テレビドラマ・シナリオ『開運壁紙』
【あらすじ】
工場でアルバイト勤務の田村雄二(51)。
そんな雄二のスマホにある日『開運壁紙』
なるものが届く。
ずっとうまくいかない人生の雄二だったが、
その日以来ツキに恵まれるようになる。
そして雄二はシングルマザーの澤村絵梨奈
(32)とセフレとして付き合うことになった。
だが『開運壁紙』が一つツキに恵まれると、
一つ災いを引き寄せる壁紙だと雄二は気づく。
そんなある日雄二は絵梨奈の子供が虐待され
ている事に気づいてしまう。
どうすべきか悩む雄二は、この『開運壁紙』
を使い、この親子を救う事を決断する。
【登場人物】
田村雄二(51) 工場勤務アルバイト
・小説家志望
青木千佳(29) 工場勤務主任
澤村絵梨奈(32) シングルマザー
澤村海斗(5) 絵梨奈の子供
シャルマ蓮香(27) 工場勤務アルバイト
・日本とインドのダブル
伊藤康太(44) 工場長
梅崎涼介(26) 工場勤務社員
児童相談所職員A(48) 女性
児童相談所職員B(24) 男性
美樹(25) 雄二がマッチングアプリで知り
合った1人目の女性
○ 雄二の自宅・部屋内(夜)
アパートの一室。
田村雄二(51)は缶ビールを片手に、ス
マホでロトの当選番号を確認している。
雄二「あー! くそっ!」
ロトを外した雄二は思わず仰向けになり、
天井を見上げる。
暫くして、そのまま寝落ちしてしまう。
スマホが「ピコン」と鳴る。
スマホに『開運壁紙』と言う名の通知が
届く。
気づかない雄二はそのまま熟睡し続ける。
○ 道(朝)
自転車で工場へ通勤中の雄二。
何度も信号に引っかかり、イライラを募ら
せる。
○ 工場・更衣室内(朝)
作業服に着替えた雄二は何気にスマホを手
に取る。
雄二「ん? 何だこれ?」
昨夜届いた『開運壁紙』の通知に気づく
雄二。
雄二「くだらね。こんな迷惑メールに誰が引っ
かかんだよ」
雄二はその画面を消去する。
伊藤「おー、いたいた。田村さん」
工場長の伊藤康太(44)が雄二の元へ来
る。
伊藤「田村さんにお願いがあるんですよ」
雄二「……」
○ 道(夜)
自転車で帰宅途中の雄二。
何度も信号に引っかかり、イライラを募ら
せる。
○ アパート前(夜)
エコバッグを持って帰宅する雄二。
○ 雄二の部屋内(夜)
室内に入る雄二。
スマホが「ピコン」と鳴る。
昨夜と同じ『開運壁紙』の通知が届く。
雄二「ったく、しつけーな」
雄二は不精をし、そのままスマホを無視す
る。
雄二はエコバッグから弁当を取り出し電子
レンジへ。そして冷蔵庫から缶ビールを取
り出し居間へ。
ビールを喉に流し込んだ雄二は、暫くする
とそのまま寝落ちしてしまう。
× × ×
電子レンジが「ピーッ、ピーッ」と鳴る。
目を覚ました雄二は電子レンジから弁当を
取り出し、テレビをつけ缶ビールを片手に
食事を始める。
× × ×
(翌朝)
昨夜の夕食の後、テレビを付けたまま寝落
ちした雄二が目を覚まし、スマホで時間を
確認する。
雄二「何時だ……ん? はあー⁉︎」
○ タイトル『開運壁紙』
○ 工場・食堂内
食後の雄二と主任の青木千佳(29)。
千佳が雄二のスマホをしげしげと見てい
る。
千佳「『開運壁紙』」
雄二「(ため息)朝起きたらロック画面にその
壁紙が」
千佳「これまた派手、というか賑やかという
か、アニマルてんこ盛り。いかにもご利益が
ありそう、って感じ」
スマホのロック画面には龍やピンクの像や
虎などの、開運動物と呼ばれる動物で溢れ
ている。
雄二「届いたのは昨夜なんですけど、放ってお
いてそのまま寝ちゃったら、こんな事に」
× × ×
(回想)
○ 雄二の部屋内(朝)
今朝。
起床後スマホをじっと見つめる雄二。
スマホのロック画面には『開運壁紙』の
タイトルと、“12時間以内に消去されませ
んでしたのでこのままロック画面に移行し
ます”の説明文。
呆然とする雄二。
(回想終わり)
× × ×
雄二「どうやっても消去できなくて。その壁紙
を送りつけてきたURLもどこにもないしどう
やって連絡つけたらいいのか」
千佳「いやいやだめですよ。この手のやつは下
手にURLなんか開こうものなら、田村さんの
情報全部筒抜けですよ。それこそ相手の思う
つぼ」
雄二「じゃ、どうすれば」
千佳「スルー。無視して消去するのが一番で
す」
雄二「いや、その消去ができないから困ってる
んです」
千佳「そうですよね。そもそも壁紙を自由に替
えられない時点で、スマホ自体の故障かもし
れませんしね」
雄二「えー故障って。修理代なんてないですよ。
ましてや買い換えるなんて無理無理」
千佳「ははは、お気の毒さまです……あ、そう
言えば田村さん、珍しく今週の日曜シフト入
ってましたよね」
雄二「あー工場長に頼まれまして。なんでも急
に一人辞めたから、出てくれって。はーツイ
てない」
千佳「へー誰だろ。聞いてないけど」
雄二はスマホを拝むように持つ。
雄二「どうか壁紙さま、元に戻ってください」
千佳「何ですか、それ」
この時雄二は『開運壁紙』の〈蛙〉に気づ
かないうちに触れている。
千佳「じゃ、お口直しにこれでもどうぞ」
と飴を雄二に差し出す。
雄二「何ですか?」
千佳「私からの開運飴ちゃん、なんて」
雄二は「ありがとうございます」と、飴を
口に放り込む。
○ 道(夜)
自転車で帰宅中の雄二。
一度も信号に引っかからない。
○ アパート前(夜)
キーッと自転車を鳴らしながら帰宅した
雄二。
雄二「あれ? 一回も引っかかってない?」
○ 工場内
平日より疎らな日曜の工場内。
作業中の雄二。
雄二の様子を見にきた千佳。
千佳「田村さん。すみません、せっかくの休み
なのに。何か予定とかってなかったんです
か?」
雄二「別にこれといって。私に大して用事なん
てありませんよ」
千佳「……そうですか……どうですか? 今
晩、行きませんか?」
雄二「……」
○ 居酒屋外観(夜)
○ 同店内(夜)
賑わう店内。
テーブルで差し向かう雄二と千佳。
千佳「へー、もう10年ですか。何で社員にな
らなかったんですか? 10年前っていえば」
雄二「40代」
千佳「ですよね。ぎりぎり間に合ったんじゃな
いんですか」
雄二「そうかもしれなかったですね。でも、ま
あはなからそのつもりもなかったですし」
千佳「何か理由が?」
雄二「……ま、まあ」
千佳「ふーん」
店員がそばを通る。
千佳「あ、すいませーん! 生一つ! 田村さ
んは?」
雄二「いや、まだ大丈夫です」
雄二「じゃ、生一つで」
店員立ち去る。
千佳はメニューを見ながら。
千佳「あと何か頼みますか……えーと、このナ
チョスとタコスって何が」
雄二「……小説書いてまして」
千佳「え」
雄二「小説をずっと書いてるんです」
千佳「へー。あ、だから社員じゃなくてアルバ
イト。でも社員でも書けません?」
雄二「なんか保険かけてる感じが嫌で……って
小説書いてて1円にもなった事ないんですけ
どね、はは」
千佳「何か手応えとかなかったんですか? ど
っかの賞に入選したとか」
雄二「……いえ。一次も通った事ないです」
千佳「あー」
店員がジョッキを持ってくる。
店員「お待たせしました! 生一つです!」
千佳「ありがとうございます。あ、このナチョ
スってどんなでしたっけ?」
店員「揚げたトルティーヤにチーズやひき肉な
んかをトッピングした……」
雄二「……」
○ 雄二の部屋内(夜)
缶ビールで晩酌をしている雄二。
部屋の壁には2026年4月のカレンダー。
目の前のノートパソコン画面には、文学賞
の応募要項記事。
“月刊蒼天・新人文学賞……締切2025年
12月……”
雄二はパソコンを閉じる。
○ 工場内(朝)
朝礼。
工場長「お早ようございます。えー早速です
が、本日より新しくアルバイトの子が入って
くれました、シャルマさんです。色々分から
ない事もありますので、みなさん宜しくお願
いします。じゃ、シャルマさん」
シャルマ蓮香(27)がペコリと挨拶する。
蓮香「シャルマ蓮香です。宜しくお願いしま
す」
少しざわつく従業員たち。
従業員A「珍しいな、女のバイトなんて」
従業員B「シャルマって、どこの国だろ」
従業員C「日本語うまくない?」
雄二「……」
○ 工場・食堂内
チャーシュー2枚乗ったラーメンを前に、
スマホ操作にしゃかりきな雄二。
そんな雄二を見つけた千佳が、トレーに
ランチメニューを乗せて近づいていくる。
千佳「田村さーん、ラーメン伸びちゃいます
よ」
雄二の前に座る千佳。
雄二「あれから色々調べてるんですけどね。ど
こにも無くて」
千佳「何を?」
雄二「あの壁紙の」
千佳「あー『開運壁紙』。どうですか? あれ
からいい事あったりしましました? ふふ」
雄二はスマホ操作を諦める。
雄二「あーもう無理! 今更いい事なんてあり
ませんよ。50年何もなかったんですから」
雄二は勢いよく麺をすすり上げる。
千佳「えーそれは寂しいですよ。うちのおばあ
ちゃん言ってましたよ。良いことも悪いこと
も代わりべんたんだって」
雄二「代わりべんたん?」
千佳「大阪なんです、おばあちゃん。代わる代
わるとか順番にとかって意味で」
雄二「代わりべんたんねえ」
雄二たちの側を従業員が通り過ぎる。
従業員D「……いやあ驚いたね。あそこまでド
ンピシャで当てられるもんかね」
従業員E「へえ、俺も今度見てもらおっかな
……」
雄二と千佳の視線の先には、食堂の隅で占
いをしている蓮香がいる。
○ 雄二の部屋内(夜)
テレビを観ながら缶ビールで晩食をしてい
る雄二。
と不意に、スマホが「ブァオーン」と鳴
る。
雄二「ん? 何? 今の音」
雄二は慌ててスマホを手に取る。
雄二「まじで壊れたんじゃねーよな。勘弁して
くれよー」
スマホをじっと見つめる雄二。
が、特にこれと言って何も変化は見当たら
ず、恐る恐る『開運壁紙』に描かれている
〈虎〉にそっと触れてみる。
やはり何の変化も見せないスマホ。
雄二「もし何か請求されても払わねーから
な!」
雄二は再び缶ビールを喉に流し込む。
『開運壁紙』の隅の一枚の〈カラスの羽〉
に気づかない雄二。
○ 雄二の自宅〜道(朝)
雨の朝。
出勤の為カッパを着て家を出てくる雄二。
すると降っていた雨がぴたりと上がる。
× × ×
自転車で通勤中の雄二。
信号に止まることなくすいすいと進む
雄二。
雄二は上機嫌で鼻歌を歌いながらハンドル
を握る。
○ 工場・食堂内
トレーにラーメンを乗せて席へ向かう
雄二。
着席した雄二は箸を割る。
麺を啜り上げるその中に、3枚のチャーシ
ューを見つける。
× × ×
(フラッシュバック)
2枚のチャーシューが乗ったラーメン。
× × ×
雄二「お、ラッキー。なんかツイてる」
食堂の隅で占っている蓮香の前には、長い
行列ができている。
○ 道(夕方)
自転車で帰宅途中の雄二。
宝くじ売り場の前を通り過ぎるが、急ブレ
ーキをかけ止まる。
振り返り見る宝くじ売り場。
雄二「いやいや。チャーシュー1枚くらいツイ
てたからって……」
が、雄二は引き返した。
○ 雄二の部屋内(夜)
一万円札を前にニヤニヤが止まらない
雄二。
雄二「まじですかー! 本当に当たっちゃった
よー! やっぱ俺ツイてるよ! うひょひょ
ひょ!」
大喜びする横で、スマホが「ブァオーン]と
鳴った事に気づかない雄二。
ロック画面の開運動物たちの後ろから、
〈ムカデの頭〉がチラリ。
○ 居酒屋店内(夜)
千佳を前に上機嫌で生ビール呷る雄二。
雄二「くわーっ!」
千佳「宝くじなんて本当に当たるんですね」
雄二「宝くじじゃなくてスクラッチです、スク
ラッチ」
千佳「何でもいいですけど。でもせっかく当た
ったのにいいんですか? 私なんか誘って」
雄二「いいんですいいんです。この前奢っても
らったお返しです」
千佳「それはありがとうございます。ですけ
ど、その、いないんですか? いい人とか。
前に私が誘っておいてなんですけど、上司と
飲んだって美味しくないんじゃないですか?
……もしかしてですけど、友達とかいなか
ったりして」
雄二「……いや……何言って……いま……すい
ませーん! 生一つ追加で!」
千佳「いないんだ」
× × ×
千佳「ふーん、チャーシューが1枚ですか」
雄二「はい。それと最近ずっと信号ノンストッ
プなんですよね」
千佳「ま、信号はあるっちゃあるあるですけ
ど。でも当たっちゃったんですもんね、宝く
じ」
雄二「はい、当たっちゃいました、スクラッチ
くじ」
千佳「ふーん、『開運壁紙』ですか」
雄二はスマホ画面を嬉々として見ている。
雄二「いや信じてないですよ、こんな怪しいも
の。ねー、怪し過ぎますよ、怖い怖い。むふ
ふ(鼻歌)」
千佳「はいはい」
雄二「……ん?」
千佳「どしたんですか? 龍でも飛び出してき
ましたか?」
雄二「絵……変わってるかも」
千佳「ロック画面の?」
雄二「はい、『開運壁紙』の」
千佳「どんな風にですか?」
雄二「何か減ってるような」
雄二は千佳にスマホを渡す。
千佳「何が減ってるんですか?」
雄二「……多分〈蛙〉がいたような……」
千佳「〈蛙〉? 〈蛙〉はいませんね。てか
〈蛙〉って縁起の良い生き物でしたっけ?
何か爬虫類って開運とは程遠いような」
雄二「あー、でも白いヘビはご利益があるって
聞いた事ありますけど」
千佳「へー」
雄二「ちなみになんですけど、ヘビは爬虫類で
すけど、蛙は両生類ですから」
千佳「壁紙の絵、ちゃんと覚えてないんです
か?」
雄二「え? あーだって、ずっとやばいやつだ
と思ってたし、消すのに必死だったんですか
ら」
千佳「ま、そうですね。で消す方法は分かった
んですか?」
雄二「うーん(思案中)」
千佳「……」
雄二「ま、今んとこ変な請求とかも来てません
し、暫くはこのままでいいかなって。スマホ
も問題なく使えてますし」
千佳「大丈夫ですか? 今のうちにちゃんと消
したほうがいいですよ」
千佳が雄二にスマホを返す。
雄二「大丈夫大丈夫、そのうちにそのうちに、
はは」
千佳「……」
○ 雄二の部屋内(夜)
ノートパソコンを前に小説を執筆中の
雄二。
苦悶しながらも気分良くキーボードを打
つ。
○ 新宿・路上
休日、女友達(29)とショッピングを楽
しむ千佳。
反対側から雄二が美樹(25)と並んで歩
いてくる。
それを見た千佳は慌てて隠れる。
女友達「何何? どうしたの」
千佳「……」
雄二と美樹が談笑しながら千佳の前を通り
過ぎていく。
千佳「いい人いるじゃん」
○ 雄二の部屋内(夜)
雄二が見ているスマホはマッチングアプリ
の画面。
雄二「ふっふっふーん、二人目二人目」
上機嫌でスマホを操作し続けける雄二。
○ 雑居ビル外観(夜)
○ 同ビル内・占い店前(夜)
店名『ターラー・ナクシャトラ』の看板。
○ 同店内(夜)
薄暗い店内で神秘的なローブを纏い、ベー
ルを被った蓮香が客を相手に占っている。
蓮香「……変わらない人生などありません。変
わり続けるからこその人生なんです……」
○ 雄二の部屋内(夜)
風呂場から雄二の歌声。
× × ×
テーブル上のスマホが「ブァオーン」と鳴
る。
すると、開運動物たち背後で〈クモの足〉
がもぞもぞと動いている。
○ ホテル外観(夜)
○ 同館・室内(夜)
ベッドの中で、まどろんだ状態の雄二と
澤村絵梨奈(32)。
絵梨奈のスマホが鳴る。
絵梨奈はスマホ画面を見て、「チッ」と舌
打ちをする。
雄二「ん? どうしました?」
絵梨奈「ううん、なんでもない。そろそろシャ
ワーを浴びましょうか」
雄二「帰るの?」
絵梨奈「うん。ワンちゃんの餌あげないと」
絵梨奈はシャワールームへ向かう。
雄二「ふーん」
○ 工場・食堂内
スマホを横にラーメンを啜る雄二。
千佳がトレーに定食を乗せて笑顔で近づい
てくる。
千佳「田村さーん」
雄二「何ですか、その気持ち悪い声は」
千佳「見ましたよー。いるじゃないですか、い
い人」
雄二「いい人? って」
千佳「またまたー。この前の日曜日、新宿で見
ましたよ。ラブラブだったじゃないですか
ー」
雄二「あーそっち。はいはい。でもあれっきり
ですよ」
千佳「え?」
雄二「マッチングアプリで知り合った人で。で
も一回デートしたっきり連絡なくて」
千佳「そっちって、まだ別に?」
雄二「はは。まあもう一人」
千佳「二人同時? 二股?」
雄二「いやいや、人聞きの悪いこと言わないで
くださいよ。タイミングがそういうタイミン
グだったんです。たまたま二人同時にマッチ
ングしただけですって、まじで」
千佳「田村さんって結構アグレッシブだったん
ですね」
雄二「いやーねっ、自分でも驚いてるんです
よ。最近何かと調子よくて、何かと、むふ」
千佳「……ん? もしかして二人目の人とは」
雄二「ね、何かと調子よくて」
千佳「うわーっ、いっちゃった?」
スマホを手に取る雄二。
雄二「はい。いけちゃいました。『開運壁紙』
さまさまです、なんて(笑)」
千佳は雄二からスマホを受け取る。
千佳「さま、増えてますよ……ん? また、
絵、変わってません?」
雄二「あ、気づきました? 何かね、減ってる
気がするんですよ」
千佳は『開運壁紙』をじっと見る。
千佳「これ、〈虎〉いなくなってますね。私覚
えてます。このピンクの〈フラミンゴ〉の横
にいましたから」
言いながら、千佳は〈フラミンゴ〉に触れ
る。
雄二「やっぱ、そうですよね」
千佳「これ本当に大丈夫ですか。自分で消去で
きないんだったら、お店でやってもらったら
すぐですよ。故障じゃないんだったら安くで
やってもらえますって」
雄二「う、うん。はい、そうですね。考えとき
ます。はい、考えときます」
千佳「……」
○ 絵梨奈の団地・外観(夜)
○ 同団地・絵梨奈の部屋のベランダ(夜)
ベランダでタバコを一服している絵梨奈は
スマホでLINEしている。
○ 雄二の部屋内(夜)
絵梨奈とLINEをしている雄二。
○ 絵梨奈の部屋・ベランダ(夜)
雄二とのLINEを終えた絵梨奈は大きく
煙を吐き出す。
× × ×
部屋の隅には息子・海斗(5)が蹲ってい
る。
○ 雄二の部屋内(夜)
絵梨奈とのLINEのやり取りを終えた雄二
は、『開運壁紙』をしげしげ眺めてい
る。
雄二「ん? 何だ、この黒いの」
壁紙の隅には一枚の〈カラスの羽〉。
雄二は何気に触れてみる。
スマホ「ブァオーン」
雄二「え、何何」
が、その後スマホには何の変化も見られな
い。
雄二「ほんとに壊れてないよな、えっ、えっ
……」
雄二は恐る恐る別の操作で試してみる。
○ 工場外観(夕方)
土砂降りの雨。
工場建物の庇で雨宿りする千佳。
建物の中から梅崎涼介(26)が現れる。
涼介「あ。お疲れ様です」
千佳「お疲れ様です」
涼介「……」
千佳「……」
涼介「急な雨ですね」
千佳「ほんとね。お昼過ぎまでは晴れてたのに」
涼介「……」
千佳「……」
涼介「止みますかね」
千佳「止むといいね」
涼介「……」
千佳「……」
○ 道(夕方)
土砂降りの雨。
自転車で信号待ちしている雄二は傘もな
く、ただひたすら雨に打たれている。
○ 雄二のアパート前(夕方)
ずぶ濡れの雄二が自転車を鳴らしながら帰
宅。
すると、ぴたりと雨が上がる。
恨めしそうに空を見上げる雄二。
○ 道(夕方)
雨上がりの道。
ぎこちなくも談笑しながら千佳と涼介は帰
路へ。
○ ホテル外観(夜)
自動ドアが開き雄二と絵梨奈が出てくる。
二人はタクシーを拾い、乗り込む。
○ タクシー内(夜)
後部座席の雄二と絵梨奈。
絵梨奈「ほんと大丈夫ですよ。電車で帰れます
し、送って頂かなくても」
雄二「いや、送りたいんです。これからもちゃ
んとお付き合いしたいし。うん、だからちゃ
んとご自宅までお送りします」
絵梨奈「はあ……ありがとうございます」
× × ×
走行中のタクシー内。
絵梨奈「……あの、私子供いますよ……言い忘
れてましたけど。てか、言うつもりもなかっ
たですけど」
雄二「え……そ……なんですね」
絵梨奈「子供がいたっておかしくない年齢だと
思いますけど」
雄二「も、もちろん。私的にはなんら、はい」
絵梨奈「……一人で子供育ててると溜まるんで
すよね、何かと」
雄二「溜まる」
絵梨奈「日常のプレッシャーだとか、将来の不
安だとか、過去のトラウマだとか、そんな訳
分かんないストレスが沢山」
雄二「それは、大変ですね」
絵梨奈「溜まって溜まって溜まってもう身動き
が取れなくなって限界超えちゃって」
雄二「……」
絵梨奈「だから、いいですよね、晴らしても」
雄二「も、もちろんです。私でよければいつで
もお相手します、はい」
絵梨奈「……」
× × ×
タクシーが団地の前で止まる。
絵梨奈は「ありがとうございました」と下
車し、団地に向かって歩いていく。
雄二は、絵梨奈が団地の中へ消えていく後
ろ姿をずっと目で追っている。
○ 工場内
操業中の工場内。
「ふんふん」と上機嫌の千佳。
それを気にかける雄二。
○ 工場・食堂内
自前の手作り弁当を食べている千佳。
ラーメンを持って千佳の前に現れる雄二。
雄二「珍しいですね、手作り弁当なんて」
千佳「私だってお弁当ぐらい作りますよ」
雄二「朝から上機嫌な理由はそれですか?」
千佳「ええー、そんなの聞いちゃいますー。え
えー、そんなプライベートなことー」
話したくてうずうずしている千佳。
雄二「いいです。ラーメン伸びちゃいますか
ら」
× × ×
雄二「ふーん、雨宿りですか。それで彼氏さん
にお弁当を。良かったじゃないですか、調子
良さそうで」
千佳「やだー、彼氏さんなんて。まだ何もない
ですよー。もー田村さんエッチなんだからー
(笑)」
雄二「いや、誰もそんなこと」
千佳「田村さんこそどうなんですか? 彼女さ
んとは、順調なんですか?」
雄二「……順調って言っていいのか分かんない
ですけど。ま、とりあえずは会ってはくれて
ます」
千佳「ほー」
雄二「でも何か思ってた感じじゃないような」
千佳「何がですか?」
雄二「付き合ってるって言うより、友達的な」
千佳「あーセフレ」
雄二「わ、そんなはっきりと」
千佳「子供じゃないんですから、そんな驚かな
くても。ま、彼女さんが何を求めてらっしゃ
るのか知りませんけど。ほら、体から始まる
恋もあるっていうし、頑張ってください」
雄二「頑張るって、どう頑張れば」
千佳「オーソドックスでいいと思いますよ。プ
レゼントとか」
雄二「えー、高くつきそう。何あげていいか分
かんないし、考えんのも面倒くさそう」
千佳「何言ってんですか。彼女さんなんですよ
ね、好きなんですよね」
雄二「そう、ですけど。女の人にプレゼントな
んてしたことないし」
千佳「じゃあとりあえず、花でもプレゼントし
てみたらどうですか。高い物もありますけ
ど、店員さんにお願いしたら適当に見繕って
くれますから」
雄二「でも、何て言って渡せば」
千佳「知りませんよ! そんな事まで。田村さ
ん小説書いてるんだったら、色々想像して適
当な理由考えられるでしょ」
雄二「……適当な理由……」
麺に箸をつけようとする雄二。
雄二「あれー! ない!」
千佳「今度は何ですか。急に大きな声出して」
雄二「チャーシューが1枚ない!」
千佳「何ですか、それ。チャーシュー1枚ぐら
いで大騒ぎして。あれなんじゃないですか、
そろそろ運が尽きてきたとか」
雄二「ええー、それは困りますよ」
雄二は思わずスマホを手に取る。
雄二「俺の『開運壁紙』さまさまサマー」
千佳「また一個増えてるし、夏になってるし」
雄二「ん? あれ? ない」
千佳「今度は何ですか。メンマでもなくなった
んですか?」
雄二「ここにあった黒い鳥の羽? みたいなや
つ。最初は汚れかなと思って軽くこすったん
ですけど、その時は消えなくて」
スマホの画面を千佳に見せる雄二。
千佳「黒い羽って、カラスか何かの……ん?
あれ? フラミンゴも消えてますよ。間違い
ないですね、この前私ちょっと触りましたか
ら」
雄二「この前って確か」
千佳「食堂で、マッチングアプリの話を田村さ
んがした時」
雄二「……それって、もしかして、彼氏さんと
雨宿りする」
千佳「前ですね」
雄二「……」
○ 雄二の部屋内(夜)
雄二はノートパソコンで検索している。
雄二「フラミンゴは恋愛や幸福の象徴として縁
起の良い動物とされている」
× × ×
(回想)
○ 工場・食堂内
千佳「……間違いないですね。この前私ちょっ
と触りましたから」
雄二「……それって、もしかして、彼氏さんと
雨宿りする」
千佳「前ですね」
(回想終わり)
× × ×
雄二「カラスはその黒い姿やゴミや死肉を食べ
る習性が結びついて縁起の悪い生き物として
……」
× × ×
(回想)
○ 道
土砂降りの雨の中、自転車に乗って信号待
ちしている雄二は、傘もななくただ雨に打
たれている。
(回想終わり)
× × ×
雄二「今日、チャーシュー1枚少なかったし
……えー! そう言う事⁉︎」
雄二はスマホ画面を見つめる。
『開運壁紙』にはいつの間にか、数匹の不
吉な生き物たちが蠢いている。
雄二「あー、俺の運がどんどん無くなっていく
ー」
雄二は思わず仰向けに。
雄二「はぁプレゼントねぇ……いくら何でもク
リスマスには早すぎだよな。ホワイトデーは
終わっちゃってるし、誕生日聞いときゃよか
った、あー……お母さんか……どんな子供な
んだろ、男の子? 女の子?……」
○ 雄二の部屋内
壁には5月のカレンダー。
第二日曜日に赤丸が記されている。
○ 花屋店内
花を選ぶ雄二。
○ 絵梨奈の団地一階・集合ポスト
集合ポストの名前を確認する雄二。
雄二の手には花束。
○ 同団地・絵梨奈の部屋前
呼び鈴を押す雄二。
絵梨奈の声「はい」
雄二「あ、私です。田村です」
絵梨奈の声「……」
ドアが開き、絵梨奈が顔を出す。
雄二の不意の訪問を訝しむ絵梨奈。
絵梨奈「急に何ですか?」
雄二「あっごめんなさい、驚かせちゃって。こ
れ」
と、雄二の背後を他の家の住人が、怪訝な
視線を向けながら通り過ぎていく。
絵梨奈「あ、ちょっと入ってください」
○ 絵梨奈の部屋内・玄関
絵梨奈「なんですかいきなり。困るんですけ
ど」
雄二「え、あ、ごめんなさい。これ渡したく
て」
花束を差し出す雄二。
絵梨奈「は? いやこんなのもらう理由ありま
せんけど」
雄二「今日は母の日ですよね。頑張ってるお母
さんにと思って」
部屋奥から海斗が現れる。
海斗「ママ……」
絵梨奈は血相を変える。
絵梨奈「何! 出てくるなって言ってるでし
ょ!」
海斗「……お腹すいた……」
絵梨奈「ママは忙しいの! 奥に入ってなさ
い!」
人が変わったような絵梨奈に驚く雄二。
絵梨奈「あなたも帰ってください!」
雄二「え、あ、こ」
絵梨奈「ここへは二度と来ないで下さい! ど
うしても私と会いたいんだったら外で会いま
すから。さ、早く出てって!」
雄二は外へ押し出される。
雄二「あ、これ」
絵梨奈「いりません!」
× × ×
ドアの外で呆然としている雄二。
手には渡しそこねた花束。
○ 工場内(日替わり)
作業中の雄二、心ここに在らず。
○ 工場・食堂内
テーブル席の雄二。
箸にも手をつけず、目の前のラーメンは伸
びている。
× × ×
(回想)
○ 絵梨奈の部屋内・玄関
血相を変えて海斗に怒鳴る絵梨奈。
絵梨奈「何! 出てくるなって言ってるでし
ょ!」
海斗「……お腹すいた……」
海斗の両腕や太ももには、青紫に変色した
痣が散見される。
○ タクシー内(夜)
後部座席の雄二と絵梨奈。
絵梨奈「だから、いいですよね、晴らして
も」
(回想終わり)
× × ×
思わず頭を抱える雄二。
雄二「……晴らすって……そっちかよ……」
食堂の隅では、今日も長い列を作り蓮香の
占いが盛況を呈している。
列の中には工場長・伊藤の姿もある。
隣のテーブルの女性従業員FとGが話して
いる。
女性従業員F「私恋愛相談しちゃった」
女性従業員G「えー、そんな事まで。でもさ、
みんなのいる前で恥ずかしくなかったの?」
女性従業員F「それがね、違うのよ。実はあの
子、新宿にあるお店でもやってるのよ。だか
ら、そこで。おかげで彼氏できちゃった」
雄二は蓮香の前に並ぶ列を見る。
雄二は思わず、女性従業員Fの元へ。
○ 雄二の部屋内(夜)
ノートパソコンを前に執筆が進まない
雄二。
頭のことは絵梨奈のことばかり。
そして執筆を諦めたように「あーっ」と仰
向けに。
手には女性従業員Fからもらった、蓮香の
店のショップカード。
雄二はそのショップカードを見つめる。
○ 『ターラ・ナクシャトラ』店内(夜)
蓮香の前には雄二。
真剣な面持ちの雄二は唾を飲み込む。
蓮香「……禍福は糾える縄の如し。僥倖奇禍を
恐れてはなりません。世界は二つで一つ。今
その身に起きている事が全てであり、また全
てではないのです。人定勝天こそがあなたの
未来を切り開くのです」
雄二「あの、つまりそれはどういう」
蓮香「人の運命を変えるのは、人の強い思いと
絶え間ぬ努力です。躊躇わぬ行動こそが天か
らの定めに打ち勝つことかできるのです」
雄二「……」
○ 雄二の部屋内(夜)
スマホ画面をじっと見つめる雄二。
ロック画面には『開運壁紙』。
『開運壁紙』の開運動物は今や龍とピンク
の像の2体だけ。
その他は災いを呼ぶと言い伝えられる不気
味な生き物ばかり。
雄二「……」
○ ホテル室内(夜)
ベッドで眠る絵梨奈。
隣でゆっくりと体を起こす雄二。
雄二はスマホを手に、絵梨奈が目を覚まさ
ぬようその手を取る。
そして、そっと絵梨奈の指をスマホ画面に
触れさせる。
絵梨奈「んん……」
雄二「……」
○ 工場・食堂内
一人手作り弁当を食べている千佳。
そこへ、骨折した左腕を吊るした雄二が現
れる。
千佳「え⁉︎ どうしたんですか!」
雄二「キックボードにぶつかっちゃって」
千佳「うわー、痛そっ。大丈夫、じゃないです
よね」
雄二「ええ、まあ。さすがにこの体で仕事は無
理なんで、さっき休暇届出してきたんですけ
ど。主任にもご迷惑おかけします」
千佳「いや、まあそれは仕方ないですけど。そ
れって、通勤中でした? 労災とかって」
雄二「ああ……通勤中じゃなくて」
× × ×
(回想)
○ ホテル出入り口(夜)
ホテルから出てくる雄二と絵梨奈。
そこへ、電動キックボードが突っ込んでく
る。
咄嗟に雄二は絵梨奈をかばう。
(回想終わり)
× × ×
雄二「ははは(苦笑い)」
千佳「?……まあとにかくお大事になさって下
さい。でも、こう言うのって重なるんです
ね。二人同時に欠員って」
雄二「どうしたんですか?」
千佳は食堂の隅に視線を送る。
占いをしていた蓮香の姿が見当たらない。
雄二「あれ?」
千佳「シャルマさん、クビらしいです」
雄二「え! 何でですか?」
千佳「詳しくは知らないんですけど、なんでも
工場長の不倫を暴いちゃったみたいで。ま、
シャルマさんはただ占っただけでしょうけ
ど、あそこじゃね、筒抜けですから」
雄二「え、そんな理由で?」
千佳「表向きの理由は占いで金銭受け取って禁
止されてる副業をしたとか、仕事に支障が出
たとか。ま、ある事ない事的な。奥様も家出
したって話ですし。あくまで噂なんで、噂で
す」
雄二「何ですか、それ。ただの逆ギレじゃない
ですか」
千佳「ねー、ほんと何なんですかね。ま、不倫
しちゃったはいいけど人生美味しい事だけじ
ゃないって事ですかね」
雄二「……それじゃ俺帰ります」
千佳「あ、お大事に」
千佳はポーチから飴を取り出す。
千佳「じゃ、少しでもいい事がありますよう
に。代わりべんたん代わりべんたん、ふふ」
と、雄二の胸ポケットに飴を入れる。
○ タクシー内
工場からの帰り。
走行中のタクシー内。
怪我していない右手でスマホをじっと見て
いる雄二。
不吉な生き物ばかりの『開運壁紙』に開運
動物は〈龍〉一体だけ。
雄二「あのすみません。ちょっと寄ってもらい
たい所があるんですけど」
○ 絵梨奈の団地前
雄二の乗ったタクシーが止まる。
団地の前にはパトカーが1台止まってい
る。
団地から警察官に連れられて絵梨奈が出て
くる。
そして、絵梨奈を乗せたパトカーは走り去
っていく。
雄二「……」
暫くすると、団地から海斗が児童相談員A
とBに連れられて出てくる。そのまま海斗
たちは児童相談所の車のある方へと向か
う。
雄二は思わず駆け出す。
○ 児童相談所の車の前
海斗の元へ駆けつけた雄二。
児童相談員A「あの、どちら様ですか?」
雄二「え。あ、えっと、職場の。この子のお母
さんと同じ職場で、その、はい」
児童相談員A「……」
児童相談員B「その職場の方が、どういったご
用件で」
雄二「あ、いや、この子と少し話を。すぐに終
わります。本当に、すぐに。側にいてもらっ
ていいんで、お願いします! 本当です!
すぐに終わりますから!」
× × ×
少し離れた場所で雄二の様子を気に掛ける
児童相談員の二人。
雄二は海斗に話しかける。
雄二「色々辛かったな」
海斗「……」
雄二「俺の胸ポケットに飴玉入ってるんだ。
俺、腕怪我してるから代わりに取ってくれ
る?」
海斗「……」
海斗は雄二の胸ポケットから飴玉を取り出
す。
雄二「それ、知り合いのお姉ちゃんからもらっ
たんだ。開運飴玉なんだって。君にあげる
……代わりべんたんだから。辛いことも楽し
いことも代わりべんたんだから。なっ」
海斗「……」
雄二「あと、もう一つお願いがあるんだけど」
海斗「……」
雄二「俺のお尻のポケットにスマホが入ってる
んだ。それ取ってくれる?」
海斗は無言で、雄二の尻ポケットからスマ
ホを取り出す。
と同時にスマホが起動する。
雄二「うん。でね、俺こんな腕だからね。その
真ん中の龍、ドラゴン、分かる?」
海斗は小さく頷く。
雄二「その龍をちょっと触ってくれる。あ、他
のところは絶対に触っちゃだめだよ、龍だけ
ね」
海斗は意味も分からず画面の〈龍〉に触れ
る。
雄二「うんうん。ありがとう、ありがとう」
× × ×
児童相談所の車は、海斗を乗せて走り去っ
ていく。
それを見送った雄二は、あらためて自分の
スマホを確認する。
『開運壁紙』に残っていた唯一の開運動物
である〈龍〉は「ブァオーン」という音と
もに消え、不吉な生き物たちだけが残っ
た。
雄二「はあー(大きなため息)」
そして歩き出そうと一歩踏み出した雄二の
足裏に、グニョっと気持ちの悪い感触が。
雄二「うわっ! 何! 犬のうんち⁉︎」
深く項垂れる雄二。
雄二「いきなりかよ……」
しかし顔を上げる雄二。
雄二「代わりべんたん! 代わりべんたん!」
歩き出す雄二。
○ 雄二の部屋内
誰もいない部屋。
テーブル上には開いたままのノートパソコ
ン。
そこへメールが届く。
“月刊蒼天・新人文学賞・一次通過の
……」
〈終わり〉