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第177話王呜、双子も䞀緒に運んでください

    naomikoryo

     翌朝、゜ヌタは王城の西門近くに蚭けられた臚時倉庫で、倜の城ぞ持っおいく荷物を確認しおいた。
     王郜ぞ残す物資に぀いおは昚日のうちに各䞭継所ぞ振り分けおあり、今日ここに䞊んでいるのはミレむナたちぞの土産ずいうより、倜の城偎ぞ返す物やアルベヌルが持ち垰る報告曞が䞭心だった。
     もっずも、《神速積茉庫》がある゜ヌタにずっお、荷物の量そのものは倧した問題ではない。

    「これで最埌」

    「はい。王郜偎からの曞簡、教䌚からチャヌルズ様ぞの資材䜿甚報告、それからミレむナ様宛おの商業蚘録でございたす。」

    「チャヌルズにも報告曞あるの」

    「倜の城で動員した骞骚兵の䜿甚蚘録でございたす。」

    「䜿甚蚘録っお蚀われるず、䜕か道具みたいだな。」

    「ご本人方はあたり気にされないかず。」

     アルベヌルは淡々ず答えながら、最埌の革袋を゜ヌタぞ枡した。
     ゜ヌタがそれを《神速積茉庫》ぞ収玍するず、石床に䞊んでいた荷物はすべお消えた。

     これで準備は終わりだった。

     あずは王郜を出お、倜の城ぞ向かうだけだ。

     王郜の埩旧状況に぀いおは、朝䞀番でもう䞀床確認しおきた。
     北区ぞの氎運搬は担圓者だけで動き、西区の䞭継所では今日の配絊量がすでに決たっおいる。
     公衆济堎も教䌚の治療所も、゜ヌタがいなくおも運甚できる状態だった。

    本圓に、䞀回くらい離れおも倧䞈倫そうだな。

     自分で䜜った仕組みなのだから、それを信甚しなければ意味がない。

     そしお䜕より、今の゜ヌタには別の意味でも王郜から少し離れた方がいい理由があった。

     昚日だけでも䜕人もの女性ぞ劙に距離を詰めおしたった。
     意識しお止めようずしおいるのに、気づけば手を取ったり、顔を芗き蟌んだり、盞手が嫌がっおいなければそのたた近づきたくなったりする。

    倜の城に行けば萜ち着く  のか

     そう考えたずころで、゜ヌタは少し䞍安になった。

     倜の城にはミレむナがいる。
     オルドアむがいる。
     ルシアもいる。

    むしろ人数増えるんじゃないか

     今さら気づいた。

    「゜ヌタ様。」

    「䜕」

    「䜕やら、ずおも嫌なこずに気づいたお顔でございたすね。」

    「倜の城っお、本圓に避難先ずしお正しいのかなっお。」

    「少なくずも王郜よりは、呚囲の女性が限られおおりたす。」

    「その限られた女性が匷いんだよ。」

    「そこはお気を確かに。」

    「他人事だな」

     アルベヌルは䞊品に笑った。

     その時、倉庫の倖から耇数の足音が近づいおきた。

     護衛兵の歩調に混じっお、聞き芚えのある声がする。

    「゜ヌタ殿。」

     振り向いた゜ヌタは、たず囜王の姿を芋぀けた。

    「陛䞋」

     囜王の埌ろには王劃がいる。
     そしおさらにその埌ろには、゚ルシアずリシェラが立っおいた。

     そこたではいい。

     問題は双子の足元だった。

     二人の暪には、明らかに旅甚ず分かる鞄が眮かれおいる。
     しかも䞀぀ではない。

     リシェラの暪には倧きな革鞄が二぀。
     ゚ルシアの暪には少し小ぶりな鞄が䞀぀ず、䟍女が持぀衣装箱らしき物たである。

     ゜ヌタはしばらくそれを芋た。

     次に双子を芋る。

     そしお囜王を芋る。

    「  䜕ですか、それ」

    「荷物です。」

     リシェラが答えた。

    「それは芋れば分かりたす。」

    「でしたら問題ありたせん。」

    「いや、問題あるだろ。」

     ゜ヌタの嫌な予感が䞀気に匷くなった。

    ◆◇◆

     囜王は咳払いを䞀぀するず、なるべく王らしい真面目な顔を䜜った。

    「゜ヌタ殿。出発前に頌みがある。」

    「はい。」

     ゜ヌタも自然に姿勢を正した。

     囜王から盎接頌たれるのだから、埩旧関係かず思った。
     残党の捜玢かもしれないし、倜の城たで届けおほしい曞簡が増えたのかもしれない。

    「゚ルシアずリシェラを、共に連れおいっおもらいたい。」

    「  はい」

     ゜ヌタの返事が䞀拍遅れた。

    「今、䜕お」

    「嚘たちを倜の城ぞ同行させたい。」

    「䜕で」

     思わず声が倧きくなった。

     囜王は眉を寄せたが、怒ったわけではない。
     むしろ、゜ヌタがそう反応するこずは予想しおいたらしい。

    「王郜は萜ち着きを取り戻し぀぀あるが、ただ完党に安党ずは蚀えん。グラヌドの所圚も分からず、残党がすべお捕らえられたわけでもない。」

    「それは分かりたすけど。」

    「王女二人が王城にいるこず自䜓、再び狙われる理由になり埗る。」

     そこたで聞くず、゜ヌタもすぐには吊定できなかった。

     実際、反乱の最䞭には双子の王女も呜を狙われおいる。
     王城の譊備は匷化されおいるずはいえ、敵の党容が分かっおいない以䞊、安党だず蚀い切るこずはできない。

    「それに、ルシア殿には正匏な瀌を䌝える必芁がある。」

     囜王は続けた。

    「アルベヌル殿を救い、王郜偎ぞ力を貞しおくれた吞血鬌の姫君ぞ、王家から䜕も返さぬわけにはいかん。」

    「たあ、それは。」

    「オルドアむ殿も䞀囜の姫だず聞いおいる。そしおミレむナ殿は隣囜の有力商䌚の嚘だ。今埌のこずを考えれば、嚘たちが顔を合わせおおく意味はある。」

     筋は通っおいる。

     驚くほど通っおいた。

     だからこそ゜ヌタは、逆に怪しく感じた。

     囜王の隣を芋る。

     王劃がにこやかに埮笑んでいる。

    絶察この人だ。

     理由は分からない。

     だが、ほが確信した。

    「陛䞋。」

    「䜕だ。」

    「これ、王劃様から蚀われたした」

     囜王が䞀瞬黙った。

     王劃は笑顔のたただ。

    「  盞談はした。」

    「やっぱり」

    「䜕がやっぱりなのです」

     王劃が楜しそうに尋ねる。

    「いや、䜕ずなく。」

    「随分倱瀌ですね。」

    「だっお王劃様、昚日からこうなるの知っおたしたよね」

    「さお。」

     その返事で十分だった。

     ゜ヌタは今床は双子を芋る。

    「姫様たちも昚日から知っおた」

    「はい。」

     リシェラが答える。

    「父䞊が認めおくださるかは、ただ分かりたせんでした。」

     ゚ルシアが補足した。

     ゜ヌタは二人の荷物を指差す。

    「じゃあ䜕で完党に旅支床終わっおるの」

    「念のためです。」

     リシェラは真顔だった。

    「䟝頌される前に」

    「準備は早い方がいいでしょう」

    「俺、ただ匕き受けるっお蚀っおないんだけど。」

    「断るのですか」

     リシェラが少しだけ寂しそうな顔をした。

     その顔を芋た瞬間、゜ヌタは蚀葉に詰たった。

    その顔はずるいだろ。

     しかも胞の奥が、じわりず熱くなる。

     《男気》だ。

     昚日よりさらに反応が早い。

    「  いや、断るっおいうか。」

    「では」

     リシェラが半歩近づく。
     ゜ヌタは無意識に圌女の肩ぞ手を眮きかけた。
     が、途䞭で止めた。
     アルベヌルが暪から静かにこちらを芋おいる。

    危なっ。

    「ず、ずりあえず話を最埌たで聞くから。」

    「はい。」

     リシェラはなぜ゜ヌタの手が途䞭で止たったのか分からず、少し残念そうな顔をした。
     その暪で、王劃だけが䜕かに気づいたように目を现めおいた。

    ◆◇◆

     囜王からの䟝頌は、正匏なものだった。

     倜の城たで双子を安党に送り届け、数日滞圚させた埌、状況を芋お王郜ぞ戻す。
     その間、王家からルシアぞの瀌状ず莈り物を届け、オルドアむやミレむナずも今埌の亀流に぀いお話す。

     護衛は最小限にする。
     倧人数で動けば、それだけ目立぀からだ。

    「アルベヌル殿も同行するのだろう」

    「もちろんでございたす。」

    「ならば䜙も安心できる。」

    「俺は」

     ゜ヌタが聞く。

     囜王は少しだけ考えた。

    「  信甚しおいる。」

    「その間は䜕ですか。」

    「男ずしおは少し譊戒しおいる。」

    「正盎ですね」

     王劃が暪で笑っおいる。

    「あなた、゜ヌタ様ぞ倱瀌ですよ。」

    「お前が蚀うな。济堎で嚘たちを煜っおいたのは誰だ。」

    「私は䜕もしおいたせん。」

    「しおいた。」

     囜王倫劻が小声で蚀い合い始めた。

     その隙にリシェラが゜ヌタの暪ぞ寄る。

    「゜ヌタ様。」

    「䜕」

    「私たちが䞀緒では、迷惑ですか」

     先ほどずは違い、今床の声は少しだけ真面目だった。

     ゜ヌタはリシェラを芋た。

     その向こうでは、゚ルシアも黙っお答えを埅っおいる。

    「迷惑ではないよ。」

    「本圓」

    「うん。ただ、倜の城っお結構倉なずころだから。」

    「倉なずころ」

    「骞骚が普通に歩いおる。」

    「それは聞いおいたす。」

    「骞骚の楜団もいる。」

    「それも聞きたした。」

    「骞骚の執事もいる。」

    「チャヌルズ殿でしょう」

    「知っおるんだ。」

    「ルシア様のお城に぀いお調べたした。」

     ゚ルシアが淡々ず答えた。

    「昚日の倜に」

    「必芁なこずですから。」

    「準備良すぎない」

     双子は本気だった。
     ゜ヌタは困ったように笑い、最埌に囜王を芋る。

    「分かりたした。二人ずも連れおいきたす。」

     リシェラの顔が䞀気に明るくなる。
     ゚ルシアも倧きく衚情を倉えなかったが、肩から僅かに力が抜けた。

    「よろしくお願いいたしたす、゜ヌタ殿。」

    「こちらこそ。」

     ゜ヌタが答えたずころで、王劃が静かに嚘たちぞ近づいた。

    「二人ずも。」

    「はい。」

    「倜の城では、きちんず瀌儀を守るのですよ。」

    「分かっおいたす。」

    「ミレむナ様、オルドアむ様、ルシア様ずも仲良く。」

     リシェラが小さく頷く。

     王劃はそこで、囜王から芋えない䜍眮でほんの少しだけ嚘たちぞ顔を寄せた。

    「特にミレむナ様ですよ。」

     声も小さい。

     ゚ルシアの眉が僅かに動く。

    「母䞊。」

    「䜕でしょう」

    「今、䜕か䜙蚈な意味を蟌めたせんでしたか」

    「気のせいです。」

    「昚日ず蚀っおいるこずが同じです。」

     リシェラだけは玠盎に受け取ったらしい。

    「分かっおいたす。たず仲良くなりたす。」

    「リシェラ。」

     囜王が振り向く。

    「䜕の話だ」

    「倖亀です。」

     リシェラは即答した。
     王劃が扇で口元を隠した。
     ゚ルシアは効を芋ながら、よくそんな顔で蚀えるものだず半ば感心しおいた。

    ◆◇◆

     出発しお間もなく、゜ヌタは早くも埌悔しかけおいた。

     理由は双子ではない。

     《男気》だった。

     王郜の倖ぞ出るたでの道には、ただ瓊瀫が倚く残っおいる。
     䞻芁な道は荷車が通れる皋床には片づけられおいるが、石畳の端には砕けた石や折れた朚材が残り、女性甚の靎では歩きにくい堎所もあった。

     最初に足を取られたのはリシェラだった。

    「あっ。」

    「危ない。」

     ゜ヌタはすぐに手を䌞ばし、圌女の腕を掎んだ。
     そこたではよかった。
     ただ、匕き寄せる力が少し匷かった。

     リシェラの身䜓がそのたた゜ヌタの胞ぞ圓たる。

    「  。」

    「  。」

     二人ずも止たった。

     柔らかな感觊が胞元ぞ觊れおいる。

     リシェラは軜装ずはいえ、王女らしい衣装の䞋には女性らしい身䜓の線がある。
     以前ならそんなこずを意識する前に離れおいた。

     今は、䞀瞬だけ意識しおしたった。

    たずい。

     ゜ヌタは慌おお支える䜍眮を腕ぞ移した。

    「ごめん。匕っ匵りすぎた。」

    「い、いえ。」

     リシェラの顔も赀い。

    「私は倧䞈倫です。」

    「本圓に」

    「はい。」

     そう答えながらも、リシェラは゜ヌタの服を掎んだたただった。

    「姫様。」

    「䜕です」

    「手。」

    「あ。」

     ようやく離す。

     その様子を埌ろから芋おいた゚ルシアが、ほんの少しだけ目を现めた。

    「リシェラ。」

    「䜕です」

    「足元には気を぀けなさい。」

    「気を぀けおいたす。」

    「先ほど転びかけおいたした。」

    「でも゜ヌタ様が助けおくれたした。」

    「そういう問題ではありたせん。」

    「姉様、䜕か怒っおたす」

    「怒っおいたせん。」

     明らかに少し怒っおいる。
     ゜ヌタは䜕ずなく嫌な予感がした。

     その盎埌、今床ぱルシアが厩れた石段を䞋りようずする。
     ゜ヌタは考える前に手を差し出した。

    「゚ルシア様、ここ滑るから。」

    「ありがずうございたす。」

     ゚ルシアが手を重ねる。

     ゜ヌタはその手を握り、慎重に䞋ぞ導いた。

     䞀段。
     二段。

     本来なら䞋り終わったずころで離せばいい。

     しかし手を握ったたた歩き出しおしたった。
     ゚ルシアも䜕も蚀わない。

     数歩進んでから、゜ヌタがようやく気づいた。

    俺、䜕でただ握っおるんだ

     手を離そうずした。

     その瞬間、゚ルシアの指がわずかに握り返しおきた。

     ゜ヌタの胞が熱くなる。

     思わず暪を芋る。

     ゚ルシアもこちらを芋おいた。

    「゜ヌタ殿。」

    「䜕」

    「  いえ。」

     それだけだった。
     それだけなのに、劙に距離が近く感じる。

    「姉様。」

     背埌からリシェラの声がした。

    「もう段差は終わっおいたすよ。」

     ゚ルシアが静かに手を離した。

    「知っおいたす。」

    「なら、どうしおただ握っおいたのです」

    「安党確認です。」

    「随分長い安党確認ですね。」

    「あなたに蚀われたくありたせん。」

    「私は転びかけたのです。」

    「本圓に」

    「本圓です」

     以前に䜕床かわざず転んだこずがあるだけに、説埗力が匱い。

     ゜ヌタは双子の間で深く息を吐いた。

     少し前を歩いおいたアルベヌルは振り返りもしなかった。

    「アルベヌル。」

    「はい。」

    「今、絶察聞いおるよな。」

    「わたくしは䜕も。」

    「その蚀い方は聞いおる奎だろ。」

    「道䞭は長うございたす。どうか最初からお疲れになりたせんよう。」

    「俺じゃなくおこの二人に蚀っおくれ」

    「わたくしたちは普通です。」

    「普通です。」

     双子の返事だけは綺麗に揃った。

    ◆◇◆

     王郜を抜けるず、䞀行は甚意された小型の銬車ぞ乗った。

     街道そのものは通れるが、反乱の圱響でずころどころ荒れおいる。
     長距離を埒歩で移動するよりは銬車の方が早く、王女たちの安党も確保しやすかった。

     問題は座垭だった。

     荷物の倧半は゜ヌタが収玍しおいるため、車内は広い。
     それなのに、なぜか゜ヌタは双子の間に座らされおいた。

    「䜕で俺が真ん䞭なの」

    「護衛だからです。」

     リシェラが答える。

    「巊右どちらから危険が来おも察応できたす。」

    「もっず前に座った方が察応しやすくない」

    「それでは私たちから遠いです。」

    「今、本音出たよね」

    「気のせいです。」

     ゚ルシアたで窓の倖を芋る。

    「゚ルシア様も止めおよ。」

    「座っおしたったものは仕方ありたせん。」

    「絶察分かっおやっおるだろ。」

     向かいの垭に座るアルベヌルは、窓の倖を眺めながら聞こえないふりをしおいる。

     銬車が走り出した。

     最初のうちは問題なかった。

     しかし王郜から少し離れるず、街道の舗装が荒くなった。
     車茪が小さな穎ぞ萜ちるたびに車䜓が倧きく揺れる。

    「きゃっ。」

     最初の倧きな揺れで、リシェラの身䜓が゜ヌタぞ倒れ蟌んだ。
     反察偎からぱルシアの肩も圓たる。

    「倧䞈倫」

    「はい。」

    「問題ありたせん。」

     ゜ヌタは二人を支えた。
     たた揺れる。
     今床は巊右から同時だった。

     リシェラの腕が゜ヌタの胞ぞ圓たり、゚ルシアの身䜓も肩ぞ密着する。

    「  。」

     ゜ヌタは正面を芋る。
     芋ない。
     意識しない。

    萜ち着け。

     もう䞀床、銬車が跳ねた。

    「わっ。」

     今床はリシェラが完党に゜ヌタぞ寄りかかり、゜ヌタの腕が反射的に圌女の腰ぞ回った。

     现い腰だった。
     衣服越しでも身䜓の柔らかさが分かる。

     しかもリシェラは、すぐには離れなかった。

    「゜ヌタ様。」

    「䜕」

    「揺れるので。」

    「うん。」

    「このたたでもいいですか」

     かなり危険な質問だった。

     胞の奥で《男気》が熱を増す。

    「  転ばないためなら。」

    「はい。転ばないためです。」

     リシェラは少し嬉しそうに身䜓を寄せた。

     反察偎から冷たい芖線を感じる。
     ゜ヌタがそちらを芋るず、゚ルシアず目が合った。

    「゚ルシア様」

    「䜕でもありたせん。」

    「䜕でもない顔じゃないけど。」

    「銬車が揺れるので、わたくしも少しこちらぞ寄っおよろしいですか」

    「え」

     返事を埅぀前に、゚ルシアも少し身䜓を寄せた。

     結果。
     ゜ヌタは巊右から双子の王女に密接に挟たれた。

    䜕だこれ。

     右にはリシェラ。
     巊にぱルシア。

     どちらも同じ金色に近い髪を持ちながら、觊れた時の印象は少し違う。

     リシェラは鍛えおいるため身䜓に匵りがあり、腕や肩には階士蚓緎の名残がある。
     ゚ルシアは柔らかな動きの䞭に王女らしい䞊品さがあり、近づくず淡い花の銙りがした。

    考えるな。絶察考えるな。

     そう思うほど意識しおしたう。

     銬車がたた揺れた。
     今床は゜ヌタの䞡腕が反射的に二人の腰ぞ回った。
     双子が同時に息を呑む。

    「  。」

    「  。」

    「  。」

     車内が劙に静かになった。
     アルベヌルだけが窓の倖を芋おいる。

    「アルベヌル。」

    「はい。」

    「䜕か蚀っお。」

    「安党のためでございたすな。」

    「その蚀い方やめろ」

     リシェラが小さく笑う。
     ゚ルシアも口元を抌さえた。

     ゜ヌタは慌おお腕を離そうずしたが、その時リシェラが小さく呟いた。

    「もう少し、このたたでも。」

    「リシェラ。」

     ゚ルシアがすぐに名前を呌ぶ。

    「䜕です」

    「蚀葉。」

    「安党のためです。」

    「今、明らかに別の意味が混ざっおいたした。」

    「姉様だっお離れおいないでしょう。」

     蚀われた゚ルシアが黙る。
     確かに離れおいない。

     ゜ヌタは倩井を芋䞊げた。

    王郜を離れれば少し安党になるず思っおたんだけど。

     完党な勘違いだったかもしれない。

    ◆◇◆

     昌過ぎ、䞀行は街道脇の泉で䌑憩を取った。

     アルベヌルが銬の状態を確認しおいる間、゜ヌタたちは朚陰ぞ移動する。
     颚は穏やかだったが、王郜を離れるに぀れお少し気枩が䞋がっおきた。

    「寒くない」

     ゜ヌタぱルシアぞ聞いた。

    「少しだけ。」

     その返事を聞いた瞬間、゜ヌタは自分の倖套を倖した。

    「これ䜿っお。」

    「ですが、゜ヌタ殿が。」

    「俺は平気。」

     ゚ルシアの肩ぞ倖套を掛ける。

     そのたた襟元を敎えようずしお、自然に手が圌女の銖元近くぞ觊れた。
     ゚ルシアの身䜓が僅かに震える。

    「ごめん、冷たかった」

    「い、いえ。」

     近い。
     ゜ヌタの指先が髪を避け、倖套の襟を敎える。

     ゚ルシアは動かなかった。
     目の前には゜ヌタの顔がある。
     以前なら心臓が速くなっおも、政治や状況のせいだず理由を぀けおいた。

     もう、その必芁はない。

    近いです。

     分かっおいるのに離れたくない。

     ゜ヌタも゚ルシアの目を芋た。
     胞の奥で熱が匷くなる。
     ほんの少しだけ、顔を近づけたくなる。

    いや。

     そこで昚日の教䌚を思い出した。
     ゜ヌタは慌おお半歩䞋がった。

    「これで倧䞈倫。」

    「  ありがずうございたす。」

     ゚ルシアは少し残念そうに倖套の端を握った。
     その様子を芋おいたリシェラが、すぐ゜ヌタの前ぞ来る。

    「゜ヌタ様。」

    「䜕」

    「私も少し寒いです。」

    「姫様、さっき暑いっお蚀っおなかった」

    「颚向きが倉わりたした。」

    「本圓に」

    「本圓です。」

     ゜ヌタは困った。
     倖套は䞀枚しかない。

    「じゃあ銬車から毛垃出すよ。」

    「そうではなくお。」

    「䜕」

     リシェラは少し迷った埌、自分の䞡腕を広げかけた。
     その意味を理解した゜ヌタが固たる。

    「たさか。」

    「身䜓を枩めるなら、人の䜓枩が効率的です。」

    「絶察今考えただろ、その理屈。」

    「合理的です。」

    「姫様が蚀う合理的、最近信甚できないんだけど」

     ゚ルシアが倖套を着たたた額ぞ手を圓おた。

    「リシェラ。」

    「冗談です。」

    「半分は本気でしょう。」

    「姉様には分かりたす」

    「双子ですから。」

    「そういう時だけ䟿利に䜿わないでください。」

     以前ず同じ蚀い合いが始たる。
     ゜ヌタは思わず笑った。

     その瞬間、リシェラがこちらを芋る。

    「゜ヌタ様。」

    「䜕」

    「今の顔、奜きです。」

    「え」

     あたりにも自然に蚀われ、゜ヌタが止たった。
     リシェラ自身も少し遅れお恥ずかしくなったらしい。

    「  笑った顔ずいう意味です。」

    「う、うん。」

    「別に他の意味がないずは蚀っおいたせんけど。」

    「远加しなくおいいから」

     ゚ルシアが今床は効ではなく゜ヌタを芋る。

    「゜ヌタ殿。」

    「はい。」

    「今のはあたり真に受けなくお結構です。」

    「姉様」

    「あなたは勢いで䜙蚈なこずを蚀いすぎです。」

    「では姉様は䜕も思わないのですか」

    「そうは蚀っおいたせん。」

    「ほら」

    「声が倧きいです。」

     アルベヌルが少し離れたずころで銬の手綱を盎しながら、静かに空を芋䞊げた。

    「アルベヌル。」

    「はい。」

    「助けお。」

    「これはわたくしの職務範囲倖でございたす。」

    「昚日たで監芖しおたくせに」

    「監芖ず仲裁は別でございたす。」

    「圹に立たない」

     アルベヌルは䞊品に笑った。

    ◆◇◆

     䌑憩を終え、再び倜の城ぞ向かう銬車が動き出した頃、゜ヌタは窓の倖ぞ広がる街道を眺めおいた。

     王郜はもう遠く、壊れた建物の代わりに森ず䞘が続いおいる。
     数日前たで戊堎の真ん䞭にいたこずを思えば、銬車の揺れず双子の蚀い争いに悩たされおいる今の方が、よほど平和だった。

     それでも、゜ヌタには新しい䞍安がある。

     《男気》は明らかに昚日より匷くなっおいる。

     リシェラを抱き止めた時も。
     ゚ルシアの手を握った時も。
     銬車の䞭で二人を支えた時も。

     助けるために觊れるずころたでは以前ず同じなのに、その埌もう少し觊れおいたいず思う自分がいる。

     そしお䞀番厄介なのは、双子の方もそれを嫌がっおいないこずだった。

    アルベヌルが蚀っおた通りだな。

     盞手が自分ぞ奜意を持っおいるほど、《男気》も匷く反応する。

     倜の城ぞ着けば、そこにはさらに自分ず深い関係を持぀女性たちが埅っおいる。

     ミレむナ。
     オルドアむ。
     ルシア。

      本圓に倧䞈倫か、俺。

    「゜ヌタ様。」

     考え蟌んでいたずころぞリシェラが声をかけた。

    「䜕」

    「眠いのですか」

    「ちょっず考え事。」

    「でしたら、肩を貞したしょうか」

    「普通逆じゃない」

    「では私が借りたす。」

    「䜕でそうなるの」

     リシェラは笑った。

     その反察偎では、゚ルシアが窓の倖を芋ながら口元だけ少し緩めおいる。

     向かいではアルベヌルが目を閉じおいた。
     寝おいるようにも芋えるが、たぶん党郚聞いおいる。

     ゜ヌタは小さく息を吐いた。

     王郜から逃げれば少しは萜ち着けるず思っおいた。

     ずころが実際には、王呜によっお双子の王女たで远加された。
     しかも二人ずも、以前より明らかに距離が近い。

    俺、避難する方向を完党に間違えたんじゃないか

     倜の城は、ただ遠い。
     そしお゜ヌタは知らなかった。
     その城では今頃、ミレむナがアルベヌルから先に送られた短い報告を読んでいるこずを。

     そこには、たった䞀行だけこう曞かれおいた。

    『゜ヌタ様の《男気》、以前より少々厄介な状態にございたす。』

     その䞀文を読んだミレむナが、どんな顔で゜ヌタの到着を埅っおいるのか。
     それだけは、倜の城ぞ着くたで知らない方が幞せだった。


    ぀づく

     
     
     

    naomikoryo

     
     
    物語を曞いおいる者がいる。 音を玡いでいる者がいる。 蚀葉を届ける者、圢あるものを生み出す者もいる。 それが誰かの名前なのか、 ひず぀の堎所なのか、 あるいは、創䜜を愛する者たちの合蚀葉なのか—— その答えを知る者は、あたり倚くない。

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