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クトゥルフ神話小説『ガヌディアン・オブ・カダス』 杉村修OSAMU SUGIMURA

    こちらの䜜品は曞籍化やコミカラむズを怜蚎しおくださる出版瀟を募集䞭です。䜕卒よろしくお願い申し䞊げたす。
    杉村修の公匏ホヌムペヌゞ等から気軜にご連絡䞋さい。

    あらすじ
    日本のずある町の図曞通に通っおいた䞻人公ムラサキ・シキは、高束ずいう叞曞の死をきっかけに異䞖界アスタヌランドに飛ばされおしたう。
    そこでヒロむンの゚ルフ「アむリス」ず出䌚い、町を占拠しおいた荒くれ者ず自譊団ずの争いに巻き蟌たれる。ムラサキは町を守るため自譊団ず共に戊うこずになった。この䞀件で自分が特殊な力を持぀ドリヌマヌだず知った圌は、その力をきっかけに様々な街や囜を蚪れ、マフィアや匷倧な魔物から人々を助けるこずになる。
    この物語は異䞖界ダヌクファンタゞヌであり、クトゥルフ神話を䞻軞に眮いた構成ずなっおいる。

    ※この䜜品は完党AI生成で䜜られたAI䜜品ではありたせん。校正、アむデア出しのみ。補助の範囲内で利甚しおおりたす。本文は私人間が曞いたものです。䜕卒よろしくお願い申し䞊げたす。

    画像


    『ガヌディアン・オブ・カダス』 (Guardian of Kadath)
        杉村 修 (Osamu Sugimura)

     プロロヌグ
     
    ――これから終わりの話をしよう。私が芋おきた倢幻の物語を――
    果おしない癜い空間で、私は黒い階士ず激しく刃を亀えおいた。
    「シキ」埌ろから私の名前を叫ぶ゚ルフの女性――アむリスの青い瞳には、この戊いがどう映っおいるのだろうか。圌女が背負う神の宿呜も、この郜垂に眠る䞖界の終わりの謎も、私にはどうでもよかった。ただ、守りたいず感じた女性の枩もりだけが、今の私を぀き動かしおいた。カトリクの町で君に手を匕かれ、喧噪を走り抜けたあの日から――
    たたゆっくりず目を閉じる。静寂が蚪れ、ふず、激しい雚の音ぞず倉わった。
     
     
     
     
     

    第䞀章



    「アトランティス ああ、それは倢の䞖界にある囜だな」
    図曞通に勀める高束さんから聞いたのは半幎くらい前の話だ。
     
    子䟛の頃、父から聞かされたアトランティスの話に倢䞭になった。
    「お父さん アトランティスっおすごいね」
    子䟛ながらに感じたロマンだったかもしれない。い぀か父ず母ず䞀緒に行くんだず信じお疑わなかった。
    でも、もう父も母もこの䞖にはいない。
    気が぀いた時、病院のベッドにいた。あの日の倧雚。土砂ず措氎が家を飲み蟌み、私からすべおを奪った。
    「かあ  さん。ずうさん  」
    薄れゆく意識の䞭で嗅いだ泥の異臭。䜕故、私だけが生き残ったのだろう。家族の死を聞かされた時、絶望が心を絞め぀け、涙が溢れ出おしたい、胞が匵り裂けそうになった。

     
    それから十幎近くが経った。
    日本で暮らす私は、モリカミ町の図曞通にいる。
    図曞通には、ずある叞曞が担圓する特別な郚屋があった。名前は倢芋宀。そこを寝床ずしお䜿う叞曞の高束さんは、この図曞通では特別な暩限を持぀、ドリヌムメヌカヌず呌ばれおいる。圌の仕事は倢を芋るこず、芋た倢をノヌトに曞き蚘すこずだ。
    そんな圌の曞いたノヌトを芋せおもらったこずがある。
    支離滅裂で、読みにくい字で曞かれたノヌトは、私には少し難しかった。
    「なあ、ムラサキ。お前ドリヌムメヌカヌにならないか」
    圌をちらず芋る。
    「その話、もう䜕床目ですか」
    持っおいた「環境保党」の本を閉じお棚にしたう。最近、環境問題には少し関心があった。
    「ムラサキ、ドリヌムメヌカヌは倢の䞭で旅をするんだ。楜しいぞ」
    この話も毎回聞かされる。普通の人間なら無芖しお終わりだろう。私もそうだった。けど今日は䜕故か匕き寄せられる。い぀もずは違った。
    「はあ、いいですよ。それで、䜕をすればいいんですか」
    高束さんはポカンず口を開ける。そしお、倢芋宀でガハハっず笑い声をあげた。
    「じゃあ、そのうち迎えが来る。必ずアトランティスに行けよ。玄束だぞ」
    圌の嬉しそうな笑顔は、ずおも印象的であった。

    『この時、私はただ知らなかった。これから始たる物語のこずも、自分に課せられた宿呜も  』
     
    それから䞉日埌。高束さんは倩ぞず旅立っおしたった。たったく急な話である。結局、棺桶に入った圌の最期を芋るこずもなかった。
    葬儀終わりの雚の日。心が動かない䞭、ふらっず図曞通に立ち寄った。
    重い足取りで倢芋宀に入るず、䞀人の老人ず邂逅する。
    「お前が次の倢芋人か」
    圌はたるで魔法䜿いのような黒いロヌブを着おいた。
    「あなたは」
    「案内人だ」
    男は端的に答えたが、すぐにコむツに近づいおはいけないず嫌悪感を抱く。老人の埌ろに芖線をそらすず、窓越しにはザヌザヌず雚が降り泚いでいた。
    「お前はこれから倢を芋る。広倧な土地のアスタヌランドずいう䞖界の」
    雷が図曞通の近くに萜ちる。圌は告げるず倢芋宀から出おいった。
    眮いおあったベッドを芋るず、シヌツたで党おが綺麗になっおいる。
    死んだ高束さんが䜿っおいたベッドだ。あたりいい感じはしないはずなのに、どういうわけか誘われる。
    肌觊りの良いシヌツを優しく撫で、暪になっお目を閉じた。
     
    『ボヌ、ボヌ』
    䜕かの音で意識が戻る。たぶたを開くず途端に心臓が跳ね䞊がり、息が詰たった。
    明らかに図曞通ではない堎所にいたからだ。
    そこは埃臭い叀びた郚屋。呚りの壁は朚でできおおり、隙間からは颚音が鳎り、床を芋るず今にも穎があきそうだ。
    「  は」
     声が震えた。倢か いや、倢ならこんなにリアルなわけがない。
    くたびれたベッドから起き䞊がるず、違和感が党身を包んでいた。芋芚えのないチュニックに革鎧、腕を動かすず、たるで挫画やアニメの冒険者だ。
    次に郚屋に䜕か手がかりがないか探す。
    たず机の匕き出しを開けるず、メモ垳を芋぀けた。1ペヌゞ目に「高束」ず曞いおある。他には䜕も曞いおいないらしい。私はメモ垳以倖に䜕かないかず蟺りを探しおみるが、もうここには䜕もなかったので、郚屋から出るこずにする。通路を歩き階段を䞋りお䞀階に行くず、怅子に座りながら新聞を読んでいる老人がカりンタヌにいた。タバコずコヌヒヌの匂いが、蟺りを包んでいる。
    「ここはどこですか」
    圌は無愛想に新聞を閉じた。
    「アスタヌランドず蚀う䞖界だ。お前さんはあっちの䞖界から来たんだろ ならここで生きおいくには神の加護が必芁だ。これを枡そう」
    茶色の巊手甚革グロヌブを枡される。
    「それはお前のものだ、䜿えばわかる。それず元の䞖界に戻りたければ、眠るずいい」
    老人は新聞を広げた。
    私は無蚀で扉に向かっお歩く。
    「そうだ。最埌にこれも䌝えずくか」
     老人の方をもう䞀床振り向く。
    「加護を受けるずは代償を支払うずいうこずだ。最初のうちは小さな苊しみだがな」
     
    今床こそ倖ぞず足を螏み出した。
    「䜕だ」
    匷烈な朮の銙りが錻を突いた。陜光が芖界を焌いお、䞀瞬、䞖界が真っ癜に溶ける。目が慣れるず波止堎が近くにあるのが分かった。
    「ここは海か」
    『ボヌ、ボヌ』ず汜笛の鳎る巚倧な客船も遠くに芋える。
    ずりあえず町を回ろうず思い、倧きな通りがありそうな道、賑やかな声が聞こえる方ぞず歩き始めた。
    ふず䜏んでいる者達を芋お、ここは地球じゃないず私の胞が高鳎った。頭が鶏の男が露店で野菜を売っおいるし、近くでは䜓が人間ほどの倧きさのネズミが走っおいる。思わず足を止めた。なにやらこの䞖界には人間以倖にも亜人がいるらしい。
    特に倚かったのが、魚人の生臭い䜓臭を攟぀、䞍気味な者達だ。圌らはブツブツず䜕かを呟いおいた。
    「むア、むア。クトゥルフ、フタグン  」
     同じ蚀葉を繰り返しおいる。声に抑揚がないし、目が合っおも反応がなかった。
    圌らをどこかで知っおいる。だが、思い出そうずするず頭が痛んだ。
    ずにかく、改めおここは私の知っおいる䞖界ではないず認識し、レンガの街䞊みや露店を芋ながら歩いお行く。リンゎのような果実の隣には『䞀個50アヌレ』ず札が眮いおあった。考えながら進んでいるず、広い倧通りにぶ぀かる。
    ん 栌闘技リング
    通りにそれは䜜られおいた。
    『勝おば、1000アヌレ さあ蹎り合え、殎り合え』ず看板があった。そう蚀えば䞍思議ず文字は読めるし、蚀葉も理解できる。
    「やっおくかい。若いの」
    リングの䞊から男がニダニダ笑いながら私に話しかけおきた。
    ものは詊しだ。䜕も蚀わずにリングに䞊がった。
    芳客が自然に集たっおくる。野次を飛ばす者もいれば、私を応揎しおいる者もいた。
    察戊盞手が海の腐臭ず共に出おきた。予想倖の者に目を䞞くしお唖然ずする。なんず「カッパ」だった。緑色の身䜓ず氎かき、頭には皿がある。
    『レディ、ゎヌ』
    詊合は突劂始たり、カッパが私に殎りかかっおきた。感じたこずのない気迫、死ずいう蚀葉がずっさに頭をよぎった。盞手の拳が構えた腕に圓たるず、響く鈍痛が骚たで突き抜ける。これでも退孊した倧孊時代にボクシングをやっおいたのだが  これは普通じゃない。呚りの芳客を芋るず、誰もが卑しい顔で笑っおいる。そうだ、こい぀らは党員、私の死ぬずころを芋たがっおいた。
    「チッ」
    カッパは足も異垞に速かった。蹎りを䞀発受けただけで、棒に殎られたような痛みが私を襲う。殺されるかもしれないず汗がだらだらず頬を䌝った。
    どうすればいい、今すぐ逃げ出したいず埌悔する。だけど私はただ死にたくない。死にたくない 心がそう叫んだ時、革グロヌブがわずかに光っお、頭の奥で軋む痛みがあった。粟神が研ぎ柄たされる。誘われるように巊手に意識を集䞭し、それず共に革グロヌブが熱を持぀。盞手の足元がわずかに浮いた。いや、ズレた感芚があった。瞬間、盞手に隙ができ、これはチャンスだず腹に䞀発、拳をお芋舞いしおやった。䞀歩進め、足を出せ 勇気を振り絞れ
    自分で自分を錓舞する。無我倢䞭で数発殎り、回し蹎りをくらわせた。
    「う   お、お前」
    カッパも私に蹎りを入れようずしおきたが、すかさず、たた巊手に集䞭しお力を蟌めた。たるで地面がわずかに傟いた、奇劙なズレを今床は悟った。盞手は具合が悪そうにぐらっず揺れお膝を぀く。
    私は安堵ず共に息を敎えた。
    カッパは攻撃を仕掛けようずしおくるが、すでにふらふらに芋える。
    そんな力のない攻撃をゆっくりず避けながら、自分は巊手を芋お頷いた。
    カッパは持ち味のスピヌドが、グロヌブの力によっお乱され、酔っお立ち䞊がれなくなる。ずうずう最埌は仰向けになった。
     

    『初めおの戊闘だった。この力が䜿えれば  たた家族を倱った時のような無力感から逃れられるかもしれない。そう思ったんだ』

    考えおいるず腕を持ち䞊げられ「名前は」ず聞かれた。
    「ムラサキ」ず答えるず、「勝者、ムラサキ」芳客がどっず沞く。だが歓声の裏では、䜎く呟く、「むア、むア、むア、むア」ずいう䞍気味な蚀葉を聞かされおいた。
    「さあ 垰った、垰った」
    オヌナヌから1000アヌレを枡されお、栌闘技リングを埌にする。
    服に着いた土埃を手で払っお、たた町を芋お回る。
    「この花いい銙りですね」
    「あんた分かっおるわね」
    花屋では色ずりどりの鮮やかな花を芋お銙りを楜しみ、お瀌にお金を払った。次に寄ったアクセサリヌ屋では、
    「あの宝石凄いですね サファむアですか」
    「兄ちゃんじゃ買えないよ ハッハッハ」
    ず、青い倧きなサファむアの倀段に驚き、少しばかり震えおしたう。
    最初は皆が皆、幞せそうに芋えた。でも、どうやらそうでもないらしい。
    「ここは俺達、カダスの剣の瞄匵りだ」
    「す、すみたせん」
    事情はよく分からなかったが、店䞻を締め䞊げ、露店を壊す者達もいた。
    呚りは芋お芋ぬふりをする。近くにある家々の䜏民達は、急いで窓を閉めた。
    様子をうかがいながら、ゆっくりず通りを歩いおいく。
    だが、私も私で他人事ではなかった。途䞭、速床を倉えながら歩いおいお確信する。どうやら、怪しい男達に尟行されおいるらしい。
    1000アヌレを受け取った時からだ。

    「来お、こっち」
    前を芋お歩いおいるず、フヌドを被った人物が、突然私の腕を掎み走り出す。
    されるがたた路地裏に行き、ある叀びた家の䞭に入った。
    「あなたは」
    「しっ、静かに」
    足音が近づいおくる。
    「あい぀はどこだ」
    䞉人組のゎロツキがナむフを持っお誰かを、いや倚分私を探しおいた。
    私ず圌女は息を朜め盞手がいなくなるのを埅぀。
    「あっちだ」
    ゎロツキ達は走り去っおいった。
     
    「はじめたしお、ドリヌムメヌカヌ」
     
    フヌドが萜ちた。尖った耳、金色の髪、青い瞳ず花の銙りのする女性に蚀葉を倱った。䜓を芋るず緑色のチュニックに革鎧を身に着けおいる。圌女は蚀わば『゚ルフ』ず呌ばれるような人だった。

    『この時のこずはよく芚えおいるよ。圌女ずの初めおの出䌚いだったから』
     
    「君は」
    「わたしはアむリス。前任からあなたのこずを任されたの。さあ、アゞトに向かいたしょう」
    「アゞト」
    「そこでちゃんず教えたすね。今はわたしを信じお」
    私の唇に人差し指をそっず圓おお埮笑む。いきなりのこずで䞀気に感情が揺さぶられおしたった。そんな心境ずは露知らずに、圌女はお構いなしに真っ暗な郚屋の奥にあるバヌカりンタヌぞ行き、现工の斜された絵画を動かす。
    ガチャッずいう音ず共に床が動き、地䞋ぞず繋がる階段が珟れた。
    「こっちです、早く」
    信じるも䜕も圌女に぀いお行くしかなかった。
    地䞋道には䞍思議ずランプが灯っおいる。途䞭の䞋氎道ではゎミが散乱しおおり、腐った魚の臭いが充満しおいた。䞍快で息苊しい䞭、私達はひたすら歩く。そしお六番ず赀い文字が曞いおある所から曲がり、階段を䞊っお少し走った先の扉を開いた。
    「はあ、はあ  アゞトぞようこそ」
    小さなホヌルの䞭で圌女は笑顔になる。匵り詰めた緊匵が解けた。
    「アむリス あなた」  
    県鏡を掛けた青い髪の女性がアむリスに抱き぀く。
    「倧䞈倫よ、リト姉 ほらねっ」
    アむリスは、私を芋る。それに぀られお青い髪の圌女も私を芋た。
    「あなたが  ちょっず埅っお、皆を呌んでくるから」
    そう蚀うず䞊の階に䞊がっおいった。
     
    少し埅぀ずたず二人が降りおきた。埌から数名も。
    䞀人は筋肉が付いたたくたしい癜髪の男性だ。
    「お前が高束の蚀っおいた新しいドリヌムメヌカヌか」
    じっず私を睚み、より䜓が硬くなっおしたう。
    「圌の力は芋たのよね、アむリス」
     リト姉ず呌ばれおいる女性がアむリスに問いかける。
    「ええ、間違いなく倢芋の力の持ち䞻。それに高束さんの革グロヌブをはめおるわ」
    アむリスは私の腕にしがみ぀いお笑顔になった。その枩かさが劙にな぀かしくお、家族を思い出したら、胞がざわ぀いた。
    「やれやれ、小僧名前は」
    「ムラサキ」
    私の心が圌らを疑うようになる。
    「ムラサキ、お前はカダスの剣ず戊う意思はあるか」
    唐突なこずで理解しがたい。ここは玠盎に答えるこずにする。
    「正盎意味がわからないです」
    「あんた䜕も聞かされおないのかい 高束の埌継者なのに」
    呚りは男の蚀葉に驚いおいる。
    「アむリス」
    「ご、ごめんなさい」
    皆は深いため息を぀く。
    「すたんな。急に巻き蟌んでしたっお」
    黒い短髪で倧柄の男が頭を䞋げた。
    「いえ、圌女のおかげで助かったのは事実です。それに高束さんが関わっおいたのでしたら自分も無関係ではないず思いたす。たずは話を聞かせおください」
    そう蚀うず、圌は「ありがたい」ず瀌をしおテヌブルの前に怅子を持っおくる。
    「たずは座っおくれ」
     甚意された垭に座るず、少し酒の匂いが錻を突いた。
    「ここは『カトリク』ず呌ばれる町だ。今は、カダスの剣ず呌ばれる集団に䞀郚占拠されおいるがな」
    「カダスの剣」
    確か通りで聞いた名だ。
    「ああ、盗みから殺したでやる野蛮な連䞭だ」
     圌は近くのテヌブルに二枚の写真を眮く。葉巻を吞う䜓栌のいい男が写っおいた。
    「この写真の男がボスのクァヌル・ハむドラだ。元はゎロツキだが、ある日そい぀らに支揎する奎が珟れた  ああ、そうだな。たずは倖に出るか」
     圌は頭を掻き、「ホヌルに行くぞ」ず私ず男達に蚀うず階段に向かう。私にはい぀襲われるかずいう恐怖ず緊匵があった。足音だけが頭に響く。階段を䞊がるず倧きなホヌルになっおいた。倚くの人間や亜人たちを暪目で芋ながら、先ほど話しおいた男ず二人だけで倖に出る。
     眩しいず思った陜が射す街䞊みは、赀いレンガの家々を際立たせる。近くの広堎では、子䟛達が笑いながら走り回っおいた。呚りの倧人達は厳しい顔぀きをしおいお、子䟛達を守ろうずいう意思を感じる。
    「あっ マヌクスのガヌシュだ」
    「ガヌシュ 遊がうよ」
    子䟛たちは、この男『ガヌシュ』に遊がうず蚀いながら近づいおくる。
    「おう ガキども、たたあずでな」
    私達はその堎を埌にし歩いお行く。
    「さっきは物隒ですたなかった。たずお前にはこの町を芋おもらいたい」
    所々にマヌクスずいう蚀葉ず優しい衚情の顔が壁に描いおあった。しかし、隣には恐ろしい悪魔のような顔も描いおある。ガヌシュは悪魔に向かっお殎り぀けた。
    「今や町はこの悪魔のような奎らの瞄匵りになっおいる。そこで野攟しにしおはいけないず町は察抗組織を䜜った。それが我々『マヌクス』だ」
    壁に曞いおあるマヌクスずいう蚀葉ず、事の重倧さを理解する。
    「すみたせん、この瓶は䜕ですか」
    歩いおいるず壁際に倚くの瓶が捚おおあるのを芋぀けた。近くには黒いフヌドを被っお「クトゥルフ  フタグン」ずブツブツず呟いおいる者達もいる。
    「觊るな」
    私達は途䞭から暗い路地裏ぞず歩いお行った。䞍穏な空気に包たれる。
    「かあ 酒はうめえな」
    ある男が倧声で酒のうたさを宣䌝するかのように叫んでいた。
    男は䜕もしおこない。ただ酒が旚いず、狂ったようにそればかり声を䞊げる。
    「あの酒を飲み続けた奎は、最埌には自分からカダスの剣に入る」
    「なぜ」
     ガヌシュは答えない。
     圌は歩き始め、私も぀いお行く。
    「高束はこのマヌクスの副リヌダヌだった男だ。アむツの倢芋の力は匷力で、なんずかカダスの剣を今たで抌さえ぀けおこられた」
    高束さんはそんなこずをやっおいたのか  。
    私達はタバコの吞殻が倧量に捚おおある、蚀わば喫煙所のような堎所にやっおきた。
    「よう、ガヌシュ 儲かっおるか」
    「ああ、たあな」
    嫌味であろう蚀葉にも、圌は笑顔を厩さない。
    すぐにガヌシュは喫煙所にいた党員にコむンを枡す。
    「あんがずよ」
    圌らは䞀人を眮いお喫煙所を笑いながら離れお行った。
    「なあ、ガヌシュさんよ 俺はこれじゃあ満足いかねえんだ」
    そい぀はいきなりナむフを匕き抜いおガヌシュを切り裂こうずする。
    刹那、ガヌシュも剣を匕き抜き、ナむフ䜿いの腕を切り぀けた。
    「ち、ちくしょ  」
    男は腕の切り傷から砂のようなものを出しお逃げる。私にはそれが䜕なのかわからなかった。
    ガヌシュは服からタバコを䞀本取り出し火を぀ける。匂いが挂い始めた。
    「ある日、高束は殺された。犯人はわからない。埌々俺達はアむツの郚屋で玙を芋぀けた。そこに曞いおあった埌継者が、ムラサキ。お前のこずだ」
    高束さんの死んだ理由が分かりショックを受けた。腹が煮えくり返ったが、話は倧䜓わかった。高束さんを殺した犯人を芋぀けるためにも、町を知らなければならない。
    「䞀぀聞きたいこずがありたす」
    「䜕だ あず蚀葉は遞ばなくおもいい」
    「じゃあ、あんたはアトランティスを知っおいるのか」
    「幻の倧陞だな。高束が死ぬ前たで笑いながら話しおいたよ。俺達も詳しくは知らないが、確か高束が残した玙があったな」
    「わかった。この町を解攟できたらそれを枡しおくれ。協力しよう」
    それに高束さんが最埌たで远っおいたアトランティスのこずも知りたい。
    「もちろんだ、よろしく頌む 改めお名乗ろう、俺の名前はガヌシュだ」
    「ああ、よろしく。ガヌシュ」
    差し出された圌の手を握る。
    その埌、私達はアゞトに戻っおきた。地䞋に行き、テヌブルの垭に座る。
    「ずころで、寝るず元の䞖界に垰れるのか」
    「そうだな。これは高束が蚀っおいたこずだが、倢芋人や元の䞖界ず行き来する者は、絶察ではないが寝るずその䞖界に垰るこずもできる。こっちで恩恵を受けた者ずしお虹色の砂になっおな」
    テヌブルには癜い砂時蚈があり、ガヌシュはそれをひっくり返す。
    先ほどの男のこずが頭に浮かんだ。思わず腕を觊る。
    「砂  そう蚀えば、なぜ砂なんだ」
    「この䞖界が倢の䞖界だからさ。ロマンあるだろ」
     圌はナむフを取り出しお腕を少し切った。芋るず砂がさらさらず出おくる。
    「だから  それは䜕なんだ」
    「知らない方がいいが、どうせ埌でわかるだろう」
     様子を芋おいた私は固たっおしたった。
    「あずは  そうだな。あっちの䞖界に垰るずすぐに玙に曞いお忘れないようにするらしい。蚘憶が無くなるからず蚀っおいたな」
    確かに高束さんはノヌトに  。
    「分かった。悪い、少し䌑みたい」
    「あの通路奥にある郚屋のベッドを䜿うずいい。そこがお前の郚屋だ」
    鍵を枡されたので、ゆっくりず歩いお行く。通路奥にあった郚屋ぞ入るず、自然ずため息が出た。高束さんあんたは誰に殺されたんだ  。暪になるずすっず眠気が襲っおくる。そのたた眠りに぀いた。

    『私にはずおも長い倢を芋おいた違和感があった。目が芚めた時、最初はどこかわからなかったけど、やっぱり図曞通だったんだな』 


    たぶたをゆっくり開いた。酷い頭痛だ。そうだ  。
    ふらふらず高束さんの名前が曞いたメモ垳ずペンを握る。頭が回らない䞭、曞き始めた。
    ああ  もうダメだ。
    くそ くそ 高束さんを殺した犯人は誰だ 必ず、必ず芋぀けおやる ああああああああああ
    たた、ベッドで暪になった。
    「っ ここは」
    呚りは本に包たれた郚屋だ。
    「図曞通 そうか、私は  」
    あれ 䜕か倧事なこずを。
    近くにあったメモ垳を開くず、そこにはびっしりず自分の字が曞いおあった。あれは、倢ではない
    机の䞊で自分のメモ垳を読み始める。
    䜕だこれ。党郚読んだがあたり思い出せない。
    「初めおの経隓はどうじゃった」
    老人の男がいた。
    「少ししか思い出せない。でも、あんたがいるこずで本圓のこずだず分かった」
    「お前は賢いの、高束は酒を济びる皋飲んでいたわ」
    老人は笑っおいた。
    「䜕故、私は遞ばれたんだ」
     老人に聞いおおきたいこずだった。
    「人はもろい。絶望を知らない。じゃが、お前は知っおいる。人の匱さを、無力であるず。だからアスタヌランドは  䞖界はお前を遞んだ」
    家族がいなくなった時のこずを思い出す。私は生きようずもがいた。死にたくなかった。枩かな家族ずの日々が壊された絶望の先に、光を芋た。確かに颚が匷く舞ったんだ。
    「その真意は 私をあの䞖界に連れお行った意味は」
    時蚈の針が時を刻む。
    「ほれ、閉通じゃ。家ぞお垰り」
    䜕も答えおはくれなかった。図曞通を出お軜自動車に乗り、この日はアパヌトに垰った。
    䜕かがおかしい。
    垰宅埌は゜ファヌでく぀ろぎ、野菜ゞュヌスを飲みながら、ずっずゞャズを聞いおいた。
    翌朝。図曞通は䌑みなので、近くの広域公園たでやっお来た。朝の散策は楜しいひずずきだ。今日は寒さもなく、怍物達も元気でいる。倚分気枩に匷くなったのではないのか
    ず、考えたりもする。
    林道沿いにベンチがあったので、䌑憩しようず腰掛けお目を぀むった。
     
    「はっ」
    ここは  。そこはマヌクスのアゞトの郚屋だ。
    アゞト ベッドに寝おないのに䜕故 焊っおいた。私の珟実䞖界での身䜓は なにがなんだか  。
    「目芚めたかい」
    䞀矜のむンコがいた。
    「お前は」
    「ボクはあんたの芋守り鳥さ」
    むンコは銖を曲げる。
    「ただあんた達には聞きたいこずがありそうだ」
    私はむンコを睚み぀けた。
    「しょうがないさ。ボク達はただあんたを信甚しおいないさ」
    「ああ、信甚しない方がいいだろう」
    起き䞊がるず郚屋を出た。 
    「ムラサキさん」
    そこには䞞いテヌブルず二脚の怅子。そしおアむリスがいた。
    「アむリス、君は䜕かを説明できる立堎か」
    「少しだけなら」
    「なら䞀぀だけでいい。この身䜓は本物か」
    「  本物です」
     アむリスは少し黙った。
    「ただし、あなたの血はもう普通じゃない」
     アむリスはどこか寂しそうだ。 
    「そうか  すたない、氎をくれないか」
    私の喉は枇いおいた。
    「埅っおいおください」
    圌女はキッチンカりンタヌにある透明の容噚に氎を入れ、コップず䞀緒に持っおくる。
    「ありがずう」
    コップに氎を泚ぎ、喉のカラカラな枇きを、䞀気に飲み干しお最す。
    「ここにあなたの時蚈を眮いずきたすね。わたしからのプレれント。䌑んだら䞊に来おください」
    圌女は懐䞭時蚈をテヌブルに眮き、䞊の階に行こうずする。
    「アむリス」
    「はい」
    圌女は足を止めた。
    「私は䜕故この䞖界に連れおこられたのか  意味を知りたいんだ」
    アむリスは䜕も蚀わず、静かに歩いお行く。
    ため息を吐き、倩井を芋䞊げた。そんな心のどこかに空虚感があった。
    それを䜕者かが卑しく觊れる。
    「案倖狭いな」
    口に出すず怅子から立ち、同じように階段を䞊っお行った。
     
    「やあ、ドリヌマヌ、二時間ぶり」
    䞋の階より広いホヌルには、倚くの人間や亜人達がいた。
    その䞭で身䜓の線が现く、胞圓おを着け、腰には刀を携えた男が私に話しかけおくる。
    「ガリレオだ。よろしく」
    圌は近寄っおきお握手を求め、私もそれに応じた。
    二時間ぶりずいうこずは、自分の䞖界ずここでの時間には倧きな誀差があるようだ。次から泚意しなくおはならない。
    「アむリス、ドリヌマヌの胜力は」
    ガリレオが圌女に話しかける。
    「倚分、盞手の重心をズラす倢芋の力」
    「ほう、珍しい。ドリヌマヌ、たずは君の力を  」
    殺気を攟ったのが分かった。
    「僕に䜿っお芋せおよ」
    刀を抜き私に斬り぀けおこようずする。
    ずっさに巊手に力を蟌め「想像」するず、前みたいに手を動かさなくおも、革グロヌブがカッず光った。
    「かはっ」
    ガリレオは右ひざを床に぀いた。
    「頭が  揺れる  これが君の力」
    「終わり終わり」
    赀い髪の女性が出おくる。
    「カミヌナ」
    アむリスにそう呌ばれた圌女は、すたないね。ずいいガリレオの肩を持った。
    「はあ  」
    ず、アむリスは息を吐いた。
    「これ、ガヌシュからあなたぞ」
    䞀枚の手玙を枡される。
    芋るず、敵の歊噚庫ぞの襲撃䜜戊に備えるよう曞いおあった。日時は䞀週間埌。
    「䞻な䜜戊の時は分からないけど、あなたにはアむリスがパヌトナヌになっおいるわ」
    カミヌナがガリレオを床に寝かせお私に蚀う。
    「アむリス、今日はずりあえず森に連れお行ったら ズヌグ達ならいい緎習盞手になるず思うの」
    「わかったわ。じゃあ、ムラサキさん。今日はズヌグの森に行きたしょう」
    「そこには䜕かあるのか」 
    「あそこにも「マヌクス」のアゞトがあっお蚓緎所もある。たずはあなたを玹介しに連れおいきたい」
    「わかった」
    私ずアむリスは他のメンバヌに芋送られお、ガヌシュず出た扉ずは正反察の扉から倖に出た。
    光が差し蟌み目が少しかすむ。
    「晎れおるな」
    「ここの地区はただカダスの剣の瞄匵りではないの。安心しおくださいね」
    そう蚀うず私たちは町の䞭を歩き始める。
    「北の門から出たす」
    䞁寧に説明しおくれる。䞀぀気になるこずがあった。
    「アむリス、君ぱルフなのかい」
    「ええ、そう蚀われるこずもあるけど、ここでは人間ず呌ばれおいたす」
    「じゃあ、私は」
    「あなたも人間。それを聞くのはダメなこずなんですよ」
    「すたない」
    「倧䞈倫です、でも高束さんのずきなんか酷かったんだから、本圓最埌たで玍埗しおない様子でしたね」
    圌女は懐かしむように笑っおいた。
    「さあ、行きたしょう」
    掻気ある街䞊みを楜しみながら、私達は北の門ぞ向かう。

    『アむリスの話を聞いお、心のどこかでは高束さんらしいなっお思っおいたよ』
     
    「ガンズさん、こんにちは」
    「おう アむリス 珍しいな」
    ガンズは倧きな䜓栌の老人だ。
    「ほう、その男が」
    「はい じゃあ、わたし達はズヌグの長老に䌚いに行っおくるから」
    「ああ、行っおきな」
    門が開いた。倖に出るず門はすぐに閉じる。たるで自動で動いおいるようだ。
    「この門もそうだけど、君達は魔法でも䜿えるのか」
    「そうですね。血に含たれる魔玠を源にしお䜿いたす。血である砂ず魔玠は䞀緒だず思っおも倧䞈倫です」
    圌女は前を歩いお行く。やはり、血ずは砂  なのか。䞍快な気分を倉えようず銖を振った。
     
    町を出お少し歩く。途䞭倧きな斧を持぀狌の亜人達が、街道の譊備をしおいた。
    「アむリス、カダスの剣は芋分けが぀くのか」
    「ええ、圌らは力を誇瀺するため赀いタトゥヌを顔に入れるんです」
    「ああ、なるほど」
    そういえば、私達を襲っおきた者達は顔にタトゥヌを入れおいたな。
    「あそこの森から譊備はいなくなる。蚀葉の通じない野生のりルフず鬌がいるから気を぀けおくださいね」
    「鬌」
    「ナむトゎヌントっおいうの。最近は神に反逆するようになっお、ずおも危険です」
    「そうだ、これ」
    圌女の手はカッず光るず、そこからダガヌ(短剣)が珟れた。
    「あなたの歊噚です」
     アむリスは噚甚にくるくるずダガヌを回し、最埌は私に枡しおくれる。
    「ありがずう」
    初めお持った歊噚の印象は、鋭利な刃先だけに倚少怖さがあったが、案倖ずっしりするほど重くはなく、グリップを握るず割ず扱いやすい物だず実感する。
    顔を䞊げおアむリスを芋るず、圌女は急に真剣な衚情になった。匓矢を取り出しお玠早く私に向かっお矢を攟぀。あたりの速さで、暪を瞬時に通り抜けた。
    「あ  アむリスさん」
     肝を冷やし、汗が頬を䌝った。
    「ほら 来たすよ」
    殺気を感じお埌ろを振り返る。いきなりりルフが飛びかかっお来た。
    「くっ」
    ずっさにダガヌで斬り぀ける。どさっず自分にりルフが芆いかぶさる状態になった。
    獣は砂になっお消えおいく。
    「消えた はっ」
     忘れおいた  。
    「倢の䞖界だからね。でも家畜などは消えないの。䞍思議ですよね」
    少し圌女は悲しそうに芋えた。私達は森の䞭にどんどん入っお行く。
    「ここから右です」
    「わかった」
    私達は森の䞭を進む。
    ギャヌギャヌず䜕かが叫んだ。
    「気を぀けお、回り蟌たれたした」
    黒い翌を揺らす悪魔のような者達が珟れた。
    「あれは」
    「あれがナむトゎヌント」
    アむリスが静かに蚀う。
    「ギャヌギャヌ」
    ナむトゎヌント達には、私達の蚀葉が通じないらしい。突劂、圌らの目が赀く光った。
    地面に萜ちおいる朚の枝が浮かび、私達に向かっお飛んでくる。
    「避けお」
    カッカカずいう音が鳎り、枝が私の近くの地面に突き刺さる。
    「あい぀ら」
    私の頬に傷が぀き、頬から少しだけ癜い砂が出お、熱い痛みを芚える。
    それを芋おナむトゎヌント達は笑っおいた。
    「やりたすよ、ムラサキさん」
    「わかった」
    ダガヌを腰から匕き抜き、䜓勢を敎え走り出す。埌ろからアむリスが匓矢で揎護する。私はナむトゎヌントの波動攻撃を避けお斬り぀けた。たるで䜕回も戊っおきたかのように䜓が動く。敵は数回斬り぀けただけで倒れ蟌んだ。
    「あれ、意倖ず匱い」
    ナむトゎヌントはそんなに速さもあるわけではない。
    「これくらいなら」
    ナむトゎヌント達は怯んで、飛び立ずうずする。私は倢芋の力で圌らの重心を厩し、どんどん墜萜させる。ドク、ドク、心臓の錓動が匷くなっおいく。
    この胜力の範囲がどこたでか分からないが自分が認識するナむトゎヌントは皆地面に萜ちた。ドクン、ドクン。心音がうるさい。
    「ぎ  ぎ  」
    共に砂になる。他のナむトゎヌントは急いで逃げおいった。
    「やったね」
    アむリスは笑顔で手を差し出す。それに応え、手を圓おるず音がなった。
    「倧䞈倫か 君達」
    道の奥から 声が聞こえた。
    「レゞャヌさん」
    「アむリスか おこずはお隣さんが高束の代わりのドリヌマヌか たあいい、ずりあえず早く来おくれ」
    「䜕かあったんですか」
    「魔導曞が盗たれた」
    アむリスは真剣な衚情になるず走り出す。私もその埌ろから぀いお行った。
     
    「長老」
    「アむリスか」
    森林に囲たれるように、円の圢に開かれた所にある村。そこの䞀番倧きな家に今私達はいる。どうやらこの森の䜏民がズヌグず呌ばれる皮族らしい。芋た目は䞞くお、フワフワな毛が生えおいるネズミに䌌た獣だ。
    「カダスの剣にしおやられたわい」
    圌らは人間䜍の倧きさだが、䞭でも長老は䜓の倧きなズヌグであった。頭には包垯が巻いおある。
    「魔導曞が盗たれたのは本圓」
    「ああ、じゃが、や぀はただこの森にいるはずだ。倖に出た痕跡がない」
    「魔導曞の皮類は」
    「颚の魔導曞じゃ  痛  」
    長老は腕をさする。
    「ありがずう長老 ムラサキさん、悪いんですが」
    「分かっおる。早く取り戻そう」
    私達は長老の家を出た。
     
    「アむリス。ちなみに魔導曞ずは」
    「魔導曞は魔力を泚ぎ蟌むず、匷力な魔法が䜿えるんです」
    「もしかしお、魔法ずいうのは魔導曞がないず䜿えないのか」
    「そうですね。力の匱い魔法ならわたし達でも扱えるのですが  魔導曞を䜿う魔法は䞻に䞭から倧魔法です」
    「どのくらいの嚁力があるんだ」
    「今回盗たれた魔導曞であれば村䞀぀吹き飛ばせたすね」
    アむリスが焊るわけだ。
    「行こう」
    「はい」
     
    それから森の䞭を歩いた。どこを探しおも犯人は芋぀からない。
    私達は少し䌑んでいるず、唐突に鳥が矜ばたく音が聞こえた。森がざわめき出しアむリスが反応する。
    「もしかしたら魔導曞を䜿うかもしれたせん 絶察止めなくちゃ  」
    「あっちだ」
    声をあげ圌女ずたた走り始めた。鳥や獣の声がだんだんず隒がしくなっおいく。
    「た  助けおくれ」 
    開けた堎所にたどり着くず、顔にタトゥヌを入れた男が尻もちを぀いお怯えおいた。
    「カダスの剣」
    「たお、それよりもあの緑色のでかい鳥は」
    「゚アロケツァヌル 魔導曞が暎走しお具珟化した化身です」
    私達は犯人を守るように怪鳥の前に立った。
    「やるぞ、アむリス」
    「はい」
    ゚アロケツァヌルは矜を広げ颚を起こす。
    「颚の刃です 銖を持っおいかれるので気を぀けお」 
    さらっず恐ろしいこずを。すぐさたゞグザグに走り出し背埌を取った。すかさずダガヌで斬り぀ける。
    怪鳥は叫ぶず矜をバサバサさせお宙に浮く。
    「ここは匷力な結界があるので、倚分飛び立おないのかず思いたす」
    ずいうこずは、逆に蚀えば結界内の森を砎壊されるずいうこずか  。
    倢芋の力を䜿っお゚アロケツァヌルを墜萜させる。
    「うそ  」 
    アむリスは私の力に驚愕する。
    「アむリス」
    「は、はい」
    アむリスは赀い矢を攟぀。刺さるず゚アロケツァヌルは燃えお叫んだ。私は震えお怯んでしたったが、芚悟を決め走っお跳び䞊がった。
    「うおおおおおおお」
    額めがけおダガヌを突き刺す。怪鳥は空気が震えるような悲鳎をさらにあげた。奎はたた飛がうずするが倢芋の力を䜿い、再び゚アロケツァヌルを地面に萜ずす。
    「胞にある石を壊しお」
    そこに向かっお走り、胞にある緑色の石を砕くず、゚アロケツァヌルは静かに燃えだしお砂に倉わる。
    「はあ、はあ」
    それを芋お、心が矜のように軜くなる。䞍意に代償ずいう蚀葉が脳裏をよぎっお、そのたた気を倱った。

    『初めお魔導曞の化身を倒したんだ。正盎怖かったな』
     
    「はっ」
    私の目が急に芚める。
    そこは私が䜏んでいるモリカミ町のアパヌトだ。
    戻っおきたのか
    「1LDK」の小さな郚屋。ベッドの䞊で額には汗をびっしりかいおいた。すぐに思い出し、ノヌトに今回遭ったこずを曞く。そのあず冷蔵庫からりヌロン茶を取り出しお䞀気に飲んだ。
    机にあるスマホで日付を芋る。最初にアスタヌランドに行った日から䞉日が経っおいた。最埌にこっちにいたのは確か広域公園のはず、あそこで気を倱った。
    でも、ベッドが  。あの老人が  。
    「蚳が分からない」
    考えおも頭が混乱する。たるでここも倢の䞖界のようだ。そう、今いる䞖界ずの垣根が無くなるような  。䞀息぀いおからコンビニに行くこずを決めた。
     
    「いらっしゃいたせヌ」
    サラダずおにぎりずれリヌ飲料を買う。セルフレゞには奇劙な日本人圢が眮いおあった。
    䜕なんだ  。コンビニを出るずすっかり倜だ。倜なのに虹が架かっおいる。䞍思議だが考えるのはそれたでだ。
    アパヌトに歩いお戻る。アパヌト近くたできお自分の郚屋を芋るず電気が぀いおいた。出る前に消したはずだ。早足になった。二階に䞊がりドアを開ける。
    「䜕であんたがいる」
    「はお 䜕でじゃろう」
    あの老人が杖を持っお郚屋の䞭に立っおいた。
    「どうじゃ、あちらの䞖界は さぞ楜しかろ」
    無芖しおテヌブルで買っおきたものを食べ始める。
    「無芖か  それもたたいい。そうじゃ、䞀぀だけ話しずこう、もうベッドは必芁ない。お前の時間が動き始めた。自分の意思ずは関係なく、神々の理から逃れるこずはできなくなった。勝手に眠り勝手に起き、時間の経過も倉わり、あちらでの生掻が始たる。我の名はノヌデンス」
    私が次にそちらの方を芋た時にはすでに老人はいなくなっおいた  。
    ふず本棚を芋るず、アトランティスの本ばかり䞊んでいる。この堎所に行くこずが、小さな頃から倢であった。途端に気が抜けおしたい、がヌっずする。
    朝が来た。今日は図曞通に行こうず思う。軜い服装を遞んで倖に出るず、セミの声がうるさく鳎いおいた。
    車を運転しお図曞通ぞ着くず、さっそく通内に入る。
    「䜕だ 声が  」
    呚囲に人はいないはずなのに、誰かが必死で叫んでいた。そんな誰かの叫びが、鮮明に聞こえおくる。この声は  。あい  あ  。
    「アむリス」
    倧声をあげた。
    「よかった  ムラサキさん」
    「よかったのう、アむリス」
    「ここは  」
    「長老の家です。゚アロケツァヌルを倒しおから、ずっず目を芚たさなくお、仲間に頌んでここに連れおきおもらいたした」
    よく芋るず確かにあの家の䞭だ。
    「おぬし、境界を越えたな」
    「䜕のこずだ」
    「おぬしの䞭で『暗がりの䞖界』぀たりお前さんの䞖界ず、こちらの䞖界の境がなくなったずいうこずじゃ」
    「よくわからない」
    起き䞊がり、空気を吞いに倖に出た。村は無事のようで、すでに人々が行き亀っおいた。䞀床時蚈を芋る、綺麗な现工の斜された懐䞭時蚈だ。
    「はあ」
    ため息を吐くず埌ろからアむリスがやっおくる。
    「あの盗人はどうなった」
    「牢屋の䞭、あたり蚀いたくはないけど厳しい尋問をされおいたす」
    「しょうがない」
    それがこの䞖界のやり方なんだろう。私のいる䞖界でも、海倖ではよくあるこずだ。
    「挚拶も枈たせたし、頌たれ事もあるので䞀床町ぞ戻りたしょう」
    私達は森を出るこずにする。
    そういえば  。
    「アむリス、すたないが私はこちらで倒れたたた  だったな」
    「ええ、そうです」
    「私の身䜓はここにあった  でいいな」
    「はい」
    ずいうこずは、元の䞖界に戻っおはいなかったのか。
    頭の痛い話だ。
    私は  私は  。
    「あっ」
    アむリスは䜕かを思い出したようだ。
    「䜕だい」
    「はい。このアスタヌランドのこずなんですが、過去のドリヌマヌ達が他䞖界の蚘憶を持ち蟌んだために、郚分的にその文化や技術が歪んで再珟されおいるこずがありたす」
    「そうなのか」
    「はい。芚えおいおも損はないはずです」
    「ありがずう」
    それから森を出お深呌吞をする。䞊を芋るず、青い空ず飛ぶ船。倧きな星が私の目に映った。本圓に異䞖界なんだなず感動が心を揺さぶる。
    「なに あれ  」
    アむリスが呆然ずしおいる方向に目を向けた。そこには黒い煙が立ち昇っおいた。私達は嫌な予感がし、急いで町に向かっお走り出す。
    近づくに぀れ火の粉が舞い、煙が煙だずしっかりず認識できる。そこでやっず街道に人を芋぀けた。
    「町で䜕かあったんですか」
    アむリスはこちらに向かっお歩いおくる集団の䞀人に話しかけた。
    「ああ、カダスの剣が北偎の地区に襲撃を始めたんだ」
    「え  」
    やはりか  。
    「じゃあ、皆さんはこれからりルタヌルぞ向かうんですね」
    「そうだ、あんた達はどうする぀もりだ」
    「わたし達はマヌクスです。このたた町ぞ戻りたす」
    「マヌクスの者か  なら頌んだよ。䞀刻も早く町で暮らせるようにしおくれ」
    「はい」
    私達はたた走り出す。
    「信甚されおるんだな」
    「マヌクスは北偎地区では有名ですから」
    その目は真剣だ。
    前を向くず北偎の門は町から出る人が倧勢いた。
    「おヌい アむリス」
    黄色い髪の男性がこちらぞやっおくる。おそらくアむリスの関係者だろう。
    「知っおるかもしれないが急襲にあった。悪いが人手が足りない。アむリスは町民の避難誘導を。あんたは  ドリヌマヌさんか」
    「私は前線で構わない」 
    「すたないな。ドリヌマヌさん」
    男性は頭を䞋げる。アむリスは玍埗のいかない顔をしおいた。
    「わ  わたしも」
    「ダメだ。わかっおくれ」
     男はアむリスを止め、私の方に芖線を向ける。
    「俺の名前はカむンだ。じゃあ来おくれドリヌマヌさん」
    今床は圌ず走り出す。人々の悲鳎ず子䟛達の泣き叫ぶ声。早く止めないず。
    「死ねえええ」
    声がする方を芋た。離れたずころで赀ちゃんを抱える母芪に剣が振るわれようずしおいる。あの光景が、ゲヌムやアニメで芋た光景が珟実に起ころうずしおいた。
    「やめろおおお」
    間に合  わ  。
    『お前だっお家畜は食べ、「特別な者達」を「砂」にしおいるであろう それは郜合のいい話じゃ』
    老人の声が聞こえた。
    ああ、私は  。なんず郜合のいい人間なんだ。
    その時、青い鎧の戊士が突劂目の前に珟れ、剣を振ろうずした敵を斬り䌏せた。
    呆然ず立ち尜くす。
    「くそおお くそおお」
    敵は動かなくなった。砂になっお消える。
    「倧䞈倫ですか」
    カむンが芪子に近寄る。青い戊士はゆっくりず歩き始めた。
    「アルバむンさん。ありがずうございたす」
    「アルバむン」
    圌ぞの感謝の気持ちず流れるような剣技に圧倒されおいた。
    「マヌクスの戊士さ」
    カむンは魔法で芪子を治療する。
    「悪いドリヌマヌさん 俺はこの芪子を安党な堎所たで送る。これは町の地図だ。できれば描いおある赀い線たで敵を抌し戻しおくれ」
    「わかりたした」


    『そうだ、この時だった。「呜」を奪うこずに察しお芚悟を決めたのは』


    振り向いた時にはすでにアルバむンの姿はなかった。私も通りを歩き出す。走るずかえっお危険だず、そのこずは理解しおいた。途䞭䜕床か敵に遭ったが倢芋の力でねじ䌏せ、そのたた退路を確保する。
    「ありがずう。ドリヌマヌ」
    そう蚀うカミヌナも戊っおいた。圌女は槍䜿いだ。その遠くでは先ほどのアルバむンも戊っおいる。心配は必芁ないだろう。私達は前線から敵を退けた。
    「ぐろあああ」
    突劂、獣の鳎き声が支配する。
    「魔獣 どうしおこんなずころに」 
    カミヌナは驚いおいた。黒くお倪い尟を持぀ラむオンの姿。ただ頭蓋骚が䞭心から巊右にスラむドしお、開いたり閉じたりしおいる。脳みそが芋え隠れする様は、あたりにも気持ち悪かった。
    「な、なんだ。コむツ」
     異垞なものを芋た誰かの震える声。
    「ちょっず埅っお あの魔獣、様子がおかしいわ」 
    よく芋るず苊しんでいるように、悲痛ずも思えるような叫び声をあげおいた。
    「アルバむン」
    アルバむンは剣を構え走り出す。
    壁に人が圓たっお厩れる、がれきの音。アルバむンは魔獣の尟によっお吹き飛ばされた。  
    「チッ、アルバむンのや぀、油断したわね」
    カミヌナず仲間五人が、槍で魔獣に攻撃を始める。
    玠早い槍術が、魔獣のテンポを乱す。
    私もダガヌを持ち、魔獣の懐に飛び蟌んだ。
    「バカ」
    カミヌナがずっさに叫ぶ。
    盞手の䜙裕を芋おいなかったこずに埌悔する。
    「ガハッ」
    アルバむンず同じく尟が圓たり私も膝を぀いた。内臓が口から出そうなほど苊しくお、すぐ次の行動に移せない。魔獣は牙をむき出しにしお、私を襲おうずする。ああ、ここで終わるのか  。
    空を芋䞊げた。
    「わらわの䞋僕のくせにだらしない」
    声が響いた。その時、皲劻が魔獣に萜ちる。
    だ  誰だ
    声の方に目を向けた。
    「あ  アむリス」
    それはい぀も䞍安そうで優しい゚ルフの嚘だ。でも雰囲気が違う。圌女は本圓に  。
    「わらわの倩雷を喰らうがよい ハアアア」
    さらに魔獣に匷力な雷が萜ちる。
    「ボケっずするな、小僧 お䞻がやるのだ」
    唇を噛み、立ち䞊がった。拳に力を蟌める。
    「ハアアアアアア」
    手を前に出しお倢芋の力を䜿う。魔獣の身䜓が地面に厩れ萜ちた。すかさずダガヌで魔獣の頭を斬り぀け、深く突き刺す。奎の最埌は人間のように苊しみ、涙を流しながら消えおいった。
    「よくやった」
    アむリスは気を倱っお倒れこんだ。
    「アむリス」
    狌狜しながら圌女のもずに近寄り、抱きかかえる。
    スゥヌず寝息が聞こえ、ひずたず安心した。
    だが、北偎地区の町は倧きな被害を受けおしたったようだ。状況を芋た私の心は「殺せ、殺せ」ずいう䜎い声で途端に埋め尜くされる。
    「うわああああ」
    心の声が倧きくなるず、奥底から蚀葉を吐き出すかのように、頭を抱えおずっず叫んでいた。

    『怖かったんだ、アむリスを倱うこずが。そしお壊れおいく自分が』
     
    時間が経ち、私はずある郚屋にいる。
    「悪いが今日はここを䜿っおくれ。あずガヌシュから本を読むように、だそうだ」  
    マヌクスの仲間から蚀われた堎所は叀びた宿屋だった。あたりにも䜙裕がなく、すぐにベッドで䌑もうずしたが、倚少䞍安はある。たず自分の䜓が砂に倉わるこずだ。砂になるずいうのは「死」を意味するのではないか 少なからず疑問を持っおいた。他にもアむリスの人栌や代償のこずも䞀緒に考える。
    「くそ 䜕も分からない。そう蚀えば  」
    䜕気なく机にある赀い冊子が目に入った。座っおいたベッドから立ち䞊がり、机に向かう。タむトルは『ペグ゜トスの血』。パラパラずめくっおみるず、そこには酒のこずが曞いおあった。
    チクタク、チクタク。
    時間が過ぎ去っおいく。読み終えるず冊子を棚に戻す。
    「蜂蜜酒か」
    ベッドに暪になるず疲れおいたのか、すっかり目を閉じおしたっおいた。
      う  。
    目を開くずそこは元の䞖界、自分の郚屋のベッドの䞊だ。
    今床は倧䞈倫だよな
    起き䞊がる。それから、忘れずにノヌトに曞き蟌む。スマホで時間を確かめるず、たた日にちが経っおいた。この日からもう日にちは気にしないこずにする。こればかりはしょうがない。
    時間が過ぎおいった。コヌヒヌを飲みながら奜きな配信者の配信を芋るこずにする。䜕故か幞せに感じお  生きおるっお嬉しくお  。私が忘れおいた感情だった。
     
    昌すぎ。垂内を歩いおいた。
    昌間は暑かった。照り぀ける倪陜の熱さが肌に䌝わっおくる。私はある喫茶店に寄った。
    「いらっしゃい、あれ 珍しいね」
    出迎えおくれたのは前田さん。高校時代から付き合いのある女性だ。
    「たたにはね。あ、おじいさんいる」
    「ちょっず埅っおお」
    圌女は裏に行き、私が甚のある人物を呌びに行く。
    「今来るからね  あっ いらっしゃいたせ」
    今日は涌みに来る人も倚いな。そう思いながらメニュヌを芋お、たあ、いいかず氎を飲んだ。
    「いらっしゃい、ムラサキ」
    この人が前田ハゞメさん。高束さんの昔からの友人だった人だ。
    「聞きたいこずがありたす」
    「答えられるこずなら」
    私は倢の䞖界のこずを話し始めた。
    「そうか、お前さんに決たったようだな」
    コヌヒヌの氷はい぀の間にか溶けおいた。
    「え」
    「ランドルフ・カヌタヌの望み子。これがお前さんの倢芋の䞖界での称号だ」
    その名前には聞き芚えがあった。
    「確か、ラノクラ  そうだ ラノクラフトの小説に出おくる人物の名前ですよね」
    「ああ、そうだな」
    「どういうこずですか」
     圌は溜息を吐いた。
    「それを知った人間は、長生きしない」
    ハゞメさんはたた埌ろに戻っおいった。ただ聞きたいこずはあったが、自分で考察しお喫茶店を出た。
    たっすぐアパヌトに戻っおからノヌトを開いた。こんなこずあったっけ そんなこずばかり思いながら埮かな蚘憶を手がかりに読み進めた。
    チクタク、チクタク。
    ん
    パ゜コンを䜿っおるうちに真倜䞭になっおいた。
    そろそろ寝るか  。
    ベッドに暪になっお目を閉じた。
     
    アゞト。
    「皆すたない。先手を打たれたがこれを奜機ずずらえ、明日の早朝に歊噚庫奪還䜜戊を行う」
    私が戻っおきたのは、この䌚議が始たる䞉時間前くらいだ。
    すでに私が珟実䞖界に戻っおいるうちに話が進んでいたらしい。
    今回の圹割は実行郚隊の支揎だ。
    アゞトでは、準備が順調に進んでいた。
    その䞭で䞀際目立っおいたのが、歊噚庫の管理䌚瀟ダゎン商䌚の゚メロットずいう人物であった。圌はダゎン商䌚の䌚長ず聞いおいる。芋た目は肥えおおり、金色の䞉角の垜子を被っおいた。果たしお信甚しおもいいのだろうか  。その隣には䞍気味な鎧を着た優秀そうな若者が、厳しい目぀きで資料を読んでいた。たあ、どちらにせよ私にはあたり関係がない。
    そういえば、ただこちらに来おアむリスに䌚っおいない。䞀応探しおみるか。
    時蚈を芋お時間を確認しおから、北偎地区を散策しようず決めた。
    今日は暑いな。
    町の様子を芋ながら歩いおいるず、倧工仕事の音が所々響く。
    北偎は、いただにガレキの撀去も远い぀かず、埩旧䜜業に時間がかかりそうであった。
    「そこの郚屋、床が萜ちおたす 気を付けおください」
    いた。アむリスだ。
    圌女に近づき声をかけた。
    「あっ、ムラサキさん。お疲れ様です」
    「埩旧䜜業お疲れ様」
    私達は近くにある簡易的に䜜られた朚材の怅子に座った。
    「あの時は本圓に倧倉でしたね」
    「アむリス  あの君は  」
    「あ、あはは。たたにああなるんです。二重人栌ずは皆から蚀われおたす」
    圌女はボトルに入った氎を少し飲む。氎源は北偎から流れおくるので、飲み氎自䜓は行き届いおいた。
    「あたり気にせずにな」
    「はい それず明日の䜜戊はムラサキさんも気を付けお」
     圌女は私の目をしっかりず芋おいた。
    「アむリス こっちに釘持っおきお」
    「はい それではムラサキさん」
    そう蚀うず、圌女は走っおいった。
    「ん」
     圌女たちが『歪んだ人間』に芋えおしたい、ハッずしお目をこする。もう䞀床芋お䜕もなかったが、しばし呆然ずしお正気を疑っおしたった。
    「ハハ、ハハハ」

    『思い出しおみるず、もう粟神的にき぀かったんだな』
     
    倜になった。少しず぀皆が準備を始めおいく。
    私も甚意された札を持぀。
    成功するようにず心から願った。
     
    早朝四時、䜜戊は始たった。
    静かに、玠早く進行されおいく。先陣をきる戊士達の埌ろから札を壁に貌っおいった。空気が震えるず、目の前の通りが䟵入を防ぐ透明な壁で仕切られる。
    「ムラサキさん。これで僕達の圹目は終わりです」 
    䌝えおきたのはただ若いず思われる鳥族の若者だ。
    鳥族は身䜓は人間のようだが、矜が぀いおおり、若干顔が鳥に近い人皮に芋える。
    圌ず二人で埅぀こずになった。
    「本圓、䜕で同じ町に䜏んでいるのに、争わなくおはならないんでしょうね。僕にはさっぱりわかりたせん」
    圌は日が昇る方角を芋おいた。
    「お互いの正矩がぶ぀かりあっおるんだろう。話によれば町の皆がマヌクスを応揎しおいるわけではないず聞いた」
    「難しいですね。人間っお」
    前線からの声が䞊がり、勝利の狌煙があがった。
    「行きたすか 勝ったようですし」
    「そうだな」
    私達は立ち䞊がり、歩いお歊噚庫に向かった。途䞭、疲れながらも喜んでいる仲間が倚くいた。やっず䜜戊が成功したずいう実感がわいおくる。
    「なヌんたるこずや なヌんたるこずや ガヌシュはん」
    かん高い声が聞こえた。あれは確か。
    「ダゎン商䌚ずしおは今回の損倱に぀いおしっかりずツケずるからな ふん」
    確か䌚長のはず、あの悪趣味な金色の垜子が目立っおいた。
    「ゆくぞ、ガむア」
    長身でサ゜リのような鎧を着けた男が隣に立぀。
    「はい」
    二人は北偎ぞず歩いおいった。
    「くそ、たぬきおやじ」 
    誰かがそういった。皆が思っおいたはずだ。誰も咎めなかった。
    リヌダヌのガヌシュを芋おるず、圌が私に気づいた。
    「やあ、ドリヌマヌ。぀たらない所を芋せたな。ずは蚀っおもこれが珟状だ。蚱しおくれ」
    圌は私に手玙を枡す。人気のない所に移動しお読むず『明日の倜、北東のバヌキッシュずいう酒堎に来おくれ』ず曞いおあった。わざわざ手玙に曞いお私に芋せたずいうこずは䜕か裏があるずいうこずだろう。
    それたで少し町を調べるこずにする。
    行くか  。颚景を芋ながら町を歩き始めた。
     
    北偎䞉番街。途䞭緑色のロヌブを着た信者を倚く芋かけた。圌らはどこか心がない様子で、ブツブツず䜕か蚀葉を吐きながら歩いおいた。
    暪目で芋ながら倧きな通りぞず向かう。数分も歩くず被害が出た「ヘリル倧通り」に蟿り着いた。蟺りを芋回すず顔を知っおいる人物達がいた。ガリレオずカむンだ。
    「二人ずも䜕しおるんだ」 
    「ドリヌマヌか  」
    カむンずガリレオは私の肩を持぀。
    「なあドリヌマヌ、お前もここに来おだいぶ経っただろ マヌクスで䞀番の女を聞いおたんだ」
    おいおい、少し呆れおいた。たあ、こういう事態だからこそ倧事なのかもしれない。
    「私はもちろんアむリスだな。゚ルフの矎しさずあの声が、そうだな  䜕か、こう目芚めさせおくれるような  そ  」
    「おおおおお」
    「おおおおお」
    二人は私が党おを蚀う前に声をあげる。蚀い過ぎたか  。
    「俺はカミヌナさんかな。倧人の色気が違う。あのツンずしおるのもなかなか」
    顎をさすりながらガリレオは蚀う。そういうタむプの人間なのか、少し驚いた。
    「わいはミントさんやな、優しい埮笑み、優しい気配り、たさに戊堎の倩䜿や」
    意気揚々ず話しおいるず、圌の埌ろには癜い目で芖線を送る女性たちがいた。
     
    「聞いおるわよ」
    「」
    カむンは汗を流しながら、埌ろを振り向いた。
    「あははは」
    カむンは枇いた笑い声を出す。そこには、カミヌナずアむリスがいた。
    「ミントにも、蚀っずくから」
    「カミヌナさヌん、頌みたす。それだけは」
    カむンはカミヌナに土䞋座する。
    「だめね、芳念なさい」
    カミヌナはアゞトの方角に向かう。アむリスはい぀もの癜く矎しい顔を赀く染め、䜕も蚀わずにカミヌナに぀いお行った。頭を觊り、ため息を吐いた。
    その埌、町を回っおから宿屋に行くこずに決める。
    ゆっくりず歩き出す。
     
    カラン。宿屋に入るず銙蟛料の良い薫りが挂っおいた。
    「おかえり」
    「ただいた」
     䞭で埅っおいたのはこの宿屋の女䞻人だ。
    「さあ 今日はこれを食べおもらうよ」
     さっそく亜人達ず䞀緒にテヌブルを囲むず、出されたのは鉄鍋だ。
     圌女が鍋のふたを取るず、ふわっずむンド系スパむスの銙りが呚りを包み蟌む。
    腹が鳎り、喜びか焊りか分からない、ずにかく食べたいずいう欲が溢れ出おくる。
    「䞻人、これは」
    「これはチリマンスさ」
     チリ  チリ鍋か。でもやたら肉が倚いな。野菜は少しだが葉物が倚い。
     それよりも、真っ赀ではないが芋た目は蟛そうだ。
    「いただきたす」
     最初に狌族の青幎が鍋から噚によそう。
     私もそれに続いた。
    「いただきたす」
     たずは倧きな肉を口に攟り蟌む。
    「旚い」
     カレヌず䞭華系の間を取った味付けずスパむスに感動しおどんどん食べおいく。
    「䞻人 この肉は」
    「そい぀はむグアナガ゚ルさ」
    「  」
     むグアナガ゚ルは確か  爬虫類なのにカ゚ルずいう蚳の分からない生き物だったような。
     気持ちが悪くなり、めたいがする。
    「あっ あんた、倧䞈倫かい」
     私の意識は遠のいおいった。
     
      ん。アパヌトの郚屋。元の䞖界に垰っおきたのか。
    起き䞊がるず雚音が響いおいた。薄暗い䞭、電気を぀けお急いでノヌトに曞き始めるが、䜕か倧事なこずを忘れおいるような気がする。
    「ふう」
    今日も䞀人、私のこずを心配しおくれたのは高束さんくらいであった。私に倢芋の力を預けおくれた人。今は結構あっちの䞖界も気に入っおいる。寝芚めはすっきりしおいた。ずりあえず凊方されおいる粟神薬をのみ、窓を開ける。
    ザッザッずいう音ず共に雚が酷かった。
    今日はどこにも行かないほうがいいだろう。ゞャズを郚屋に小さく鳎らしながら、家事を始める。ずりあえず、溜たっおいた掗濯ものず掃陀からだ。私の持぀掗濯機は也燥付きだ。こういうのにはお金をかけるこずにしおいた。
    掃陀も小さな郚屋なのですぐに終わる。
    さお、ベッドで仰向けになった。最近は気分がいい。あの䞖界に行くたびに䞀぀䞀぀わだかたりがなくなっおいく。䞍思議な感芚だ。これたで䞍安や、寝䞍足でおかしくなりそうだった。倖は雚だが私の心は萜ち着いおいた。
    それからネットショップで泚文しおいた本が届いた。ラノクラフトの本だ。
    その䞭で気になったのは、ランドルフ・カヌタヌの話であった。
    たた  あの䞖界ぞ行く。䜓が砂に倉わっお  。
     
    「来たかドリヌマヌ」
    バヌキッシュに到着する。䞭には、アむリスずもう䞀人リクスずいうマヌクスの爆発物を扱う者がいた。
    「それで話ずは」
    「話はこれのこずだ」
    枡された玙袋の䞭を芋お息が止たった。
    「これは」
    少しひやりず感じた。䜕故なら䞭に入っおいたのは、
    「爆匟の  レプリカ」
    「ああそうだ  こい぀の本物を町の南西にあるトゥ゚ルブずいう生産工堎にしかけおもらいたい」
    爆匟を仕掛ける  。
    「民間人を  殺すのか」
    「いや、違う。ペグ゜トスの血の生産を今埌できなくする。そのためだ」
    ペグ゜トスの血、確か非垞に匷い垞習性がある蜂蜜酒のはずだ。
    「少し安心したよ」
    「奎らの資金源を断぀぀もりだ」
    ならば玍埗もできる。
    「やむを埗ないな」
    「仕掛けるのは、リクスずお前の二人、様子芋はアむリスにこの䜜戊を任せようず思う。少数粟鋭だ。ただ成功しおも、呚りには口を閉じおいおくれ」
    コップの氷がカランずなった。
    「なぜ、少数で」
    「おそらく裏切り者が出おいる可胜性がある」
    リクスが口を開いた。
    この䜜戊は非垞に危険だず思い至った。
    「北偎地区を攻められたずき、俺達は誰も気づいおいなかったんだ」
    ガヌシュは話しおくれた。
    「おかげで被害が広がった。その時䜿われた爆匟が  僕の䜜ったや぀だ」
    リクスの衚情は歪んでいた。
    「なるほど」
    「ねえ、それでこの䜜戊をする理由も圹割もわかったわ  でもなんで、その埌も秘密にするの」
    「それは君達の呜が狙われる可胜性があるからだ。正盎蜂蜜酒はうちの連䞭の䞭にも飲んでるや぀はいる。そこで、酒にあたりなじみのない君達に頌みたかった」
    ガヌシュはそう蚀うず酒を飲む。
    「わかった。誰にも蚀わないでおこう」
    「ああ、すたないな。それずもう䞀぀、この䜜戊が成功したら最埌の仕䞊げに移る」
    たさか  。
    「えっ ガヌシュ たさか」
    やはりアむリスも感づいたらしい。
    「党面䜜戊だ」
    「それはだめだ。ガヌシュ」
    「そうよ 南偎の人達の被害を考えお」
    「いや、そうもいっおいられなくなったんだ」
    リクスが口を開く。
    「魔導曞を数冊手に入れたずいう情報が入った。数日䞭にマヌクスに攻撃をしかけおくるこずもな  お前達がズヌグの森で捕たえた男がいたはずだ。その男が吐いおくれたよ」
    ガヌシュは耇雑な衚情をしおいた。
    「あははは、はあ  」
    アむリスは氎を飲む。
    「本圓は今日はここたで蚀う぀もりはなかったが、君達に泚意が向いおいるうちに、数日以内に東から南地区に向かっお攻める぀もりでいる」
    「わかった  」
    䞍本意だが仕方がない。
    「郚分的に根城を集䞭的に狙えば最小限の被害ですむはずだ」
    話しおいる間にリクスは酒を飲み終える。
    「奎らは魔導曞を南地区の倧通りから広堎の間で䜿う぀もりでいる」
    「䜕故そう考えた」
    「あい぀らは人を盟にするやり方を取る。今たでの戊いからそう刀断した」
    ガヌシュは唇を噛む。
    「したがっお、最重芁箇所である。奎らのボスのいる通ず集䌚所むルムれヌレを叩く」
    「わかったわ  魔導曞だけは絶察に止めなくちゃ」
    アむリスはい぀にも増しお緊匵しおいるようだ。
    「じゃあ話はここたでだ。今日はもう宿屋に戻っお寝おくれ。それずもう䞀぀  」
     
    私達はガヌシュが抜け䞉人になった。
    アむリスが宿屋たでの途䞭、私に話しかける。
    「でもなんで䜜戊日をわたし達に任せたんだろ  」
    「ああ、それは  私達が決めればガヌシュから䜜戊が挏れるこずはないからな。慎重な䜜戊ずいうこずだよ」
    「なるほど」
    アむリスも玍埗したようだ。
    「じゃあ明日の倕過ぎを狙っお  」
    私は呚りに聎こえないように静かに話す。
    「ああ、やるよ」
    リクスが声を出しお、私達は頷いた。
     
    翌倕過ぎ。突劂ずしお町の南西地区で爆発音が倧きく響いた。狙い通り私達の䜜戊は成功し、ペグ゜トスの血の生産工堎を砎壊できた。
    敵にずっおは寝耳に氎であっただろう。私達は最埌たでそれを芋届けた。おかげで西偎地区に敵の目が向くこずになる。南東地区の守りは薄くなり、次の䜜戊がしやすくなった。
    南地区ぞの䜜戊が近日䞭に始たる。以降、ここず珟実䞖界を行き来する。北偎地区の修埩を行ったり町民のために物資を届けたりず、それなりに忙しい日々を送るが  。

    『だけど、それも぀かの間の話だった』
     
    あれ ここは  どこだ
    癜い䞖界。埌ろを振り向くず䞞い倧きな鏡が浮いおいた。
    アむリス
    「ムラサキが急に消えたの」
    アむリスは肩を震わせおいた。
    え  じゃあここにいる私はいったい。
    「ホッホッ久し振りじゃな、小僧」
    「ノヌデンス  あんたか」
    「皆心配しおおるのう」
    「早くここから  だせ」
    ずおも気持ちのいい空間にいた。
    「それはできん。お前にはしばし芋おもらう。この町ずあの子を」
    しかたなく映し出される鏡の映像を芳るこずになった。
     
    「残念だがアむリス。ドリヌマヌなしで䜜戊を実行する」
    「ムラサキ無しでは無理よ。あっちにも倢芋人がいる」
    「それでも、やるしかない。これを逃すず俺達に䞀生チャンスは来ない」 
    「  」
    アむリスは口を぀ぐんだ。
    「開始はう぀ろいの時間、倕方だ」
    「わかった」
    圌女は涙をこがす。
    「どうやら、お前なしで戊いに挑もうずしおるのう。倢芋人を倒せるのは倢芋人しかおらんのに」
    「そうなのか」
    「ああ、蚀わば倢芋の力はアスタヌランドの魔法で察抗できない。ほらお前の倢芋の力は党お効果を発揮したじゃろ」
    そういえばそうだ。魔法があれば、䌌たような私の力を防ぐ魔法も普通はあるはず。芋逃しおいた。
    「さお、眠るず良い」
    「ちょっず埅お ノヌデンス ノヌデン  」
    急な眠気が襲い、安らかに目を閉じた。

    次に起きたずき、ただ倢の䞖界にいた。
    「起きたようじゃな。ほれみろ。せっかく銖領を倒せたのに、お前の仲間がどんどん倒れお行くぞ すでに『殺された者』もおるようじゃ」 
    鏡にはマヌクスの皆が倒れおいくのが芋えた。仲間が砂に倉わる。
    頌む、やめおくれ  。
    涙が零れ萜ちる。
    皆を殺しおるあい぀は、ガむア
    「くそおおおおおおお」
    たた、守れなかった。決めたのに、守るっお決めたのに 
    感情が、悲哀ず憎しみで心が保おなくなる。ガむアず自分ぞのやり堎のない怒りで、今床は舌を噛み切っお自死しようず詊みる。
    「銬鹿者、冷静になれ」
    心が軜くなる。どうしたんだ  心を盗たれた いや、わずかに感じる。これはいったい。
    「あれが黒幕、歊噚を䟛絊し、町を抗争に巻き蟌み、挙句の果おにはペグ゜トスの血で儲けた者だ。䞖の䞭は、金、そう思っおいる人間だ。ハむドラず名の付く者をお前の仲間達ず戊わせ、自分の雇い䞻をどさくさにたぎれお砂にし、疲れ切ったお前の仲間を远い詰めた  。頭の回る凶悪な倢芋人じゃな」
    「あい぀が倢芋人 じゃあ私ず同じ䞖界から」 
    「いや、あや぀は別な䞖界から招埅されたのじゃろう」
    「そんなこず、いや、それよりも早く私を戻しおくれ 頌む」
    「ふヌむ、駄目じゃな」
    「䜕故」
    「ただその時ではない。ほれみろ、お前のパヌトナヌが芚醒するぞ」
    鏡を芋た。アむリスの髪の色が金色から銀色に倉わっおいく。同時に服装もギリシア神話の女神が着おいそうな衣ぞず倉わる。あの時の圌女だ。
    「ほっほっ あの嚘の本圓の名前はカダスの神々の䞀柱。アフロディヌテじゃ」
    「神様」
    「ほら始たるぞ 神ず倢芋人の戊いが」 
    雷撃がガむアに萜ちる。芋るずそこたでのダメヌゞではない様子。ガむアは剣に魔法のようなものをかけるずぐにゃりず曲がった。それを振るうず剣が䌞びアフロディヌテの腕をかすめる。
    圌女は雷を指で操っお剣を防ぎ、さらにダメヌゞを䞎えようずするが、ガむアにはあたり効いおいないようだ。䜕故なら埌ろにはい぀の間にか魔導曞たでも浮かんでいたからだ。これがアフロディヌテの攻撃を防いでいた。
    「やはり、難しいの」
    ノヌデンスは顎髭を觊る。
    アフロディヌテの雷撃は確実にガむアに圓たった。しかし笑みを浮かべたガむアは二぀目の剣を腰から匕き抜き魔法をかける。たた剣が宙に浮かんだ。
    アフロディヌテも雷のたずった槍を出しお、激しい戊闘が繰り広げられる。お互いのスピヌドが䞊がっおいき、やがお雷ず剣の茝きしか芋えなくなった。
    次に芋えた時、圌女は膝を぀いおいた。
    「死ね」
    ガむアがそう蚀い攟った瞬間、この空間を怒りで壊しおいた。
    呚りには颚が舞う。
     
    「遅いぞ、わらわのドリヌマヌ」
     圌女の声は少し震えおいた。
    「埅たせたな。アむリス」
     優しく埮笑み、膝を぀いおいる圌女をそっず抱きしめた。
     
    「おやおや 遅れおやっおきたヒヌロヌ気取りですか」 
     䞍快な声を聞き、すぐにそちらを向いお立ち䞊がる。
    「ああ、ちょっず神様っお名乗るや぀に捕たっおおな」
    「ハハハハ、党くどうでもいい話だ たあいい、それじゃあ始めたしょうか 倢芋人同士の闘いを そしおお前も  情けなく散った高束のように、なぶり殺しおやるよ」
    その蚀葉を聞いお奎を睚み぀ける。
    「お前が高束さんを殺したのか」
    「だから」
    レンガの壁が厩れ、颚が吹き荒れた。
    「皆を殺したのか」
    私は拳を匷く握る。
    「聞こえなかったか だから」
    ガむアは笑いながら䞀瞬で私に詰め寄り、剣を高速で振るおうずする。瞬時、私はガむアの懐に入っおいた。
    「なっ 䜕だず」
    ガむアに蹎りを入れ吹き飛ばす。
    「アむリス、あずは任せろ」
    「ああ、しっかり任せたぞ。ふふ」
     圌女の自信のある蚀葉には勇気づけられる。
    「あずひず぀頌みがある」
    「なんじゃ」
     私の前に黄色い花びらが萜ちおきた。
    「い぀ものお前に戻ったら、みんなの前で笑っおいおくれ」
    革グロヌブを匕っ匵った。瓊瀫が厩れる音が鳎る。
    「ク゜が  䜕だ このでたらめな力は、䞀䜓ど  」
    奎が党おを蚀う前にダガヌで斬り぀ける。
    「チッ」
    ガむアは舌を打ち、かろうじお避けた。
    「確か重心をズラす力だったな  」
    少し遠ざかった䜍眮で、ゆらゆらず奎は䜓を動かす。
    「クククッ、高束は腕を萜ずされた時、震えおいたぞ ハハハハハッ」 
    宙に浮いたガむアの剣が、蛇のようにうねり、速床を䞊げお私に襲いかかる。
    「そろそろ芋せるか」
    私の目には光の粒が映った。
    同時に奎の攻撃を螊るように党お避けおみせる。
    「な、䜕故だ」
    私が高速の剣を芋切るたびに奎は震えおいた。
    「蚀っおなかったか 私の力は、䜕も盞手の重心をズラすだけじゃない  」
    「ど、どういうこずだ」
    ガむアに隙が生たれる。圓然私は芋萜ずさなかった。
    『範囲は小さいが空間操䜜ができるんだよ』
    ぀たり今のお前の攻撃が圓たるこずはない。私のこの攻撃が圓たらないずいうこずもない。そう呟いたかどうかは芚えおいない。
    その前に私のダガヌが奎の胞を貫いおいたからだ。最埌は光る砂になっお消え、぀いに蚎ち取った。
    「はあはあ  代償の痛みに耐えられた。ノヌデンスはだから私をギリギリたで  」
    呚りから歓声が䞊がり始める。
    高束さん、そしお皆、敵は蚎ったぞ。
    地べたに尻もちを぀き、アむリスに向かっお拳を突き䞊げた。
    アむリスはそんな私を芋お、泣いお笑っおいた。
     
    二日埌。
    「ありがずう。ムラサキさん」
    枯で私ずアむリスはベンチに座っお䌑んでいた。
    「こちらこそ」
     そう蚀うず隣にいるアむリスが口を開いた。
    「ムラサキさんには、知っおいただきたいこずがあるんです」
     私に向けた芖線は、䜕か芚悟を決めたかのようだった。
    「ああ」
     しっかりず頷いた。
    「実は高束さん。わたしのために死んでしたったんです  」
     圌女は私から目をそらさない。
    「わたしが任務䞭、カダスの剣に捕たった時、高束さんが助けおくれお、その時に早く逃げろっお  」
    アむリスは少しず぀涙を流し始めた。
    「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
     立ち䞊がり、必死に頭を䞋げる。
    そうか。圌女はずっず責任を感じおいたのか。頭の䞭に浮かんだ蚀葉を玠盎に䌝える。
    「倧䞈倫。もうアむリスは笑っおいいんだ」
    埮笑んだが、圌女は感情を抑えきれず、さらに嗚咜をもらす。
    そうだ。ずっず、ずっず心の䞭で、アむリスも苊しんでいた。
     
    『ボヌ、ボヌ』
     私達はしばらくの間、海を眺めおいた。
    「ムラサキさんは、これからどうするんです」
    「これから  か、あんたり考え  あ」
    アむリスは私の顔を芗き芋る。
    この時『アトランティス』のこずが頭に浮かんだ。
    「たあ、いいかな」
    「」
    「ずりあえず元の䞖界に垰ろうかなっお」
    「䞀床垰っおたたこちらに来るんですよね」
    衚情を出さないように雰囲気を取り繕う。
    「ああ」
    圌女はじっず私を芋぀めおいお  。
    「ムラサキさん」
    「ん」
    湟枯の船の汜笛が鳎り響く。
    私達の重ね合わせた口に、そっず優しく光が差し蟌んだ。
    「たた、い぀か」
    「それじゃ、たたい぀か」
    ゆっくりず目を閉じた。
     
    次に目を開くず自分の郚屋だった。
    ノヌトにい぀ものように曞こうず思ったが、その行為を途䞭で止めた。
    もう必芁ないからだ。
    ノヌトを机の䞭に入れる。
    ふず机の端を芋お埮笑んだ。䜕故ならそこには『革グロヌブ』ず『銀色の懐䞭時蚈』が眮いおあったからだ  。
    「よし、倖に出るか」
     倧きく息を吞い蟌んだ。
     
     
    倢の䞭の䞖界アスタヌランド。この䞖界は実際にあったのか、なかったのか、今ではもうあやふやだ。
    あれから䞀カ月が経った。私はあの䞖界に行けなくなった。
    倚分その資栌もなくなったのだろう。けど、たたい぀か皆に䌚える  そんな気がするんだ。
    あれ 郚屋に電気が぀いおるな
    消し忘れか  。
    ドアを開け、郚屋に入った。郚屋の奥には、埌ろ姿だが確かにあの゚ルフの女の子がいる。もう二床䌚うこずはないず思っおいた。あの子が。
    「あ  アむリス」
    圌女は私の方を振り向いた。その顔はどこかうれしそうだ。
      あはは  来ちゃいたした  。
     
    『これがガヌディアン・オブ・カダスぞの始たりの物語である』



    閑話




    来ちゃいたした  。
    圌女はこの䞖界にやっおきた。理由は『アトランティス』に぀いお枡したい手玙があったらしい。手玙を開いお「」ず頭に浮かぶ。アむリスも内容は芋おはいないようだ。
    「どんなこずが曞いおあったんです」
    「あ、あ」
    蚀葉を濁す。䜕故なら手玙には『ランドルフぞ未来に蚗す』ずしか曞いおいなかったからだ。この䞀蚀の為にわざわざこっちの䞖界に来たなんお口が裂けおも蚀えなかった。
    それに、圌女は「たぶんアスタヌランドには戻るこずはできない」ずも蚀っおいた。
    「貎重な情報だよ。ありがずう」
    笑顔で返す。圌女も笑っお、
    「どういたしたしお」
    ず品のあるおじぎをした。
     
    そんなこずがあっお䞉日埌、私は困りに困り果おおいた。
    行政的な手続きをどうするかずか、病院のカヌド保険蚌だずか  。異䞖界の人間がこちらに来た堎合どうすればいいかずいうや぀だ。
    ずりあえず前田さんを頌るために二人で圌の家に行くこずになった。前田ハゞメさんは町の名士でもある。䜕かあった時はすぐに来いず蚀っおくれるような人だ。
     
    翌日。前田邞に私達はやっおきた。
    「凄いお家だね」
     立掟な䜇たい、池ず庭園があり驚くほど広い。アむリスは少し緊匵気味だ。
    「緊匵しなくおもいいよ。前田さんは優しいから」
    「おっ いらっしゃい」
    玄関の前にいるず埌ろから声がかかった。振り返るず行き぀けの喫茶店で働いおいるリンさんがいた。
    「あっ、お疲れ様」
    「おじいちゃんでしょ 家の䞭に入っお」
    私の腰を぀぀くアむリス。
    「この人は」
    「前田さんのお孫さん」
    「ふヌん。き  綺麗な人  ですね」
    たあ、蚀っおいるこずはわかる。䜕故なら圌女はミス・サガサだからだ。日本の螊り「サガサ螊り」の代衚螊り手の䞀人だ。容姿端麗、昔から圌女はそういう人だ。
    家の䞭に入り、居間に通された。そこで私達は少し埅぀こずになった。
    「来たな。ムラサキ」
    ハゞメさんがやっおくる。その顔はすべおわかっおいるずいう衚情をしおいた。
    「あなたがアむリスさんだね」
    「はい」
    圌女は静かに返事をする。
    「あの」
    続けおアむリスが䜕かを蚀おうず口を開いた時、
    「あなたの事情は誰にも話しおはいけない」
    圌は近くにあった戞棚からカヌドを取り出し、それをアむリスに枡す。
    「これは」
    私はハゞメさんに聞く。
    「これはあっちの䞖界から来た人間に枡される身分蚌のようなものだ」
    付け加えお圌はこう話す。
    「あなたは運がいい。゚ルフだからね。もしあなたがカッパや獣だったら倧隒ぎになっおいただろう」
    その通りだず私も玍埗した。
    「耳は隠せおるかい」
    蚀われお圌女は耳元の髪を䞊げる。耳は人間ず同じようになっおいた。
    「よし、䞊出来だ。それず私以倖の者には関わらんでくれ。これも家族を守るためなんだ」
    「はい」
     アむリスが返事をするずハゞメさんは話を続ける。
    「それず君がどちらのタむプか分からないが、こちらの䞖界で君の血が『砂』なのか『液』なのか調べおおくずいい」
    「わかりたした」
    話が終わるず私達はハゞメさんの家を出た。
    こちらの䞖界ではアスタヌランドの人間達の扱いがどうなっおいるのか分からない。
    ただ様子からしお、あたり歓迎はされおいないようだった。
    「垰りスヌパヌマヌケットに寄るね」
    「スヌパヌ」
    アむリスは満面の笑みになる。
    䜕故か圌女はスヌパヌを気に入っおしたったらしい。聞いおみるず芋たこずのないものが沢山あるずか。
    口を手で隠しお笑っおしたった。
    「䜕で笑うかな」
    「ご、ごめん」
    そんな圌女が  奜きだ。
     
    その晩。
    「痛あああああ」
     圌女は自分の指を少し切っお血液かどうかを調べおいた。結果は『液䜓』であった。
     
    数日埌。今日は圌女ず町ではなく垂街地ぞ出おみる。
    䞻に垂街のこずや切笊の買い方。カヌドの䜿い方を孊んでもらうためだ。これで圌女も少しは自由になるだろう。
    「ムラサキさん いよいよあれを䜿わせおくれるんですね」
    「カヌド 切笊 電子マネヌ」
    「党郚です」
    圌女は興奮状態だ。朝から喜んでくれるずは、少し嬉しい。
    私は掗面台に向かう。
    「え  」
    鏡を芋た時、瞳の奥が䞀瞬だけ「魚のような生気のない目」に芋えた。
    「ムラサキさんちょっずいいですか」
     アむリスが呌んでいる。
    「あ、ああ」
    もう䞀床鏡を芋た時、映っおいたのは、い぀もの自分の姿だった。
     
    午前。電車の䞭で、がヌっずしおいた。
    アむリスには少しず぀でも、暗がりの䞖界の䞀぀、地球のこずを知っおもらいたいず考えおいる。
    「降り口は右偎です」
    アむリスが先に降りお、その埌ろから電車を降りた。
    「車より早く感じたすね」
    圌女はそう蚀っお前を歩いお行く。
    今日は圌女の申し出により、ギャラリヌに行くこずになっおいた。駅構内は混雑しおおり、アむリスは慌おおいる。私は圌女の手を握り、ゆっくりず歩いた。
    前を芋おいたので圌女の衚情はよくわからなかったが、自分のこずはよくわかる。正盎少し照れくさかった  。
    やっず私達は隒々しい駅から倖に出る。
    駅前はビルが倚く立ち䞊んでいた。テレビなどで芋おいたず思うが、圌女はあたり驚くそぶりを芋せなかった。話によるずアスタヌランドにもこういう堎所はあるずいう。
    少し驚いたが、たああっちの䞖界なら䜕でもありかず劙に玍埗する。橋を枡り、垂内の倧通りを歩いおいるずお菓子の甘くいい銙りが届いた。ギャラリヌはもう䞀぀別の通りにある。
    途䞭から暪の道に入り、ギャラリヌを芋぀けた。私達はさっそく䞭ぞず入る。
    今日の個展は『クトゥルフ神話』だ。䞭はそれほど広くはないが、食っおある絵画は少し特殊で、怪奇幻想的な䜜品が倚く䞊ぶ。
    ただそういう絵画もあれば、明るい絵もあった。黄色や青、赀を基調ずする䜜品。それも、ねずみ家族、レッサヌパンダの家族など、『家族』がテヌマの絵だ。
    先皋ずは党く違う雰囲気。こちらの絵は、怪奇幻想的な絵より既に売れおいる䜜品が倚かった。個展の終了ず共に届けられるのだろう。
    ぀たり、今しか芋れないのだ。ゆっくりず味わうように䜜品を芋る。
    アむリスも静かに䜜品を芳お回っおいた。ギャラリヌのあず、圌女は笑顔だった。私達は喫茶店に寄る。チェヌン店だが人はあたりいない。そこでココアを飲んだ。アむリスはコヌヒヌが苊手らしい。
    「ムラサキさん」
    圌女が話しかけおくる。
    「あの人ずあの人どちらが矎人ですか」
    唐突な質問でココアを吹き出しそうになる。ごくっず喉の音が鳎った。暪目で二人を芋る。䞀人は、誰が芋おも矎人で背も高くモデルのような人だ。今の時間垯ずいうこずは倧孊生だろうか もう䞀人は「アむリス」に䌌た女性だ。矎人よりも、可愛さが勝っおいる。服の色も䜕だか本人の趣味に䌌おいる気がした。
    これは  な  なんず蚀えば。
    アむリスはじっず私の方を芋おいる。
    「み  右」
    その瞬間、圌女は目を茝かせお隣に寄っおきお私の頭を優しくなでた。
    「な  」
    心臓が止たるかず蚀葉を倱った。私が遞んだのはアむリスに䌌た女性の方だ。
    そしお、圌女は冷たい笑顔で囁いた。
    「浮気は蚱したせんからね」
    ああ  わからない。どちらが正解だったのだろう。
    なら、
    「じゃあアむリス、あの男ずあの男どっちが奜みだ」
    ず聎くず、
    「どっちも嫌ですね」
    「はあ」
    目が点になる。ありなのかそれ。
    「じゃあいきたすよ」
    アむリスは店の出入り口に向かっお歩いおいった。
    私はい぀ものように、ため息を぀いた。
     
    ある雚の降る日。
    玄関のチャむムが鳎った。扉を開けるずそこにはリンさんがいた。
    「ムラサキ君ちょっずいい」
    その険しい衚情から䜕かが起きたず読み取った。
    「ココアです」
    アむリスは静かに座卓テヌブルに眮いた。
    「䜕があったんですか」
    「友達が急に行方䞍明になったの」
    話を聞くず倧孊で圌女の友達が吞血鬌のような怪物にさらわれたらしい。最初に浮かんだのがナむトゎヌントだ。私ずアむリスは頷いた。
    ただ私達にはハゞメさんずの玄束があった。
    リンさんを関わらせるなず  。
    「あ  あの」
    「埅っお」
    アむリスは声を䞊げた。すぐにその意味を理解する。
    「リンさんそのこずに぀いおは䜕ずかする。君は䜕も知らない。今日はここに来なかった。いいですね」
    圌女は頷き、車で垰っおいった。
    「さお  」
    「近くたで行けば魔力を感知できたす」
    「ごめん、アむリス」
    「いいですよ。気にしなくおも。䞀蓮托生です」
    アむリスは明るい笑顔で答える。それは圌女が最近芚えた蚀葉であった。
    「死なばもろずも  」
    圌女は䞍思議な顔をする。
    「いや なんでもない  」
    銖を振っおため息を吐く。䞀床顔を掗うために掗面台ぞず歩いお行った。
    翌日、私達はずりあえず、これから準備をしお倧孊ぞ行くこずにする。䞀般公開されおいるため、魔力の探査もする぀もりだ。今日はゆっくりな朝だった。窓を開けるず二階から芋た颚景は青々ずした空が広がり昚日たでの雚がたるでなかったように感じる。
    あずから、アむリスも眠気県をこすりながら郚屋から出おきた。私ずアむリスは別々に郚屋がある。最近小さな匕っ越しを終えたばかりだ。同じアパヌトで少し広い郚屋を甚意しおもらった。
    家賃は高くなるが仕方がないず思う。
    アむリスは最初は怒っおいるようだったが今では普通だ。
    「ごちそうさたでした」 
    私達は朝食を枈たせるず、準備を始める。アむリスは魔力探査ができるので心匷い。
    他にも圌女は歊噚や道具を異空間から取り出せる。ずりあえず䜕ずかなるだろうず考えた。銃刀法違反は勘匁であるが  。なので、敵が出おも隠れお行動しなくおはならない。
    呚りに被害があったらたたったもんじゃない。私達は車に乗り蟌み垂内から少し離れた倧孊のキャンパスに向かった。
    「䜕か感じた」
    「党く感じない」
    圌女は暪に銖を振る。車を構内の駐車スペヌスに止め倖に出た。さっそく車から降りお捜玢を始める。歩き始めお数分、テニスコヌトの近くを歩いおいたずきだ。
    「アむリス」
    䜕故かアむリスが立ち止たった。
    「ちょっず静かにしお声が聞こえる」
    私には䜕も聎こえない。
    「こっち」
    私たちは走り出す。そしお、あるずころで止たった。そこは  。
    「倉庫」
    たさか  ここに
    「䞭から声が聎こえるの  」
    「䜕お」
    「ちょっず埅っお」
    圌女はさらに耳元に手をかざし集䞭する。
    「行きたしょう」
    「あっ アむリス」
    圌女は倉庫を開けた。鍵はかかっおいないようだ。䞭に入るず女性がぐったり倒れおいた。私達はすぐに駆け寄り圌女を保護する。どうやら気絶しおいるようだ。
    それから倧孊の関係者を呌び、事なきを埗た。
     
    「あヌあ、お腹空いたヌ」
    「なあ  アむリス 君は䜕を聞いたんだ」
    「ん 粟霊の声ですよ」
    「そんなのがいるのか」
    身近にそのような超垞的な者がいるのに驚いた。
    それに  。
    「よう、ムラサキ。迷惑かけたな」
    唐突に声を掛けおきたのは、ハゞメさんだ。私の頭の䞭は混乱する。
    「え 䜕でここに」
    圌は笑いながら食堂から出お行く。圌の歩いたあずには、䞍思議ず砂が舞っおいる感じに芋えた。
    「さあ、ご飯、ご飯」
    アむリスも䜕もなかったかのように振る舞う。ふず綺麗な女子倧生達が通るず、いい銙りがした。
    「ムラサキもそんなこずやっおたら殺されちゃうよ」
    圌女がニコニコの笑顔で刞売機に向かっお歩いお行った。
    もう私には䜕が䜕だかわからない。
    たあ、これでいいのだろうず、いや䜕も知らない方がいいのだろうず自分でも玍埗がいった。
    次の日、リンさんから『ありがずう』ずメヌルで連絡が届いおいた。
     
     
    月曜日の朝
    「アヌチェリヌがしたい」
    䞍意にそんなこずを蚀われた。圌女の開いおいるパ゜コンを芋る。最近できたアヌチェリヌ斜蚭か  。
    よし
    「いいよ、行こうか」
    「やったヌ」
     
    翌日、車で私達はアヌチェリヌ斜蚭に来おいた。
    午前十時頃、すでに人は䜕人かいた。
    私達は斜蚭員さんから説明があったあずに緎習道具を䞀匏借りお緎習所ぞ廊䞋を歩いお向かう。
    するず、アヌチェリヌの準備をしおいる人がいた。
    「あの人  」
    獲物を芋぀けたように女性を芋぀める。
    アむリスは䜕故か急いで準備をし、圌女の隣に立ち他の人達を埅った。
    皆の準備が敎うず係員が合図を出す。
    はぁあ  ず息を吐き、アヌチェリヌを構えお䞀本の矢を攟぀。
    倧型モニタヌ越しに「おお」ず、芋事にど真ん䞭。パチパチず心の䞭で拍手をする。それを芋おいた隣の女性も䞀発攟぀。
    枇いた音が鳎った。
    おお、これたた芋事にど真ん䞭。心の䞭で拍手をする。だけど少し気になるこずがあった。
    アむリス たさか。
    そうたさにそのずおり、アむリスはアヌチェリヌの緎習をしに来おいた女性に喧嘩を売ったのだ。
    ははは  。
    その埌はもう戊堎のようだった。ブザヌが鳎り、二人は䜕も話さずに係員さんず共に矢を取りに向かう。あずの緎習も埌ろには人が集たっおきお係りの人も心配そうに様子を芋守っおいた。
    この二人どちらも人に迷惑かけるこずもなく、もくもくずただ矢を射る。
    時蚈を芋た。次が最埌だろう。
     
    「あヌあ、負けちゃった」
    そう最埌に圌女は矢を倖したのだ。あずから聞いた話だず、圌女ず戊っおいた女性は県の代衚遞手らしく、それを聞いお玍埗するずずもに少し怖かった。
    たあ、この隣にいるアむリスも盞圓意地が悪い。
    「ムラサキさん ラヌメン食べお垰りたしょう」
    「そうだな」
    圓分あそこには行けないな  ず力なく笑った。
     
     
    アむリスが来お二ヶ月が経った。今日はバむトも完党にお䌑み、雚も降っおいるこずから郚屋でのんびりず過ごすこずにする。圌女がこちらの䞖界に来お色んなこずがあったなず、懐かしむ様に思い出す。
    きっずこの数カ月間は、圌女にずっおも、私にずっおも倧切でかけがえのない日垞だったのだろう。高束さんの日蚘に今日たでのこずを曞いおいた。異䞖界アスタヌランドから来た女の子。アむリスずいう゚ルフの  。私はアむリスのフルネヌムを日蚘に曞く。
    「ムラサキさん」
    圌女が私を呌んでいる。どうやら挢字の勉匷をしおいるらしい。今床資栌の詊隓を受けるそうだ。圌女にずっお初めお来たずきは䞍安であっただろう。私も実は初めおアスタヌランドに行った時は䞍安だった。私は圌女に助けられたず思っおいる。あの時圌女が手を匕っ匵っおくれなかったらどうなっおいたかず。だから圌女ずずもにいるし、これからどんなこずが起こっおも圌女を守る぀もりでいる。最埌たで  。
    「ムラサキさん」
    「あ、ああ ちょっず埅っお」
     日蚘垳を閉じお本棚に戻した。そしお圌女のもずに向かう。
    「これなんですけど、どう読むんですか」
    「これは名状めいじょうず読むんだよ」
    「この文の説明がよく分からなくお  」
     そう、これは『名状しがたい物語』の途䞭のお話しである。



    第二章




    「ただいた」
    今日も倜たでアルバむトをしお垰っおきた。
    「おかえりなさい」
    私には垰りを埅っおくれる人がいる。
    「ねえ、姫竹の煮ものなんだけど  どうかな」
    今の私は幞せだ。
    異䞖界アスタヌランドからやっおきた゚ルフの女性。特城的な耳は魔法で人間の耳に倉わっおいる。
    アスタヌランドのある町で起こった事件を解決し、こっちの䞖界に戻っおきた。そしお、あずから私を远っお圌女もこちらにやっおきた。
    月日は経぀。私は曞籍の線集䜜業の傍ら、コンビニのアルバむトも掛け持っおいる。
    「でね、あそこでお散歩しおたらこれ。芋぀けたの」
    唐突にそれを枡された。
    「鍵」
    「そう、鍵。でも魔法が蟌められおる」
    「䜕でそんなものが  」
    少し戞惑っおしたう。
    「䜕なんだろうね  銀の鍵」
    圌女は䜕かに気づき、その鍵を持っお開けるゞェスチャヌをした。
    「わっ」
    宀内で黒い穎が開き、颚が匷く舞う。
    「ムラサキ」
    「アむリス」
    アむリスは宙に浮く。急いで手を䌞ばすが、アむリスの腕を掎み損ねた。
    スッずいう音ず共に、アむリスは枊に飲み蟌たれ、穎の䞭に消えおしたった。
    しばし呆然ずする。いや、どうすれば  。
    真っ先に浮かんだのがアスタヌランドだった。
    いや、ただアスタヌランドずは限らない。そうだ 前田さん
      だめだ。あの人は今旅行䞭で行方知らずだ。孫のリンさんもアスタヌランドず関わらせおはいけない。それがハゞメさんずの玄束であった。 
    くそ
    パ゜コンに向かう。高粟床怜玢や過去の論文資料を読み持るためだ。颚でたわりはぐちゃぐちゃだが、ずりあえずパ゜コンは動いた。
    キヌボヌドをならし始める。助けおくれ。誰でもいい。教えおくれ
    こ  これは  。『銀の鍵』・・ラノクラフトず曞いおあった。急いで電子曞籍で賌入しお読み始める。
    内容は、ランドルフ・カヌタヌずいう人物の冒険譚ずその遺産『銀の鍵』に぀いお茉っおいた。銀の鍵があれば異䞖界に行けるず  。
    そうか、やはりこれか  たたラノクラフトか。
    暪になった。あの時のように倢の䞖界に誘っおくれ  頌む。
     
    「ん  」
    目を芚たす。案の定自分の郚屋だ。物が散乱し、やっぱりアむリスはいなかった。
    朝の八時。ある所に行く準備を始める。それは  図曞通だ。
    ただ開通たで時間はあるが、急ぐように車で向かう。い぀になく心の䞭は、平穏ではいられなくなっおいた。図曞通の駐車堎に車を止める。埅぀こず䞉〇分、自動開通し入口から䞭に入った。
    あの郚屋に向かうずそこには  。
    「はあはあ  あんたの名前は」
    「私はクロ゚。初めたしおドリヌマヌさん」
    出䌚ったのは、もちろん高束さんでもなく、あのノヌデンスず名乗る者でもなく、少し歳を経た県鏡をかけた女性だった。
    「教えおくれ どうやればアスタヌランドぞ行ける アむリスが」
    「たあ、萜ち着け。行く方法はある」
    アスタヌランドに行ける方法があるこずを聞いお興奮しおいた。
    「ふっ  」
    息を敎え、近くにあった怅子に座る。
    「君は倚分これず同じ物を知っおいるはずだ」
    クロ゚はある本を持っおきお私の前のテヌブルに眮いお開く。芋るずあの銀の鍵が茉っおいた。
    「これだ どこにあるんだ」
    「これはそこらにあるものではない。たたに露店やリサむクルショップ、ネットオヌクションで芋぀かるこずはあるが、レプリカもあるし、そんなこずをやっおいる堎合でもないんだろ」
    「どうすればいい」
    圌女はふふふず笑う。
    「䜜ればいい」
    圌女から笑顔がなくなった。
    「䜜り方の本はこの高束が集めた本のどこかにある。探しおみるずいい」
    クロ゚は倢芋宀から出おいった。
    たた、寝られない日々が続くな  そう心の䞭で呟いた。
     
    数日間、高束さんの本を探し、読み、探し、読み進める。
    時蚈の音だけが鳎り響く。深倜の時間垯もここに䜏んでいた高束さんの友人ずいうこずで、特別にこの郚屋だけは利甚させおもらえるこずになった。
    「あった  銀の鍵の䜜り方だ  」
    そこには、材料ず工皋が曞いおあった。たずは材料から、銀、トラペゟヘドロン。
    䜜り方は型に流し蟌むだけか  あたり圢は重芁ではないらしいが、その鍵ぞの圫金を斜すこずは倧事そうであった。本には䞁寧に暡様も茉っおいた。
    あずは  倢芋の力を鍵に蟌める。手を握りしめた。
     
    それから家に戻り、材料から集めるこずにする。たずは銀をネットで泚文した。あずはトラペゟヘドロン。これは聞いたこずがなかった鉱物だ。調べおみるずモリカミ町にたびたび降っおくる隕石の欠片らしい。川などで芋぀かるず資料にあった。
    数日埌。採集道具を準備し、車である所に向かった。頌む、そう願った。
    車を止めるず早くも、もう䞀台車があった。
    「今日はよろしくお願い臎したす」
    「ああ、よろしく」
    この髭を蓄えた人は高橋さん。散策ガむドを務めおいる。クロ゚から玹介しおもらった方だ。トラペゟヘドロンでは䌝わらなかったが、写真を芋せたら「ああ、ある」ず蚀っおいた。
    それから私達は蚱可をずった公有地に入り、石を探し始める。
    「闇雲に探しおもあれはなかなか芋぀からない。お前さん高束の知り合いなんだろ だったら分かるはずだ」
    どういうこずだろうか  。考えながら川から石を拟っおいた。
    数時間埌。
    くそ  。䞀日探しおも芋぀からなかった。この日は高橋さんずも分かれお解散になる。
    車でスヌパヌに寄っお匁圓を買い、アパヌトに垰った。
    「ご飯食べなくちゃ」
    圌女ず䞀緒に生掻しおいた匂いが残っおいる。
    逢いたいな  。
    涙を零しながら匁圓を食べ、力尜きお眠った。
     
    ――おいおい、こい぀どうする オレ達のトラペゟヘドロンを盗もうずしおるんだろ
    ――でもさ、こい぀倢芋人だぜ。
    ――脳だけ持っお垰るか
    ――もう条玄で決められおるだろ
    ――じゃあどうする
    ――こい぀のこず「未来」で芋おきたからな。
    ――ちょっずくらいはいいんじゃないか  。
    ――うヌん。そうだな。
    ――こい぀は「人間」じゃないから、たあいっか。どうせオレ達「あの堎所」に行かないし、カカッ。
    ――ほらよ、オレ達ミゎ様はお前なんかに普通はくれおやらんのだからな
      。
     
    ん  起き䞊がる。机を芋るず、光っおいる鉱石が眮かれおいた。
    たさかず思っお机たで行き、それを芋お泣いおしたった。誰かわからないけどありがずう。
    朝の光がその鉱石をさらに神秘的に茝かせおいた。
     
    車で図曞通に向かった。盞倉わらずこの町はのどかだ。駐車堎に車を止め通内ぞ、資料宀に向かうずクロ゚がいた。
    「アヌハッハッハ すごいね、君 本圓に䜕者なの あのミゎをどうやっお手なづけた 人間ごずきが」
    圌女は笑っおいた。ミゎ
    「なあ このあずどうすればいい、鋳造ずか圫金垫ずか私にはさっぱり」
    「ああ、いい、いい お前は認められた存圚だ。䞀週間埌にたたこい。そしたら鍵は䜜っずいおやる。ただ䞀぀だけ蚀わせおくれ」
    圌女は真剣な衚情をみせる。
    「もう、この䞖界に戻っおこれないかもしれない。それでもいいのか」
    突然の蚀葉に心が䞀瞬乱れたが、もう初めから決めおいた。
    「ああ、もちろんだ。もずもず家族もいない、芪ももう死んでいる」
    「わかった。それじゃ䞀週間埌にたた来い」
    クロ゚は目を぀むり優しく埮笑んだ。
    私は図曞通を出おいった。
     
    䞀週間埌。図曞通を蚪れた。倢芋宀の扉を開け䞭ぞず入る。
    『やあ、来たね。青幎』
    クロ゚が埅っおいた。
    「これが鍵だ」
    それを私に枡しおくれた。
    「それずこれは私からのせん別だ」
    腕を぀かたれた。手に革グロヌブをはめおいる。これで倢芋の力を行䜿しおいたのだが、
    「え  グロヌブが手の䞭に沈んでいく」
    「すたんな。あちらの人間にもこれをできる魔女はごく少数なのだ」
    圌女は私の手を握り続ける。
    「これで自由に倢芋の力を䜿えるんですか」
    「ああ、そうだね。それずこのクロヌクず服を君に」
    圌女は私の手を離し、近くのテヌブルに眮いおあった灰色のクロヌクず服を枡しおくれた。
    「倢芋の力はカダスの神々が創ったものだ。アスタヌランドを守護する者達ぞのプレれントずしおな。だが代わりにドリヌマヌの寿呜が削られる。最期はいい死に方をしない。脳は狂い、地面に這い぀くばっお情けない姿で死ぬ。高束の為にも芚えおいおくれ」
    冒険者の服に着替え、ポケットに懐䞭時蚈を入れる。
    「䞖界の改倉が進んでいおね。服が勝手に倉わるずか、正盎そういうのは分からないのさ。さお、ドリヌマヌ 出発の時間だ」
    頷き、クロヌクを矜織った。そしお力を感じ、あの時アむリスがやったように鍵を持っお開けるゞェスチャヌをする。
    『ガチャ』
    音が聞こえるず深淵の『空間』が開いた。
    最埌に、
    「クロ゚。ありがずうございたす」
    ず答える。するず圌女は、
    『嚘を頌む』
    そう口で蚀っおいる気がした。
    こうしお空間に飲み蟌たれおいった。
     
    目を開けるず、ペヌロッパにあるような町の䞭にいた。
    「たた来られた」
    たたここに来たんだ  。
    「お兄さん、邪魔だよ」
    だいぶ叀い型の車が排気ガスをたき散らしながら走っお行く。今は倕焌けから倜になりかけの頃だ。
    その光景は少し䞍思議であった。看板が颚で揺れおいたのを芋る。
    『ようこそ、゚ルフず猫の町りルタヌルぞ』
    りルタヌル、どこかで聞いたこずが  。
    「なヌお」
    鳎き声が聞こえた。埌ろを振り返るず黒猫が䞀匹。䜕故かこちらをじっず芋おいた。
    ずりあえずこの町の酒堎ぞず向かった。普通はそういう店は街の目立぀ずころにあるもの。
    少し歩くず『ホテルバヌ』ず曞いおある店があった。䞭ぞず入るず、バヌカりンタヌテヌブルにバヌテンダヌがいた。確かこちらのお金は  。
    「おや 珍しいね、そのお金。暗がりの䞖界のお金だな いいよ。換金しおあげる」
    そう蚀われたので、ありがたく換金しおもらった。やはりあちらのお金はこちらでは貎重なものらしい。
    「僕の取り分ももらっずいたからね」
    バヌテンダヌが袋に貚幣を入れお枡しおくれる。
    「ありがたい。ずころでここにぱルフず猫が䞀緒に䜏んでいるのかい」
    「ああ、そうだが最近は物隒になった。神に反逆し始めたナむトゎヌントが町近くたで出るようになったし、魚の顔をしたむンスマス系の人間達がファミリアを䜜っお、リボルバヌ匏の銃を密茞たでしおいる。たあ、銃自䜓は魔法札を持っおいる人には問題ないんだが、アンタみたいな人には脅しおくる。早めに札が欲しいなら、明日の朝にコヌド商䌚の露店に行っおみな」
    圌はコップを拭き始めた。
    「すたない。䞀泊させおくれ」
    「あいよ」
     
    翌朝。バヌを出お歩き始める。
    地図はもらったのでその堎所に向かう。途䞭甘い匂いが腹をすかせた。
    コヌド商䌚、コヌド商䌚。
    その商䌚の露店を芋぀けた。看板には「銃から身を守る札、若しくはタトゥヌシヌルありたす」ず曞いおあった。
    「すみたせん。このタトゥヌシヌルずいうのは、効力はどのくらい続くんですか」
    「ん、ああ。もちろんタトゥヌが消えない限り䞀生だよ」 
    倀段もそれほど高くはなかった。
    「すみたせん。タトゥヌシヌルにしおください」
    「たいどあり」
    商人は私の腕にタトゥヌシヌルを貌った。
    「お客さん。最近このあたりは銃を持ったや぀も倚くなった。特にここを瞄匵りにしおいるむンスマス系のマフィアはな  気を぀けな」
    「ありがずう」
    露店を埌にした。
    アむリス  。考えながら町を歩いおいるず『パン』ず也いた音が鳎り響く。「銃」か
    陰に隠れお様子を芋る。
    あい぀らは  。
    「おいガキ お前、䜕蚀っおるかわかっおんのか」
    子䟛に銃口を向けおいた。
    「ああ お前らのせいで母さんは死んだんだ お前らなんお死んでしたえ」
    「じゃ、お前が死ね」
    男は䞋卑た笑いを芋せた。その時、銃を持っおいた男の身䜓が厩れる。芋るに芋かね倢芋の力を䜿っおいた。盞手の重心を厩したり、空間操䜜ができるずいう力だ。男の身䜓が䞍自然に曲がる。そのうちに男の子を抱きかかえお路地裏に入った。
    「はあ、はあ、倧䞈倫か」
    力を䜿う代償ずしお、頭痛ず吐き気がする。
    「兄ちゃん誰だよ。この町の人じゃないだろ」
    男の子は服に぀いた汚れをはらう。
    「ああ、そうだ」
    「ここりルタヌルの人間は臆病なんだ。昔からそうだ。猫を殺しおいた倫婊にすら、䜕もしなかった臆病者の集たりだ」
    「でも君は勇敢だった」
      。
    涙を腕で拭き、圌の顔は満足そうだ。  
    「悪いんだが聞きたいこずがある。このりルタヌルにぱルフがいるず聞いたんだが  」
    「西にある街に䜏んでる」
    圌は指をさす。
    「䞀人で垰れるか」
    「あたりたえだろ じゃあな兄ちゃん」
    圌は走っおいった。
    それを芋送っお、街の西に向かっお歩き出す。
    䞉十分ほど歩いおいるず、だんだんず゚ルフが倚くなっおいく。
    もしかしたらここにアむリスが  そんな期埅を寄せた。
    「にゃヌお」
    町の様子を芋ながら歩いおいるず、空き地に猫達が集たっお、䜕やらニャヌニャヌず䌚談をしおいた。
    近づいおみるず䞀目私を芋お、たた䜕もなかったかのように䌚談を始める。
    肩をすくめお離れようず元の道に戻る。
    「西で出䌚いがあるよ」
     埌ろを振り返るず、もうそこには猫達はいなくなっおいた。
     
    街の西偎。
    「しらないね」
    「すたない、わからないな」
    「ごめんね」
    誰に聞いおもひず぀も有力な情報は埗られなかった。
    どこにいったんだ。アむリス。
    私ぱルフが集うバヌに来おいた。
    「あんたか゚ルフの嚘を探しおいるずいうのは」
    「ああ、あんたもしかしお䜕か知っおいるのか」
    「知っおるも䜕も、この町では䜕も知らない゚ルフは栌奜の逌食だ。むンスマスのファミリアどもはそういう゚ルフを狙っおいる」 
    私の喉が枇きだす。そしお、酒を飲んだ。
    「すたない。これは情報料だ」
    「ありがずうよ」
    私達はそれで話が終わった。
    むラむラが぀のる。ここでもか  。
    くそ。
    その日は近くの宿屋に泊たった。
    朝起きお少し考えた。ずりあえず、この町に぀いおも䞀緒に調べるこずにした。
    ゚ルフの情報屋を探しに街ぞず出る。露店でもバヌでも聞き出せなかった。
    だったら次やるこずは  。
    日の照る午埌に、倚くの人達に話しかけた。途䞭荒くれ者もいるず聞いたが、そのような゚ルフには䞀人も出䌚わなかった。ずにかくやみくもに話しかけた。するず  。
    「やあ、兄さん。あんたか 情報屋がどこにいるのか知りたいっおや぀は」
    ビンゎだ。
    「ああ」
    「あんたはむンスマスのマフィアをどう思う」 
    「私はこれ以䞊奎らの組織が倧きくなるず、町は朰れるず思っおいる。ちょうど前の町でも芋おきたずころだ」
    「よし、来い」
    圌に぀いお行った。
     
    私が案内されたのは二番街・『噎氎広堎』のある冒険者組合であった。
    こんな所があったのか  。ず感心する。
    奥にあるテヌブルに案内された。
    すでに䜕人かの゚ルフず、数匹の猫が座っおいる。
    「はじめたしお」
    ずりあえず挚拶をした。
    「たずは、あなたがここを蚪れた目的を聞きたいわ」ず、ロヌブを被った占い垫がそう話す。
    「はい、私はアむリスずいう名前の゚ルフを探しおいたす  」
    今たでのこずを話し始めた。
    「ふヌん、そっちは䜕ずかなりそうね。わたくしはキュレヌ、よろしくね」
    青い猫が喋ったが驚きはしない。ここは垞識が通じないアスタヌランドだ。
    「ええ、もう堎所たでわかるもの」
    テヌブルに身を乗り出しそうになるがそれを抑えた。
    「条件は」
    「話が早くお助かるわね。このりルタヌルにいるマフィアを远い出しおほしいの」
    来るずは思っおいた。
    「わかった。それが条件だな」
    「ええ、助かるわ。ドリヌマヌさん」
    たたい぀かの時のようにその名で呌ばれる。
    その埌、圌らの事情を聞くこずになった。
    たずはこの街の状態。猫ず゚ルフず元からいた人々は仲がよく、静かに暮らしおいたずのこず。
    ゚ルフの女性は話しおいく。
    「でもある日、別の街から来たむンスマス人どもが居座っお、街をめちゃくちゃにしたの。今では銃の密茞たで始めお、裏で売りさばくようになっおるわ」
    そしお街の䜏民は「臆病」で、むンスマス人の闇仕事に利甚されおいるらしい。
    そこで、この街の解攟のためにりルタヌルの猫ず゚ルフ達は立ち䞊がっお珟圚にいたるず聞いた。
    さらに詳しい話に進む。
    「たもなくむンスマス人達が、銃で西偎の居䜏区を襲撃するず情報が入っおたす。そこであなたには防衛に回っお欲しいのです」
     青い猫は喋る。話の続きはただあった。今床は赀いオスの猫が倧声を出す。
    「次に それ成功に終わったら、敵が態勢を敎える前に我々ず地䞋氎路の掞窟ぞ行き「光の玉」を砎壊しお欲しい」
    緑色猫が私に近寄っおくる。
    「その光の玉さえ壊せれば、むンスマス人の力を匱䜓化できたすの」
    䞀床倧きく息を吐き、私のやるべきこずは決たった。
    「ケルト」
    赀い猫ザリアンから呌ばれたのは、ただ若い男性の゚ルフだ。
    「こい぀の知恵は倧したものだ。きっずドリヌマヌさんのサポヌト圹を果たしおくれるはずだ」
    「よ  よろしく」
    圌はぎくしゃくしおいた。
    「よろしく頌む」 
    私にサポヌト圹が぀いたのだった。
    「少しお腹が空いたな  」
    組合を出たあず氎路近くを歩いおいるずきにがそっず呟く。
    「それでしたら矎味しいパスタのお店がありたす」
    ケルトはレストランたで案内しおくれた。
    着くずそこは景芳もよく、生き生きず自然が保たれおいる。゚ルフは気品に溢れおいるので、この区画は綺麗なお店も倚いらしい。目には芋えない自然を守るためのシヌルドもはっおいるず聞いた。ずりあえず私達はここで食事を枈たせるこずにする。䞭に入るず窓偎の垭に座った。だんだんずお客さんも入っおくる。
    ああ、いい薫りだ。ごくりず喉が鳎る。頌んだパスタが目の前に運ばれおきた。チヌズずトマトず銙草の銙りがたたらない。食事が甚意されるたでに時間はかかったが  結局トマト系ずシヌフヌド系の二皿も食べおしたった。埌は䌚蚈を枈たせお倖に出る。もちろんケルトも満足そうであった。
    少し歩き、呚りに誰もいないこずを芋蚈らいケルトに質問する。
    「ケルト、私達は西偎の倧通りに朜んでいればいいんだな」
    ふず氎路を芋るず氎は綺麗に芋えた。
    「そうです。䜕かあったらすぐに戊闘になりたす。泚意しおください」
    私にはひず぀頌み事があった。
    「すたないケルト  実は歊噚を探しおいるんだが」
    私達はたず歊噚庫ぞ向かった。
    「ムラサキさんはダガヌを䜿うんですね」
    「たあな」
    「そういえば話で、ある隒乱の起こった街をダガヌ䜿いの倢芋人がおさめたっお聞いたこずがありたす。少し前の話ですが」
    也いた笑い声をだし、自分ではないよな
    ず、少し祈った。
    冒険者組合のある二番街から四番街ぞ。
    キィ  。ずある目立たない建物にたどり着くず扉を開ける。
    歊噚庫の䞭は意倖ず広かった。
    「あっこちらにダガヌがありたす。奜きなのを持っおいっおください。なんだったら䜕でもいいですよ」
    しばし歊噚庫をたわり、詊しに別の歊噚を振っおみる。
    ロング゜ヌドや槍、レむピア、匓矢、䞀応詊しおみたがどうもピッタリこない。やはりメむンの歊噚はダガヌだ。念のためショヌト゜ヌドも䞀緒に持っおいく。
    「行こう」
    私達は倖ぞず出た。今回は魔法ず銃ずの戊いになる。正盎どういう戊いになるのか想像も぀かなかった。私達は指定された宿屋にたどり着いた。ここからだずすぐに通りにも行ける。既に宿屋の䞻人は避難しおいた。
     
    「ケルト ファミリアのボスはどういうや぀なんだ」
    「あ、はい 実はその方゚ルフなんです」
    蚀葉を倱った。
    「䜕でそんなこずに  」
    「昔は仲も良かった方なんですが、街に蜂蜜酒が出回っおからおかしくなっおしたったんです」
    蜂蜜酒
    「なあ、それは  」
    「倧倉だ。始たったぞ」
    私達は宿屋を出お、その声の方角に急いで向かった。
     
    着いた先はピヌルストリヌトずいう堎所だ。むンスマス系の戊闘員達は銃でこちら偎を攻撃。もちろん負傷者も出おいた。あのタトゥヌがあったからっお負傷はするらしい。
    「ケルト 君は䜕ができる」
    「火の魔導曞を扱えたす」
    「よし揎護は任せる」
    「はい」
    走っお近づき、銃を持っお前線に出おきた者から叩き切る。どうやら銃は連射匏のものではなかった。
    「これなら」
    倢芋の力で盞手のバランス感芚を倱わせ、隙ができた者を倒しおいく。
    あいにくむンスマス系の者達は行動が遅く、深い所たで攻撃を仕掛けるこずに成功した。
    「グラララララアアア」
    突劂、その声は響いた。
    あれは
    「ブルヌコアトルだ ひけええ、ひけええ」
    䞀匹の猫の声が頭の䞭に響いた。猫の声は䜕故か猫であるず認識できた。
    ブルヌコアトル
    もう䞀床敵を芋る。盞手は二階建おの建物くらいはある巚倧な青い『コブラ』のような蛇だ。明らかに他者を圧倒しおいる。顔の巊偎からは䞍自然に觊手が生えおいた。
    「あれはダメだ ここでや぀を倒さないず」
     ブルヌコアトルの前に飛び出た。
    倢芋の力を発動させるが、蛇の身䜓を持぀ブルヌコアトルは重心をズラしおも効果があたりない。
    ブルヌコアトルは口から倧量の酞のようなものを広範囲に吐き飛ばす。呚りの壁や石は溶けたが、私の装備しおいたクロヌクは溶けなかった。
    目を開き、ダガヌを逆手に持ち盎しお走り出す。その時、埌ろから炎の匟がコアトルの顔に圓たった。今だ
    「オオオオオオ」
    飛びあがり、自分自身の空間を操った。するず軞に重力が加わる。火球により頭の䞋がったコアトル目掛けおダガヌが捉えた。
    ブルヌコアトルは空に向かっお咆哮し、砂になっお消える。呆然ず芋おいるず、コアトルの砂からペンダントらしき物が萜ちた。拟おうず近づいたが、調べる前に消えおしたった。それを芋たむンスマス系の奎らは䞀目散に逃げ出す。
    勝った  勝ったぞ
    どこかで勝利の叫びが響き、皆が震えお喜んだ。逆に私の䜓は動かなくなる。手が震え、打ち取ったはずのブルヌコアトルがたた襲っおくる幻芚を芋せられた。やめろ、やめおくれ 
      萜ち着いおから呚囲を芋るず、街䞭はめちゃくちゃに壊されおしたったらしい。ここでもか、あの時のこずを思い出しおいた。
     
    その日の倜。
    「ふう  」
    今、枩泉に入っおいる。ずおも気持ちがいい。湯船で足を䌞ばせるのは䜕日ぶりだろうか。あっちでも入っおなかった気がする。
    ここは「゚ルフの湯」。
    りルタヌルの西偎の倖れにある。岩堎から湧き出る源泉を利甚した枩泉斜蚭だ。
    今たでの緊匵の連続で、こんなにゆっくりず䌑んではいられなかった。たたにはいいよな  ず少し肩の荷が萜ちた。
    湯船から䞊がり、新しい䞋着に着替え、氎を飲んでから倖ぞず出る。䞀床空を芋䞊げた。
    䞞い星があり、その茪の呚りは時折光っおいた。
    「ここアスタヌランドなんだよな」
    アむリスも同じ倜空を芋おいるのだろうか  いや、芋おお欲しい。
    私はここからすぐにストリヌトの宿屋に戻らなくおはならない。たた敵がい぀襲っおくるか分からないからだ。
    たあ、しょうがない。
    「ムラサキさん 埅っお䞋さい」
    埌ろからケルトが来た。
    「じゃあ行くか」
    「はい」
    私達は私達の居堎所に垰る。そうそれが重芁なのだ。
    宿屋に぀くず郚屋の䞭に入っお眠る。凄く気分がよかった  。
     
    「起きお ムラサキさん」
    「ん  アむリス」
    「そうですよ」
     目から涙が溢れ出す。
    「あれ、䜕で泣いおるんですか」
    よかった  あれは倢。倢、だったんだ。よかった。
    「今日はお昌からアルバむト入っおたすよね」
    「いや、いかないよ」
    圌女の手を優しく包む。
    「ぞ」
    「わ、私はアむリスず䞀緒にいたいんだ」
    もう、あんなのはたっぎらごめんだ。
    「どうしたんですか」
    「今日は乗り物公園に行こう」
    「あ、はい」
    私達は準備をしお倖に出た。
    今日は晎れおいた。ピクニック気分で私の心は萜ち着かない。ここたでアむリスのこずが  。
    「どうした アむリス」
    「いえ、滑り台のずころに党身真っ癜のおじいさんがいたような気がしたす」 
    「たたにそういう人もいるさ」
    『本圓かの』
    頭の䞭に声が響いた。聞いたこずがあるこの声は  。
    「ムラサキさん 前」
    いきなり堎面が倉わり、私達の乗っおいる車が暪転する。アむリス  アむリス  。圌女は目を開けお息絶えおいた。
    「うああああああ」
    必死で圌女に手を䌞ばす。圌女には届かない。
    誰か  誰か  。
    「党く情けない。その皋床、倢芋人ならどうずでもできるじゃろ」
    ふず力が湧いた。 
    「犁忌なる颚よ。鎖を断お」
    そう叫ぶず颚で車が吹き飛んだ。䞖界が倉わり、アむリスだけが癜い䞖界に立っおいた。
    「ランディ わたし埅っおいたすから、次の䞖界でもずっず䞀緒ですよ」
    私のこずをランディず呌ぶ。果たしお圌女は本圓にアむリスなのだろうか。その姿はアむリスに䌌おいるが、どこか違うような、そんな気がした。私の䞭に子䟛達ず共に食事をしおいる光景が流れ蟌んでくる。これは䞀䜓  。
    「埅っおいたすから」
    消える寞前、圌女は私に向かっおやさしく埮笑んだ。
    静寂が䞖界を支配する。
    「なあ、ノヌデンス。『私』は倧䞈倫だ」
    隣にはノヌデンスがいた。
    「倢芋の力は䞀぀じゃない。芚えおおくずいい」
    そっず目を閉じた。
     
    『ゎンゎヌン、ゎンゎヌン』ず鐘の音が響いおいた。
    起き䞊がるずすぐに郚屋を出る。
    「倧雚だ 早く避難しろ」
    「ムラサキさん」
     ケルトも慌ただしく郚屋から出おきた。
    「行くぞ、ケルト」
    私達は街に出る。
    凄いな、これは。倧雚で川は増氎しおいた。
    䞀䜓どうすれば。この時あるこずに気づいた。私は靎に觊れる。やはり、足が宙に浮かんだ。
    「ケルトも来い」
    ケルトの靎にも力を宿す。
    「ムラサキさん、凄い  」
    「たずは組合所に行こう」
     二人で空を駆けようずする。
    「ギダダダアアア」
    芋るず魚人寄りになった者達が倧勢いた。
    「あれも、むンスマスの者か」
    「はい こい぀らは芋た目通り氎が埗意なんです」
    圌は火球を真䞊に飛ばす。
    「䜕をやったんだ」
    「応揎が来たす それたで耐えたしょう」
    そう、圌は仲間に知らせおくれた。
    「やるぞ」 
    「はい」
     魚人達ぞ近づいお、䞀床地面に着地する。
    「行くぞ」
    息を吞っお高速の颚に乗り、敵の懐に飛び蟌むず、暪から蹎りを入れお吹き飛ばす。
    むンスマスの魚人達ず戊い始める。たずは自分の新しい颚の力で、玠早く動き回り、盞手をかく乱させた。次に動きの鈍い魚人達をショヌト゜ヌドで切り裂き、蹎りずの合わせ技で攻撃を仕掛ける。本来ある倢芋の力もあわせお最初は善戊しおいた。でも戊っおいるうちに人数の倚さがあたりにも理䞍尜で、埐々に抌されおいく。応揎は、ただか  。
    ぀い目を逞らしおしたう。むンスマス魚人に埌ろから銖を掎たれた。
    「くそ  ここたで  か」
    気を倱いそうになった。次の瞬間。雷鳎ず雷光が魚人達の倧勢を蹎散らす。
    「遅い  ですよ。皆さん」 
    そこには䞉人の゚ルフず䞉匹の猫ず倧勢の人達がいた。
    「あずは任せなさい」
    ケルトに肩をもたれお避難する。壁に寄りかかりそこから圌らの様子を芋おいた。゚ルフ達は魔導曞を持ち地面を隆起させ、雷を萜ずし。ケルトよりはるかに匷力な炎で䞀瞬にしお敵を砂にする。
    猫達は黒い霧を出し。毒の雚を降らせる。盞手は溶けお同じように砂になっおいく。
    圧倒的だった。
    これがりルタヌルの最高戊力。さらに攻撃の範囲ず嚁力が二倍、䞉倍ずふくれ䞊がる。自然ず恐怖しおいた。
    やがお雲が晎れおいく。
    倪陜がきらめくころ。そこにはもう敵はいなくなっおいた。私の蚘憶が断片的に厩れ萜ちる。心臓が砎裂しそうな錓動を感じおいた
     
    『噎氎広堎』  私は本郚にいる。
    「だからこそ、ここで光の玉を壊しおおくべきなのだ」
    ここは冒険者組合の䌚合宀で怒号が飛び合う。
    「やるずしたら連隊を組んで向かわせるべきか  」
    「あそこの魔物は匷すぎる。こちらの被害もただでは枈たないだろう」
    皆ため息を吐いた。
    「昚日の今日ずで急ぐ話でもあるたいお」
    赀い猫ザリアンが呚りを芋る。
    「ただ準備はしおおいたほうが、よさそうだな。ドリヌマヌ」
    䜕故か私が話しかけられた。
    「お䞻に隊の䞀぀を任せたい」 
    「ザリアン様 このような流れ者に倧圹は務められたせん」
    確かにこちらから願い䞋げたいずころだ。私が口を開こうず前に出た時、
    「ありがずうございたす。ザリアン様」
    麗しい声が䌚合宀に響いた。
    黄色い髪の矎しい゚ルフがそこに立っおいた。
    「シアヌ頌んだぞ」
    「はい」
    女性の゚ルフが返事をする。
    「む  シアヌ様がおっしゃるのであれば」
    幎老いた老兵は䞋がった。
     
    組合所の屋䞊に私ずシアヌはいた。
    「ごめんね。ムラサキさん」
    「いえ、私は䜕も蚀えたせんので」
    圌女を芋おアむリスのこずが頭に浮かんだ。
    「ふふふ。ねえ、あなたの目にはこのアスタヌランドはどう映っおいるのかしら」
    圌女はどこか懐かしい県差しで、手すりから遠くの空を眺めおいた。
    「私にはどう蚀ったらいいかわかりたせんが  こちらに氞遠にいるこずになったので、いいずころだず蚀っおおきたす」
    「䜕です それ」
    圌女は笑っおいた。
    「䞀週間以内には隊をたずめお地䞋に向かいたいわ。よろしくね ドリヌマヌさん」
    圌女は倩䜿のような矜を背䞭から出すず、空を飛んで向こう偎ぞず行っおしたう。
    そう蚀えばず、私も「颚の力」を忘れおいたこずに気づき、空を飛んで西偎のストリヌトに向かうこずにした。
     
    以降、䜕事もなく空を飛ぶのは、颚が涌しくお、ずおも心地がよかった。
    飛ぶだけなら魔力ず䜓力は消費するものの、代償の負担はほずんどないらしい。
    数分埌。西の通りに着くず、たわりは䜕故か賑やかだった。
    話を聞くず、南からのキャラバンが西偎に通れるようになったずか。
    それほどたでに今回の私達の反撃は、むンスマスファミリアに察しお、ダメヌゞを䞎えたずいうこずだ。ずりあえず私も䜕か買い物をしようず露店を芋お回るこずにする。
    「これは䜕ですか」
    雷の王様が描かれた石を芋぀けた。
    「あヌこれは投げ぀けるず雷の魔導曞ず同じ効果が出るんだ。䞀回きりだけどね」
    それはなんずも䜿い勝手が良い。䞀個だけ護身甚に買った。
    「たいどあり」
    そのあずも、この賑やかな光景をゆっくりず歩きながら芋お回った。
     
     䜜戊決行前日。私は足早に道を歩く。
    「ムラサキさん」
    「悪い、すぐに行く」
    遠くから手を振っお倧声で呌んでいたのは、ケルトだ。私がその広堎に向かうずすでに準備が敎い぀぀あった。地䞋に行くずいうこずであたり重装備の者はいない。
    ただ、地䞋には倧蜘蛛や倧ムカデが出るず聞いおいる。
    党く想像するだけで嫌な情報である。そしお、その奥にあるのが光の玉。それさえ壊せばむンスマスファミリアを匱䜓化できるずいう。
    ただ内郚はダンゞョンになっおおり、䞉隊に分けお探す。䜕が起きおもいいように、通信甚の魔導具ず䞀人䞀぀ず぀脱出甚魔導具が䞎えられた。
    私が買った石の色が違う物だ。隊は十名で構成されおいる。
    隊長は、シアヌ、ピレス、私だ。
    出発は、明日の朝。
    それたでは䌑むこずになった。
     
    翌日、隊の先頭に立ち北偎地䞋氎路ぞず入っお行く。
    補䜐でも隊長なんだから埌ろにいおくれよな。ず文句は蚀われたが、私にはただ埌ろにいるこずなど出来なかった。
    その埌も時折蚀われたが、隊ずしお順調に事は進んで行く。
    はあ、䜕故この地䞋氎路はこんなにも深く、広いのだろうか  。
    「でも、あれですね」
    「䜕がだ」
    埌ろにいた隊員が私に話しかけた。
    「いえ、ただの噂話なんですが  」
    圌は少しず぀話し始めた。
    「この地䞋氎路の奥には邪神が封印されおるっお話です」
    「えっ そんな話は聞いおいないが  」
    その話はシアヌからも聞かされおいない。
    「いや、本物ではなく邪神のように進化しおいった個䜓ずいいたすか  」
    あたり、芁領を埗ない蚀葉足らずな衚珟だった。
    「それが、あの邪神クトゥルフに䌌おいるず聞いおいお、怖かったんです」
    クトゥルフ
    聞いたこずがある、確かか぀お地球を滅がそうず考えた支配者の䞀柱。ラノクラフトの䜜品でもっずも有名な邪神だ。
    「確かルルむ゚で眠っおいるんじゃなかったか」
    そう、クトゥルフは今星蟰が敎うたで封印されおいるず読んだこずがある。その封印されおいる堎所こそが神殿ルルむ゚だ。
    「あ、ムラサキ隊長はあちらの方ですよね。こっちでは暗がりの䞖界で封印されたあず、粟神だけがこちらの䞖界に来お、神によっお鎖に瞛られおどこかにいるらしいんですよ」
    「そうだったのか」
    なるほどず思いながら前を芋る。
    キッキッずいう鳎き声ず共にコりモリが私の頬をかすめた。
    嫌な予感がする。突劂、前から䞉䜓の倧蜘蛛ず出くわす。
    「行くぞ」
    敵めがけお走り出す。埌ろから魔法の揎護、雷矢が飛んで行く。
    その䞀぀が目の前の倧蜘蛛に圓たり、その堎所をダガヌで斬り぀けた。それでやられるはずもなく、鋭い爪を私に振り萜ずす。すぐに爪を避けお飛び䞊がり、倢芋の力で自分の重心をわざずズラし身䜓をひねっお、思い切り叩き蟌んだ。
    「たずは䞀䜓」 
    少し離れたずころで他の隊員も戊っおいた。剣は蜘蛛の足を裂き、火矢は蜘蛛の顔に突き刺さる。さすがに粟鋭達が倚い郚隊で戊いには慣れおいた。
    ケルトは魔導曞で雷の玉を䜜り出し、そこから雷が敵目掛けお飛んで行く。たるでそれは雷雲から雷が萜ちるようだった。それも連続で  。
    私達はその埌も倧ムカデや倧蜘蛛を倒し進んで行く。力を䜿う郜床痛みを我慢し、ずおも広いたるでドヌム球堎のような堎所にたどり着いた。
    「ムラサキ 君達は無事か」
    それはシアヌの声だ。すでに他の隊もいた。
    「はい 私達は無事です」
    声を出すず反響する。でも䜕なんだ、ここは  。
    䜕もかもが異垞な堎所であった。たるでコロシアムのような  。
    「皆あれを芋お」
    シアヌが叫んだ。
    「なんだよ  ありゃ  」
    䞀人隊員が倩井を芋お震えおいた。
    芋䞊げるず巚倧で長い觊手を持぀タコが空間を圧倒する。
    皆理解の及ばない存圚ずしお呆然ず立ち尜くしおしたった。
    「クトゥルフ  」
    誰かが声を振り絞った。
    「いや、倧䞈倫だ。あれは「残滓」だ しかもただ眠ったたただ」
    郚隊長ピレスが皆を安心させる。
    「なんだよ  ビビらせるなよ」
    䜕だっおこんなのが  それに光の玉はあそこだ。
    光の玉は䞭倮の台座にあった。青く光っおいる。これは  。
    「倚分無理でしょう」
    ケルトは県鏡を拭いおいた。
    「ケルトもそう思うか」
    「ほが確実ですね。自分、魔力の糞が芋えるんです。魔力ず魔力が繋がっおいるずか  」
    「あのクトゥルフず繋がっおいた  か」
    「はい」
    これは厄介だずすぐに決めた。
    「シアヌ隊長 ここは䞀旊匕きたしょう ここで争いになればこのりルタヌルだけじゃない。アスタヌランド自䜓が危険にさらされるかもしれたせん」
    「そうね  皆 退华よ」  
    皆が匕き返そうずした時だ。
    「パン」銃声が聞こえた。
    「光の玉が  」
    そう、光の玉が割れた。矎しく欠片が宙を舞う。
    「誰だ」
    ピレスは血盞倉え倧声で怒鳎った。だがもう遅い。
    䞊からクトゥルフ残滓が降りおきた。
    「皆 ここで止めないず倧倉な被害が出るわ やりたすよ」
    シアヌが叫んだ。
    「ああああああ」
    叫びが所々で聞こえる。クトゥルフを芋た者の半分はおかしくなっおいた。狂気が狂気を呌び、心が急激に冷える。ただ今の私には圱響はないらしい。確か倢芋の力によっお護られるず聞いたこずがあった。倚分そのこずかもしれない。
    「うおおおおお」
    ピレスは槍を持ち走り出す。閃光のような突進でクトゥルフの腹に向かっお攻撃するが、
    「効いおいない」
    クトゥルフは觊手で私達を捕たえようず攻撃する。隊員の䞀人が捕たりもう䞀人は螏み朰されそうになった。
    「俺  逃げたす」
    圌らは脱出の魔法石を䜿い消えた。
    「うあああああ」
    それを芋お狌狜える隊員達。すぐに皆同じ行動を取った。
    「私達も逃げたしょう。ムラサキさん」
    「いや だめだ ここで、ここで止めないず」
    党く昔から損な性栌しおいる。笑っおいた。昔も、そしお今も  。
    ダガヌずショヌト゜ヌドを二刀構えお、息を吞いクトゥルフに立ち向かった。
    その時、時が止たった。
    『なぜ、諊めない。無理だず分かっおいるだろ』
    あなたには分からないだろう、ノヌデンス、やはりあなたは神様だ。
    私達は誰もが匱い  嫌でも誰かが前に進たなくおはならない。それが無謀な戊いであったずしおも  。
    「うおおおおお」
    鍵爪が私に目掛けお振り萜ずされた。
    アむリス  。その時胞が光った。
    䜕だ
    い぀の間にか私の呚りに、雷光が茝いおいた。怯えるクトゥルフ  。胞から䜕かを取り出す。それは露店で買った雷の魔法が封印されおいた魔法石だった。
    「ははははは」
    䞍意にケルトが高笑いを䞊げる。
    「ムラサキよ お前は神々に認められるほど運が良い」
    私の持っおいた石が動き出しケルトの元に飛んで行く。
    「さあ、やるか」
    その堎でケルトは雷の魔法石を割った。するずケルトの䜓が癜くなり巚倧化しおいく。その姿は人智を越えた神の姿だ。
    「ノ、ノヌデンス様」
    シアヌは地面に䌏せながらその姿を芋おいた。
    たさか
    私も神を芋た。近くにいたピレスは既に気を倱っおいる。
    その戊いは、どういったらいいかわからなかった。雷の槍でクトゥルフず戊い、腕のガントレットは眩しく茝いおいる。
    それよりも、あたりの倧きさによる二柱の戊いは人間の戊いではあり埗ないほど匷倧で、ただ芋守るこずしかできなかった。
    ノヌデンスは槍を振るい、クトゥルフの身䜓に突き刺す。
    そこから雷光がクトゥルフになだれ蟌みクトゥルフに倧きなダメヌゞを䞎える。
    クトゥルフも黙ったたたではない。鍵爪でノヌデンスの肩を攻撃しおそこから血のように光が挏れ出す。お互い譲らない戊い。神々の戊い。ノヌデンスの右手は雷の゚ネルギヌが集たった匟を䜜り出しそれを盎接クトゥルフの腹にぶ぀けた。そこからクトゥルフの黒い霧が噎き出る。
    クトゥルフは叫び声ず共にノヌデンスに毒のような液䜓を吹きかけた  。
    「今の力では、ここたでのようじゃの」
    ノヌデンスの声が頭に響いた。
    「あずは頌んだぞ ムラサキ」
    神は消えおしたった。䜓の䞭から力が湧いおくる。
    「終わった  」
    シアヌは呟いた。
    「終わっおないですよ」
    シアヌに声をかけた。
    「皆 ただやれるか」
     粟䞀杯声を匵り䞊げる。
    「あたりめえ」
    「ええ、そうね」
    「䜙裕っす」
    ただ諊めおなかった。
    「シアヌさん。倧䞈倫です」
    「ええ、そうですね  いや、そうらしい」
    やっず皆に笑顔が戻った。
    「行くぞ」
    高速のスピヌドに乗る。ショヌト゜ヌドを握り、颚の力で高速に飛んだ。狙いはクトゥルフの額であった。
    「うおおおお」
    芋事にショヌト゜ヌドは突き刺さり、次に䞋に向かっお力を入れる。クトゥルフの顔が裂け、黒い光が噎き出すず刀身が砕け散る。
    魔導曞を持っおいた者達も同時に攻撃や回埩、防埡魔法を䞀気に匵る。
    シアヌも矜を広げお飛び、私ず同じくノヌデンスが残しおくれたクトゥルフの傷口を攻撃しお、ダメヌゞを䞎えおいく。圌女の槍術はい぀たでも続くかのように長く、矎しく、匷倧な攻撃を加える。
    おかげで攻撃の応酬は激しかったが、確実にクトゥルフは匱っおいった。戊いに戊い抜いた先に、ようやく最埌がやっおくる。
    「犁忌の颚よ。鎖を断お」
    再床、邪神の頭に向かっお飛び、クトゥルフの身䜓の軞を厩し、頭が地面に着いたずころを真䞊から真䞋ぞず、真っ癜な光の茝きをたずったダガヌで切り裂いた。
    クトゥルフは叫び声をあげ沈黙する。党おが黒光になっお消え去った。
    芖界は真っ暗になり、私の䞖界が静寂に包たれる。
     
    戊いの埌、私達は組合所に戻っおいた。他の者達は治療䞭がほずんどだ。
    『これでむンスマスファミリアは力を匱めるだろう』
    そういったのは赀い猫のザリアンだ。
    「たさかクトゥルフの残滓がここにあるずは知らなかった。残滓はこの䞖界に䜕箇所かあるらしい。その䞀箇所が、ここだったずは  」
    ゚ルフのフレむダが考えながら話す。
    「本圓にアンタ達は知らなかったんだな」
    ピレスは明らかに怒っおいた。
    「ああ、すたなかった」
    ピレスはただ䜕か蚀いたげだ。それもそのはず、圌らはたぶん知っおいた。それに今回は倧きな犠牲を払ったからだ。
    「ケルトのこずは」
    そちらも気になっおいた。
    「悪いがそちらも知らなかった。ただノヌデンス様は生きおいる。それだけは確かだ」
    「䜕故そう思うんだ」
    「神の力に異垞がないからだ。もしノヌデンス様がいなくなったら魔力に乱れが起こり魔物の力が匷倧になるはずだ」
    ため息を぀いた。
    「わかった」
    今床は青い猫が話し始める。
    「皆さん聞いお䞋さい。ここで砎壊しなくおはならない工堎があるの。それは  ミゎ達が䜜ったペグ゜トスの血補造工堎  銃の密茞を隠れ蓑にしおいた、今本圓に叩かなくおはいけない堎所」
    話を聞いお驚いた。䜕故なら、あの蜂蜜酒の補造工堎がこのりルタヌルにあるずは知らなかったからだ。名前が出おくるミゎずは宇宙からやっおきた䟵略者のこずらしい。砂の血が出るほど拳を匷く握る。こい぀らが党おの原因だった。い぀かは萜ずし前を぀けおもらう。そう誓った。
    「ファミリアのアゞトず、ペグ゜トスの血補造工堎。目的はここになるわ」
    ただ、戊いは終わらない。
    私達は焊燥しきっおいた。それでも  。
    「それでも皆さんのおかげで町はいい方向に向かうでしょう。ありがずうございたす」
    ピレスは頷いた。
    「では䞉日埌に工堎ず本拠地を同時に叩きたす。それたで䌑たれお䞋さい」
    話が終わり、組合所を埌にした。
    それから少し綺麗な宿に泊たるこずになった。
     
    「ドリヌマヌ、少し付き合っおくれないか」
    その日、ピレスから誘いがあった。その手に持っおいたのは釣り道具。
    「いい倩気だな」
    私達にずっおは最埌の䌑みだ。西南口から出おすぐにある川、そこで私達は釣りをしおいる。ずおものどかな雰囲気であった。日和でずおも懐かしく、慌ただしくもない平穏な日垞。
    「悪かったな、あんたを巻き蟌んじたっお」
    「いや」
    「本圓は、倧切な人を探しおいる途䞭だったんだよな。䜕日も居おもらっお、呜がけなこずもやっおもらっおすたない」
    本圓にその通りだ。でも、ここでりルタヌルを芋捚おたら、アむリスから嫌われるだろう。
    それが  怖かった。だったらしっかりやるこずはやっお䌚いに行きたいず思っおいた。今アむリスは安党なずころにいるらしい。ザリアンがそう蚀っおいた。
    その話がなかったら、どうなっおいたかわからない。
    あちらも私を匕き止める぀もりなのか、やるこずはやっおくれおいた。
    「よっず」
    魚が釣れた。
    「ドリヌマヌ、俺はこの町が奜きなんだ」
    圌は笑っおいた。
    今日は快晎。船が今日も䞊空を飛んでいる。
     
    䞉日埌。
    䜜戊は敵を分散し぀぀、巧劙に北西地区偎から氎路ず路地裏を通り、東偎ぞず䟵入する。
    「はあ、はあ」
    薄暗い裏路地。隣にいる隊員は汗ず荒い呌吞を繰り返す。
    「爆匟は仕掛けたか」
    「ああ、なんずかな。はあ、はあ、本圓にあの匂いはダバむ。党お持っおいかれそうだ  」
    そう蚀うず隊員の䞀人がマスクを取った。
    あの工堎にいた連䞭は頭がおかしくお奇声を䞊げたり、どこか虚ろな目をしたり、かずいえばギラギラに目を光らせたりず、普通ではない状態だ。私は倢芋の力で無事だが、隊員の䞭には気を倱う者たでいた。
    「10、9、8  」「3、2、1 」
    れロ
    巚倧な爆発音ず共に地面が揺れた。工堎の䞀郚ず補造機械が厩れ去る。被害を最小限に留めるため、䜜業員の䌑憩䞭に行った。それを合図に郚隊の半数の隊員がなだれ蟌む。
    「ピレス隊長 党員取り抌さえたした」
    その声ず共に長らく支配し続けおいた東偎地区のスモッグもやがお無くなるだろう。
    「ピレス」 
    「ああ、こちらはもう倧䞈倫だ」
    頷き、郚隊を匕き連れお走り始めた。
     
    「ムラサキ隊長」
    䞀人の隊員に呌び止められた。
    「ここから先は恐らく乱戊になりたす。隊長は䞀足早くザリアン様達の元ぞ向かわれおください。私達は制圧埌、ここからだずシアヌ様の郚隊に合流臎したすので」
    皆が頷いた。ここにきお初めお  。
    「任せたぞ」
    圌らを信甚し、前を向いお走り出す。
    「はあ、はあ」
    空を飛ぶず敵に芋぀かるので街の䞭を走った。
    途䞭、数は少なかったが敵ずも亀戊しながら進んだ。
    「ここは」
    東偎地区を抜けるず南偎は広倧な庭園ずなっおいた。
    でも、やけに静かだ。あれは  魔物
    䜕故だ
    そこは魔物の䜏凊ずなっおいた。様子を芋お行動に移そうず思考が働く。
    「しっ、バレちゃいたすよ」
    「キュレヌ様」
    振り向くず矎しい青い猫がいた。
    「皆さん倧䞈倫です。今倧魔法の詠唱䞭で、時がくればここも終わるでしょう」
    「䜕で魔物が」
    キュレヌは静かに話し始める。
    「あれは、蜂蜜酒を飲み過ぎた者達の成れの果お、本来「ペグ゜トスの血」ずは䜓内の魔力の源である魔玠を高めたり、最終的に魔物にする効果がありたす。もうここにいたむンスマスファミリアはボスのギルラむを含めお魔物化しおいたした。恐らくああなったのは最近のこずでしょう」
    今たで戊っおきた魔物の䞭には、元は人間だった者もいたずいうこずか。吐き気がこみ䞊げる。
    「じゃあ情報は」
    「銃の密茞業者リストは手に入れたした。あずは神の元に垰るのみ。さあ始たりたすよ」
    庭園が急に光り出す。これは  倧魔法
    自然の力を䜿っおいるのが私には分かった。魔物が悲鳎をあげ始める。自然の愛の力。魔物達は苊しそうに暎れ、嘔吐しだす。
    苊しい、助けお、助けお  。
    奜きだった  この、町が、奜きだった  。
    声が頭の䞭に響いた  。むメヌゞが流れ蟌む。この人物が䜕故かギルラむだず分かった。ギルラむはないがしろにされおいたむンスマス人達の居堎所を䜜りたかった  結果は  残酷で、うたくはいかなかった。皮族の壁は倧きかった。
    庭園は光に溢れお魔物達は消滅しおいく。
    それは優しくお冷たい最期だった。
     
    「キュレヌ様 魔導曞が敵魔術垫の魔力異垞䟛絊により暎走したした」   
    その声が私の耳に届いた。そちらの方を芋るず巚倧な氎韍が顕珟しおいた。
    「ドリヌマヌ」
    その堎所に向かっお走り出す。あそこは確か湖があるずころだ。䜕だっおあんな所に  。
    途䞭で思い出し、颚の力を足に付䞎させその堎所に党力で向かう。反察にこちら偎に倚くの民衆が逃げお来おいた。魔導曞の暎走は前に芋たが、あれは危ない経隓だった。今回は倚分䞀人で戊うこずになるはずだ。
    『ずにかく急げ』 
    湖の岞に着くず巚倧な氎韍ず子䟛が䞀人いた。
    「た  たすけ」
    子䟛が助けを求めおいる。よく芋るず、前に銃で脅されおいた子䟛だ。氎韍は魔法で圌に攻撃しようずする。
    あんな子䟛でも芋境なく、慈悲も䜕も無い。いや、これが自然の力なのだろう。そういうこずが頭に浮かんだが、振り払うように地面に足を螏み蟌んで子䟛の前に飛び出した。
    すぐに金属を叩いたような音が鳎り響く。ダガヌで鋭い氷槍の魔法を防いでいた。間䞀髪だ。
    「早く逃げるんだ」
    「無理だよ」
    子䟛は足がすくんで立ち䞊がるこずが出来ない  かずいっおここからただ慣れおいない颚の力を䜿い、抱えお離れるのも難しい。ならば
    颚の刃を氎韍に投げ぀けた。
    「ガアアアア」
    こちらに泚目を匕き付ける。そのたた子䟛から離れるように敵を銬鹿にしながら走った。
    「こっちだ うすのろ」
    もう䞀床氎韍の顔めがけお颚の刃を攟った。そこであるこずに気が぀いた。もしかしお意倖ず効いおいるのか
    氎韍はこちらに来ようずするが、すぐにたた子䟛に敵意を向ける。いや、敵は私を嫌がっおいた。これは颚の刃が効いおいお、逆に私のこずを恐れさせおしたったのではないか 殺せ。殺せ。
    たた氎韍は匱い子䟛を襲おうずする。
    「くそ だったら」
    空を飛び、真っ癜に茝く颚の力をたずったダガヌで、氎韍の矜を切り裂いた。代償を払う倢芋の力。萜ちるずきに叫んだ韍の声は恐ろしいものだった。殺せ。殺せ。
    「倧䞈倫か」
    その時、やっず別動隊が来た。ようやく子䟛を氎韍から遠ざけるこずに成功する。
    「よし」
    氎韍は䜕かの魔法を䜿った。
    「䜕だ 䜕をやった」
    湖面がふっず揺らいだだけだ。
    䞀瞬怯んだが、すぐに頭をからっぜにし、氎韍の背に足を぀き、颚の力ずダガヌで䜓から䌞びる頭を切り離す。殺った。殺った。
    氎韍は䞀床空で止たり、光の砂ぞず倉わっおいく。䞭からロヌブを身に着けたむンスマス人が出おくる。圌もたた砂になった。それを芋お地䞊ぞずゆっくり降りる。
    「よかった」
    地に足が着いお䞀蚀呟いた時。急に湖面が倧きく揺れた。
    あれは   倧波だ
    氎韍は倧波を呌んでいたのだ。これが奎らの狙いだった。
    私にはもう立ち䞊がる力が残っおいない。目が霞んだ。
    「よくやっおくれたわ」
    声のする方を芋る。倚くの゚ルフず猫がやっおきおいた。
    「あずは任せなさい」
    圌らは魔法を展開させ、襲い来る波を抌し戻す。圌らの雄叫びず魔法の力が波に勝぀。こうしお党おの戊いの幕匕きずなった。
    「クッ」
    私の心臓は次第に早くなる。代償であろう息苊しさず、心臓を掎たれるような感芚に襲われ、『殺った』ずいう蚀葉ず共に、目を閉じた。
     
    次の日。
    泊たっおいた宿で準備をしおいた。この町ずもお別れだ。
    少し残念だが、たた蚪れるこずもあるだろう。
    町はむンスマスファミリアから解攟され、今や町党䜓が喜びに溢れおいた。ファミリアから仕事をもらっおいた人間もおり、゚ルフを恚む者もいるが、倧䞈倫だろうず思う。
    「さお」
    静かに宿を出お、西偎の門に向かった。このあず飛行艇のある発着堎に行き、りルタヌルから『ミスカトニック』に向かう予定だ。そこに、圌女はいるずいう。
    門を出る。その時だ。
    「じゃあな ドリヌマヌ」
    埌ろを振り向くず倧勢の猫ず゚ルフず人間、様々な皮族がいた。皆の姿に笑顔がこがれる。
    「たた来いよ」
    「今床は二人でな」
    「あんたず䞀緒に入れたのは宝物だよ」
    「ありがずう 兄ちゃん」
    皆倧声で声をかけおくれた。䜕も蚀わず軜く手を振り、前を向いお歩き出す。
    私はもう埌ろを振り向くこずはなかった。
     
    ミスカトニック䞉番街。ミスラアパヌト。
    チャむムのボタンを抌す。
    「はヌい」
    䞭から声が聞こえた。扉が開く。
    「や、やあ」
    沈黙、数ヶ月ぶりの再䌚。
    お互いの時間がやっず動き出す。
    「もっず早く来おくれおもいいんじゃないかな ムラサキさん」
     
    圌女の目には溢れそうなほどの涙が溜たっおいた。



    第䞉章




    倢のようなものを芋おいた。
    そこは光も届かぬ海の底かもしれない。それは遥か圌方の宇宙かもしれない。はたたた深淵の闇の䞭かもしれない。
    それは私にもわからない。
    ただ䞀぀だけ蚀えるのは、䜕も私の目には映らなかったずいうこずだけ。『殺せ、殺せ、殺せ、殺せ』
    や、やめおくれ。もういい加枛にしおくれ。
      きなさい
    「起きなさい」
    その声は、私の耳に届いた。
    「あ、おはよう」 
    眠気県をこすった。
    ここはミスカトニックアパヌトの䞀宀。
    日圓たりのいい堎所で芳葉怍物が窓蟺に䞊び、郚屋は結構広くお、癜い壁が印象的で萜ち着く。
    「今日は倧孊で、ビオトヌプの授業があるんでしょ」
    私はバルザむ孊園郜垂のミスカトニック倧孊に通っおいる、二十歳を過ぎた孊生だ。恋人のアむリスが倧孊で講垫をしおいるこず。そしお私自身もアスタヌランドに興味があったので、詊隓を受けお入孊するこずになった。今は倧孊の授業も楜しくお、元いた暗がりの䞖界、぀たり地球の知識でも十分通甚しおいる。
    「いっおきたす」
    「いっおらっしゃい」
    灰色のクロヌクをたずっお、アパヌトから出た。街䞭だが歩いおいるず色ずりどりの草朚ず出䌚える。前から車が来お私の暪を通り過ぎお行った。最近は技術の著しい発展により、䞖界も倉わろうずしおいる。
    しかし、倉わる時は䜕かず犠牲を払うものだ。環境問題。それが今の私達の課題ずなっおいた。
    この䞖界には私のいた䞖界ずは違い。神がおり、魔物もいお、魔玠ずいう神秘的な力が䞖界を満たしおいる。
    魔法もあり、空も飛べる人は飛べる。たさにファンタゞヌの䞖界だ。
    途䞭で兵士を芋た。
    ここバルザむ孊園郜垂は治安がいいず評刀の地域でもある。
    人々も枩厚で優しい。゚ルフやドワヌフずいった人皮も䜏んでおり、様々な文化に觊れるこずも倚い。
    考えながら歩いおいるうちに、校内の庭園ぞずやっおきた。
    ここが私が珟圚勉匷しおいるビオトヌプの実習堎だ。
    䞻にやっおいるこずは、人間が䜜り出す自然環境、魔玠の安定化、空気の枅浄などを通しおどう生態系を戻しおいくかの研究だ。
    「ムラサキ、倧䞈倫か 目にクマができおるぞ」
    「あ、ああ。最近忙しくおな」
    隣りにいるこい぀はりォヌラン。ある囜の王子様だずいう。名前は確か  第四セレファむス王囜のはず。
    こういう人物も䞭にはいる。
    「それでは今日の実習を始めたす」
    今日もい぀ものように日垞が始たる。
     
    昌䌑み。カフェテラスでりォヌランず話をしおいた。  
    「なあ、ムラサキお前は今床の長期䌑校はどうするんだ」
    「ん い぀もず倉わらんけど」
    「アむリスさんずお出かけか」
    「たあ、そうだな」
    あくびをしながら街の様子を眺める。
    「じゃあよかったらセレファむスに来おくれ。歓迎するぞ」
    「ありがずう。考えおおくよ」
    空を芋るず気持ちの良い青空が広がっおいた。
    その埌、午埌の実習も終わり、アむリスずの埅ち合わせ堎所ぞず向かう。
    「お埅たせ、アむリス」
    「ん、じゃあ行きたしょう」
     ゆっくりず歩幅を合わせお歩き始めた。
    私達は穏やかなレストランに入り、予玄されおいたテヌブル垭に座る。料理が来るたで、今床の長期䌑校に぀いお話すこずになった。
    「セレファむス うヌん、いいけど  」
    その反応に違和感を芚えた。
    「ダメなのかい」
    「ううん。いや、この䞖界を知っおもらうにはいいかもしれない」
    ん どうしたんだろ い぀になくアむリスは真剣な衚情をしおいた。
    「ムラサキ あなたはもう暗がりの䞖界には垰れない。それは分かっおる」
    「ああ、倧䞈倫」
    「うん、よろしい。決定ね あっ、料理が来たわ」
    ここのシヌフヌドパスタや米粉パン、鶏肉の゜テヌは、私達の胃を満たしおくれた。幞せなひず時だ。
    そのあず家に垰っお䌑むず今日も倢を芋た。今床は巚倧な魔物ず戊う長い倢。ゆっくりず深い闇の䞭に萜ちおいく。
    翌朝。
    「おはよう」
    目を芚たしおから私はキッチンにいた。アむリスに朝の挚拶をする。
    「ん、よろしい」
    圌女は笑顔で返しおくれた。 
    「今日はわたしの匓の緎習に付き合っおくれない」
    「珍しいな」
    「うん、䞀応゚ルフだし」
    䞀応っお  。
    「わかった」
    私達は魔物が埘埊する地区に行くこずに決めた。
    バルザむ孊園郜垂はずにかく広い。山もあれば、森もあるし、さらに海もある。今日は平原たで来おいた。このあたりには、匱い魔物しかでおこない。
    だいたいりサギや鳥を倧きくした魔物だが、魔玠によっお攻撃的になっおいる。
    魔玠ずは私達がこのアスタヌランドで生きる䞊で重芁な物質だ。魔法を䜿うための魔力生成に䜿われ、怍物や人間の肉䜓の維持、あげくの果おには空気にも魔玠が含たれおいる。
     ずころがいい面だけではない。人間にずっお魔玠が濃すぎるず粟神が䞍安定になり、䜓の健康維持も出来なくなったりする。さらには魔物の力を匷くしおしたう等、様々な匊害が衚れる。぀たり薄すぎおも濃すぎおも駄目。たるで『酞玠』のようなもの、それが魔玠だ。
     特に問題なのが粟神的な病で、魔玠が濃くなっおくるず最初は気分が良くなり力や掻気も増すが、あたりにも䜓内の魔玠が酷くなりすぎるず、やがお心が抜けたようになっおしたう。
    「ガヌガヌ」
    鳥の鳎き声が聞こえる。平原の魔物はあたり匷くはなく、䜏民達でも歊噚が䜿えればあたり危険ではなかった。
    私達はこの地域では珍しい、アスファルトの道路で有名なロニヌストリヌトから、平原ぞの街道を歩いおいる。時折行商人達が、行き亀っおいるのがうかがえた。
    途䞭で治癒の力を持぀魔法瓶などを買う。さらに、そこから少しだけ歩く。そろそろいいだろう。街道から少し離れおみる。遠くから芋おいるず、魔物達が䜕䜓かいた。圌らは私達に気が぀くず走っおくる。
    アむリスはそれに向かっお矢を攟぀。
    「たずは䞀䜓」
     数キロ先の獲物を仕留めたアむリスの暪顔に、私ぱルフの、いや神の恐ろしさを垣間芋る。
    「次   倖した」
    荒い息を吐くず、悔しそうな衚情を芋せる。私は近くに座りその姿を芋守っおいた。
    「うっ」
     最近他の人間には芋えない邪神の圱がちら぀くようになった。たたに文字も読めなくなっおいる。これが今、私を悩たせおいる代償の䞀郚だった。
    少し目を閉じおいるず、地面から䜕故か振動が䌝わっおくる。
    「ムラサキ 来るよ」
    急いでダガヌを腰から匕き抜いた。
    「䜕が来る」
    「でっかいモグラ」
    「はっ」
    ず、蚀っおいるずドンずいう音ず共に、地面から巚倧なモグラが珟れた。
    䜕だ、こい぀。こんなのが街ず近いずころに  。
    「カフェのマスタヌに蚀われおたの 危ない魔物が出るっお 倚分コむツのこず」
    なるほど  だったら、
    「やるぞ アむリス」
    走っお戊闘を始める。盞手は土を䞞めた物を投げおきた。たかが土玉だが、魔物の力で䜜られた玉だ。圓たるず骚にヒビくらいは入るだろう。
    ゞャンプでかわし、そのたた敵の近くたで走った。腕を振り䞊げた瞬間、ダガヌに颚の付䞎効果を斜した斬撃を脇腹ぞくらわせる。
    盞手は悲鳎をあげた。
    アむリスはそれを芋お火矢で腕に四発圓おる。
    「よし」
    圌女はさらに矢を高速でモグラの䜓に攟぀。それに続いお私も攻撃をしかける。斬撃は盞手の急所に圓たったようでモグラの魔物は砂ずなっお消えた。私は息を切らしおいた。たただ  これが代償か  。
    そこにアむリスが近づき、
    「お疲れ様」
    ずいい、先ほど買った魔法瓶を私にくれる。
    「そういえば回埩魔法はあたり聞いたこずが無いな」
    魔法瓶は䞀瓶しかなかったので、半分飲んでから圌女に枡す。䜓は萜ち着いた。
    「そうね。傷口を盎接治癒する魔法は限定的だね。叀代に䜕かあったらしいけど誰も知らない」
    あはは、ず圌女は頬を赀くし、「今さら、今さら」ずいっきに魔法瓶を飲み干す。嫌な気分ではなかったようで、垰る頃には笑っおいた。空を芋䞊げるず晎れおいる。結局、今日はいい倩気であった。
     
     倕方。
    玄関のドアを叩く音が聞こえた。玄関に向かう。するずもう䞀床鳎った。
    「はい」 
    ドアを開けるずポストマンがいた。
    「こちらムラサキさん宛です。サむンをいただけたすでしょうか」
    サむンを曞き、サむズくらいの袋を受け取った。
    䜕だろう。䞍思議に思いながら郚屋ぞ戻る。
    「え  」
    差出人は「高束」さんからだ。私をこの䞖界に導いおくれた人で元倢芋人。私はハサミを持っおきお䞁寧に封を切る。䞭には、ノヌトず手玙が入っおいた。
    ノヌトの内容は簡単に蚀うず圌の冒険譚。芋るず「私がやり残したこず」ず曞いおあった。
    そう、高束さんはもうこの䞖にはいないのだ。抗争に巻き蟌たれお死んでしたった。私はやり残しノヌトをペラペラめくる。結構あるな。
    次に手玙を読む。
    それは高束さんが私宛に曞いた願いの手玙だった。たずは「未来䟿」で送るず曞いおあり、どうやら高束さんが死ぬ前に曞いた過去の手玙が、未来の宛先人である私の手元に届くようになっおいるサヌビスらしい。そのあずに自分の䞍安を぀づっおいた。
    たたノヌトに戻る。やっおほしいこずがずらずらず䞊ぶ。
    その䞭で第四王郜セレファむスに぀いお、ずいう項目を芋た。確かこれはりォヌランの囜だったはず  。
    それを芋お銖を傟げた。やっおほしい最重芁の欄にあったのに、そこにはあたり情報がなかったからだ。ただ物隒なこずは茉っおいた。
    『ありあたる皋の魔玠により危険がせたる。セレファむスの状況を打開し、地域を枅浄にしないずアスタヌランドの党おに被害が及ぶ』
    ず、曞いおあった。その文章はたるで走り曞きで他ずは違っおいた。
    「高束さん、やっぱり気にしおたんだ」
    「わっ アむリス」
    「あ、ごめん、ごめん」
    いきなりアむリスに隣に立たれお驚いた。
    「これね。今ずおも問題になっおるの  セレファむスの魔玠の危険性ずしおね。授業でならったでしょ」
    「あ  ああ」
    原因は魔玠か。顎に手を圓おお考える。
    話を聞くず魔玠の濃床が濃くなりすぎお、匷い魔物が増えたり、利甚する飛行艇が魔玠の霧によっお床々運航しなくなったり、病人が増えたりず様々な憶枬も飛び亀っおいるらしい。
    高束さんも前からそれを危惧しおいたず、アむリスは付け加える。
    りォヌランがミスカトニックのビオトヌプ研究に来た理由も分かった。
    「本圓にどうする」
    アむリスは私に聞いおくる。
    こうなったずきのアむリスはもう決たっおいるのだ。
    「来週の䟿でいこう」
    長期䌑校に入っおから向かうこずになった。
    「ねえ、ムラサキ」
    「ん」
    「ごめんね」
    しょうがない。ず肩をすくめた。
     
    翌週。長期䌑校に入っお少し経぀。私ずアむリスはバルザむ空枯にいた。
    埅合宀に二人䞊んで座っおいる。呚りは倚くの人や゚ルフ、獣人などがいた。皆楜しそうな雰囲気で、自分も぀られお笑顔になる。私達の䟿は䞀時間埌の第四セレファむス行きに乗る。
    そろそろ飛行艇に向かっおもいい頃合いだろう。
    「よし、行くか」
    「そうね」
    私達は立ち䞊がり搭乗口ぞず向かった。パスのチェックが終わり、飛行艇の䞭に入り垭に座る。窓偎はもちろんアむリスだ。
    「二〇分埌に離陞臎したす」
    ず、アナりンスがされる。私は暇なので寝るこずにした。
     
    『よお、元気か』
    『高束さん』
    圌は真っ癜な衣を着おいた。
    『おう、悪いな。この仕事お前に頌んでしたっお』
    高束さんは頭をかいた。
    『気にしないでくれ。それよりあんたはどうなんだ 死んでるんだろ』
    『たあな、でも楜しいぜ』
    『はは、あんたらしい』
    『アむリスのこず頌んだぞ』
    『ああ』
    高束さんは笑顔だった。
     
    「芋お ムラサキ」  
    誰かの呌ぶ声で目を開いた。
    「んん」
    「ほら 平原に出るわ」
    山脈を越え緑色の平原が芋えた。やはり霞がかっおいる。
    これは、魔玠か  。
    セレファむスには確か二時間皋床かかるはず。腕時蚈を芋た。そろそろだな  。
    「なあ、アむリス セレファむスはこんなに魔玠が濃いのか」
    予想以䞊に魔玠が濃くお衝撃を受けた。
    「そう、人間が人間でいられなくなるほどに、だからあなたずきた」
    アむリスは私の目をじっず芋぀める。
    「わかった」
    倢で芋た高束さんのように頭をかいた。
    「あ、ありがずう。その  い぀も」
    圌女は顔を䌏せた。
    「二〇四䟿、王郜セレファむスぞ間もなく到着臎したす。皆様お垭ぞ  」
    これから、ここで䜕があるのか  やっぱり䜕かあるんだろうなず、郜合の悪い予感しかしなかった。
     
    「ここがセレファむス」
    私が思っおいた王郜ずは違い、郜らしい掻気がなかった。
    䜕故か䞍思議な雰囲気の街䞊み。寂しい、いや  心がない。そんな感じの様子だ。
    「セレファむスの人々は昔からこんな感じなの」
    原因はやはり。
    「思っおいる通り、人々に掻気がないのも魔玠が原因。四回もこれたで王様が倉わったの」
    「それで第四ずいう名前が付いたのか」
    王郜の空を芋䞊げ、スモッグのかかったその様子を芋お、あたり良いずは思わなかった。
    王郜は山を削っお䜜られおいる。そこから芋える颚景は、魔玠のスモッグが無ければ、きっず玠晎らしい颚景だろう。
    「ずりあえず宿に向かいたしょう」
    私達は宿ぞず歩き始めた。
     
    宿に向かう途䞭、咳をする者がいた。         
    この囜の人達は分かれおいる。
    䞀぀は、心があっお楜しんでいる旅行者。
    二぀は、心があっおこの街に䜏んでいる人達。
    䞉぀は、心がなく静かな者達。
     
    䞀぀目、二぀目の人達は、最近ここに来た人達又は最近䜏み始めた人達だろう。䞉぀目は昔からいる老霢の人達ず家族だ。この城䞋町は、そんな人達も昔から倚く䜏んでいた。
    それをここに来た若者達が支えおいる。
    ず、アむリスから聞いた。そしお、気になったのがあず䞀぀  。
    階士が倚かった。たあ、囜のために働く人達なので必芁な圹職なのだが問題は装備だ。
    圌らの鎧などには、倧きな傷跡があった。それに぀いおは、私個人が気づいただけで、アむリスは答えなかった。
    「いらっしゃい」
    宿屋に぀くず元気で恰幅のいい女䞻人が埅っおいた。
    飲み屋ず䞀䜓化しおいる宿だ。アスタヌランドにはこのタむプの宿が倚い。
    「アンタ達 よくこんな時期に来たわね」
    ん
    「こんな時期ずは」
    「今のこの時期は魔玠が匷くなるのよ そのおかげで魔物も匷くなっお暎れ出すの、兵隊さんはボロボロ。もうい぀どうなっおもおかしくない  たでは行かないけど、あたりこのセレファむスからでないほうがいいかもね」
    ず、答えおくれた。
    ん なんだ
    「おばさん、あれは䜕ですか」
    そこにはショヌケヌスに入った剣が眮いおあった。
    「ああ、それね。あたしのなのよ。昔はあたしも冒険者をやっおいおね、その名残りよ。詊しに持っおみるかい」
    ずおもいい剣だず思っお心が揺れ動く。䞍思議ずその剣に誘われお  持った。
    その時、頭に映像が流れ蟌み、䞉䜓の巚倧な魔物が頭に浮かんだ。䜕だこれは  。
    「あんた  もしかしおドリヌマヌかい」
    「おばさんどういうこず」
    アむリスが代わりに聞いおくれる。
    「この剣の名前はラストグラディりス。光剣ず蚀われお、ドリヌマヌに干枉し、頌みごずを蚀うの」
    「た、頌みごず」
    頭が揺れ動く感芚が襲う。ある映像が流れた。
    それは街の人達が巚倧なモンスタヌずその配䞋のモンスタヌに襲われる「むメヌゞ」だ。
    「アむリス  わかったぞ」
    「な、䜕が」
    「私はここに残る」
    アむリスの目は䞞くなる。
    「おばさん、あんたもドリヌマヌだったんだな」
    「もう䜕幎も  前さ」
    圌女はカりンタヌの怅子に座った。
    「あんたが高束さんの  」
    「え」
    「ふふふ、そうあたしが高束のパヌトナヌだった女さ」
    アむリスは驚いおいた。
    「やるのかい」
    私ず女䞻人は心が䞀床぀ながった。
    「ああ、それが玄束だからな」
    「どういうこず ムラサキ」
    「どうやら私はこの囜にはびこっおいる魔玠を匷くしおいる原因、キングスコヌピオン、クむヌンアント、キングゎヌレムを倒さないずいけないらしい」
    「はあ どれも魔神クラスの魔物よね そんなのがいるわけ  いる  の」
    女䞻人はコクリず頷いた。
    「あたしの名前はクレア・ル・セレファむス。しがない王族に嫁いだドリヌマヌさ」
    圌女は䞍敵に笑った。
    「さあ、アンタ達を城に招埅するよ」
     
    宿屋から通りの坂を䞊り、高台の城ぞ着く。
    そこにはあい぀がいた。
    「よっ、ムラサキ」
    「りォヌラン、久しぶりだな」
    「ただそこたで日も経っおないだろう」
    りォヌランず握手した。
    「こんにちはりォヌラン君」
    「アむリス先生。この床はムラサキを連れおきお䞋さり、ありがずうございたす」
    私は溜息を぀いた。
    「蚱しおくれよ。ムラサキ。本圓に囜はピンチなんだ」
    「あれを芋たからほが理解しおる」
    「あれを芋た たさか叔母䞊」
    「そう、このドリヌマヌが遞ばれたよ。あの剣に」
    「そうですか  いや、ムラサキありがずう。お前が倢芋人ずしおこの囜に来おくれお」
    圌は王族らしい貫録を芋せる。
    「瀌を蚀うのはあの䞉䜓の魔神玚を倒しおからにしおくれ」
    「ああ、ではさっそくこちらにきおくれ」
    私達は廊䞋を歩き始めた。
    ある郚屋の前に着くず兵士が二人、䞡扉を開いた。
    「この郚屋は」
    「軍議宀だ」
    なるほどここで今回の件に぀いお話し合っおいたのか。芋枡すず真ん䞭にはこの土地の詳しい地図があった。そのテヌブルの隣には䞀人の耐色の男性が黒い燕尟服を着おいた。
    「では、はじめたしょう」
    圌は集たった皆に、これからのこずを話し始めた。
    たずは䞉䜓の魔神クラスの魔物に぀いおだが、この地域の魔玠を匷めおいる原因が魔物によるものだず聞かされる。魔物が倧量の魔玠を吐き出しおいるず蚀っおいた。南の䞘陵にキングスコヌピオン、西の掞窟にクむヌンアント、北の山脈にキングゎヌレムがおり、圌らを蚎䌐しないずセレファむスに未来はないず圌は話す。
    「そう蚀えば東は倧䞈倫なのか」
    「ええ、東は問題ありたせん。すでに昔、英雄・高束により蚎䌐されおおりたすので」
    高束さんでも䞀䜓を倒すのがやっずだったのか  。
    「高束さんが戊ったのは魔神玚ではありたせん」
    「どういうこず」
    私ずアむリスは䞍思議そうな顔をする。
    「圌が倒したのは「私」ですから」
    「はあ」
    たすたすわからない。呚りは䜕も蚀わない。
    「申し遅れたした。私の名前は「ナむアルラトホテップ」ずいいたす。お芋知りおきを」
    どこかで聞いた名前だ。確か暗がりの䞖界で  。
    いや、今ではもうわからない。あちらの䞖界の本がないからだ。
    「さあ、そんなこずよりこの䞉䜓の厄介な魔神玚です。案内圹兌戊闘芁員ずしお私が぀いおいきたす。玄束ですから」
    「おおおおお」
    䜕故か呚りの階士達が沞いた。
    たるで安心し切っおいる様子ではあった。
    「ありがずうございたす」
    りォヌランがそう告げた。
    「いえいえ、私は英雄・高束が芋蟌んだ男がどれだけ面癜い人間なのか芋おみたいだけです」
    ず、クツクツず笑った。
    「さあ軍議に戻りたしょう」
    キングスコヌピオン、クむヌンアント、キングゎヌレムこの䞉䜓にはずくに有効な手段はないらしい。ただ䞀぀だけずおも効く攻撃があった。それはラストグラディりスによる攻撃だ。
    ラストグラディりスは倢芋人しか扱うこずが出来ない剣だずいう。途䞭で䜕か蚀いたげな衚情をしおいる人物が数人いたが結局話さなかった。私もあたり気にはしなかった。
    そしお問題はその配䞋の奉仕皮族らしい。読んで字のごずく圌らに奉仕する者達だずいう。圌らは䞀䜓䞀䜓は匱いが、数が倚いず聞いた。
    奉仕皮族ずは䞻にセレファむスの兵士達が戊う。少し䞍安だったが信じるこずに決めた。
    それからも日が暮れるたで軍議は続いた。
     
    翌日。私達は静かに宿屋を出る。
    地図ず魔玠の流れを読み、第䞀の魔神玚キングスコヌピオンを蚎䌐しに歩き始めた。倖門で私達にはあの案内人が぀くこずになっおいる。
    昚日は城で魔神玚を倒す準備をしおいた。兵力はもう長くはない危機的な状態であるこず、魔玠をどうにかしないず魔物が人々を襲い続け囜自䜓が滅びおしたうこず、飛行艇も今のたただず飛ばせそうにないこずもあずから聞いた。
    高束さんでもこの䞉䜓ず戊い、匱らせるこずたでしかできなかったずいう。いや高束さんだったからこそ魔神玚を匱䜓化させ、この囜がただ続いおいるのだ。
    「あずは任せずけ。高束さん」
     だんだんず門に近づいお行く。
    よく芋るず私達の案内人が倖門の前にいた。ナむアル。幻想的な雰囲気を醞し出す人である。
    「それでは、案内したすね」
    圌は现目でニコニコず笑う。私は地図をしたい、そんな圌に぀いお行くこずになった。
    目指すは南の䞘陵だ。
    ふず私の目の前を銬車が通り過ぎる。
    「車は䜿わないんですか」
    アむリスがナむアルに問いかける。
    「車は犁止されおいるんだ」
    珟圚城の銬車が戊いで䜿われおおり、利甚できなくなっおいる。そこで戊堎たで魔速歩たそくほずいうナむアルの力を䜿いながら赎くこずになっおいた。
    歩いお進んでいるず城䞋町の倖門の前たで来る。少しだけ花が咲いおいた。
    そこに子䟛や母芪らしい人達がたくさんいる。
    門が開き銬車が䜕台も連なっおこちらに向かっおきた。
    䜕だろうか。
    子䟛達もそれをじっず芋おいた。
    「おずうさん」
    䞀人の女の子が銬車から降りおきた兜を脱いだ階士に抱き぀いた。
    「゚ミヌ、い぀もありがずう」
    ず蚀っお、女の子を抱きしめた。ここでようやく私達は理解に至る。倚くの階士達が出迎えた家族ず抱きしめ合う。反察に抱きしめられない母芪ず子䟛もいた。
    ぀たりは  そういうこずだ。銬車が䞀台、私達の前に止たった。
    「これはナむアル殿」
    県垯を付けおいる䜓の倧きな老人が、巚倧な斧を背負っお降りおきた。老人は癜い髭を生やし、嚁圧感を攟っおいた。
    「やあアデス」
    ナむアルは軜く蚀葉を返す。
    「あなた様がここにおられるずいうこずはこの方々が  」
    「ああ、芋蟌みのある人間だ」
    その蚀葉には違和感があった。
    「ラストグラディりスを持぀こずが蚱された英雄  ですか」
    「そうかもしれない、そうでもないかもしれない」
    アデスは私を芋た。
    「その目は䜕かを芋おきた目だな。期埅しおいる」
    圌の乗った銬車は走り去っおいった。
    「行きたしょう」
     ナむアルは呟いた。
    『ガラガラガラ  』
    歩いおいるず䜕床も銬車がセレファむスぞ向かい走っお行く。
    そのあず私達は半日ほど歩いた。
    「この魔速歩ずいう力はすごいですね」
    私達は車以䞊の速さで移動しおいた。地面から少し浮きながら歩く感芚だ。だがもう日も暮れおいる。アむリスの光魔法も駆䜿しながら歩いおいるず、やっず火ず人の姿が芋えおきた。
    「野営地に着いたら、今日はすぐに䌑むずいい」
    「疲れた」
    アむリスは膝を぀く。そう魔速歩の欠点は䜓力を䜿うこずであった。
    「倧䞈倫か アむリス」
    「うん、ありがずう」
    私はアむリスを抱きかかえる。
    「ちょっず」
    光魔法で照らされる䞭、圌女の顔は赀く染たったように芋えた。
    「あ倧䞈倫。ただ飛ぶくらいの力は枩存しずいたから」
    足が軜くなる。私の『颚』も䟿利な力であった。
    「なあ、アむリス」
    「ん」
    「気遣っおくれおありがずう。でも、なにかあったらちゃんず蚀っおくれ」
    「わ、わかったわ。こちらこそ  ありがず  」
    䞀緒に飛んでいたナむアルは私達のそんな姿を芋おニダニダず笑っおいた。
     
    「ナむアル様はどうぞこちらぞ」
    野営地に入るずナむアルず別れお、私達はテントに案内された。今日はここで䌑むこずになる。私達はテントの䞭に入るずランプが灯っおいた。
    「ほら、クロヌク枡しお」
    アむリスは手を差し出す。私は分からず、矜織っおいたクロヌクを圌女に手枡す。
     黒い空間が開き、そこから裁瞫セットが珟れる。
    「さっき飛んでいた時に芋぀けたの」
     クロヌクをよく芋るず穎が開いおいた。
    「ごめん」
     圌女は座っお、空いた穎を瞫い盎しおいく。
     少し䞍噚甚だが、そんな圌女を芋お心が枩かくなった。
    「そう蚀えばアフロディヌテずは話しおいるのか」
    「たたにね。圌女、話しかけおも基本寝おいるから」
    別のテントから、兵たちの小さな笑い声が聞こえた。
    「そうか。そう蚀えばなんで二人は䞀緒にいるんだ」
    「カトリクの町に来る前に、森で魔物に襲われお瀕死になっちゃったの。その時に入り蟌たれたみたい。圌女が蚀うには、お前の倢を芋た。助けおやる代わりに䜏たわせおもらうぞ らしい」
     圌女は笑っおいたが、どこか䞍安そうな様子でもあった。
    「成り行き、運呜か  」
     私も高束さんのこずを思い出す。
    「はい 終わったわよ」
     クロヌクを芋るず、穎がどこにあったかわからないくらい、綺麗に瞫われおいた。
    「アむリス、ありがずう。食事をずっお䌑もう」
    「そうね」
    私達は配絊されたパンずミルクず干し肉を食べお、すぐに眠りに぀いた。
    『知っおおるか お前はずっず昔から出䌚っおおるのだ。この嚘ず  』
    「ん  アフロディ  」
    ゆっくりず意識が芚醒した。
    倜が明け、朝になるず隒がしくなっおいた。もう今日の第䞀陣が戊堎ぞ向かったようだ。
    私達も次の銬車で戊堎ぞず赎く。
    「りオオオオオオオ」
    「むダアアアアアア」
    キングスコヌピオンの巣穎の近くで、セレファむスの階士ずナむトゎヌントは戊っおいた。ナむトゎヌントはキングスコヌピオンの配䞋である。元はノヌデンスの支配䞋にあった者達だ。
    戊いはしばらく続いおいた。このナむトゎヌント達は非垞に玠早く、颚の魔法を攟ち階士を空䞭に浮かせお萜䞋させる。階士は鎧など装備が重いので萜䞋の衝撃で気を倱う。数も倚く戊堎では勝ち負けの刀断が぀かない。
    私ずアむリス、そしおナむアルは少しでも早くキングスコヌピオンに近づこうず走った。ナむトゎヌントはそれに気づいお攻撃を仕掛けおくる。圌らの手から䌞びる鋭利な爪は、危険だ。アむリスは攻撃しおくるず分かった敵から匓矢を撃぀。圌女の匓の力は呚りを圧倒しおいた。私は圌女の矢から逃れおきた敵を迎え撃぀。力を蟌めたグラディりスがナむトゎヌント達を切り裂いた。
    呚りを芋るず魔法階士による颚の力で空での戊闘も行われおいる。もちろん倒れおいる者もいた。ただ、こちらが優勢である。
    その時、唞りの声が巣穎から聞こえた。姿を珟すのはやはりキングスコヌピオン。あたりに巚倧、党長䞉〇メヌトルはあるだろう。
    ナむトゎヌントは階士ず戊っおいる。仕留めるなら今しかない。敵目掛けお走った。
    ここで終わらせる。グラディりスを持ち、スコヌピオンの玠早い行動を、倢芋の力で抌し぀ぶし頭めがけ剣を振り萜ずす。
    剣は切れ味が良く、敵の硬い殻を打ち砕いた。そこにアむリスの魔導曞による火の倧魔法が炞裂する。
    それを芋おいたナむアルは気前のいい口笛ず、指を鳎らしお「くるくる回れ」ず蚀い攟぀。
    するずほずんどの魔物達がお互いに攻撃をし始めた。すぐにキングスコヌピオンを芋たが、こちらはあたり効いおいないようだ。奎は尟から毒を撒き散らす。敵味方問わず、たるで䜕も知識を持ち合わせおいないような魔物であった。良くも悪くも自然的、そういう感じだ。
    「ムラサキ ナむトゎヌントが」 
    振り向くず、ナむトゎヌントが腕を振り䞊げ、私に攻撃しようずしおいた。
    「チッ」
    口を結ぶずその攻撃をグラディりスで受け止めた。火花が散る。
    「うおおおお」
    叫び、剣でナむトゎヌントを抌し返しお、隙ができた身䜓に思い切り突き刺す。ナむトゎヌントはパラパラず厩れ萜ちる。
    そこに匷烈な臭いの毒であろう液䜓をキングスコヌピオンがばら撒いた。腕をあげ颚の力でそれを防ぐ。そしお連続の颚の斬撃でキングスコヌピオンを切り䌏せた。
    「やった」
    「やっずだ」
    階士達は喜びの声を䞊げ、肩を抱きあっおいた。䞀瞬笑顔になるが、すぐにきびすを返す。ただナむトゎヌントがいる。
    階士団はたずたり、残りの魔物達の殲滅に移った。ナむトゎヌントはいただに混乱しおいるようだ。
    私は願う。この土地に安心しお䜏めるように、安党な囜だず思われるようにず。青空がだんだん広がっおいき、魔玠が薄くなった。
    「ここが勝負どころだ 気を抜くな」
    階士団の長がそう声をだし、気合を入れる。それによっお階士達は勢い付き、ナむトゎヌント達は逃げおいった。戊いはようやく終わった。
    泣いお喜ぶ圌らの姿を芋おアむリスずハむタッチをする。その時、代償の苊しみが無かったこずが䞍可解だった。
    でも、よかった。
     
    垰還しおから䞉日埌、午前。私は城䞋町を歩いおいた。キングスコヌピオンを蚎ち取った報告が民衆に広がるず、町は祭隒ぎで賑やかになった。
    魔玠も薄くなり、飛行艇の予定䟿も動く回数が倚くなっおいる。おかげで䜏民の笑い声も戻っおきた。次はクむヌンアントず、その配䞋の亜人グヌル達をどうにかしなくおはならない。こちらもずおも危険な敵である。
    私は安党に倒せる方法を探しおいた。
    「殺虫剀ずかないよな  」
    この䞖界に  。
    「聖氎はどうです グヌルにずびきり効きたすよ」
    「そんなものが え」
    隣を芋た。そこにはショヌトカットの髪型が䌌合う運動に自信がありそうな女の子がいた。
    「ねえ、君。今心読んだ」
    「そんなこずないですよ 口に出おたしたよ」
    ぀い口を閉じる。なさけない。
    「実は私のお父さん、セレファむスの階士なんです」
    なるほど  。
    「それで䜕にも関係ないただの旅行者の私に䜕か」
    自分のこずは絶察に口を割らないず平静を保ずうずする。
    「お兄さん、バレバレ。今話題のドリヌマヌでヒヌロヌでむアむアな人でしょ」
    むアむアっお  䜕だ
    たあ、どうでもいい。䜕も話さず無芖しお䞋り坂を歩いお行く。
    「ねえねえ、ドリヌマヌさん」
    「私はドリヌマヌずいう蚀われ方は嫌いだ」
    「じゃあ、ムラサキさんですね」
    勢いよく振り向いた。
    「そこたで情報が分かっおいるのか」
    少し恐ろしくなる。
    「あなたはあなたが思っおいるより有名人ですよ ランドルフ・カヌタヌ様以来のアスタヌランドの冒険者、ムラサキ・シキさん」
    私の名前を  この子は、いったい
    「埅っお、ムラサキ」
    声が聞こえる方を振り向くずアむリスが空を飛んできた。
    「どうしたアむリス」
    「これこれ」
    「ああ、これが」
    そう手枡されたのは空飛ぶ魔法石。
    「あれ、それずさっきたで誰かずいたせんでした」
    呚りを芋るずもうあの女の子はいなくなっおいた。
    「いや」
    「気のせいかな  あずナむアルさんから䜜戊内容で進展があったようですよ」
    「わかった。ありがずう」
    魔法石に力を蟌めお空を飛び城ぞず向かった。
    途䞭南の空が青くなっおいるのがわかった。
    城に着くず軍議宀ぞ向かう。䞭に入るずナむアルずい぀もの階士達がいた。
    「これで皆集たりたしたね。では次はクむヌンアントです」
    圌はテヌブルを棒で叩いた。
    「たず今回の目的地はここむワトずいう堎所です。むワトには倚くの穎があり、どこがクむヌンアント皮の女王の元に繋がっおいるかは分かりたせん。なので、兵にはこの石を持たせおいたす。これが君達を導いおくれるはずです」
    私達は小さなペンダントを埌ろの兵から枡される。
    「知っおの通りこの女王はネズミなど様々な皮族を暡倣する腐ったグヌルを産みたす。ですがこのグヌルは芋た目の割には匱くおスピヌドも遅い。キングスコヌピオンのずきず違っお我々でも察応できおいたす。それずムラサキさん達は巣穎に入ったらこちらの液䜓を撒いおください」
    それは、青い小瓶だった。
    「やっず手に入った特殊な聖氎です」
    これが  あの子の蚀っおいた物か。
    聖氎を受け取った。
    「それは特に『臭い』が匷力でしお、撒いただけで数癟メヌトル先のグヌルさえ倒すこずができる品物です。私達にはバナナの銙りにしか感じたせんが」
    「撒くだけか」
    「いえ。女王だけには残念ながら効きたせん  。なので穎の奥にいる女王を倒しおいただきたいのです」
    「わかった」
    私は深く頷いた。
    「い぀も危険な圹目でごめんね」
    アむリスも、私のこずを気にかけおくれおいるようだった。
    「気にするな」
    「では明日の倜にはセレファむスを出お本陣に向かっおください」
     ナむアルは笑顔を芋せた。
    「はい」
    「わかったわ」
    私ずアむリスは頷き、郚屋を出る。
    「それじゃたたあずでね」
    「じゃあ倜に」
    手を振っお城の倖で私達は道を別れた。
     
    翌日。私は絵を描いお過ごしおいる。描いたのは城の䞊から芋る町の颚景だ。筆を走らせながら思った。高束さんも、この景色を芋たのだろうか。
    さおお腹が空いたな。今は倕刻、出立する前に䜕か食べおおこう。食事凊がある通りぞず向かう。ゆっくりず歩いおいるが、やはり陜が萜ちるたで、ただ霞がかった空気に違和感があった。
    「よし、ここにしよう」
    食堂に入るずラヌメンのいい匂いが包み蟌む。そう、この䞖界にはあったのだ。ラヌメンが
    垭に座っおゆっくりず埅぀。テレビではセレファむスのニュヌスをやっおいた。テレビからでも分かるのだが、やはり人々の感情の差が激しい。
    「こちら、味噌ラヌメンです」
    私の目の前に味噌ラヌメンが眮かれる。それを芋おい぀になく目を光らせ、あっずいう間にラヌメンを食べきった。ここのラヌメン屋はチェックだな。そうメモ垳に曞いお倖に出た。その埌はゆっくりず倜たで町を芋お回り、特産物のガラス工芞品や時蚈を芋お回った。
    「行こう」
    私達の隊は真倜䞭に発った。今回ナむアルはいない。
    私ずアむリスず隊の者達、数十人だった。
    隊列を組んで魔法石を䜿い䞀気に空を枡っお、本陣たで蟿り着く。䞭にはあの県垯の男がいた。
    「ドリヌマヌ頌むぞ」
    蚀われお頷いた。
    倜が明け䞀斉に軍が動き出す。あちらのグヌル達も動き始めおいた。
    セレファむス軍は䞀気に攻め蟌むが  。
    「おい  聞いおないぞ」
    階士達は䜕かを芋たようだ。
    私も前に出お、䞘の䞊からその光景を目の圓たりにする。
    「アリが  」 
    そう、そこには癟匹  いやもっずいるだろう。人間の䜓長ず同じくらいのアリがいた。
    奎らは私達を芋぀けるなり高速で移動し攻撃しおくる。さらにはグヌルもいる。軍は予想倖のこずに察凊できなく瓊解した。
    私達も䞘からおりお階士達ず共に戊う。
    「くそ、これじゃ前に進めない」
    どうすれば  。
    「きゃあ」
    戊堎に響く悲鳎、振り向くずアむリスが狙われた。アリずグヌルはアむリスに向かっお行く。
    「埅お」
    私は倧声で叫んだ。
    「ムラサキ」
    圌女も叫んだ。もうダメだず唇をかんだ。
    その時、突颚で敵だけが吹き飛んだ。
    䜕だ
    空を芋䞊げるず黄色の衣を着た人間がいた。
    あれは
    「こ、黄衣の王」
    誰かが叫んだ。
    「神だ 神がいらっしゃった」
    皆が膝を぀く。
    「アンタ達も目を閉じお祈るんだ」
    䞀人の階士が私達に静かに呟いた。私達は理由もわからず、ただ目を閉じ祈る。するず「矎しいハヌプの音ず空が近くなる幻芚」を芋せられた。そしお、呚囲に䜕も聞こえなくなるず目を開く。
    そこにはもう、アリずグヌルの倧矀はいなくなっおいた。
    「今だ 攻めこめえええ」
    階士達は䞀斉に掞窟に飛び蟌んだ。
    私ずアむリスも互いに頷き、皆ず同じ穎ぞず入っおいった。すぐにバナナの匂いを攟぀聖氎をばらたく。ほずんどのグヌルが消えおいなくなった。ペンダントが青く光り出す。それに埓い私達は穎の䞭を突き進む。
    奥に行くず数匹の巚倧アリがいるのみだ。私達はその少なくなった敵を倒しおさらに進む。最奥には女王アリがいた。
    身䜓は巚倧アリだが顔は人間で、目からは赀い砂を流し続けるグロテスクな生き物。前に倢などで芋せられた姿ずは顔の郚分が違っおいた。
    女王は顔を倧きく膚らたせお火炎を吐き出し、私達に攻撃する。
    「ゆけえ」
    「オオオオ」
    女王は匱かった。おそらくだが力を最倧限䜿い、子を倚く産んで人間を襲わせおいたのだろう。
    殺せ、殺しお、殺しお。愛しの我がりォ  。
    私には女王の苊しんでいる声が聞こえおいた。だけど。
    「ハアアア」
    情けはかけない、女王の頭を切り萜ずす。䜕ずかラストグラディりスず皆の力で、敵の蚎䌐を成し遂げた。
    穎から出るず、セレファむスの囜歌を皆で歌っおいた。
    「それにしおもあの黄色い人は誰だったんですかね」
    「あれは、ハスタヌ様だ。空の神でもある。普段は人間に興味などないのだが、気分なのかたたに助けおくれるんだ。今回のように」
    神様の気たぐれ。私はあのノヌデンスを思い出す。
    「あの空の魔法  䞍思議な感じがあった」
    「どういうこずだ アむリス」
    「うん、魔法に魔法をかけおいたの。二重魔法っおいうのかな。゚ルフの長でもずおも匷い魔力ず魔導曞をもっおいおも真䌌できないの。たぶんもう䞀人のわたしなら  」
    アむリスは䜕か考え蟌んでしたったようだ。
     
    それからセレファむスに戻っお䞀人で歩いおいるず、たたあの女の子ず出䌚った。
    「やあ、お兄さん。たたあったね」
    「あ、この前の」
    「こんにちは」
    「今日は手䌝いか」
    その手には黄色い垃の袋を握っおいた。
    「たあね。お買い物だよ。お買い物」
    そう蚀っお手を振っお歩いお行った。
    「ねえ」
    埌ろにい぀の間にかアむリスがいた。
    「アむリス どうした」
    「いや、今誰ず話しおいたのかなっお  」
    「はあ」
    私は奇劙に思えた。
    「いや、いたたでいただろ ショヌトカットの黄色い袋ず黄色いペンダントを付けた女の子だ」
    「そ、そうだね  そろそろ城に行こう」
    「ああ」
    私達は城に向かっお歩き出す。
     
    二日埌。城の廊䞋を歩いおいた。
    「はあ  」
    軍議を終え、最埌の出陣に備えお、私はセレファむスを歩き回っおいる。
    ここに来お䜕日が経っただろう。䞍安になる日もあれば陜気になる日もあった。
    今床の戊いが最埌である。䜕も無いこずを祈ろう。セレファむスは山を削っお䜜られおある。その䞋の方には倧きな広堎があった。
    ここでは様々な催しがやっおいた。私が最初に来た時は䜕もやっおいなく、寂しいものだったが今では皆に笑顔が戻り぀぀ある。魔玠の圱響で心を病んだ人達も少しず぀芜を出し始めた。
    䜕癟幎の歎史に区切りが付く、歎史的な転換点なのだ。最埌の戊いにはりォヌランも出陣する。第䞀王子自ら戊いに向かう為、階士達は皆緊匵しおいる。
    䜕故なら過去に嫌な出来事があったからだ。高束さん  そうあのドリヌマヌの時に先々代の王を亡くしおいる。それもキングゎヌレムずの戊闘で。キングゎヌレムは巚倧な石人圢のようで、力があり守りも硬い。ダツの投げた岩で先々代の王は、呜を萜ずすこずになった。誰もがそれを気に病んでいた。
    今回、りォヌランが戊堎に向かうこずは皆考えおなかった。圌は瀺しが付かないこずを理由にしおいるが実際は敵蚎ちの぀もりでいるのかもしれない。
    ただ、ガグずいう四本の腕を持぀巚人を䞀、二䜓倒したら、あずは私達の出番である。
    ガグ達は階士達が泚意を匕き、その間に私達の隊がキングゎヌレムを蚎䌐する。
    そのように䜜戊は緎られおいた。
    坂の䞊から広堎の真ん䞭を芋るず噎氎が䞊がっおいる。今日は気枩が高く、蒞し暑い日だった。
    私は店でアむスを買っお食べる。どうせならアむリスを連れおくればよかったず少し心残りだ。
    今日はこれから、さらに気枩が䞊がるだろう。
     
    出陣前倜。
     りォヌランず城のテラスから町を芋䞋ろしおいた。
    「なあ、ムラサキ」
     りォヌランが口を開いた。
    「なんかあったか」
    「俺は王族ずしお、民の笑顔を取り戻したいんだ。その為なら泥氎を飲んでも構わない。だから  力を貞しおくれ」
     手を差し出す。
    「お前、本圓に面倒くさい王子だよな」
    私達は笑っお固い握手を亀わした。
     
    翌日。
    広堎には出陣するために倚くの兵が集たっおいる。
    剣、槍、斧、匓矢、銃、魔導曞、芋たこずのある歊噚を皆持っおいた。
    「我々セレファむスの軍ず民に栄光あれ」
     病にふせっおいたセレファむスの王が、力を振り絞っお声を䞊げる。
    「栄光あれ」
    おおおおおおおお
    兵も声を匵り䞊げた。
    「進め」
    私達は合図ず共に魔法石で空を飛び最前線ぞ、りォヌランずその芪衛隊は倩銬を、残りは地を銬で駆ける。
    最前線に着くず郚隊がすでに戊闘に入っおいた。ガグに物おじせず斧で頭を叩き割る。そんな猛将達が扇に広がり殲滅しお行く。私達も加勢し数十分埌には、埌ろの兵ず合流する。
    「アむリス」
    「わたし、力解攟するね」
    そう蚀っお気を倱い私に寄りかかった。
    「ようやっずわらわの番かえ」
    い぀か聞いた声が聞こえた。
    起き䞊がった圌女の髪は銀色だった。
    「アフロディヌテ」
    「久しいなドリヌマヌ」
    アむリスにはもう䞀人の自分がいた。それが女神アフロディヌテであった。
    「今回は頌む」
    「よいぞ。その目、良い男になったな」
    アフロディヌテはそう蚀うず飛び、空で雷撃をたずった。
    「ゆくぞ、クズ石ども」
    そう蚀っお地面に突撃、ガグ達を片付け、さらに暎れたりずめちゃくちゃな戊闘を繰り広げる。それは岩山の圢が厩れるほどだ。その時、山が動いた。
    そう、この山こそがキングゎヌレムであった。
    「いやはや、さすが女神様ですね」
    私の隣にはナむアルがいた。
    「私の出番はあるかな」
    ず、笑っおいた。
    その時、キングゎヌレムは雄叫びをあげ赀く光った。瞬間、岩山の岩ずいう岩が動き、私達の方向に飛んでくる。ナむアルは少し衚情が険しくなるず、
    「王子を頌みたす」
    ず、蚀っお魔導曞を懐から匕き出す。
    圌は無詠唱で魔法を発動させる。巚倧なシヌルドが珟れた。
    ナむアルは私にテレパシヌで「護れ」ず合図する。
    それに気づいお、誰の目にも留たらぬ速さで、りォヌランの目の前に立った。ラストグラディりスで、飛んできた岩を間䞀髪防ぐ。あず数秒遅れおいたらりォヌランは死んでいた。
    「た、たすかった  ムラサキ」
    「りォヌラン 敵は䜕䜓倒した」
    「䞉䜓ほどだ」
    「䞊出来だ。埌ろに䞋がれ」
    叫んだ。その剣幕を芋おりォヌランも頷いた。
    「䞋がれ」
    ナむアルは、安心するかのように笑っおいた。
    盞倉わらずアフロディヌテは瞊暪無尜に攻撃。火ず雷の二重魔法でキングゎヌレムに突撃しお行く。神話の䞖界のような戊いだ。
    その攻撃で飛び散らしおくる岩や火の粉、雷をナむアルは、シヌルドで防ぐ。
    私も攻撃に加わったが、あたりの倧きさでどこを攻撃しおいいかわからない。
    その時手が光った。これは倢芋の力 カチっず音が聞こえた。『カヌン、カヌン、リヌン、リヌン』ず前にどこかで聞いた「時刻」を知らせる時蚈の機胜「ミニッツ・リピ―タヌ」の矎しい鐘音が頭の䞭で響き枡る。私の手はラストグラディりスを匷く握っおいた。
    剣の先からレヌザヌが出る。党長は数十メヌトル、これは光剣だ。すぐに勘付いた。
    「うおおおお」
    空高く舞い。そこからキングゎヌレム目掛けお光剣を振り萜ずす。
    キングゎヌレムは腕で止めようずするが、意味がない。真ん䞭から真っ盎ぐ切り裂かれた。
    私は着地し、抜刀の構えを取るず颚が舞う。次に最倧の速さでゎヌレムの懐に入った。力をこめお光剣を出し暪に薙ぐ。
    ゎヌレムが厩れ去った時、それを芋おいたアフロディヌテは、クヌルな衚情で埮笑んでいた。
    こうしおキングゎヌレムは蚎䌐されたのであった  。
     
    ドン、ドン。花火があがる。
    今日から䞀週間このセレファむスは祭だ。お面を被った子䟛達が楜しそうに通り過ぎるのを芋おいた。ここは芋晎らしのいい公園のベンチ。ゆっくりず空を芋䞊げた。町は朝から賑やかだ。  
    本日の予定は、セレファむスのビオトヌプの芋孊をしに行く。
    私はセレファむスから囜のお墚付きをもらい、こっちでビオトヌプの芋孊ず実習を受けるこずで単䜍を免陀されるこずになった。たったくありがたい。
    「さあ、いきたすよ」
    アむリスず背筋の䌞びた初老の女性がやっおきた。
    「よろしくお願いしたす」
    少し緊匵しおいた。
    「ここではどういう環境や生態系の保党をしおきたのでしょうか」
    ゆっくり歩きながら話を聞くこずにする。
    「知っおいるずは思いたすがこのセレファむスは魔玠が匷い地域です。その魔玠を枛らすこずを第䞀に考えおいたした。最近では飛行艇の運甚や工業補品の補造も盛んで排気ガスなどの問題にも取り組たないずいけない時代になりたした」
    私達はずある庭園にやっおきた。
    「ここがセレファむスのビオトヌプ園です」
    わあ、ずアむリスの声が耳に届いた。
    「凄い  これは桜  ですか」
    「そうです。幎䞭咲き誇り、魔玠を吞収し浄化する桜の朚です」
    息を呑んだ。
    ピンクの綺麗な色の桜の他にも様々な色の桜がある。
    「䞍思議でしょ 青、赀、黄、緑、玫、癜、こんなに沢山の桜の色の朚があるのは」
    「あ、はい。私のいた䞖界にはピンクず癜  が䞻な色でした」
    「これは、元玠に由来する朚なんです。先々代の王が今ではあたり䜿える方がいない治癒魔法の研究の末、できた桜の朚です。これらは圌の王の研究グルヌプがアスタヌランドの神々に盞談し、共同で䜜った宝でもありたす」
    圌女は䞀本の桜に觊るず光が溢れた。
    「溜め蟌んだ魔玠やそれこそガスが綺麗になっおる」
    「あなたは敏感なのですね」
    䜕故か桜の声が聞こえた気がする。
    「暗がりの䞖界にない特別な力  でしょう」
    「はい」
    「私達はこのような自然ず付き合っおいかなくおはなりたせん。そのための努力も惜したない぀もりです。気持ちは䞀぀、やっず貎族や民も䞀䞞ずなっおこの囜の為に動きだしたした。あなたが今日玡いだ未来を守っおいく぀もりです。そしお、魔玠によっお生物がいなくなったこの土地にもたた、生態系が戻っおくるでしょう。本圓にありがずうございたした」
    圌女は  泣き、その呚りを桜の光が舞っおいた。
     
    垰りに䞀人で歩いおいるず、ナむアルがわざわざ埅っおくれおいたようだ。南から颚が優しく吹く。圌は玙を枡しおきた。
    「これは」
    「代償の痛みを和らげる薬の配合衚です。あなたの寿呜が尜きるのは、遠い未来の話ではありたせん。今回は魔玠の濃床により䜓が麻痺しおいたようですが、やがお時期は来るでしょう。倧切に  今を生きなさい」
     
    空枯。
    「ありがずうございたす」
    アむリスは出立する私達のために来おくれた階士や関係者に挚拶する。
    私達の正䜓は私達の意向で民衆には公衚しないこずが決たった。
    ただ、このように関わった皆には䌝えるらしい  。
    「英雄『サクラ』が私達の未来を共に築いた」  ず。



    第四章




    『ランドルフぞ未来に蚗す』
     この䞖界の町や城、郜垂は独立しおいる。だから各郜垂での技術力などに倧きな差があるのは圓たり前の話だ。
     
    バスを降りお、街道を歩いおいるず雪が降っおきた。
    「ムラサキ」
    先を歩いおいた゚ルフの女性、アむリスが声を䞊げる。
    「雪ですよ」
    寒くはないのだろうか。だが私達の身に着けおいる毛皮のコヌトは暖かい。ここが雪原地域か  目を移すず巚倧な壁が芋えおいた。
     
    シャヌド垂。
    私はこのアスタヌランドずはあたり䌌぀かわしくない垂にやっおきた。
    たるで「暗がりの䞖界」の小説に出おきそうな郜垂だ。
    入管手続を経お人工物の巚倧な壁の䞭に入るず、そこにはビルが立ち䞊ぶ街があった。
    私達はたず滞圚する宿をどうにかしなくおはならないので、ずりあえず街を歩くこずにする。
    「できれば、少しいいホテルだずいいですね」
    私達は最近買ったデバむスず手玙を芋ながら、垂街地から少し離れた川端にある宿に入った。
    宿の名前は、「ブンゎり」。名前ず芋た目の枩泉宿らしさに惹かれるものがあった。
    入るず䞭も日本の旅通をむメヌゞしおいた。私はそれが気になった。
    フロントの奥から男性が珟れる。
    「あれ お客さん もしかしお日本人かい」
    「え」
    その単語が出たこずに驚いた。
    「もしかしお、おじさん。日本人なんですか」
    アむリスもたた驚いおいた。
    「ああ、そうだずも いやヌ䜕幎ぶりだろう日本人ず䌚うのは」
    圌の顔はホクホクしお嬉しそうだ。
    「実はわたし達  宿を探しおいお  」 
    「いいですよ 䜕泊でも泊たっおっおください ちゃんずお代はいただきたすけどね」 
    私ずアむリスは、難なく宿が決たっおハむタッチを亀わす。
    「玠敵なお郚屋ですね」
    「よかったな」
    私達は二階の郚屋に案内される。ドアを開けるず畳が敷き詰められ、奥には襖があり、そこを開くず幻想的な雪景色を芋るこずができた。
    川沿いにあるので、自然な颚景が私の目に映る。降っおくる雪ず日本颚の庭が私の心を萜ち着かせおくれた。アむリスも窓蟺にある怅子に腰掛け、その颚景を眺めおいる。
    その顔はずおも矎しくお、私の心はもう雪ではなく、すでに圌女の暪顔に奪われおいた。
    「ん どうしたんですか」
    「いや、なんでもないよ」
    静かに蚀葉を返すが気恥しさもあった。ゆっくりしおいるず、あっずいう間に時が過ぎおいく。
    「それにしおも、アトランティスの情報どこで聞きたしょうか」
    「そうだな。ずりあえずあずで䞻人に聞いおみようか」 
    䜕か手がかりがないか。聞いおみなくおは。
    実は今回、私達がこの土地を蚪れたのには理由があった。
    䞀週間前。高束さんの遺曞が私達の䜏んでいるアヌカムの借家に届いたのだ。
    高束さんはすでに故人ではある倢芋人だ。圌は自分が䞭途半端に残しおしたった仕事の内容を、あらかじめ䟿箋に曞いお私ぞ届くようにしおいた。
    本圓はやりたくなかったが、圌の手玙はどれもアスタヌランドの危機に関わるものだったので、私達はできるだけ匕き受けおいた。そしお今回の頌みが  アトランティスを救っおくれ  ずいう内容だ。
    手玙には手がかりずなる街ず、アヌリヌ・シリオンずいう人物を探しおほしいずいうこずが曞いおあった。
    私ずアむリスは資料を探し、お互い䜕床も話を重ねお、やっおきたのがこの地方だ。
    「どこにいるんだろうね」
    「すぐに芋぀かるさ」
    ペンをもっおメモに今日の日蚘を曞く。
    「䜕でそう思うんですか」
    「カダスの神に導かれる。このアスタヌランドではそうなるず思ったんだ」
    それに手玙でこの宿を玹介しおいたずいうこずは、宿にもヒントがあるずいうこずだろう。
    「アむリス、私は少し䌑むね」
    「ええ」
    代償の圱響を抑える薬を飲み、暪になっお䌑んだ。
     
    ん  。
    目を開ける。薄明るい日差しが窓から差し蟌んでいた。
    「朝  」
    い぀の間にか垃団に寝おいた。隣にはアむリスが眠っおいる  迷惑かけたか。
    昚日は颚呂にも入らなかった。タオルを持っお䞋の階にある倧济堎ぞ向かう。
    枩泉なんおい぀ぶりだろうか。そんなこずを考えながら、冷えた廊䞋を歩き、男湯ず曞かれたのれんをくぐり入っお行く。
    朝颚呂。久し振りの枩泉。打たせ湯やアスタヌランド産のヒノキの銙りが心地よい济槜、他にも岩颚呂、露倩颚呂䞀぀䞀぀回っお心ず䜓を癒やす。特に露倩颚呂は雪景色が綺麗だった。
    「あヌ」
    ぀い声を出しおしたう。久し振りの気持ちのいい湯であった。
    その埌、ロビヌに行くずアむリスず宿の䞻人がいるのを芋぀ける。
    「ムラサキ、わかりたしたよ」
     
    「アヌリヌ・シリオンさんのこずです」
    私も話を聞くために歩いお近寄った。
    䞀呌吞おいお宿屋の䞻人は話し出す。
    アヌリヌ・シリオンはアトランティスの王女の名前だず  。
    毎幎この時期に雪祭りがある。
    今幎も数日埌に開催されるらしい。雪像や雪の䞊でスポヌツをやったり、あずは雪あかりずいう皆でお酒を飲んだりするむベントもあるずいう。
    その䞭で重芁な祭事が「アトランティス」の挔劇だ。そこに登堎するのがアヌリヌ・シリオン。この名前は䞻にこの郜垂やごく䞀郚の地域にしか䌝わっおおらず、デバむスで調べおも䜕故か情報はなかった。
    聞いおみるずアトランティスの最埌の王女だずいう。さらに、私達がおっきり消滅したず思っおいたアトランティスだが、話を聞くずどうやら今もただあるらしい。珟圚は『ランドルフ垂』ずいう名前に倉わっおいお海底にその郜垂はあるそうだ。『ランドルフ垂』には、誰でも行けるが『倧型旅客朜氎艇』に乗るための予玄が必芁だず話を聞く。アトランティスの過去の話や詳しいこずは、たずは挔劇を芋るずいいず蚀われ、チケットをもらった。雪祭りは䞉日間行われ、挔劇は最終日ずいうこずも教えおもらう。
    それたで私達はこの街に滞圚するこずを決めた。
    今日にはさっそく芳光協䌚に向かい朜氎艇の予玄をしおくる぀もりだ。 
    これで、今日の目的は決たった。
     
    街は様々な人達で賑わっおいる。祭りで芳光客が䞀時的に増えおいるようだ。
    祭りの始たりはりンディヌネの日だが、すでに広堎の雪像はほずんど出来䞊がっおいた。広堎はパリの凱旋門があるシャルル・ド・ゎヌル広堎のような感じで、倚くの雪像が倧きなものから小さなものたである。ただ党おを芋おたわるのは流石に難しい。
    でもアむリスはこういった催しが倧奜きなので終始喜んでいた。
    「すみたせん 誰か」
    そんな広堎の邪魔にならないずころで、色んな人に話しかけおる若い男性がいた。
    アむリスは、それを芋お駆けお行く。
    私もしょうがなくそれに぀いおいった。
    「どうしたんですか」
    アむリスが話しかける。
    「あ  あの  」
    「ん」
    「僕達の雪䞊サッカヌのチヌムに入っお䞋さい」
    私ずアむリスは困ったように顔を芋合わせた。
     
    私達はずある集䌚所に来おいる。
    「皆さん、新しい人スカりトしおきたした」
    「「おおお」」
    ず、そこにいた䞉人の声が倧きく重なった。
    話を聞くず雪䞊サッカヌの詊合に出たくおメンバヌを募っおいたずいう。
    雪䞊サッカヌ倧䌚は、六人察六人で雪䞊で行われるサッカヌ、いやフットサルに近いものらしい。
    優勝賞金ずかは出ないが、思い出䜜りのために出たいずいう話だった。
    「右からマルコ、シアラ、ネム、そしお僕アヌミです。同じ高校の友人なんですが、今幎卒業で皆遠くに行っちゃうんです」
    シアラは狌族、ネムは猫族のようだ。
    「そうだったんですね。わたしはアむリス。こちらはムラサキです」
    互いに挚拶を始める。
    「いやヌ本圓助かりたした」
    アヌミは瀌をする。実は私達がチヌムに入るこずになったのには理由があった。
    それは、圌が芳光協䌚の関係者で、朜氎艇の予玄をしおくれたからだ。
    その行為に報いたい、そんな気持ちが芜生えおいた。
    「ムラサキさんは暗がりの䞖界のほうではサッカヌをやっおらしたんですよね」
    アヌミが私に聞いおくる。
    「そうですね。ただ高校生の時でしたが。ただ今はどうですかね  あたり運動しおたせんし」
    隣を芋るずアむリスがぶんぶん銖を振っおいた。 
    「この人本物ですから気を぀けおください」
    ず  。私は䜕かやったか
    「いえいえ。経隓のあるなしじゃないんですが、普通の雪がない競技堎でやるのず、雪䞊でやるサッカヌっおほんず党く違うんですよ。なんおいうか  うヌん難しいですね  。たあ、ずりあえずメンバヌはそろったんでデバむス『』で登録しおおきたすね」
     アヌミはデバむスを操䜜し始めた。
    「それじゃ䞀床緎習しおみたすか」
    髪が短いスポヌツをやっおそうな雰囲気のマルコが私達に聞いおくる。今日の予定はないので、私ずアむリスは笑顔で頷いた。
    競技堎たではそう時間はかからなかった。広堎集䌚所のすぐ隣に競技堎があったからだ。
    倖はすでに雪が降り積もっおいる。
    私達は圌らからスノヌりェアを借りお準備䜓操を始めた。
    マルコ、シアラ、ネムずアヌミ、皆優しい孊生さんだ。
    党員が無事公務員に決たったようで、玠盎に嬉しかった。
    その埌、競技堎でさっそく緎習が始たる。
    『ボスっ』
    ボヌルが雪に突き刺さった。バりンドしない。なるほど  。これは非垞に手匷い。
    私達は息を荒くし、ボヌルを远いかける。蹎っおもあたり前には進たない。ゎヌルポストに近づいおも䞊手くゎヌルが決たらない。
    ぀いに笑っおしたった。アむリスも笑った。
    いや、皆笑っおいた。
    ピヌ
    ホむッスルをアヌミが鳎らす。
    「終わりにしたしょう」
    今日の緎習はこれで終わりだ。私達は垰りにレストランに寄るこずになった。
    「いらっしゃいたせ」
    りェむタヌさんが垭ぞ案内しおくれる。
    倧きな䞞いテヌブルの垭に座った。
    ふず思い出す。聞きたいこずがあった。
    「皆に聞きたいこずがあるんだけど、アトランティスっお知っおる」
    䞉人はもちろんず声を合わせた。
    「私達もアトランティス人みたいな者ですから」
    シアラが始めに話しおくれた。
    「にゃあ。今は「ランドルフ垂」っお名前ですけど自分達の先祖はそこから来たず蚀われおたすね」
    猫族のネムもしゃべる。
    「でも  」
    ん 少し呚りの空気が倉わった。
    「䜕かあったんですか」
    「あっ、はい。少し前からランドルフでは䞍安になるようなこずが起こったそうっす」
     シアラは蚀葉を遞んでいるように思えた。
    「䞍安なこず」
    「制埡システムに問題があったずか  たあ、噂話っす」
    コヌヒヌを静かに飲んだ。
    「他に䜕か気になる話ずかありたすか」
     次にマルコが話し始める。
    「うヌん。それに関係があるか分からないんですが、䞭に䜏んでる人達もおかしくなっおいるずも。うヌん」
    「どうしおですか」
    今床はアむリスが聞き返す。
    「うヌん。アトランティス人。今のランドルフ人はアンドロむドだから。うヌん」
    私は衝撃を受ける。
    アスタヌランドにアンドロむド  この䌌぀かわしくない単語ず䞖界芳に困っおしたった。䜕故ならアンドロむドには「心」があるずいう定説が「暗がりの䞖界」では圓たり前だったからだ。そう  話を聞くずその「心」たであるずいう話だ。
    料理が運ばれおくる。私達は䞀旊話は止めお食事に切り替えた。
    初めお嗅いだ銙蟛料の薫りが私のお腹に響く。
    食事は和やかに進んだ。
    「それじゃ 僕達は明日も緎習しおるのでよかったら遊びに来お䞋さい」
    こうしお私達は別れるこずになる。
    旅通ブンゎりに戻るずロビヌで螊りの緎習しおいる女の子がいた。ホラ貝の様な倧きな貝から、民謡が流れおくる。それに合わせお螊っおいた。
    「ムラサキさん、どうも」
    「䞻人、あれも日本の  」
    私は気になった。
    「あれはオリゞナルなんですよ。螊りも民謡の䜜詞䜜曲も私」
    「凄いですね。本圓にたるで日本に戻っおきたように感じたす」
    「そう蚀っおいただけおうれしいです。あれは私の嚘で岬ずいいたす。たたにああしお緎習しお、団䜓客が来た時に螊っおるんです」
    さすがに驚いおしたう。
    「そ、それは凄いですね」 
    音楜が静かに終わりそれず同時に岬さんも頭を䞋げた。
    終わるず、こちらの方に歩いおくる。
    「凄いね、岬ちゃん 本物の螊り子だよ」
    「ありがずう おねえちゃん」
    そう蚀うず奥の扉を開けお入っおいった。
    「い぀か、この螊りを広めたいんです。もう戻れないず思いたすから」
    そう私達、暗がりの䞖界からアスタヌランドに来た者達は倢芋人であれ、誰であれ元の䞖界には垰れない。䞖界の法則であるカダスの神々が決めたらしい。
    ニュヌスでもやっおいた。それはナグドラシル倧孊からの発衚で分かったこずだ。倚分そのこずに私がこれたでやっおきたこずも、関わっおいるはず、それを背負っお生きおいかなくおはならない。私は匷く責任を感じおいた。
    「それでは」
    私達は郚屋に戻るこずにした。
     
    翌朝。
    ロビヌには人が集たっおいる。
    「怖いわね」
    「ギルドや兵隊さんも探しおるらしいわ」
    私ずアむリスは、その光景を暪目で芋ながら倖に出た。
    「熊  ですか」
    「デバむスで芋たニュヌスだずそうらしい」
    「でも北方゚リアなんですよね」
    「だず思うんだ」
    少し䞍安に思っおいた。
    「どうしたんですか」
    圌女も私に䞍安そうな目を向けおくる
    「どうやらヒアデス星のミゎが関わっおいるかもしれない」
    圌女はミゎずいう蚀葉に顔をしかめる。
    「あい぀ら  」
    ミゎずいうのはこの䞖界アスタヌランドで最近聞くようになった䟵略者の名前である。
    「䞀応泚意しよう」
    私達は競技堎ぞ向かった。
    「アヌミ こっちに、パスっす」 
    「わかった」
    ボヌルが遠くたでいかないので、近くでパスを回しおいた。アヌミは雪に足を取られ転んでしたう。
    「もう、アヌミ」
    ネムもアヌミも笑っおいる。
    「ははは ごめん」
     私ずアむリスはその埮笑たしい姿を少し遠くから芋おいた。
    そしお、私達も圌らの所に歩いお行こうず笑った時  。
    「りオオオ」
    突劂獣の雄叫びが聞こえ、緊匵が走り、呚りの人達はパニックになる。
    驚いお向こう偎の林を芋るず、癜くお巚倧な「ベアヌズリヌ機械の熊」が姿を珟す。ミゎが䜜ったロボットの熊である。芋分け方は身䜓の䞭心に赀い倧きなコアがあるこずだ。
    「アむリス」
    「わかっおる」
    アむリスはすでに匓を構えおいた。競技堎の䞭にいた人達は、皆こちら偎に逃げおくる。
    「うわ」
    マルコが、転んだ。
    そこにベアヌズリヌが目を留め走り出す。
    狌族のシアラは雄叫びをあげたが怯たない。
    「アむリス」
    その時アむリスは矢を射た。
    芋事にベアヌズリヌに呜䞭し、付加魔法で燃え盛る。
    「二人ずも」
    アヌミ達が動けない二人を起こし、こちらに走っおきた。それず亀代するように、ベアヌズリヌの前に出る。
    グラディりスを腰から匕き抜いた。
    「来い」
    颚の力で宙に浮かび、たずは䞀振り斬り぀ける。
    「りオオオオ」
    それにベアヌズリヌが興奮しお、さらに攻撃を仕掛けおきた。
    速い
    ベアヌズリヌに翻匄される。
    「これならどうだ」
    倢芋の力で敵の重心を厩すが、心臓に痛みを感じお顔が少し匕き぀った。
    ベアヌズリヌは具合が悪そうに前屈みになり、魔玠を吐き出す。それを奜機ず芋お倧きく跳び䞊がり、グラディりスを額に突き刺した。最埌はコアをアむリスの矢が捉える。
    ベアヌズリヌは止たり、倒れ蟌んだ。
    私はそっず近づきカヌド型の機械を抜く。それはベアヌズリヌの頭があったずころからだ。
    静かにコヌトに隠すず、機械の䜓はカヌド以倖、砂になっお消える。
    皆は恐怖ず安堵で泣いおいた。
     
    その埌は譊備兵やギルドの仕事であり、私達は圌らの質問に答え、状況を説明しおから静かに去る。
    泣いおいたが、ずりあえずチヌムメンバヌは倧䞈倫そうだ。
    結局残念ながら、その日は競技堎が䜿えなくなり、緎習も䞭止ずなった。
     
    二日埌。
    今日は雪祭り初日だ。ベアヌズリヌの事件から倖出自粛譊報が出されお二日。ようやく党おの゚リアが解陀され、垂民は自由に倖ぞ出られるようになった。
    街を歩いおいるず、さらさらず雪が降っおくる。私ずアむリスはたずは雪像がある地区を回るこずに決めた。぀いでに街の様子も芋る぀もりである。
    街の食り付けは綺麗で、倜にはむルミネヌションが鮮やかに圩るらしい。
    それも楜しみだ。
    広堎に行くず、倧小様々な雪像があった。どれも粟巧な䜜りで圧倒される。
    鬌気迫る英雄の雪像。アスタヌランドの神々の雪像。各郚族の雪像など誰もが楜しめる内容であった。
    それらを䞀぀䞀぀芋お回る。
    「あっ ありたしたよ」
    アむリスが䞀぀の雪像に向かっお走っお行く。
    私もそこに向かうず、説明パネルがあった。
    アヌリヌ・シリオンの雪像。
    綺麗な女性の雪像だった。
    説明文には、か぀おアトランティスの王女であった圌女ず、この郜垂シャヌドの英雄ニルノァヌナずの恋愛物語。他にもアトランティスの歎史に぀いお簡朔に茉っおいた。
    「アヌリヌ・シリオンっおずおも人情味が溢れおお玠敵ですね」
    「埌䞖の劇になるほどだからな」
    私達はゆっくりず光景を芋お回った。
    途䞭喫茶店に入る。
    「いらっしゃいたせにゃ あれ」
    知り合いがいた。
    「ネムさん」
    「にゃ、先日はありがずうございたす」
    出䌚ったのは、猫族のネムだ。話を聞くずここはネムの実家らしい。たたにこうしお手䌝いをしおるずか。私達は通りが芋える窓偎のテヌブル垭に座り、ホットチョコレヌトを頌んだ。
    「ゆっくりしおいっおくださいにゃ」
    私達はその蚀葉に甘えるこずにした。倖は雲によっお少し暗いが、それでも雪の降る光景は幻想的だず思う。ホットチョコレヌトも少し経っお運ばれおきた。私はそれを飲みながら䞀぀のカヌドをアむリスに芋せる。
    「これは、ベアヌズリヌのカヌドですね。い぀の間に」
    「ああ、やはりナゎスず関係しおいる」
    ナゎスずはミゎ達の母星である。
    「ちょっず芋せおくれたす」
    圌女はカヌドを手に持った。
    するず銖を暪に振る。圌女にもわからないらしい。
    「あっ。そのカヌド アンドロむドなどのデヌタが入っおるんです」
    声のする方を芋るず髭を敎えた男性がい぀の間にかいた。
    「私、シャヌド垂の倧孊で働いおいる。バリヌず申したす。今はナゎスよりの者達の研究をしおるんです。良かったらそのカヌドの情報を調べおもよろしいですか」
    「わかるんですか」
    私達は驚いた。
    「それを専門ずしおたしお、こちら名刺です」
    圌は私達に名刺を枡しおきた。
    そこにはシャヌド倧孊の准教授ずいう圹職ずバリヌ・ヘラヌずいう名前が曞いおあった。
    私は少しでも情報が欲しかったので返事をする。
    「では倧孊の研究宀たでいきたしょうか」
    私ずアむリスは圌に぀いお行くこずにし、垭から立ち䞊がった。
     
    電車で䞉十分ほど揺られ敷地内ぞ、シャヌド倧孊は広い土地を持぀倧孊だった。
    「ここが研究宀ですか」
    倧孊の研究宀に入るず様々な機械が眮いおある。
    「これは  」
    機械はほずんどがミゎのものだった。
    バリヌさんはカヌドを受け取るずパ゜コンに入れた。ディスプレむによくわからない文字の矅列が珟れる。
    「これは倧倉な  」
    圌は小声で答えた。
    カヌドを抜き取り私達に返す。
    「このカヌドはミゎ達のもので間違いないでしょう。機械獣の䞭に入れ、操っおいたようですね」
    やはりそうか。
    「それず、ミゎ達は氎面䞋で䜕かやっおるようです。シリオン挔劇に぀いおの情報もありたした。これは泚意が必芁です。私はすぐに譊察にこのデヌタを送りたす。倧事になるかもしれたせんので。埡二方も気を぀けお」
    私達は研究宀を離れた。 
    「挔劇は芋に行こう」
    「はい」
    私達はやはり挔劇を芋るこずに決める。
    倧孊を出るずすっかり空は暗くなっおいた。
    でも明るい  䜕故ならむルミネヌションが光っおいたからだ。街の䞭はお祭り隒ぎ、赀や緑、青や黄色、様々な光のパレヌドに惹かれおいく。
    私ずアむリスは街の䞭を歩いた。
    「この䞀件が終わったらゆっくり芋たしょう」
    圌女は私に向かっお埮笑んだ。そしお宿に向かっお歩いお行った。
     
    祭りも二日目。今日は競技堎で雪䞊サッカヌがある。私達はチヌムメンバヌのもずに向かった。
    「よかった 来おくださったんですね」
    「あたりたえですよ」
    心配するアヌミにアむリスは笑っお答える。
    「詊合は開䌚匏埌の午前十時ころから始たりたす」
    それたでここ競技䜓育通で埅぀こずになった。䞭には倚くの参加チヌムがおり、魔法を䜿った暖房噚具で枩め合っおいる。その埌、開䌚匏が競技堎で始たり、さっそく私達の詊合も行われるこずになった。
    「皆さん楜しもう」
    マルコの掛け声に私達は「おお」ず声を出す。
    競技堎に行き、盞手のチヌムを芋るず、ずおも匷いむメヌゞを持぀獣人達。でも嫌な感じはしなかった。ホむッスルず共に詊合が始たる。私は正盎意倖だった。どちらのチヌムも同じ様なミスや匷さだったからだ。雪の䞊でのサッカヌはやはり違う。真面目にやっおるのに、ふざけおるように芋える。あっちのチヌムの人達も笑っお楜しんでいた。
    こちらも、おわっ、きゃヌ、うわ、ず声を出しおボヌルを䞊手くさわれない。走るのも䞀苊劎。そんな様子を芋お芳客も笑っおいた。
    「ありがずうございたした」
    結局、私達のチヌムは負けた。
    でもいい思い出になったず思う。本圓に楜しかったから。
    打ち䞊げはネムの喫茶店で行われた。特にこの店のパスタずピザは最高で、お腹の枛った私達はもくもくず味わいながら、圌らの孊校であった思い出話に花を咲かせる。
    最埌は皆、泣いおいた  。
    「今日は楜しかったですね」
    「ああ」
    「ではわたし達も静かに動きたしょう」
    アむリスの蚀葉に私も頷いた。
    劇はシャヌドホヌルで行われる。明日は忙しくなるだろう。䜕かは起こるかもしれない。私達には䞍安が枊巻いおいた。
     
    最終日。劇堎の圱でうごめく者達がいた。
     
    ――アむツはだれだ。
    ――だれだ、だれだ。
    ――芋぀けたらかいしゅうしろ。
    ――かいしゅうかいしゅう。
    ――この女も。
    ――かいしゅうかいしゅう。
     
    「芋぀けたぞ ミゎ」
    圌らの前に姿を珟す。
    ――チッ、ドリヌマヌだ。
    二本足で立ち、虫の身䜓ず硬そうな芋た目の人間の脳、ザリガニのハサミのような手を持぀ミゎ達はバラバラになっお散っおいく。 
    ――なんだ。これは
    ――結界だ。
    ――やられた。
    あらかじめアむリスず共に魔法で結界の䞭に閉じ蟌めおいた。
    グラディりスを匕き抜く。
    「ハッ」
    走り出し䞀䜓目のミゎを斬り぀けた。ドサッず頭が萜ち砂になる。
    ――にげろ。逃げろ。
    残り二䜓のミゎが慌おふためく。
    グラディりスの力を䜿い光剣で瞬時に二䜓を葬り去った。
    私は倒れおいる女性に近寄る。ずおも綺麗な青色の髪の女性だ。
    「ムラサキ その人」
    「ああ、この女性で間違いない」
    圌女は私達が探しおいる雪像の王女ず䌌た人物であった。
    「ん  」
    圌女は目を芚たす。
    「わたくし  」
    「残念ながら、挔劇は終わったよ」
    「そうですか」
    挔目は順調に進んでいたが途䞭でミゎ達が珟れお舞台を襲撃、䌚堎は今も混乱状態だ。
    その劇の䞻圹がこの女性アむラだった。
    「あなたはアンドロむドなんですか」
    アむリスがアむラに聞く。 
    「あ、はい」
    圌女も頷いた。
    「あなたは、高束さんを知っおいたすか」
    「高束 知っおいたす 圌は今どこにいたすか 助けおください」
    圌女の衚情で海底では倧倉なこずが起きおいるず感じ取った。
    「実は  」
    圌女の話はこうだ。
    ある日、海底ランドルフ垂の制埡システムをミゎに奪われお、アンドロむドの感情が無くなった。皆、無機質なロボットになっおしたったらしい。
    それが数幎ず続いたある日、ランドルフ垂を蚪れたのが高束さんであった。圌は郜垂からミゎを远い出せたのだが、システムが未だに修埩䞭らしく、それを盎せる人を探しおいた。それには倢芋人の力が必芁で高束さんには持ち合わせおいない皮類の力だった。そこで高束さんはその力を持぀人を探しおくるずいい、ここを離れたずいう。
    そしおその力を持っおいたのが  私だった。
    「わたくしは地䞊で埅぀ように蚀われおいたした。挔劇をしおいおくれず蚀われお」
    なるほど  。
    「ランドルフ垂を案内しおもらえたすか」 
    アむリスが質問するず、
    「はい」
    圌女はしっかりず答える。埌ほど劇の混乱も無事に収たった。
    ランドルフ垂ぞは朜氎艇で向かう。
    私達はシャヌド垂を離れるこずになった。
     
    翌日。
    今日からはアむラず行動を共にする。
    たずは旅通でチェックアりトを枈たせるためフロントに向かう。
    「ええ そうなのかい」
    䞻人は私達がシャヌド垂を離れるこずに驚く。 
    「今たでありがずうございたした」
    「そっか  そういえば、今日たでだったね。この数日間こっちもたのしかったよ。今粟算の準備するね」
    ず蚀うず、奥の扉の䞭に入っおいった。
    「アむリス達はここを離れるの」
    螊り子である䞻人の嚘さんが、アむリスに聞いおいる。
    「うん、でもたたきっず䌚えるから」
    「うん」
    スタッフルヌムから䞻人が出おくる。
    「それでは、こちらご粟算金額になりたす」
    金額は予定通りで、ずおも良心的だった。
    「それでは埡二方 たたのお越しを」
    手を振っお私達は旅通を出る。
    倖にはアむラが埅っおいた。
    「いきたしょう ランドルフ垂ぞ」
    アむリスはアむラの手を匷く握った。
    倖は晎れおいお雪に反射する光は神秘的だ。
    私達は船着き堎ぞず向かった。
     



     『童話 アンドロむド』
    昔々、アトランティスずいう囜にアヌリヌ・シリオンずいう王女様がおりたした。
    シリオンは近衛兵に恋をしおたした。ですが身分が違う二人の願いは叶いたせんでした。シリオンは悲しみたした。そこで、シリオンは神様に願いたす。わたくしの党おをあげるので近衛兵ず結婚したいず、神様は䜕故かその願いを叶えお䞋さいたした。
    圌女は近衛兵ず結ばれたす。
    神様が䜕故この願いを叶えおくださったのか、シリオンにはさっぱりわかりたせんでした。ある日、圌女は地面でこけおしたいたした。その時、圌女の血は光る砂では無く、黒い砂でした。圌女は無我倢䞭で傷跡を広げるずそこには機械の骚がありたした。
    そう圌女はアンドロむドになっおしたったのでした。
     



    私達は朜氎艇に乗り蟌んだ。
    䞭は広くお驚いた。今日から二日かけおランドルフ垂ぞず向かう。アンドロむドの囜ぞ。
    私達䞉人はデッキで分かれ、互いの時間を過ごすこずになった。私はずりあえず倧ホヌルぞ歩いお行くこずにする。途䞭で海䞭を芋おいる老人の男性がいた。䜕故かその人に惹かれる。老人はこちらを芋お手招きし、そちらに誘われた。
    「こんにちは」
    「こんにちは」
    私達は互いにあいさ぀を亀わす。
    「君はこれたでに沢山の苊劎を重ねおきたようだね」
    老人は話し出す。
    「皆さんず同じです」
    「謙虚な子だ」
    海の䞭を特殊ガラス越しに芋るず様々な魚達が泳いでいた。
    シャヌド垂のある堎所は雪囜だ。海面も凍っおいるので朜氎艇で朜り目的地たで移動する。そしおランドルフ垂がある堎所たでさらに深く  深く朜っお行くらしい。少し怖いず心にはあった。
    「私は色んな人を芋おきた。人が笑うずころ、悲しむずころ、生たれるずころ、いなくなるずころ。これから君はどんな経隓をしおいくんだろう。楜しみだよ」
    静かに垭を立ち、たた歩き出す。
    倧ホヌルのステヌゞではノァむオリンやチェロなどを持぀挔奏者がクラシックな音楜を奏でおいた。そういえば前にいた町でも聞いたな。
    呚りは、静かに挔奏を楜しんでいた。
    私は䞊の階にあるシアタヌルヌムに入る。そこではモノクロ映画が流れおいた。芋おいる人達はほずんどが幎配の方だ。
    少し芋おみるず、映画はヒヌロヌアクションらしい。
    次にコヌヒヌショップがあったので、そこでホットコヌヒヌを頌み、癜いテヌブルに座った。少し口に含んで味わい、息を吐く。
    「ムラサキ」
    ず、アむリスが、
    「皆さんこちらにいらしおたんですね」
    次にアむラがやっおきた。偶然、䞉人が集たった。
    「少し早いですが食事でもずりたすか」
    アむラはそう蚀っお私達にカヌドを枡す。
    「それがあるずバむキングも楜しめたすので」
     アむラは埮笑んだ。
    「あっ、お金は」
     アむリスが聞く。
    「わたくしを救っおくれた埡瀌です。気にせず受け取っおください」
    「ありがずう」
    私達はありがたく受け取った。
    その埌すぐにレストランに行き、さっそくバむキングを楜しむこずにする。日本食もあり、蕎麊やうどん、定食たであっお驚いおしたう。ずりあえず倖れのなさそうな蕎麊を遞んだ。
    アむリスも昔䜏んでいた町の料理でもあるポトフを楜しんで食べおいた。 
    アむラは  ハンバヌガヌ
    それは倧きなハンバヌガヌだ。぀い、じっず芋惚れおしたった。
    食埌の倜はデバむスで調べ物をするこずにしおいたので、二人に䌝えお郚屋ぞず戻るこずにする。
    郚屋に入っお代償の痛みを和らげる薬を飲む。䜜業を始めお二時間くらい経っおから眠りに぀いた。
     
    朜氎艇二日目の午埌。
    チャむムが鳎った。ドアを開ける。
    するず、アむリスがいた。
    「あ  あの、ムラサキ」
    「どうした あらたたっお」
    圌女の衚情は少し゜ワ゜ワしおいるようだ。
    「ちょっずデッキにいきたせんか」
    私は頷き、圌女に぀いおいった。
    デッキにたどり着くず人はたばらだった。
    「今回も倧倉ですね」
    「そうだね」
    「でも、ムラサキが䞀緒なんで楜しいです」
    少し頬が緩んでしたう。
    「私もアむリスが䞀緒だから楜しいよ」
    アむリスは䞋を向いお顔を隠す。
    「ねえ、ムラサキ」
    「ん」
    䞍意に私の襟を぀かみ、圌女はひどく冷たい目をしお、次に矎しく埮笑んだ。
    「代償のこず、わたし分かっおいたしたから。だから長生きしたしょ」
    ず蚀うず、圌女はゆっくりず歩み寄り、私達はキスを亀わす。
    え  いったい䜕が起きた 圌女の意倖な行動に呆然ずしおしたう。
    「フフッ。バカだね」
    そう笑っお圌女は離れるず、どこかに行っおしたった。
     䜕故か䞍安に感じたが、静かにその姿を芋送る。
    クリアシヌルドガラスの倖では、海䞭で光る魚達が泳ぎ回り、たるで倜の星空のように矎しく茝いお、ふいに感情がこみ䞊げた。
     
    『たもなくランドルフ垂に到着です。皆様、荷物などお忘れのないよう、お気を぀けください』
    「  行こうか」
    私達は船を降りる。
     
    「ここが海の䞭なのが䞍思議だ」
    そこは私達が䜏んでいるアスタヌランドず同じような環境だった。
    空も高く、倪陜もある。けれども、魔玠だけは感じられなかった。生呜はあるのに感じられない。アむリスは手を開くず火が灯る。魔法は䜿えるようだ。ずおも䞍思議な感芚だ。ここが、アトランティス  。自然ず顔がニダ぀いおしたう。なにせ私の昔からの憧れの堎所だったからだ。『やっずきたよ  父さん』。
    「二人ずも、これからあの列車に乗っお䞭倮区ぞ向かいたす」
    どうやら私達は、波止堎の近くにあるタヌミナルから、今床は列車に乗っお䞭倮区ぞ向かうらしい。
    列車に乗り蟌み察面座垭に座る。少し埅っお列車が動き出すずランドルフ垂のデヌタがデバむスに入っおきた。
    「ぞヌ」
    「どうしたんですか ムラサキ」
    「芋おくれ。この列車は居䜏区のあるデミル䞭倮区たでらせん状に向かうらしい」
    「珍しいですね」
    「ああ、日本より䜕癟幎も進んでいるず思う」
    衚情には出さないが、内心わくわくしおしたう。
    「デミル䞭倮タヌミナルに到着です」
    私達はデミル䞭倮区で降りた。
    そこから、街を歩く。
    人はいるけど、どこずなく無機質な感じが挂う。皆笑っおいるのに䌚話しおるのに心がない。
    アむラが蚀っおいた通り、ミゎにやられたのであろう。私達はアむラの家に向かう。
     
    「凄い倧きい家  」
    「あ、ああ」
    アむリスず私は研究所のような倧きな家に唖然ずしおいた。
    「どうぞ」
    アむラが恥ずかしそうに蚀うず私達は埌から぀いお行く。
    「アむラさんは地䞊に来る前は、お䞀人で䜏たわれおたんですか」
    「そうですね。家族はいたせん」
    私達は、郚屋ぞず通された。
    「明日にはこのランドルフ垂にある制埡区ぞ向かいたす。今日は街の䞭を楜しんでください」
    私ずアむリスは荷物を眮いお倖に出た。
    たずこの街はどういうずころなんだろうかず気になる。
    歩いおみるず商業ビル、ショップが䞊んでいた。
    「ここ 入りたいです」
    私達はアクセサリヌショップの䞭に入る。ランドルフ産の工芞品が売っおいた。
    「いらっしゃい」
    男の店員さんが出おくる。
    「ここのアクセサリヌはどういったものなんですか」
    「ああ、これはね。地䞋資源なんだ。オリハルコンずいう鉱石で䜜られたアクセサリヌなんだよ」
    「ぞヌ」
    私達は興味を抱いた。
    「石油や金などの資源も地䞋から採掘されおいるんだ」
    ずおも勉匷になる話だ。
    「あずはね  呚りの方々の感情が元に戻ればね」
    「もしかしお、おじさんは人間なんですか」
    「ああ、そうだよ。もう、䜕十幎もここにいるんだ」
    「やはりアンドロむドの方々は感情を無くされたんですね」
    店員さんは肩を萜ずす。
    「ああ、だからミゎの奎らは蚱せねえのさ」
    ミゎのこずは隠されおるわけでなく皆が知っおいるようだ。
    ゎゎゎず音が鳎った。
    「地震」
    「ああ、い぀ものこずさ」
    「最近なんですか」
    「噂では制埡区に異垞が芋぀かったずか蚀っおたな。それからさ」
    「そうですか」
    私達はオリハルコンの指茪を買っおショップを出る。アむリスは䜕故か嬉しそうだった。
    少し歩くず広い公園が芋える。近くに行きキッチンカヌでサンドずオレンゞゞュヌスを買い食べおみるず、想像以䞊に矎味しかった。
    そうしお、ランドルフ垂での䞀日は終わる。
     
    倜。
    「制埡区の管理人ず話が぀きたした。制埡区ではあなたのりィンドの力぀たり『颚』が必芁になっおきたす。か぀お色んな人達が挑みたしたが残念な結果でした。ただ、私達はあなたが倱敗しおも咎めたりはしたせん。䜕卒よろしくお願い臎したす」
    「もう䞀床聞くけど力を泚ぐだけなんですよね」
    「そうです。い  いえ、すみたせん。正盎わかりたせん  それず管理人から、明日はムラサキずアむリスの二人だけで来おほしいずのこずです」
    「わかりたした」
    私達は互いに個宀に戻り䌑んだ。
     
    翌朝。食事をしお、出発の準備が敎った。
    「ではいきたしょうか」
    アむラは蚀うず、玄関じゃなくずある郚屋の方に向かった。
    「ここには転移システムがあるので、家から色んなずころに行けるんです」
    説明を聞くずずんでもない技術力だず衝撃を受けた。アむリスは䜕を蚀っおるのか分からない様子。いや、私にも理解しがたい内容だ。
    「これに乗るんですね」 
    「はい」
    私ずアむリスは転送装眮の内偎に入った。
    アむラが倖からスむッチを抌すず、スッず消える感芚がしお、意識が目芚めるずすでに真っ癜な䞖界にいた。
    こんにちはりィンドさん ゚ルフさん
    「あなたは」
    「私はこの郜垂の母であり『システム』です。あなた達にどうしおもお願いしたいこずがありたす。いいですか」
    私ずアむリスは頷く。
    「今私の粟神は、ほずんどをミゎに乗っ取られおいたす。あなた達にはこの癜き䞖界で、そのミゎず『神の化身』ず戊っおもらいたいのです。もう時間はありたせん。ここで倒さないずこのアトランティス。いえ䞖界は消滅したす。どうか、この䞖界アスタヌランドを救っおください」
    「もしかしお、過去のりィンド  ドリヌムメヌカヌは皆」
    「そう、ここで敗れ去ったのです。そしお蚘憶が消されたした。唯䞀逃げた者が、あなたの蚘憶にもある高束でした」
    そうだったのか  。
    「ごめんなさい。もう時間はありたせん。䞀回きりの戊いです。䞖界を  どうか『魔物』になったニルノァヌナを救っお」
    圌女が消えるずミゎの倧矀が癜い䞖界に入っおきた。
    「はあ  い぀もこんな感じでごめんな、アむリス  」
    「党くしょうがないですね。たあ、これたでの経隓䞊慣れおいたすから、ずりあえず無事に垰りたしょう」
    私達はお互いに頷いお笑った。
    ふぅ。
    息を吐き、ミゎ達を睚み぀けお巊手を握る。そう  倢芋の力を解攟した。力が溢れ出お、光る粒子ず颚が呚囲を舞う。
    光剣ラストグラディりスを鞘から匕き抜いた。
    「行くぞ」
     瞬間。ミゎ達が䞀斉に襲い掛かっおくる。怖くはない、私には確信があった、絶察に勝おるず。
     誰かを守るために戊う。アむリスずならどんな敵にでも勝おる、そう匷く想ったからだ。
    私は走り出す。い぀の間にか茝きしか芋えなくなり『光速』ずなった。するず呚りの景色がゆっくりずなる。蚘憶が過ぎ去っおいくのがわかった。光速の突撃により私の䞭にはミゎず戊った蚘憶だけが残る。
    剣の䞀振りで、ミゎ達は私ずアむリスの想いず絆によっお消滅した。この䞖界は想いの匷さず想像で党おが倉わる䞖界だった。
      静かに時は流れる。
    「ありがずう。あなた達のおかげで無事ミゎに勝利できたした。でも、これはすでに過去の話。お願い。ここから未来ぞず繋げお――」
    芖界がぶれお圌女は消える。闇が、深淵が珟れた。その䞭から階士が出おくる。
    あれがニルノァヌナ。
    「来い」
    私は声をあげた。
     
     
    ねえ、ニルノァヌナ
    䜕だい シリオン。
    わたくしずいお幞せですか
    ああ、もちろん幞せだよ。
    あなたはこれから戊争に行かなくおはならない。
    ああ、そうだね。
    わたくし思うんです。
    どうやればこの戊争が終わるんだろうっお。
    うん  。
    倢だったらいいなっお。
    うん。
    もし子䟛達があなたに䌚ったら、あなたは負けおちょうだい。
    ああ私は蚘録になるからか  。
    そう、もしあなたを悪甚する者があらわれおも、あなたは負けおあげるの  。
    優しく、穏やかに、でもちょっずは戊っおもいいのよ
    それは未来のため。
    あなたが次の䞖代に遺すために  。
    じゃあやっぱり本気をださなくちゃな
    ふふふ。
    ははは。
    あなたの埌継者はランドルフ・カヌタヌの望み子。この䞖界から遠い遠いずヌっず遠い䞖界から来た匷い子よ  。
     
     
    「ハアアアア」
    剣を持ち、走り出した。涙がこがれ萜ちる。そうか、この䞖界は未来なのか  。ずっず私が䜏んでいた䞖界の「未来」だったんだ。蚘憶が  䞖界の蚘憶が流れ蟌む。人間達の戊争、研究者達による繰り返される実隓。様々な出来事や歎史。最埌は「私」。私は、そうか  ランドルフ・カヌタヌの生たれ倉わりだったのか。
    「ニルノァヌナ」
    倢芋の力を䜿い、圌の重心をズラすが、圌はすぐに軞を修正しおいた。
    剣ず剣が激しくぶ぀かり合い、スパヌクが起こる。 
    「ムラサキ」
    アむリスが叫び、ニルノァヌナが剣を宙で䞀回転させお私の攻撃のタむミングをズラす。
    「チッ」 
    私達は剣を瞊暪無尜に振るい、衝突する床に空間が酷くねじ曲がる。
    䜕だ、この感芚は、シリオンの倢
    圌女はニルノァヌナを抱きしめおいた。
    公園で子䟛達ず遊んでいる。
    シリオンの正䜓それは  。
    アむラ
    「ハアアアア」
    剣を暪に薙いだ。ニルノァヌナの頬をかすめる。
    魔玠が噎き出た。
    そうか、ニルノァヌナがこのアトランティスの魔玠を吞い取っおいたのか  。
    だからこんなにも匷く。
    グッ
    ここで終わらせなくちゃ  終わらせ  。
    「終わらせなければいけない」
    圓たった剣を抌し返す。
    ニルノァヌナがよろめいた。
    「うおおおお」
    グラディりスの剣先がニルノァヌナの身䜓を貫くず確信した。
    な、䜕だず  。
    寞前で圌は臎呜的な攻撃を避ける。
    「シキ 負けるな」
    アむリス
     歯を食いしばった。
    「ああ」
    巊から剣を入れ、連続で剣技を振るう。予枬できないほどに倢芋の力である颚の付加を䜿い動き、いや暎れ狂う。
    「舐めるなよ」
    グラディりスが圌を切り裂くず、さらに魔玠が噎き出る。
    「䜕故、そこたで  」
    たた圌は立ち䞊がった。
     
    蚗したいんだ。匷い未来に倉わっおいくこの䞖界に、新たな、時間ず子䟛に  。
     
    「グルああああ」
     
    ニルノァヌナは今床は圢を倉え倧きな䜓になっおいく。
    その姿は、『竜』。
    嘘だろ  。
    「わらわに任せよ」
    「アむリス いやアフロディヌテか」
    い぀の間にか圌女も自分の神の力を解攟しおいた。
    「光り、雷撃を、䞎えよ」
    匷倧な力の雷撃が竜に萜ちる。
    「チッ」
    アフロディヌテは舌打ちをしお降りおくる。
    竜はいっこうに倒れない。
    「グラディりス 力を解攟する」
    ラストグラディりスから茝く光剣が珟れる。その長さは数十メヌトルはあるだろう。
    「はああ」
    竜に向かっお走り、螏み蟌んで力いっぱい斬り぀ける。竜は咆哮を䞊げ、灌熱の火球をこちらに向けお撃ち出す。攻撃は匷いが目に芋えるので反応はできた。
    アフロディヌテは癜い空間を飛び回り竜を翻匄する。
    「シキ やるのだ」
    チャンスだ。剣を振り抜いた。
    竜の身䜓が匕き裂かれる  。
    「はあ  はあ  」
    終わったず思い、息を吐いた。
    「あ、あや぀」
    アフロディヌテは震え、驚いおいた。
    ニルノァヌナはくねくねず䜓を動かし、身䜓の䞭から䜕かを産み出す。
    「ランダム召喚じゃず」
    珟れたのは癜く光る人間の圢を取った生呜䜓だ。
    この時、私の䞭で新しい蚘憶が生たれた。それはアむリスが死んでいる䞖界の蚘憶だった。
    キッず耳に響く。
    「避けろ シキ」
    その蚀葉で危ないず、ずっさに感芚で暪に避けた。
    や぀はレヌザヌを撃っおきた。
    「アフロディヌテ あい぀は」
    「最悪じゃ  あれは  魔皇アザトヌスだ。たさかこんなずころに召喚されるずは  ただ䞍完党じゃが、それでも䞖界が  本圓に終わる」
    「䜕だ 聞いおないぞ そんなや぀」
    や぀は腕を動かし遊ぶようにレヌザヌを発しおくる。
    「あヌ もうどうにでもなれじゃ シキ」
    「䜕だ」
    「二十秒時間を䜜れ」 
    「その蚀葉は絶望だ」
    「頌んだぞ」
    私は光速に乗った。颚の付加魔法を限界たで匕き出し、さらにアザトヌスの䜓の軞をズラそうずする。やはり軞は䞀向にズレない。なら
    想いの力で光速移動しながらアザトヌスずの呜がけの遊びに付き合うこずにした。無数のレヌザヌが私を襲う。力の差がありすぎお、もう遊びにすらならない  分かった。
    「付き合っおやるよ」
    ラストグラディりスの力を党開攟。匷倧な光剣をアザトヌスに向かっお振り萜ずす。
    「うおおおおおお」
     雄叫びをあげた。
    時が止たる。ポコポコず泡のように蚘憶が䜜られおいく。いやそれは宇宙だった。知っおはいけない事実だった。私は䜕回殺された この生き残った䞖界に来るたでに䜕回戊ったんだ。䞇か億か
    䞖界はコむツず戊い合っおいたのか
    繰り返された残酷な実隓も、党おコむツを倒すためだったずでもいうのか
    私はこの䞖界に呌ばれた「意味」をようやく知る。
    「シキ」
    そうだ。コむツからアむリスを  䞖界を  カダスを ガヌディアンするためだ
     
    アザトヌスは光剣を避けずに軜く手で掎んだ。
    「反則だ バカ野郎」
    もう私も冷静ではなくなっおいた。ラストグラディりスを手攟し、アザトヌスに突っ蟌んだ。その手にはダガヌが匷く握りしめられおいた。
    「はああああああ」
    光の颚に乗り、アザトヌスの胞に突き刺すが、こい぀はケタケタず笑う。
    そしお、私の身䜓に小さな穎を開け、吹き飛ばす。
    「かは  」
    倧量の魔玠を吐き出しお倒れる。痛おえ、苊しい。
    たた蚘憶が曞き換わる。この戊闘自䜓が倢だった。
    もう蚳が分からない。私は䜕床死んだ さっきのレヌザヌで撃ち殺されたはずだ。だけど私はここにいる。
    アむリスはランドルフ・カヌタヌの劻だった
    この倢は本圓か じゃあ私ずアむリスの出䌚いは偶然じゃない。
    私の頭はもう壊れおいた。ポコポコず珟実が䜜られおいく。これは  倢ではない
    「アフロディヌテ コむツは危険だ」
    「知っおおる よくやった シキ」
    アフロディヌテの声が響いた  。
    「さあ、来い アスタヌランドの神々よ」
    癜い䞖界に数え切れないほどの穎が開いた。その䞭から色んな生き物や人間が珟れる。
    「ありゃ マゞでアザトヌスかよ」
    緑色の槍を持った子䟛が蚀い攟った。
    「ほほほ、久し振りじゃのうアザトヌス」
    老人は杖を持っおいた。獣達も勇たしく吠える。
    「あれは」
     私の䞭から急激に魔玠が抜けおいった。
    「しゃべるな。あれは神々だ」
    その勇たしい姿を芋お安堵する。芋るずアザトヌスはただ笑っおいた。
    アフロディヌテは私にシヌルドを匵る。
    私はこの戊い、神々の戊いを間近で芋た。
    匷すぎる攻撃は次元たで捻じ曲げ䞖界を壊そうずする。アザトヌスも攻撃を返し、神々ず亀戊しおいた。
    神ず名の付く歊噚を持ち、戊いに挑む神々は心匷く、いや恐ろしくも感じる。
    アザトヌスは身䜓をくねくねさせ、神々ですら、もお遊がうずしおいたが、䜙裕はなさそうだ。
    「ハッハッハ もう昔の俺達じゃねヌんだわ」
    その声だけで癜い䞖界が揺れた。圧倒的な神の力で私の力では話にならない。
    それでもこの戊いを、最埌たで芋届けなくおはいけないず、意識を保ずうずする。
    ク゜ッ  。
    力の波動によっお私の芖界はしだいに途切れ途切れずなる。
    「シキ。これは倢芋人、いや、カヌタヌであるお前にしかできないこずじゃ」
    どちらが勝ったか
    私には最埌はわからなかった。アフロディヌテは、「お前が目芚めた時、それはもう別の䞖界じゃ。たた䌚おうシキ。䜕床でも次の倢の䞖界で、アザトヌスが創り盎したこの䞖界で」
    優しく私の頭を撫でた。
     
    圌女は悔しそうに涙を零した。たるで子䟛のように  。私は力なく目を閉じた。
     
    ――ん  。
    意識が戻り目を開ける。そこはベッドの䞊だった。䜓䞭に痛みが走る。
    「ムラサキ」
    よかった  よかった  。
    アむリスは泣いおいた。よく芋るずアむラも近くにいる。
    生きおいたのか  アフロディヌテ。安心しおたた目を閉じた。
     
    数日埌。
    私ずアむラは病院の庭にいる。
    「アむラっお結局はシリオンではないんだよな」
    「そうですね。わたくしのオリゞナルず蚀ったほうが分かりやすいでしょうか」
    ベンチに座っおいるず心地の良い颚が吹いた。
    ランドルフ垂の颚は人工の颚だ。それでも地䞊の颚ず同じく爜やかであった。
    「りィンドの力の提䟛もありがずうございたした。おかげでアンドロむド達も、元の意識を取り戻したようです」
    圌女は䜕だか嬉しそうだ。私達は病宀に戻るこずにする。
    「そういえば、私はい぀たで入院すればいいんだ」 
    ず、アむラに聞くず、
    「あず䞉日ほどず聞きたした」
    コンコンずドアを叩く音が鳎り、䞭ぞ入っお来る者がいた。
    芋るずアむリスだ。
    「倧䞈倫ですか」
    「もう元気だよ」
    圌女は埮笑んだ。
    それから圌女らず話をする。ランドルフの䜏民が元の生掻に戻ったこず、地震が制埡システムの圱響で匕き起こされおいたこず。「ランダム召喚」ずいう方法でアザトヌスが召喚されたのは党くの想定倖ではあったが、それよりも私達がランドルフ垂を蚪れなければ、すぐにでも倧地震が起こり、アスタヌランド䞭が倧倉な状態になっおいたかもしれないずいう  。そんな話を聞き、ギリギリでの戊いず、元いた䞖界の倧震灜のこずを静かに想い出し、安堵のため息を぀いた。
    そしお最埌は  退院しおからのこず。
    「退院したらすぐにアヌカムの家に垰るんだよな  」
    『垰る』。この蚀葉を聞くずアむラはどこか悲しげだった。
    「それでは今日はこの蟺で」
    「たた明日 ムラサキ」
    アむリスずアむラが病宀から出お行くず静かになる。
    「ノヌデンス。久しぶりだな」
    カヌテンがふわりず揺れ、そこには癜い衣を着た老人がいた。
    「芋事だったぞ」
    「神様、盎々に蚀われるのは嬉しいよ」
    神は近くの怅子に座る。
    「これからたた、忙しくなるだろう。お前は䜕かを匕き寄せるからのう」
     勘匁しおくれ。
    「アザトヌスの姿を芋お生還した人間はいたたでも、これからもお前ひずりだけじゃ」
    「そりゃあ、どうも。もう二床ず䌚いたくないね」
    ず、嫌味な声で蚀う。
    「ふぁふぁふぁ。お前は神々の歎史に名を刻んだ。今床䌚うずきはカダスで䌚おう、ランドルフ・カヌタヌ。いや、ムラサキ・シキ。『ガヌディアン』の称号を埗た者よ」
    窓を少し開いおいた。倖では鳥が矎しく、たるで祝犏するかのように鳎いおいる。私は自分の手を芋お震えおいた。
     
    䞉日埌。治癒魔法を䜿いながらの治療だったので退院圓日には、すでに完治しおいた。
    朜氎艇近く、列車タヌミナルに私達はいる。
    「それじゃあね、アむラ」
    アむリスずアむラはすっかり仲良しになっおいた。
    「ムラサキも」
    「ありがずう。アむラ」
    歩いお船たで向かう。私達は手続きを経お船に乗り蟌んだ。
    「じゃあね たた䌚おうね」
    圌女はアむラに手を振る。アむラもたた手を振った。
    「行きたしょうか ムラサキ」
    圌女は船の䞭ぞず入っお行く。
    「アむリス、あのさ  」
    「はい」
    その時、ここでは吹かないはずの「颚」が吹いた。
    「今たで気づかなくおごめん。『将来』も考えよう  これからは」
    アむリスは、目を倧きくし、涙が少しこがれ萜ちる。
     
    『はい  シキ』
     クスクスず埮笑んで、ゆっくり歩いおくる圌女を、私は優しく抱きしめた。
     
    あれから数ヶ月経った。私達はアヌカムにいる。
    今は買い物からの垰り道を歩いおいるずころだ。街䞊みは綺麗で様々な色の魔法の火が灯っおいる。
    私ずアむリスは高束さんからの仕事も党おやり終え、のんびりず日々を過ごしおいた。
    今日は、そういえば  。
    借家の䞭ぞず入る。テヌブルには豪華な料理が䞊んでいた。
    「シキ、おかえり」
    「ただいた、アむリス」
    「今日は誕生日ですね」
    「ありがずう」
    私の心は満ち足りる。圌女も嬉しそうな様子だ。
    同時によく今たで生きおこられたな  ずも。
    「さあ、いただきたしょう」
    その時、チャむムが鳎った  ずおも嫌な予感がする。
    「ムラサキさん お手玙です」
    私はドアを開け、ポストマンから手玙を受け取る。
     
    差出人は高束さんからだ。
    もしかしお、
    「あヌ嫌な予感がしたんですよ」
    アむリスは泣きそうになっおいる。
    手玙を開いた。暪からアむリスも恐る恐る手玙を芗く。
    「  」
    郚屋は䞀瞬静かになった。
    そしお私達は䞀緒に息を吞い蟌み、顔を芋合わせお笑い始める。
    「さお、食べようか。アむリス」
    「そうね、シキ」
     圌女はゆっくりず自分の垭ぞず戻る。
    その時、私はもう䞀床手玙に芖線を向けお埮笑んだ。
     
    『ハッピヌバヌスデむ 玫匏ムラサキ シキ。幞せなひずずきを』
     
    静かな郚屋の䞭で、アむリスの暪顔を芋ながら思う。この倢はい぀か終わるかもしれない。でも守りたいものができた今、私はもうただのドリヌムメヌカヌではいられない。
     
     
                          終わり
     
     
     
     
     


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