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母のハイタッチ|【エッセイ】日常のスベッたコロンだ

     母が骨折をしました。

     老人ホームの廊下で倒れたのだそうです。

     第一報を受け取ったとき、私は自分の部屋にいました。

     概ね元気と姉からのLINEを見て安心したのでした。

     今日、面会に行くと腕中に青じみを作った母がいました。

     左腕だったのが幸いなことといえば言えると思います。

     痛み止めを飲んでいるので痛くないらしいのです。

     いつものように私はコーヒーの缶ボトルを全部で3本買って持っていっていました。

     軽井沢旅行で買った絵葉書をそれは気に入ってくれたので、取り敢えずですが一枚だけ額縁に入れて飾ってきました。

     私は旅行の話を面白可笑しく話して聞かせました。

     写真が見たいというので、それも見せました。

     母は、笑っていました。

     笑ってはいても、ホームから外に出ることができません。

     ずっとホームの中にいるのです。

     外に出ることも買い物に行くこともできないとそう言います。

     私達は出来るだけ面会の日は外に連れ出すのですが、生憎今日は雨。

     車椅子を与えられた母は器用に乗りこなしています。

     会いに来てくれて嬉しいと言います。

     職員の方は明るくて、母は私たちの帰り際に見送りに出てくれ、すれ違った職員の方と、ハイタッチをしていました。

     何でかなぁ。

     切なくなってしまいました。



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    2026年4月から2年間という活動期間を定め静かな生活を通してエッセイを書いていきます。テーマは記憶や人間関係、心の揺れ、大人の恋愛です。世界がシンプルなものだと分かりたくて文章を書いています。

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