蚀いかけたけど、やめた。
かわりに「うん」ずだけ打った。

数秒埌、「よかった」っお返っおきた。

その䞀蚀で、
私はようやく、タオルから顔を䞊げた。

🖌第3章りのちゃんの文字

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芁玄

倏の終わり、昌䌑みの教宀。たたたた曞道の緎習をしおいたりのが、「赊ゆるし」の䞀文字を筆で曞いおいる堎面に出くわす楓。
その文字に、蚀葉では衚珟できない優しさず匷さを感じる。
りのは目立たず静かな存圚だったが、なぜかその瞬間から気になり始める。
やがお小さなきっかけで䌚話を亀わし始め、楓は「人に頌っおいいこず」や「自分の気持ちを口にしおもいいこず」に少しず぀気づいおいく。
傷を抱えおいるのは自分だけじゃない。
りのもたた、自分ず同じように「無理しおきた誰か」だずいうこずが䌝わっおくる。

âž»

心情

「  すごい字」

思わず口からこがれた蚀葉に、りのちゃんが少しだけ顔を䞊げた。

昌䌑み、みんながお匁圓を広げる䞭、りのは静かに筆を動かしおいた。
曞いおいたのは、「赊」の䞀文字。

目に芋えないものが、玙からにじみ出おいるようだった。
匷いのに、どこかやさしい。
傷぀いた誰かをそっず包み蟌むような、そんな字だった。

「  うん。わたし、この字が奜き」

小さな声。けれど、迷いのない瞳。

その日から、りのちゃんず少しず぀蚀葉を亀わすようになった。

人は、蚀葉よりも先に、“なにか”を感じ取るんだ――
楓は初めお、そんなふうに思った。

âž»

本文

その日、教宀の空気はなんずなくぬるかった。
クヌラヌが効いおいるはずなのに、身䜓の奥がじっずりしおいる感じ。
私は匁圓もそこそこにしお、窓際の垭でがヌっずしおいた。

目の端にふず芋えた墚の黒さ。
それだけで、空気が倉わった気がした。

りのちゃんは、筆を握っおいた。
教宀で曞道の緎習なんお、珍しい。
でも、圌女にずっおは“静かでいられる時間”なのかもしれない。

曞かれおいたのは、「赊」の䞀文字。

挢字っおこんなに衚情あるんだっお思った。
優しいのに、芯がある。
たるで誰かの痛みをたるごず抱きしめおくれるような字だった。

「  すごい字だね」

気づいたら声に出しおいお、少しだけ恥ずかしかった。
でも、りのちゃんは笑った。

「ありがずう。 わたし、この字が奜きなんだ」

それ以䞊、蚀葉はなかった。
でも、それだけでよかった。



攟課埌、偶然䞀緒になった昇降口で、りのちゃんが小さく話しかけおきた。

「楓ちゃん、バレヌ郚、倧倉そうだね」

「うん たあ、ね」

なにをどう話せばいいかわからなかったけど、その“たあ、ね”にはたぶん党郚詰たっおた。
りのちゃんはそれを受け取っおくれお、「わかる」ずだけ蚀った。

「曞道郚も、私ひずりだけ䞉幎生ず入れ替わっおお。キャプテンっお、なんか䞀人がっちになるよね」

それを聞いお、私の䞭の䜕かがほぐれた気がした。

“同じなんだ、この人も”

りのちゃんず話す時間が少しず぀増えた。
無理に励たされなくおも、わかっおくれる人がいるだけで、
なんだか、それだけでちょっず頑匵れそうな気がした。

🪞第4章鏡の䞭の自分が怖い

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芁玄

孊校ではキャプテンずしおふるたい、家では「いい子」でいる楓。
けれど本圓は、自分の気持ちを口にできないたた、ずっず我慢を重ねおいた。
進孊の話になるず、母の蚀葉が先にあっお、楓の声は飲み蟌たれおしたう。
ある晩、颚呂䞊がりに鏡を芋お、消えかけたリストカットの跡に目がいく。
䞭孊時代に誰にも蚀えずに抱えた苊しみを思い出し、たた少しだけ呌吞が苊しくなる。
そんな倜、翌から届いたメッセヌゞ。
「明日、ちょっず声聞きたいかも」
䞍思議ず、涙が出なかった。
“誰かが、自分の声を聞こうずしおくれおいる”――
それだけで、少しだけ救われる。

âž»

心情

ドラむダヌの音が止んだあず、济宀の鏡に映ったのは、
なんだか“知らない子”だった。

髪の毛はたずたっおいるし、肌だっおそんなに荒れおない。
でも、目の奥だけが、がんやりず曇っおいた。

手銖に、もうほずんど消えた傷あずが芋えた。
䞭孊生のずきの、冬。

誰かに芋぀けおほしかったのかもしれない。

「あんたは掚薊で行くのよ。郚掻もあるんだから」
リビングから聞こえる母の声。

――私の気持ちは、どこにあるんだろう。

スマホが鳎った。
翌からだった。

「明日、ちょっず声聞きたいかも」

その䞀文だけで、
今倜泣かずに眠れそうな気がした。

âž»

本線本文

「ねえ、○○倧孊の掚薊、もう締切近いらしいよ」
母の声が、倕飯の支床をしながらの空気に乗っお届く。
私はうなずいたふりをしお、ごはんを口に運ぶ。

この家では、はっきり「嫌だ」ず蚀うこずは蚱されない。
蚀ったずころで、「どうせ無理」っお顔をされるのが目に芋えおる。

ほんずうは――
私は進孊したいわけじゃない。
少なくずも、芪が蚀う“その倧孊”に行きたいずは思っおない。

でも、その本音がどこに行けばいいのかわからない。
だから、したい蟌む。
䜕床も、䜕床も。



倜、お颚呂から䞊がっお鏡を芋た瞬間、ふいに喉の奥が詰たった。
湿った空気の䞭で、鏡の向こうの自分が、他人のように芋えた。

すっず腕を䌞ばしたずき、手銖にうっすら残る现い跡が目に入った。
もう䜕幎も前のこず。
äž­2の冬。
孊校でも家でも、どこにも居堎所がなかった。

あのずき――
ほんずうは、“誰か”に芋぀けおほしかった。
でも誰にも気づかれず、ただ傷が消えおいっただけだった。

今だっお同じ。
私は笑っおいるけど、本圓はずっず、䜕かを握りしめたたた。

ベッドに入り、垃団をぎゅっず抱えお目を閉じた。
苊しくお、涙も出なくお、眠れる気がしなかった。

そのずきだった。

スマホのバむブが鳎る。
翌からだった。

「明日、ちょっず声聞きたいかも」

  䜕も知らないくせに、
どうしおこんな時に、こんな蚀葉をくれるの。

ふいに、喉の぀かえがするっず䞋りおいった気がした。
涙は出なかった。
でも、それがなんだか“前よりもいいこず”に思えた。

🏐第5章倧䌚ず埌悔

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芁玄

倏の倧䌚本番。責任感でなんずか匕っ匵ろうずする楓だったが、芁所でミスが重なり、チヌムはベスト8で敗退。
悔しさず申し蚳なさに抌し぀ぶされそうになり、ベンチで涙をこがす楓。
そのずき、埌茩のナむが「楓先茩がキャプテンでよかったです」ず声をかけおくれる。
それはありふれたひず蚀だけど、楓の䞭にずっず枊巻いおいた“自分は向いおない”ずいう想いを、少しだけほどいおくれた。
勝おなかった悔しさの䞭で、「それでも私でよかった」ず思っおくれる誰かがいたこずに、初めお報われる。

âž»

心情

コヌトの真ん䞭で、私の声だけが空回りしおいた。

「䞀本 もう䞀本いこう」

でも、誰もこっちを芋なかった。
タむムアりトのあずのプレヌで、私のトスが少しずれお、レフトがスパむクをミスした。

終わった瞬間、足が動かなくなった。

ベスト8。

去幎ず同じ結果。
みんなが悔しそうに荷物をたずめる䞭、
私はベンチの隅で、「ごめん ごめんね 」っお、
声にならない声をこがしおた。

その時だった。
䞀番䞋の埌茩が、そっず近づいおきお蚀った。

「楓先茩がキャプテンでよかったです」

涙の味が、少しだけ倉わった気がした。

âž»

本線本文

䌚堎の空気は、思っおいた以䞊に重たかった。
応揎の声も、チヌムメむトの気配も、党郚が圧力に感じた。

「あず䞀本、取れば流れが倉わるよ」
自分に蚀い聞かせながらコヌトに戻ったけど、
思うように䜓が぀いおこなかった。

サヌブがラむンを割ったずき、ベンチの芖線を䞀瞬感じた。
次のプレヌではトスが倧きく浮いお、スパむカヌがタむミングを倖した。
連携が厩れたたた、最埌の1点を萜ずした。

詊合が終わった瞬間、スコアボヌドから目をそらした。

終わったんだ 

ベスト8。
去幎ず同じ。

でも、今幎は“私がキャプテン”だった。

埌茩たちが泣きながらコヌトに䞀瀌しおいるのを、
私はベンチの隅でうずくたっお芋おいた。

「ごめん ほんずに、ごめん 」

声にならない声が、ナニフォヌムの䞭に吞い蟌たれおいく。
肩が震えお、どうしようもなかった。

その時だった。

「楓先茩」

顔を䞊げるず、ナむが立っおいた。
マネヌゞャヌ芋習いの1幎生。
プレヌにはただ出おいないけれど、ずっず緎習に付き合っおくれおいた子。

「今日、 すごくかっこよかったです。
 私、楓先茩がキャプテンでよかったっお、思いたした」

ありきたりな蚀葉なのに、
なぜか涙がぎたりず止たった。

ありがずうっお蚀おうずしお、蚀葉にならなかった。

私がこの数ヶ月、誰のために走っおきたのか。
うたくやれおいたかはわからない。
でも、“誰かに䌝わっおた”っお、
それだけで報われる気がした。



曎衣宀でナニフォヌムを脱いだら、背䞭たで汗ず涙でぐしゃぐしゃだった。

鏡の前に立぀ず、
がさがさの髪ず赀い目。
ひどい顔だったけど、
どこか、自分で自分を芋おいられる顔になっおいた。

今日は勝おなかった。
けれど、ちゃんずキャプテンずしお、ここにいた。
それを“わかっおくれる人がいる”っおだけで、
私の䞭で、䜕かが少しだけ倉わった気がした。

❄第6章クリスマスの倜に

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芁玄

冬。倧䌚も終わり、進路の話が少しず぀動き始めた12月。
LINEで翌から「今幎もお぀かれ」ずメッセヌゞが届き、自然ずやりずりが続くようになる。
「今床、ちょっず䌚わない」ずいう誘いに、楓は戞惑いながらもOKする。
埅ち合わせたのは、小さい頃からよく通った公園。
クリスマスの倜、むルミネヌションを芋ながらベンチに䞊ぶふたり。
䌚話は少ないけれど、枩床だけが確かにあった。
やがお翌がぜ぀りず「俺、ずっず楓のこず、奜きだった」ず打ち明ける。
楓はただ小さくうなずき、その手をそっず握る。
恋が始たったわけでも、はっきりず“䞡想い”だず確認したわけでもない。
でも、それでよかった。
ふたりの距離は、もうすでに“蚀葉の倖偎”にあった。

âž»

心情

「今幎も、お぀かれ」

翌から届いたLINEには、それだけが曞いおあった。

絵文字もなくお、やけに玠っ気ないのに、
なぜか胞の奥がぜわっず枩かくなった。

少しやりずりをしたあず、「今床、ちょっず䌚わない」っおメッセヌゞが来た。
なんずなく、自然な流れだった。

クリスマスの倜、埅ち合わせたのは、昔よく通った公園。

寒かったけど、むルミネヌションが思ったより綺麗で、
2人で䞊んでベンチに座っお、蚀葉よりも間の方が倚かった。

「俺さ、ずっず楓のこず、奜きだった」

翌の声は、冬の空気にたぎれおすぐに薄れおいったけど、
私の䞭には、ちゃんず届いおいた。

なんお答えたか芚えおない。
でも、たぶん、それで十分だった。

âž»

本線本文

12月の空は、やけに高くお、どこか也いおいた。
テストが終わり、郚掻も䞀区切り。
進路の話が教宀のそこかしこで飛び亀う䞭、私はちょっず眮いおけがりだった。

倜、ベッドに入る前にスマホを開いたら、翌からメッセヌゞが届いおいた。

「今幎も、お぀かれ」

それだけ。
でも、なぜか目頭が熱くなった。

“ちゃんず芋おくれおた”っお思えるのは、
蚀葉の倚さじゃないんだっお、最近わかっおきた気がする。

「ありがず。翌も、お぀かれさた」

そう返したら、䌚話がぜ぀ぜ぀続いた。

「寒くなるずさ、あそこの公園のむルミ、たた芋たくなるよな」

「うん、あれ、ちょっずしょがいけど綺麗だよね」

「  今床、ちょっず䌚わない」

少しだけ、指が止たった。
でもすぐに、「いいよ」ず返しおいた。



クリスマスの倜。
思ったより寒くお、マフラヌの䞭で息を敎えながら、私はあの公園の前に立っおいた。

街のむルミネヌションに比べれば、ずっず地味な電食。
でも、小さい頃から芋慣れたその光は、どこかほっずする。

「よっ」

い぀の間にか、翌が暪に立っおいた。
パヌカヌの䞊にダりンを着お、手には猶ココア。

「はい、ホット」

枡された猶を䞡手で包んだ瞬間、じんわり手があたたかくなった。

「元気だった」

「うん。そっちは」

「たあ、がちがち」

そんなたわいない䌚話のあず、ふたりでベンチに座った。
沈黙が䜕床も蚪れお、そのたびに私は焊りそうになったけど、
ふず隣を芋るず、翌は党然気にしおいない顔をしおいた。

空気が、ちゃんず“ふたりの空気”になっおいる気がした。

少ししお、翌がポケットの䞭で手をもぞもぞさせながら、ぜ぀りず蚀った。

「俺さ、ずっず楓のこず、奜きだった」

その蚀葉は、ふわっずした息のように倜に溶けおいった。

ドキドキはしたけれど、䞍思議ず怖くはなかった。
たぶん、心のどこかで知っおた。
それでも、ちゃんず“蚀葉にしおくれたこず”が嬉しかった。

私は、小さくうなずいた。

そしお、そっず翌の手に、自分の手を重ねた。

むルミネヌションの光が、ふたりの間をやわらかく照らしおいた。

🌞第7章最埌の春

âž»

芁玄

3幎生になった楓。進路指導や掚薊の話が本栌的になるなか、芪は「倧孊進孊」を圓然のように勧めおくる。
でも楓の䞭には、「このたたでいいのか」ずいう迷いがくすぶっおいた。
攟課埌、りのずの䌚話の䞭で、「将来、誰かの力になれたらいいな」ず口にした自分の蚀葉に驚く。
䞀方、翌は地元の建築䌚瀟ぞの就職を決めおいた。
「自分の人生、自分で決めるっお、けっこう勇気いるよな」――
その蚀葉に、楓もようやく腹をくくる。
桜が咲いた春の日、進孊ではなく“自分の意志で遞んだ道”に螏み出す。
未来はただ䞍安だらけだけど、「ちゃんず私が決めた」ず思える春だった。

âž»

心情

合栌通知が届いた。
芪が望んでいた倧孊から。

喜ぶ母の声が、少し遠くに聞こえた。

「よかったわね。これで安心だわ」

安心――
それは、誰のための蚀葉なんだろう。

攟課埌、りのず話した垰り道、
「ねえ楓っお、将来なにになりたいの」ず聞かれた。

すぐには答えられなかったけど、
子どもたちの話をしおいる自分がいた。

翌は地元の建築䌚瀟に内定したらしい。
「珟堎、倧倉そうだけど楜しそう」っお笑っおた。

「自分の人生、自分で決めるっお、けっこう勇気いるよな」

その蚀葉が背䞭を抌しおくれた。

桜が咲いた日、進孊をやめお、
私は自分の足で歩き出すこずを決めた。

âž»

本線本文

合栌通知は、癜い封筒に入っおポストに届いおいた。
母は封を切る前から、「もう倧䞈倫よね」ず蚀っおいた。

進孊先は、偏差倀も名の知れた倧孊。
芪の顔が立぀堎所。
郚掻掚薊で、孊費も䞀郚免陀になるずいう安心材料぀き。

でも、私の胞の䞭は、空っぜだった。

孊校では「おめでずう」「いいな〜掚薊」ず蚀われるたび、
なぜか、自分のこずじゃないような気がした。



攟課埌、りのず駅たで歩く。
春の手前の空気は、どこか新しい銙りがしおいた。

「ねえ、楓っおさ、将来なにになりたいの」

急に投げられた問いに、少しだけ足が止たった。

「うヌん  ただちゃんずは考えおないけど、
 なんか、子どもずか、誰かの力になれる仕事っおいいなっお思っおるかも」

自分で蚀っお、ちょっず驚いた。
でも、それは嘘じゃなかった。

「それ、すごく楓っぜい」

りのが笑った。

その笑顔を芋お、
ああ、自分の人生っお、こうやっお誰かず話しながら遞んでいいんだっお、
初めお思えた気がした。



数日埌、翌ず䌚った。

「就職、決めたよ。地元の建築䌚瀟。
 珟堎、倧倉そうだけど、家のこずずか、自分の手で぀くれるっおなんかいいなっお」

そう蚀っお笑う顔に、なんか安心した。

「自分の人生、自分で決めるっお、けっこう勇気いるよな」

その蚀葉が、䞍思議ず胞に染みた。

垰り道、私は封筒を砎っお、合栌通知を芋盎した。
その玙に、自分の気持ちは䞀文字も曞かれおいなかった。

倜、母に蚀った。

「進孊、やめる。
  ほんずにやりたいこず、芋぀けおからじゃだめかな」

䞀瞬、空気が止たった。
でも、母は黙っおうなずいた。

それでよかった。



桜が咲いた日。
制服のたた、私は就職先の子ども支揎斜蚭に挚拶に向かっおいた。

道の途䞭で芋䞊げた桜は、去幎より少しやさしい色に芋えた。

私はいた、自分の意志で歩いおいる。

䞍安もあるけど、
ちゃんず「自分の名前で遞んだ春」だった。

🎀終章あの倏を思い出す朝

âž»

芁玄

20歳になった楓。
結婚し、子どもが生たれ、静かな朝を迎える日垞。
ベランダで赀ちゃんを抱きながら朝日を芋おいるず、ふず高校時代の景色がよみがえる。
キャプテンを任された日。翌のLINE。りのの「赊」の䞀文字。
あのずきの䞍安も、涙も、今ずなっおは“生きる力”だったず思える。
過去の自分を責めるこずなく、抱きしめるように思い出す。
今ここにいるこの呜ず、自分自身の呜を芋぀めながら、
「ほんずうの自分に、あのずき蚱しおあげおよかった」ず静かに思う。

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心情

「ねえ、コヌヒヌ入ったよ」

翌の声が、台所のほうから聞こえおくる。
私は赀ちゃんを胞に抱いたたた、
小さなベランダで朝日を眺めおいた。

空はうっすらずオレンゞで、春の匂いがした。

20歳。
結婚しお、仕事も始たっお、
それなりに倧倉だけど、
それなりにしあわせ。

ずきどき思い出す。

キャプテンに掚薊されお戞惑った倏、
詊合に負けお泣いた日、
りのちゃんの「赊」ずいう字、
クリスマスの告癜。

どれも、ぜんぶ、
“いた”の私を぀くっおくれた時間だった。

だから思う。

ほんずうの自分に、あのずき、蚱しおあげおよかった――っお。

赀ちゃんが、眠そうに私の服を握る。
未来はきっず、倧䞈倫。

âž»

本線本文

春の朝は、やわらかい。
冷たすぎず、でも背䞭を少しだけ䌞ばしたくなる空気。

私はベランダに立ち、息子を胞に抱きながら、目の前の空を芋䞊げおいた。

翌がコヌヒヌを淹れる音が、台所から聞こえる。
豆を挜く音も、お湯を泚ぐ音も、もう聞き慣れた生掻の䞀郚になった。

20歳。

高校を卒業しお、それぞれの道を遞び、
䞀緒に暮らしはじめお、仕事も始たっお、
い぀のたにか“家族”になっおいた。

子育おは思ったより倧倉で、倜泣きも続いおいる。
でも、䞍思議ず苊じゃない。
疲れおいるはずなのに、朝はちゃんず目が芚める。

「なんでだろう」っお思うけど、
たぶん、“今の私”が、ちゃんず生きおいるからだず思う。



時々、ふず思い出す。
あの倏。

キャプテンに掚薊されお、戞惑っお、泣いお、
誰にも蚀えなかった倜。

翌から届いた短いLINE。
りのちゃんの「赊」の字。
倧䌚での悔し涙。
そしお、クリスマスの告癜。

たくさん揺れお、迷っお、泣いた。

でも今は、それ党郚が、
私の䞭で“生きる力”になっおいる。

あの頃の自分を、
もう責めなくおいいず思える。

あのずき、本圓は逃げたかった自分も、
誰にも蚀えずに泣いた自分も――
ちゃんず、がんばっおた。

だから、今こうしお、
この小さな呜を胞に抱けおいる。

息子の手が、私の服をきゅっず握る。

私はその小さな指を包みながら、
そっず぀ぶやいた。

「ほんずうの自分に、あのずき、蚱しおあげおよかった」

そしお、朝日に向かっお笑った。

未来は、きっず倧䞈倫。

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