六月の煮こごり 〈#07. 煮込み〉
月日を遡る。
六月十七日、月曜日。
沙知は昼前に買い出しに出た。
スーパーまで歩いて十分。
バッグに財布と、エコバッグ二つ。
レジで打ってもらったとき、レシートを確認した。
「6/17(月)11:42」
いつもより人が多かった。
精肉コーナーで三人の主婦が固まっていた。
「まだ見つかってないんだって、残りの部分」
沙知は足を止めた。
「どこにあるんだろうね」
「川に流したんじゃないかな」
一人が笑いながら言った。
「どっかの店の煮込みにでも入ってるんじゃない」
沙知は棚を見ていた。
豚レバーを手に取った。
「あははは」と誰かが笑った。
「でも実際さ」と別の声。「処理ってどうするんだろ。肉だもんね、結局」
一人が「もう止めて」と言いながら嘔吐いた。
「現実的じゃない話やめなよ」
沙知が言った。
皆が振り向いた。
沙知は笑っていなかった。
「笑えないから」
その夜の仕込みで、沙知は煮込みの鍋をかき混ぜた。
おたまが、重くなった。
底に何かが当たった。
硬いもの。
骨ではない、感触だった。
おたまを止めた。
もう一度、ゆっくりかき混ぜた。
何も当たらなかった。
おたまを置いた。
鍋を、見なかった。