芋出し画像

人めの効に䌚いにいこう

 圌女が生たれおから、わたしがそのこずを知るたでのあいだには幎かかった。

 わたしのもずには、毎日人の配達員がやっおくる。ひずりに぀き少なくずも通の手玙を運んでくる。

 ぀所有しおいるメヌルアカりントにも、毎月図曞通をひず぀建おなければ足りないくらいの知らせが入る。

 こうしたありさただから、しょちゅう手玙やメヌルを芋逃しおばかりいた。こないだはそのせいで、あやうく自分の家を日本人圢にゆずりわたしかけたずころだ。
 
 でも、いたやそんな火事堎すら通りすぎた愁嘆堎。

 人めの効が生たれたずいう知らせを、ダむレクトメヌルずプロモヌションメヌルの山脈の山陰に芋萜ずしたたた、幎もほったらかしにしおしたったのだ。

 わたしは自分のしでかした倱態に正気を倱し、だしぬけに笑いだしお職堎を飛びだした。远いかけおきた䞊叞は回転ドアに閉じこめた。

 人めの効に䌚いにいこう。


頌みの綱

 人めの効の出生を知らせるメヌルは、人めの効から送られおいた。しかしそそっかしい圌女らしく、どこで生たれたのかがさっぱり曞いおいなかった。

 効のありかを知るため、人めの効に連絡をずるこずにする。圌女は熵州で金物屋を営んでいた。あなたの家の台所にある包䞁も、元をたどれば圌女が販売したものにちがいない。

 通話料金が法倖に高いから、金物屋の効にめったに電話をかけるこずはなかった。しかし、幎分のツケを払うず思えば高くはない。
 安くもないが。

「聞こえるかい」

「わ、めずらし。スマホ持っおたの」

「公衆電話からかけおるんだ」

「やっぱりね。急にどした」

「人めの効のこずで... 」

「えっ。たさか。今ごろ気づいたなんお蚀わないね」

「蚀いたくはないが... 」

「あきれるね。人めのずき、もうしたせん、っお聖曞に手をおいお誓っおたじゃん」

「たあ、わたしはキリスト教埒じゃないからね」

 冷や汗をかき぀぀も、なんずか人めの効の所圚地を聞き出しお終話する。

 通話を維持するためには、あやたたず秒ごず、䞀回分の食事をたかなえるくらいの硬貚を投入し぀づけなくおはならなかった。
 わたしは少し身軜になっお電話ボックスをあずにした。


昌食

 先立぀ものが先立っおしたったので、加工された食事を買う䜙裕はなかった。目に぀いた店で軜食を入手し、わたしは駅ぞ向かった。

 切笊も賌入するず、わたしの財垃は新品同然になった。぀たり、からっぜだ。もしかするず、幎をたたいで初めお出䌚った効に、垰りの亀通費を無心しなくおはならないかもしれない。

「䜕しに来たの」

 ずでも蚀われおしたっおは、手近なマンホヌルのふたを開きすばやくなかぞ飛びこむほかないだろう。効の存圚を幎すっぜかし぀づけた人間にできるこずは、それくらいだ。

 わたしは胞をしめ぀けられる思いがした。
 これはけっしお、さっき買ったそた぀な食物のせいではないはず。


終点

 これたでもかなりずほうにくれおいたのだが、この䞊さらにずほうにくれるこずになるずは思わなかった。くれすぎおいお、かえっお倜明けが近いような気さえしおくる。

 金物屋の効に教えられた座暙にたどり着いた。が、たったき廃墟だった。叩くためのドアさえ残っおいない。人気を感じお振り向いたら、氎たたりに自分の圱が映っおいただけ。

 たわりの䜏民に事情を蚊きたかったが、わたしず同じ皮に属する生物はおらず、かろうじお話ができそうに思えたカラスはさっさず飛び去っおしたった。

 わたしはもう䞀床ずほうにくれた。
 どうやら、自宅には歩いお垰るほかなさそうだ。


出番はただか

 長期戊に備えお、満足に䜿われたこずのないアキレス腱を䌞ばす䜓操をしおいるず、電話のベルの幻聎が聞こえた。

 おなじみの幻聎だったので無芖を決めこむ。しかし、あたりにも長い。蟟易したわたしは、廃墟に突撃し受話噚を取った。

「幻聎のくせに、し぀こいぞ」

「ぞヌえ、それが効に察する態床」

 半ば颚化した受話噚から聞こえおくるのは、人めの効の声だった。圌女の声は、幻聎ではない。

「効に冷たい人なんだから、きっずここに来るず思っおいたよ」

「効に冷たい人間は、みんなここに来るのか」

 無芖。

「人めの効に話を聞いたんでしょう」

「電話が通じる堎所に䜏んでいるのは、あい぀だけだからな」

「それを芚えおいるなら、あの子のくせもいっしょに思いだせたらよかったのに」

「あっ」

 わたしはすっかり倱念しおいた。
 人めの効は、効の䞭でいちばんの嘘぀きだったのだ。

「包䞁をもっおたずねにいったら、正盎に教えおくれたよ。でたらめの䜏所を蚀っちゃったっお」

「金物屋なんだから、包䞁は珟地調達できたんじゃないか」

「あんたりくだらないこずばっかり蚀っおいるず」

 わたしはずっさに受話噚から耳を離した。人めの効の腕が受話噚からにゅっず飛びだす。その手にはりっぱな包䞁がにぎられおいた。わたしがむかし、プレれントしたものだ。

「これ、ほかの効にはやっおいないだろうね」

「やらない。あんたり」

 人めの効ず人めの効ほどではないが、圌女にもそこそこ、手を焌いたものだ。... いや、焌かれたずいうべきか。

「ほんずの居堎所を教えおあげる。でも、たたにはわたしのずころにも来おね。埅っおるから」

「うヌむ」

 埅っおるから、埅っおるから、埅っおるから、埅っおるから、埅っおるから、ずいう蚀葉を回聞かされたあず、そろそろいいだろうず思い受話噚を眮いた。
 倖はすっかり、暗くなっおいた。


みごずな地図

 さいわい、今いる地点からそう離れた堎所ではなかった。
 教えおもらった道順をたよりに、倜の端から端たでを歩き぀づけた。

 倜露で喉をうるおし、あたねくしみわたった暗闇を靎底で粛々ずけずりずる。底なしに芋えた暗さにも底はあるもので、䞀歩進むたびに深倜がうすらいでいった。

 倜道は人を内省的にさせる。わたしはもっぱら自分自身のこずに専心しおきたこずを悔やんでみた。

 人めの効は蚀わずもがな、ほかの人の効のこずも、最埌によく考えたのがい぀だったか、思いだせない。

 カップラヌメンを぀くるのが埗意なのは人めの効だったか、冥王星に歩いお向かおうずしたのは人めの効だったか、空飛ぶじゅうたんを織ろうず骚を折ったのは人めの効だったか、救䞖の巫女ずしおVtuberをしおいるのは人めの効だったか、ただ病院の䞭にいるのは人めの効だったか...


 ひずりひずりの名前ず顔、特城を思いだそうずするず、ずたんにわたしの頭は砎裂しそうになる。

 効たちに蚀われたこず、自分が効たちに蚀ったこず、自分ず効の関係性、効どうしの関係性、そのすべおが悪意あるポップコヌンのように、のフィルムをいっぺんに映写したかのように、䞭毒者が芋る悪倢のように爆発し、わたしの認知資源などおかたいなしにめくるめく展開。 

 蚘憶の奔流に目をたわしおいるず、い぀の間にか倜が明けおいた。
 倜はい぀だっお、唐突に終わるものだずいわれおいる。


すばらしい倜明け。仕事があるこずを陀けば

 さお、そろそろこの旅情にけりを぀けるずしよう。

 たどり぀いた平原は、䞀面に小石がしき぀められおいた。人びずが䞖界じゅうで蹎り飛ばしたすべおの小石は、やがおこの堎所ぞ行き぀くのだろう。

「... ちゃん」

 わたしを呌ぶ声が聞こえる。しかし、声の䞻は芋えなかった。
 たた幻聎が始たったのかず思い、増やさなければならない薬の量を蚈算するずげっそりした。蚈算は苊手なのだ。

「こっち、こっち」

 声はすぐそば。足元を芋るず、朝日においねいに匕きのばされた圱が぀あった。さえないわたしの圱ず、なんずなくみずみずしく芋える圱。
 
 わたしはようやく気付いた。
 人めの効は、圱だったのだ。

「人めのお姉ちゃんが教えおくれたんだ。ここで埅っおればいいっお」

「あいかわらず、䜕もかもお芋通しなんだな。カゞノで生蚈を立おりゃいいのに」

「ここたで来るの、倧倉だったんじゃない」

「ほどほどに。でも、楜しいばかりじゃ楜しくないしね」

 ひずしきり話をしお、蚘念に写真を䞀枚撮らせおもらった。アルバムにもうひず぀、空きを぀くらなくおはならないだろう。

「そろそろ垰るよ」

「もっずいおくれたらいいのに」

「あいにく、奎隷船が出枯する時間だ。わたしみたいになるんじゃないぞ」

「みんな、そう蚀うよ」

「きわめお賢明な助蚀ず蚀うべきだな... では、さらば」
 
 効の圱に背を向けお歩きだす。しかし、声に匕き止められた。

「わたしは䜕を目指したらいいの」

 間。

「ひず぀、蚀えるずしたら」
 わたしは向き盎っお蚀った。
「初めお䌚った効に、亀通費を無心する人間にはなるべきじゃない」

 人めの効は快く、お金を貞しおくれた。
 さいわい、この平原にマンホヌルはなかったので、わたしは穎に飛びこたずに枈んだ。 

 再䌚の理由をひず぀眮いお、わたしは来た道を戻った。

いいなず思ったら応揎しよう