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母のハイタッチ|【エッセイ】日常のスベッたコロンだ

 母が骨折をしました。

 老人ホームの廊下で倒れたのだそうです。

 第一報を受け取ったとき、私は自分の部屋にいました。

 概ね元気と姉からのLINEを見て安心したのでした。

 今日、面会に行くと腕中に青じみを作った母がいました。

 左腕だったのが幸いなことといえば言えると思います。

 痛み止めを飲んでいるので痛くないらしいのです。

 いつものように私はコーヒーの缶ボトルを全部で3本買って持っていっていました。

 軽井沢旅行で買った絵葉書をそれは気に入ってくれたので、取り敢えずですが一枚だけ額縁に入れて飾ってきました。

 私は旅行の話を面白可笑しく話して聞かせました。

 写真が見たいというので、それも見せました。

 母は、笑っていました。

 笑ってはいても、ホームから外に出ることができません。

 ずっとホームの中にいるのです。

 外に出ることも買い物に行くこともできないとそう言います。

 私達は出来るだけ面会の日は外に連れ出すのですが、生憎今日は雨。

 車椅子を与えられた母は器用に乗りこなしています。

 会いに来てくれて嬉しいと言います。

 職員の方は明るくて、母は私たちの帰り際に見送りに出てくれ、すれ違った職員の方と、ハイタッチをしていました。

 何でかなぁ。

 切なくなってしまいました。



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