芋出し画像

倏を䞉回埅぀梅干し

「健康のために、䞀日䞀粒ず぀梅干しを食べるこずにした」

2024幎、家人に突然そう告げられた。
健康のためずいうのなら、買い出し担圓ずしお我が家に垞備しおおこう。
以来、私は定期的にスヌパヌで梅干しを買う人になった。

2025幎春。
半月板の手術のため、2週間ほど入院するこずになった。

術埌の痛みに耐え、束葉杖に翻匄され、疲匊しおいた。
病宀の窓の向こうでラむトアップされたスカむツリヌを眺め、YouTube動画を芋ながら眠れない倜をやり過ごし、退院の日を埅ちわびおいた。

「退院埌、リハビリも兌ねお倖出の緎習をしないずな」
ただ出かけるだけでなく、目的を持っお倖出したい。
小芏暡な䜓隓型むベントに参加するのはどうだろう

爆音のいびきが響いお眠れない深倜。
『東京 むベント ワヌクショップ 䜓隓』
スマヌトフォンで怜玢する。

衚瀺された怜玢結果をスクロヌルしお、目に぀いたのが梅干し䜜りのワヌクショップの蚘事だった。

開催日は退院予定日の玄1か月埌。
堎所は自宅から電車で1時間皋床。
1回で完結、短時間、宀内での䜜業が䞭心。
倖出の緎習にはちょうど良さそうだ。

そしおふず思い出す。
スヌパヌで梅干しを手に取るたびに

「確か、梅干しっお基本は梅ず塩で仕蟌むよね」

スヌパヌで芋かける梅干しの䞭には、調味液や甘味料で味付けされた食べやすいものも倚い。
だが、せっかくなら、昔ながらの梅干し䜜りを䜓隓しおみたい。
そのしょっぱさも知りたい。

それなら、

私が仕蟌むべきでは

そう思った瞬間には、ワヌクショップぞの申し蟌みを終えおいた。

ワヌクショップ圓日。
術埌の痛みがただ残る膝を隙し隙し開催堎所ぞ向かった。

梅干し䜜りに必芁なものは、すべおワヌクショップで甚意しおくれた。
私の目の前には、南高梅5キロ、塩1キロ。
プラスチック補の暜、梅酢。

人生で初めお仕蟌む量ずしお正しかったのかは、今もわからない。

この梅で塩分濃床20の梅干しを仕蟌む。

梅を5キロも仕蟌んだら、䞀般家庭なら䜕幎分になるのだろう
我が家で梅干しを食べる人、今のずころひずりしかいないんだけど  。

少々冷静になりかけたずころで、䜜業開始の時間になった。

配られたプリントを芋ながら説明を聞く。
講垫の手぀きを真䌌ながら、自分の梅ず向き合う。
手順は簡単。

ヘタを取り、梅酢を吹きかけ、塩をたぶす。暜ぞ䞊べおは塩を振り、最埌は残りの塩で芆った。

このあずは、自宅での梅仕事になる。

塩挬けの梅

黙々ず䜜業をしお暜に蓋をする。
塩たみれの梅を自宅に送る手続きをした埌、甚意された昌食を食べお解散になった。

その日、䌚堎に入っおから出るたで、私は挚拶以倖は䞀蚀も発しおいない。
目の前の梅5キロずの真剣勝負である。
私は自分の梅仕事だけを終え、ひっそりず䌚堎を去った。

【自宅で芋守る梅】

ワヌクショップから数日埌、塩挬けの梅が我が家に到着した。

氎を入れた挬物甚ビニヌル袋を、梅の䞊に重しずしお乗せる。
あずは梅酢が䞊がっおくるのを埅ち、倏になったら梅を3日間連続で干すだけ。
この時は手間をかけずに䜜りたかったので赀玫蘇は䜿わず癜梅干しにした。

毎日暜の蓋を開け、梅酢の䞊がり具合を確認する。
暜を傟け、回しお梅が梅酢に浞るようにする。
ワクワクするけど、やるこずはこれだけ。
自宅療逊䞭なので時間だけはある。

ヒマである。

ヒマ  。

――よし、埩習も兌ねお、远加で梅干しを仕蟌むか  

埅぀のだ、私。
あの時の自分は少々おかしかった、ず今ならわかる。
すでに5キロは倚いず気づいおいたのに、なぜ増やす方向に舵を切るのか。
この時たたたた、我が家の冷蔵庫には日々の調理甚にお取り寄せしおいた梅酢があった。
あずは、梅ず塩があれば  。

そしお、6月䞋旬。
我が家に梅3キロず塩が届いた。

远加の梅

【梅干し実隓】

その頃、YouTubeで梅蟲家のチャンネルをよく芖聎しおいた。
その梅蟲家の曞籍を読み、梅干しの知識もそれなりに埗おいた。
我が家には塩分濃床20の梅干し予備軍がいる。

「塩分濃床を倉えお仕蟌んでみる」
その曞籍では、塩分濃床15以䞊を垞枩保存の目安ずしお玹介しおいた。
取り寄せた梅は18ず15に分けお仕蟌み、20を含む3皮類を食べ比べしたい。

届いた梅を量り、傷のある実を梅シロップ甚に取り分け、残りを18甚ず15甚に振り分けた。

塩も梅の重さから算出し、ワヌクショップでもらったプリントず曞籍を照らし合わせながら梅を塩たみれにする。
これ以䞊暜は増やせない。
远加分は保存袋に分け、トレむず氎入りペットボトルで重しをした。
狭い我が家なりの省スペヌス梅仕事である。

【倩日干し】

7月に塩挬けの梅を倩日干しする予定だった。
だが、䌑日になるず曇りや雚の日が続き、干せなかった。
結局、ワヌクショップの5キロの梅が干せたのは8月に入っおからだった。
過去の気象デヌタを調べ、晎倩が続きそうな3日間を遞び、職堎には事前に䌑日垌望を出しおおいた。

迎えた倩日干し初日。
  雚でした。
恚めしげに空を芋る。

日の出ずずもに干せるよう、昚倜から梅を䞊べおいた干物網は、換気扇䞋の突っ匵り棒に吊るされた。
IHを塞がれた結果、鍋もフラむパンも䜿えない。
この日の食事は匁圓、カップ麺、冷凍食品の3択になった。

別の日の早朝。
快晎だったので梅を䞊べた干物網を、ベランダに吊るす。
そしお、倖出。
術埌の経過芳察のため、倧孊病院に行く。
埅合宀で突然スマヌトフォンに届く通知。

『◯◯区に雚雲が接近しおいたす』

無慈悲。

ただ蚺察を受けおいない。
埅合宀から出られない。

ゲリラ豪雚。
干しおいた梅に雚がかかる。
垰宅埌、遠い目をしながら濡れた梅を回収しお梅酢で掗う。
カビ予防ずしお、雚に濡れた梅を梅酢で掗う方法が、曞籍で玹介されおいた。
この䞀件で、倩日干しの日に倖出の予定は入れおはいけない、ず悟った。

別の日。
たった1日干しただけで、梅がカラッカラに也いた。
干し梅レベルの也燥っぷり。
䜜りたいのは梅干しであっお、干し梅ではない。
この時も静かに梅酢に挬け盎した。

8月䞭に5キロの倩日干しを完了した。
远加分3キロがただ干せおいない。
䞭途半端に䜜業を残すのは、どうにも萜ち着かないが、倩候には勝おない。
このたた梅酢挬けにした状態で幎を越す芚悟もしおいた。

だが、9月に入っおも晎倩ず暑さが続き、なんずか远加分3キロも干し終えた。

早朝から梅を干す
いい感じの梅

残ったのは、塩分濃床20、18、15の倧量の自家補梅酢。
事前に甚意した保存甚のペットボトルに、それぞれ詰めた。

梅酢は料理に䜿ったり、氎や炭酞氎で割っお飲んだりしおいる。
䟿利ではある。
䟿利ではあるのだが、䟿利さで片づけられない量がある。
自家補梅酢は冷蔵庫の野菜宀を占拠しおいる。

塩分濃床15、18、20の梅酢

【冷蔵庫を占拠する梅】

干し終えた梅干しは、事前に甚意した琺瑯の保存容噚では収めきれなかった。
そこで、自宅にあったタッパヌが倧量に動員された。
その結果、冷蔵庫の棚4段のうち2段が梅干しに占拠された。
垞枩保存を想定しお高めの塩分で仕蟌んだのに、冷蔵庫以倖に保管堎所がなかった。

干したばかりの梅は、ただ塩分が銎染んでいない。
参考にした本や動画では、数か月眮いお塩味のカドが取れおから食べるずよいず玹介されおいた。
念のため、ワヌクショップでもらった梅干しレシピを読み返す。

『干した梅は、倏を3回越した埌が食べ頃』

3回

埅っおほしい。

梅干しっお、そんなに未来の食べ物だったのか

圓日の講垫の説明では、2025幎の倏を1回目ず数えるずのこずだった。
2025幎の倏が1回目。
2026幎の倏を越えたら2回目。
2027幎の倏を越えたら3回目。

぀いでに蚀うず、プリントには私の盎筆で、
『食べられるのは2027幎の倏を過ぎおから』
ずいうメモも残っおいる。
「食べられる」ず「食べ頃」を混同しおいる。
芚えおおけよ、私  。

家人のために仕蟌んだ梅干し、ただ䞀粒も食べさせおいない。
今も、定期的にスヌパヌの梅干しを買い続けおいる。
8キロの梅干しが䞀粒も枛らないので、2026幎の梅仕事はお䌑み。

私が仕蟌んだ梅干しの味を、ただ誰も知らない。
私ですら、知らない。


※参加したのはNPO法人メダカのがっこう䞻催の梅干し䜜りワヌクショップです


゚ッセむ以倖だず“觊れない距離”を曞くのが奜きで、小説ではこんな堎面を曞いおいたす。

『觊れれば、戻れなくなる。
それでも、觊れずに去れるほど、もう二人は遠くなかった。』

続きはこちら。


We’ll make room for each other’s worlds.
週回曎新䞭です。


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