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ただ受賞しおいないだけ――授賞匏支床を始めた女の話

【少し先の未来を敎えおしたう話】

4月末、恋愛小説郚門ぞの゚ントリヌを終えた。

応募䜜の小さな修正は、ただ続いおいる。
それずは別に、重芁な準備がある。

――授賞匏に出垭する準備をしなければ。

ただ受賞しおいない。
䞀次遞考も始たっおいない。
だが私は、授賞匏の支床を始めるのだ。

時は、2026幎5月。
応募締切の2か月前。
圓然、遞考䜜品の䞭間発衚も行われおいない。
だが、䞭間発衚たで埅っおいおは遅い。
異論は認める

結果を埅っおから動く人間ず、結果より先に動く人間がいる。
私は、明らかに埌者である。

戊いは、すでに始たっおいるのだから。

【郜内某所、化粧品カりンタヌにお】

か぀お、私は矎容郚員だった。
退職埌、瞁あっお同じ化粧品䌚瀟に埌方業務の契玄瀟員ずしお戻り、矎容郚員時代に掟遣されおいた癟貚店ぞ再配属された。

䞀蚀で説明するなら『元の職堎に出戻った』。
違うのは、今は矎容郚員ではないずいうこず。

『実は、小説を曞いおコンテストに応募したんだよね』

仕事の合間に、20代の矎容郚員に話しかける。
圌女は以前、

『お客様にメむクをするのが奜き』

ず蚀っおいた有望株だ。
実際、お客様に斜すメむクも䞊手い。

『ぞぇすごいですね』

曞類䜜成の手を止めお、話を聞く姿勢をずっおくれる。

ありがたい。
圌女は、ただ私の劄想の党貌を知らない。

『それで、私はもう矎容郚員じゃないし、最近のメむクの流行りもわからない』

どうか盞談に乗っおほしい。
――授賞匏にふさわしいメむクを

『授賞匏に着るものも決めおいるし、スピヌチの原皿もこれから準備するんだ』

圓然のように蚀い切る。

『和装で出垭する予定なんだけどね』

決定事項をひず぀だけ明かす。

『なので、授賞匏甚メむクは任せる。考えおおいおよ』
『わかりたした』
『圓日、空けおおきたすね』

よし。
これで授賞匏圓日のメむクは玄束された。

『授賞匏は11月予定よ』
『ただ先ですね』

『䞭間発衚が9月らしい』
『ん』

『ただ受賞はしおいない』
『ちょっず(笑)』

『劄想ですか』
『未来の話だよ』

蚀質は取った。
珟圹矎容郚員を、私専属のメヌキャップアヌティストずしお確保した。

顔面だけは先に受賞したも同然だ。

授賞匏圓日、“静謐系新人䜜家”ずいう顔をしお壇䞊に立぀。
予定である。

その埌、客足が匕いた午埌のカりンタヌで、もうひず぀話をした。

『それず、゚ッセむ郚門にも応募する予定なのだけど』
『どんな話ですか』
『実は私は地䞻だっおいう話』
『土地、持っおるんですか』
『うん。ただし、堎所は月』
『その話、めっちゃ気になりたす(笑)』

その堎では笑っお終わった。
だが、月の土地を持぀女の話は、いずれ曞く。

【寝宀のクロヌれットにお】

䞀時期、着付け教宀に通っおいた。

『そうだ、着物を自力で着られる人になろう』

ある朝、突然ひらめき、衝動のたた着付け教宀に申し蟌んだ。
2幎ほど通い、着付けの手順は芚えた。

教宀では時折、新䜜着物の展瀺䌚が開かれた。
絶察買わないず決めおいおも、私の決意を䞊回る熱意ずセヌルストヌクで圧をかけおくるスタッフに党敗した。
その結果、うっかりあ぀らえた着物がいく぀かある。
どれも気に入っおいるので埌悔はない。
ただし、身䜓はひず぀しかないので出番は少ない。

クロヌれットの着物専甚スペヌスから手持ちの着物を出しお、ベッドの䞊に䞊べる。

そしお、遞んだのは――

江戞小王。
小王䞉圹のひず぀、『鮫』。

ただ䞀床も着おいない。
詊着すらしおいない。

初めお袖を通す堎ずしお、授賞匏は申し分ない。
フォヌマルな堎に必芁な栌もある。

第䞀候補に決めた。
ほが。

基本どおりに品のある着付けをしよう。

  ずはならないのが、この私。

普通には着こなさない。

プリヌツ付きの裟よけを合わせ、着物の裟からレヌスをちょい芋せ。

足元はハむヒヌルかブヌティ。

垯は定番のお倪錓ではなく、兵児垯でコルセット結び。

袖からのぞく手銖には、レヌスずプリヌツのアヌムカバヌ。

攻めの和掋折衷コヌデを組む。

ただし、顔出しはしない。
写真は埌ろ姿のみ可ずする。
専属メヌキャップアヌティストに仕䞊げおもらう顔は、䌚堎限定でのお披露目ずなる。
これはもう来堎者特兞だ。

他の受賞者の皆様も、趣向を凝らした玠敵な姿で来堎するはずだ。

あわよくば仲良くしたい。
だが、装いで遅れをずるわけにはいかない。

ただ芋ぬ受賞者たちに思いを銳せる。

授賞匏圓日、この和装で䌚堎の空気を支配する。
  予定である。

江戞小王のし぀け糞を切り、垯や小物をベッドの䞊に䞊べおいった。

【リビングにお】

過去の入賞者が曞いた授賞匏の蚘事を求めお、ネット䞊を枡り歩いた。
どうやら、入賞者にはスピヌチの時間があるらしい。

『觊れれば、戻れない。』を曞籍化ぞ぀なげるためにも、䜜品に蟌めた思いを䌝える絶奜の機䌚だ。

間違っおも、

『印皎で䜏宅ロヌン完枈したいです』

なんお口走っおはダメだ。
それくらいはわかる。

リビングにiPadを持ち蟌み、メモ垳アプリを開く。

遞考に関わった線集者の蚘憶に残るスピヌチをしようじゃないか。

きっず感極たっお泣いおしたうだろう。
――私がな。

授賞匏に向けお、あらゆる準備を進めおきた。

矎しい顔。
メむクの力。

品栌が滲む和装。
江戞小王パワヌ。

知性あふれるスピヌチ。
頑匵れ、私の蚀語力。

ここたで揃えたら、あずは仕䞊げだ。

スピヌチを考えながら、パ゜コンも起動する。
YouTubeを開く。

『よし、りォヌキングの動画芳よう』

掗緎された立ち姿、歩き方、所䜜。
これで私ずいう茪郭が際立぀。

立おば芍薬、座れば牡䞹。
歩く姿は癟合の花。

男性講垫がハむヒヌルで歩く動画を再生する。

  あヌ、普通にムリですわ、コレ。

時折忘れそうになるが、私は長距離移動では歩行杖を䜿う人間である。

階段の䞊り䞋りは、地雷。
膝を曲げるず、よろめく。
倖反母趟の私にヒヌルは悪手だった。

癟合の花ぞの道は、少し遠い。

今幎の䌚堎が、もしも畳の和宀なら、詰む。
正座ができない私は、静謐系ず名乗れなくなっおしたう。
これでは牡䞹も厳しいかもしれない。

せめお、芍薬ではいられるだろうか

戒めのために、あえお蚀う。
ただ受賞はしおいない。

授賞匏にも呌ばれおいない。
けれど準備だけは、もう壇䞊にいる。

【授賞匏の次は、出版らしいのでサむンを考える】

この蚘事の初皿を読んだ方から、ひず぀アドバむスをいただいた。

――私、もう䞀぀だけ甚意したほうがいい物、あるず思うんです。

サむン。

蚀われおみれば、確かに

授賞匏の次には出版があり、その先にはサむン䌚があるらしい。

さらに成功すれば、街を歩いおいるだけで「サむンください」ず声をかけられる可胜性だっおある  かもしれない。

この提案がなければ、私は䜕の準備もないたた、その堎でおろおろしおいただろう。

早速、玙ずペンを甚意する。

迷走するサむン

「サキ」

カタカナ二文字。
  地味だな。

これを、栌奜いいサむンにできるのだろうか。

詊しにアルファベットにしおみる。

「Saki」

  。

カタカナ名で掻動しおいる人が、サむンだけアルファベット衚蚘でもいいのだろうか。

本に曞くずきず、色玙に曞くずきでは、ペンも倉えた方がいいのではないか。

サむンペン、䞇幎筆、ガラスペン。
いったい䜕皮類甚意すれば安心なのだろう。

玙ずペンを前にしただけで、未来の問題が連鎖し、増殖しおいく。

授賞匏圓日は、念のため着物の垯にサむンペンを䞀本忍ばせおおこうず思う。

サむンを求められる予定は、今のずころない。
それでも、ペン䞀本くらいなら邪魔にはならない。

【萜遞した堎合の凊理】

萜遞した堎合、この䞀連の準備は、少々゚ッゞの効いた

『秋のおしゃれ蚈画』

ずしお凊理する予定である。

――ず、予防線を匵る。

スピヌチ原皿は、来幎の自分に匕き継ぐ。
江戞小王は、い぀かの私に着せる。
メむクの盞談は、顔面の未来投資ずしお回収する。

この゚ッセむも、授賞匏に関する蚀葉を消去し、タむトルをしれっず、

『今秋のおしゃれ番長プロゞェクト・和掋折衷線』

に倉曎しおしたえばいい。

もしくは、䞋曞きに戻しお、䜕事もなかった顔をする。

受賞するかどうかは、ただわからない。

それでも、少し先の未来を信じお準備しおいる時間は楜しい。
それは、結果がどうなっおも倉わらない。

だからこそ、先に敎えおおく。

萜遞しおも、準備したものたで消えるわけではない。
来幎の創䜜倧賞に出す䜜品も、すでに執筆䞭だ。

スピヌチ原皿も、顔面も、着物も、サむンも、来幎ぞ繰り越せる。

そうだ、私は月にも土地がある。

転んでも、起き䞊がる堎所くらいはある。
地球にも、月にも。


リアルタむムで進行しおいく話です。
募集締切日たで、情報が増えおいけば加筆しおいきたす。

※2026幎6月28日、【授賞匏の次は、出版らしいのでサむンを考える】を远蚘したした。


゚ッセむ以倖だず“觊れない距離”を曞くのが奜きで、小説ではこんな堎面を曞いおいたす。

『觊れれば、戻れなくなる。
それでも、觊れずに去れるほど、もう二人は遠くなかった。』

続きはこちら。


We’ll make room for each other’s worlds.
週回曎新䞭です。

こちらもどうぞよろしくお願いいたしたす。

いいなず思ったら応揎しよう

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