
祝辞 全文
ただいまご紹介にあずかりました、フクヤマと申します。
ユタカさん、ミオさん、ご結婚おめでとうございます。また、ご両家の皆様にも心よりお祝い申し上げます。
私は、新郎新婦ともに面識が一切ありません。
面識とは、互いに相手の顔や人となりを見知っていること、または顔見知りであることを指します。
本日朝、私はお二人に「はじめまして」とごあいさつしました。それでも本日この場でスピーチをしておりますので、精一杯務めさせていただきます。このスピーチのお願いがきたのは、おそらく皆さまに招待状が送られたのと同じタイミングだと思います。知らない名前の並んだ手紙が届き、しかも読むと結婚式のスピーチのお願いをされている。あて先はたしかに自分の名前、フクヤマ様と書いてある。けれど、何かの間違いかと思って書いてあった連絡先に連絡しましたが、間違っていないと。私で間違いないんだと。そう答えられてしまっては断るわけにはいきません。「結婚式 スピーチ」で何度検索したか。でもどこのサイトも”友人代表”とか”幼馴染”とかの関係値マックスの人ばかりの例文を提示してきます。AIにも相談しました。「新郎新婦と面識がない状態で結婚式のスピーチを頼まれました」と入力したところ、「そのような状況は一般的ではありません」と返され、話になりません。
ここにいる皆さまは、すでにお二人との関係を築いています。私だけが、今から築くことができます。スピーチが大トリであれば、もっとお二人のことを知ったうえでお話しできたのですが。あいにくトップバッターを務めることになったので、現時点で分かる範囲でお話しします。
ユタカさん、趣味はなんですか?
釣り、ですか。いいですね。本日私が得た情報の中では、最も水辺です。捌くことは?できる。安心ですね。食卓に並ぶのが楽しみです。
ミオさんの趣味はなんですか?
アクセサリー作り。本日私が得た情報の中では、最もキラキラしています。器用なんですね。あ、今日身に着けているものもご自分で。なるほど。おそろいのネックレスも手作りですか。違う。それは購入した。失礼しました。まだお二人との関係が浅いため、判別を誤りました。
新郎新婦について詳しい方はいらっしゃいますか。
ありがとうございます。たくさん手が挙がりますね。さすがです。後ほど伺います。
私はいまだに、なぜ自分が選ばれたのか知りません。ご存じの方は、このあと教えてください。ただ、私の名前はフクヤマです。福の山と書きます。結婚式との相性は悪くないと思います。招待状を受け取ったときは、何かの間違いだと思いました。ですが今は、そうでもなかったのかもしれません。私で間違いなかったのかもしれません。
お二人の末永いお幸せをお祈りして、私からのお祝いの言葉とさせていただきます。