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【発酵めぐり】ワインは土地を飲むお酒だった|登美の丘ワイナリー・初夏のワイナリーウォーク


発酵めぐりを続けていると、不思議なことに「飲み物」の見方が変わってくる。

味噌や醤油、日本酒、ビール。

それぞれ原料も製法も異なりますが、その背景には必ず土地と人の営みがある。

そんなことを考えながら、今回は山梨県甲斐市にある登美の丘ワイナリーの「初夏のワイナリーウォークツアー」に参加してきました。

当日はあいにくの曇り空だったものの、時折姿を見せる富士山が印象的。

丘の上から見下ろす甲府盆地と一面に広がるぶどう畑。

その景色を眺めているだけで、この土地が特別な場所であることが伝わってきます。

ワインづくりの現場を見てみたい。

そんな軽い気持ちで参加したツアーでしたが、そこで知ったある事実がとても印象に残りました。

それは「国産ワイン」と「日本ワイン」は同じ意味ではないということです。


「国産ワイン」と「日本ワイン」の違い

恥ずかしながら、私はこれまで両者に違いがあることを知りませんでした。
「国産」=安心感。そんなイメージ。

しかし実際には明確な違いがあるとのこと。

「国産ワイン」は日本国内で製造されたワインを指し、海外から輸入したぶどうや濃縮果汁を原料として使用することもできる。

一方で「日本ワイン」は、日本国内で収穫されたぶどうのみを使用し、日本国内で醸造されたワインのこと。

つまり、日本の土地で育ったぶどうから生まれたワインだけが
「日本ワイン」と呼ばれるのです。

この説明を聞いた瞬間、目からうろこが落ちた。

ワイン売場で何気なく見ていた「日本ワイン」という表記には、そんな意味が込められていたのである。


登美の丘から見える甲府の街並み。その先には富士山の姿が

ぶどうが育つ場所


登美の丘ワイナリーがある丘陵地帯は、ぶどう栽培に適した条件が揃っているという。

水はけが良い。

風通しが良い。

日当たりが良い。

ぶどうは湿気を嫌うため、こうした環境が品質に大きく影響するそうだ。

実際に畑を歩きながら説明を聞いていると、ワインづくりは醸造技術だけではなく、土地選びから始まっていることがよく理解できます。

発酵というと、どうしてもタンクや樽の中で起こる現象に目が向きがちだけど、実際には、その前段階である原料づくりがとても重要なのだと感じました。


この小さな白い点々がぶどうの花!

貴重なタイミングで出会えた「ぶどうの花」


今回のツアーでは、ちょうどぶどうの花が咲く時期と重なっていた。

ガイドさんによると、開花のタイミングとツアー日程が合うのは
なかなか珍しいそう。

私自身、ぶどうの実は何度も見たことがあるけど、花を見るのは初めて。

小さく控えめな花は、私たちが普段目にする立派なぶどうの房からは想像できないほど繊細。

この小さな花が受粉し、やがて実となり、ワインへと姿を変えていく。

発酵の旅を続けていると、つい完成した食品や飲み物に目が向きがちだけど

その始まりに出会えたことは今回の大きな収穫でした。


この日は登美の丘甲州2022 をテイスティング。
ハンドルキーパーの旦那様はぶどうジュースの試飲

登美の丘甲州2022を味わう


ツアーの最後にはテイスティングも用意されていた。

今回いただいたのは『登美の丘甲州2022』。

日本固有のぶどう品種である甲州から造られた白ワインです。

説明によると、八朔や夏蜜柑を思わせる和柑橘の香りが特徴とのこと。

実際に飲んでみると、爽やかな香りと穏やかな酸味が心地よく、派手さではなく料理に寄り添うような味わいです。

畑を見て、土地の話を聞いたあとに飲む一杯は、普段よりもずっと深く味わえる気がする。

ワインはグラスの中だけで完結する飲み物ではない。

その土地の風景や気候、人の営みにまで想いを馳せるものなのだと感じました。


大好きな貴腐ワインについて
なんと!貴腐ぶどう生誕の地でもありました
貴腐ぶどうとはこんなぶどうです

発酵の先にある奇跡


展示コーナーでは、私の大好きな貴腐ワインについても紹介されていました。

貴腐ワインとは、特定の条件下で「ボトリティス・シネレア菌(貴腐菌)」がぶどうに付着することで生まれる特別なワインで

菌によって水分が失われたぶどうは糖度が高まり、蜂蜜のような濃厚な甘みと複雑な香りを持つようになります。

世界三大貴腐ワインとして知られるドイツやフランス、ハンガリーの名産地と並び、登美の丘ワイナリーでは日本で初めて貴腐ぶどうの収穫に成功したという。

発酵めぐりを続けていると、微生物は食品を作る存在だということが基本の考えとなりますが

貴腐ワインはちょっと違うんです。

通常なら病気として避けられる菌が、人の知恵と自然条件によって特別な価値へと変わる。

自然と人が協力して生まれる発酵文化の面白さを改めて思い出させてくれました。


ルネッサーンス!(笑)

発酵の前にあるもの


今回のワイナリー訪問で改めて感じたのは、発酵は突然始まるものではないということでした。

良い水。

良い土。

良い気候。

そして丁寧に育てられたぶどう。

その積み重ねの先に発酵があり、一杯のワインへとつながっていく。

発酵めぐりを続けていると、つい発酵そのものに目が向いてしまう。

けれど今回の旅で、発酵の前にある「土地の力」の大切さを学ぶことができました。

ワインは「土地を飲むお酒」なのだと。


村上美保|発酵文化マーケター


日本の発酵文化を旅する「発酵めぐり」を発信しています。
酒蔵、味噌蔵、醤油蔵など、日本各地の発酵の現場を訪ね、文化や人、味の魅力を紹介しています。

神社巡り、温泉、地方の食文化も大好き。
発酵文化の奥深さを、旅の視点から伝えていきます。

▶ 発酵めぐりプロフィール
https://note.com/legit_rail9462


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