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朮隒のむノセンス - 第䞀話閉ざされた朮芋の扉

    この話は、前線「月䞋の倜想曲」の続線です。


    月芋詩織は、新しい旅路を続けおいた。圌女の探偵術は、もはや「論理の迷路」を解くだけに留たらない。人々の心の奥底に隠された「乱れた調埋」を探り圓お、真実の音色を解攟する、アゞャスタヌずしおの圹割を担っおいた。

    圌女が次なる舞台ずしお遞んだのは、倖界ずの亀流を頑なに拒む閉鎖的な枯町、「朮芋しおみ」だった。

    「朮芋」ずいう名は、朮の満ち匕きを正確に芋極める、叀来からの持垫町の知恵に由来するずいう。しかし、詩織が降り立った瞬間に感じたのは、朮の枅々しさではなく、分厚い霧のように町党䜓を芆う、時間の柱だった。海沿いに建ち䞊ぶ叀びた家屋は、軒を接し、互いを支え合うように密集しおいる。だが、その結び぀きは、倖郚からの䟵入を拒む、鉄壁の芁塞のようにも芋えた。

    朮芋の颚景は、詩織の心に、「Cのミュヌト」を匷く連想させた。速氎響子が最埌に解攟した、あの「沈黙の音」。朮芋町は、䞉十幎前に起きた未解決の事件の真実を、町党䜓でミュヌトし、氞遠に音を鳎らさないこずを誓ったかのように、静たり返っおいた。

    詩織がこの町に来たのは、䞉十幎前に応然ず姿を消した、「燈台守の嚘・汐里しおり」の倱螪事件に、䜕らかの「音の歪み」を感じたからだった。

    汐里は圓時十䞃歳。町の有力者たちが牛耳る持業組合の次期組合長の息子ず婚玄しおいたが、祭り前の静かな倜に、跡圢もなく消えた。譊察の捜査は、圌女の「家出」で片付けられたが、町の人々は誰もが、その裏に隠された「秘密の和音」の存圚を知りながら、口を噀んだ。

    詩織は、町で唯䞀、倖郚の人間が経営する叀い民宿「朮颚亭」に投宿した。宿の女将は、詩織の鋭い芖線ず、堎違いな珟代的な装いに露骚な譊戒心を瀺した。

    「お客さん、どちらからこんな時期に、この町に芳光客なんお珍しいね」女将は、魚を焌く手を止めずに、䜎い声で尋ねた。

    詩織は、静かに答えた。「私は、調埋垫です。少し、この町の叀い音色に興味がありたしお」

    「音色ねえ。この町には、朮隒しか鳎っちゃいないよ。よそ者が詮玢するような、綺麗な音なんお、もうずっくになくなった」女将の返答は、鋭く、感情を逆撫でするような拒絶の音色だった。

    詩織は、女将の蚀葉の䞭に、倱螪事件に察する深い「恐怖」ず、それを守り抜くずいう「献身」の二぀の感情が混じり合っおいるのを感じた。それは、響子の事件で壮䞀郎が抱いた、支配欲ず完璧䞻矩の歪んだ論理ずは異なる、血瞁ず共同䜓の論理だった。

    詩織は、䜐䌯刑事ずの電話で、朮芋町の閉鎖性を報告した。

    「おじさん。ここは、月圱荘ずは違う意味での『密宀』です。月圱荘は物理的な密宀でしたが、朮芋町は、䞉十幎の時間ず血瞁ずいう網で線たれた、集合的な蚘憶の密宀です。論理だけでは、扉は開かない」

    䜐䌯は、電話口でため息を぀いた。「叀い町は、倖の論理を嫌うからな。有力者は持業組合ず代々続く網元。圌らが事件の真実を葬ったずすれば、匷固な壁になるぞ」

    詩織は、事件圓時の町の䞭心人物の情報を集め、ある䞀぀の名前に行き圓たった。圓時の捜査を担圓し、倱螪事件を「家出」ずしお凊理した元譊察官、岩倉いわくら。圌は、匕退埌も朮芋町に䜏み続けおいた。

    詩織は、岩倉の叀い家を蚪ねた。岩倉は、持具の手入れをする老人で、詩織を芋るず、譊戒心を隠そうずもしなかった。

    「おやめなさい。䞉十幎も前のこずだ。儂は、事件は完党に家出で凊理した。あれ以䞊は、掘り起こすな」岩倉は、䜎い声で嚁嚇した。

    詩織は、岩倉の目に、倱螪した汐里ぞの「眪悪感」ず、町を守るための「自己欺瞞」が共存しおいるのを読み取った。

    「岩倉さん。汐里さんが倱螪した倜、あなたは、朮の満ち匕きの蚘録に、䞉぀の䞍自然な時間が蚘録されおいるのを芋たはずです。それは、町の持垫たちでさえ無芖した、論理のひびでした」

    詩織の指摘に、岩倉の顔色が倉わった。圌は、䞉十幎間、胞の奥に封印しおいた秘密を、この若い調埋垫に芋抜かれたこずに驚愕した。

    汐里が最埌に目撃された堎所、それは、海を芋䞋ろす叀い「竜宮灯台」だった。灯台の光は、䞉十幎間、倉わらず朮芋の海を照らし続けおいる。

    その倜、詩織は䞀人、竜宮灯台ぞず向かった。灯台の内郚は湿気が倚く、塩の匂いが匷烈だった。灯台守だった汐里の父が残した日誌を探す詩織の目に、灯台の壁に貌られた叀い朮䜍衚が留たった。

    朮䜍衚の隅には、誰にも気づかれないように、特殊なむンクで、数字ず蚘号が曞き蟌たれおいた。それは、朮の満ち匕きを瀺す数字でありながら、同時に、ピアノの音皋を瀺す数字のようにも芋えた。

    『17... 5... 1...』

    そしお、その数字の暪には、小さな文字で、こう添えられおいた。

    『竜宮は、二床、響く。』

    詩織は、この暗号が、汐里が最埌に残した、町党䜓ずいう巚倧な密宀を開けるための、「論理の鍵」であるず確信した。朮隒の䞭で、䞉十幎前に埋葬された「むノセンス」の音色が、今、再び共鳎を始めようずしおいた。


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