
天才推理小説家の事件録 第23話「撃たれた逃亡者 前編」
第23話「撃たれた逃亡者 前編」
川崎市・湾岸地区 廃工場(夜)
冷たい夜風。
錆びた鉄骨、割れた窓、静まり返った巨大な廃工場。
パトカーが音を消して敷地外に停まる。神奈川県警 捜査一課が次々と降車。
無線(通信指令)
「こちら本部。追跡中の被疑者が、川崎市の廃工場に潜伏しているとの通報あり」
綾が周囲を鋭く見渡し、即座に判断する。
宇垣 綾
「……よし、来たわね」
部下たちを集める。
宇垣 綾
「斉藤警部、相模君、安西君が第一班。正面から突入して、犯人を中へ追い込んで」
斉藤 恵一
「はい」
相模 直人
「了解っす」
安西 信
「……了解」
綾が視線を移す。
宇垣 綾
「小野寺警部、今井さん、吉田君は第二班。裏手から回り込んで、退路を塞いで」
小野寺 恒一郎
「はい」
今井 もえ
「了解です!」
吉田 哲雄
「了解しました」
相模 直人
「挟み撃ちっすね」
宇垣 綾
「ええ。犯人は銃を所持している。不用意に距離を詰めないで……必ず、生きて確保する」
全員が頷く。
第一班(斉藤班)は斉藤を先頭に、工場内へ入る。
斉藤 恵一
「第一班、突入する」
懐中電灯の光が闇を切り裂く。
相模 直人
「……静かすぎません?」
安西 信
「……いますね」
その瞬間――
バンッ!!!!
銃声。火花が散り、壁に弾痕。
相模 直人
「くっ……!」
斉藤 恵一
「伏せろ!!」
犯人
「来るな!!撃つぞ!!」
闇の奥から銃口だけが見える。
安西 信(低く)
「……距離が取れない」
第二班(小野寺班)も突入。裏手の扉が開く。
小野寺 恒一郎
「第二班、突入した!」
しかし――
バンッ! バンッ!!
犯人が威嚇射撃。
今井 もえ
「っ……!」
吉田 哲雄
「この配置……海側へ抜けるつもりです!」
犯人は煙に紛れて走り出す。
犯人
「どけぇっ!!」
銃を構えたまま逃走する。
斉藤 恵一
「逃げた!!」
相模 直人
「くそっ、近づけねぇ!」
2班が合流するが一歩遅い。
廃工場外・通路
暗い通路の先。出口へ向かう犯人。
その進路に――静かに立つ綾。
犯人
「……っ!?」
宇垣 綾(冷静、銃を構えたまま)
「……止まりなさい」
犯人
「どけ!!」
犯人が銃口を向ける。
宇垣 綾
「……」
綾は迷いなく引き金を引く。
パァン!!
銃弾が犯人の右腕の皮膚をかすめる。
犯人
「ぐああっ!!」
犯人が右腕を押さえてうめき声をあげる。
犯人
「くそっ……!」
そのまま、よろめきながら再び走り出す。
斉藤班・小野寺班が合流する。
斉藤 恵一
「管理官!」
宇垣 綾
「右腕を撃った。負傷してる」
小野寺 恒一郎
「ですが、まだ動けます!」
綾が即座に判断する。
宇垣 綾
「今井さん!」
今井 もえ
「はい!」
宇垣 綾
「追って!スピード勝負よ!」
今井 もえ
「了解!!」
今井が迷いなく駆け出す。
吉田 哲雄
「港側に抜ける可能性があります!」
宇垣 綾
「……逃がさない」
遠ざかる足音。夜の闇へと消えていく犯人の背。
川崎市 湾岸エリア~国道(夜)
廃工場から逃げた犯人の背中。
闇の中、血が右腕から滴っている。
その瞬間――
ブロロロロ!!
強烈なエンジン音。
闇を裂いて、今井がバイクで飛び出す。
今井 もえ
「見つけた……!」
ヘルメット越しの目が鋭い。
今井 もえ(無線)
「こちら今井!単独で追跡に入ります!対象、工場裏から南東へ逃走!」
無線から綾の声が聞こえる。
宇垣 綾(無線)
『了解。距離を詰めすぎないで!』
今井 もえ
「了解!」
犯人が道路へ出て人混みに紛れようとする。
犯人
「……くそっ……!」
右腕を押さえながら、よろめきつつも走る。
今井がスロットルを開ける。
今井 もえ
「逃がさない!」
国道沿い(夜)
犯人がタクシーを止めようと手を挙げるが、右腕が痛みで上がらない。
犯人
「っ……!」
代わりに左手で無理やり合図する。今井は距離を取って追跡しつつ、逃走ルートを読む。
今井 もえ(心の声)
(この動き……土地勘がある!港湾側に抜けるつもりじゃない……都内方面……!?)
犯人が細い路地へ入る。
今井 もえ
「そっちか!」
今井もバイクで路地へ突っ込み、スピードを落とす。
今井 もえ(無線)
「対象、国道から路地へ!都内方面へ向かってます!」
綾の声が強くなる。
宇垣 綾(無線)
『都内方面!?県境を越えないで!応援を――』
今井 もえ
「……すみません、管理官」
覚悟を決めた声。
今井 もえ
「止めるなら、今です」
今井のバイクが再加速する。
多摩川付近・橋の上(夜)
夜風が強い。遠くに都心の光。
橋の手前の標識には……
《東京都》
と書かれている。
犯人は橋へ上がる。振り返り、追ってくるバイクを確認。
犯人
「……しつけぇ!!」
懐から銃を出し、振り向きざまに構える。
今井 もえ(即座に身を低くする)
「っ!!」
バンッ!!
弾がアスファルトを弾く。
今井 もえ
「……まだ撃つ余裕があるの!?」
だが犯人は撃った反動で右腕を押さえ、苦悶の表情を浮かべる。
犯人
「ぐっ……!」
犯人は車道を横切り、橋の向こう側へ逃げる。
今井 もえ
「――待て!!」
今井が追う。しかし橋を越えた瞬間、空気が変わる。
東京都側の道路標識には……
《東京都 大田区》
と書かれている。
今井 もえ(無線)
「……対象、県境を越えました!東京に入りました!」
数秒の沈黙。
宇垣 綾(無線)
『……くっ!警視庁に連絡する……すぐに本部まで戻って!』
今井 もえ
「了解……!」
今井が悔しそうに唇を噛む。
今井 もえ(心の声)
(東京に入られた……ここからは、神奈川県警だけじゃ捕まえきれない)
犯人の背中が闇へ溶けていく。
翌日・警視庁 捜査一課(朝)
朝の捜査一課。電話の音、キーボードの打鍵、資料を束ねる音。忙しない空気が漂う。
ホワイトボードには「神奈川→逃亡犯」「銃所持」「右腕負傷」と大きく書かれている。
柴田 元治
「よーし、聞け」
部屋の空気が一段締まる。
柴田 元治
「神奈川県警が追ってた殺人犯が、昨日の夜県境を越えて東京に入った」
瀬尾 隆
「マジっすか……また面倒なのが来ましたね」
柴田 元治
「面倒で済むならいい。相手は銃持ちだ」
部下たちの顔が一気に強張る。
柴田 元治
「しかも、神奈川で発砲があった。弾はかすって――犯人は右腕を負傷している」
柴田がホワイトボードの“右腕負傷”を拳でトンと叩く。
柴田 元治
「これは最大の特徴だ。普通の殺人犯じゃねぇ。逃げてる最中に撃たれてる」
若手たちが息を呑む。
柴田 元治
「だから――街中で右腕を押さえてる男、包帯巻いてる男、上着で不自然に右腕隠してる男、病院に飛び込む男」
柴田が部下に目線を飛ばす。
柴田 元治
「全部拾え。必ずどこかで尻尾を出す」
戸田 陸翔
「了解っす!」
田村 水咲
「聞き込み入りますか?」
柴田 元治
「当たり前だ。病院、薬局、整骨院の夜勤の看護師まで聞け」
柴田が鋭く続ける。
柴田 元治
「撃たれてるんだ。そう遠くには逃げられねぇ」
奈良 修平(自信満々に)
「右腕なら僕、すぐ見つけられますよ!」
三浦 忍
「お前は“右腕”じゃなくて“右脳”を働かせろ」
周囲がクスッと笑うが、柴田の眼光で即静まる。
柴田 元治
「笑ってる暇はねぇ」
柴田が机を叩く。
柴田 元治
「犯人は武装してる。現場の判断ミス1つで死人が出る。絶対に単独で突っ込むな!見つけたら即通報、即包囲!それまで尾行だ」
部下たち
「はい!!」
柴田 元治
「――狩りの時間だ」
捜査員たちが一斉に動き出す。
東京の街に“包囲網”が広がっていく。
宝条邸・書斎(昼)
重厚な書斎。机に原稿を広げていた潤が顔を上げる。
宝条 潤
「……遥香?」
扉が開き、遥香と綾が入ってくる。
神谷 遥香
「突然ごめんね」
宇垣 綾
「失礼します、潤君」
潤が2人の表情を見てすぐに察する。
宝条 潤
「……ただ事じゃなさそうだ」
宇垣 綾
「ええ」
綾が頷き、鞄から1枚の写真を取り出す。そして写真を机に置く。
宇垣 綾
「今、逃亡犯を追ってる」
潤が写真を見る。
宝条 潤
「……この男が?」
宇垣 綾
「そう。遠山武夫、34歳。神奈川県警が追っていた殺人事件の被疑者よ」
綾が深く息を吸い、順序立てて話し始める。
宇垣 綾
「まず、1週間前……」
別の写真を出す。
宇垣 綾
「横浜の港湾物流会社で、殺人事件が起きた。殺害されたのは――」
写真を指で示す。
宇垣 綾
「奥村正樹、41歳。その会社の管理職」
宝条 潤
「……港湾、物流……」
宇垣 綾
「ええ。表向きは普通の管理職だったけど――裏で違法な横流し、それに密輸まがいの協力を疑われていた」
潤の目がわずかに細くなる。
宝条 潤
「……なるほど」
宇垣 綾
「調べを進めた結果、私たちが行き着いた人物が、奥村の部下だった遠山。奥村の下で横流しや密輸協力の実務担当だった」
宝条 潤
「……現場を回していた側、ですね」
宇垣 綾
「その通り」
綾が少し声を落とす。
宇垣 綾
「奥村は……上層部に取り入るために遠山を切り捨てようとした」
宝条 潤
「切り捨てる……」
宇垣 綾
「奥村は、遠山に『お前の名前で全て処理した』と言っていた」
潤が息を呑む。
宇垣 綾
「つまり――全責任を遠山に押し付ける準備を着々と進めていたの」
遥香が低い声で言う。
神谷 遥香
「遠山は完全に追い詰められた」
宝条 潤
「……なるほど」
宇垣 綾
「遠山は、自分が切られる前に――」
綾が静かに言い切る。
宇垣 綾
「奥村を口封じとして……そして、復讐として殺害した」
宝条 潤
「……筋は通っています」
綾が頷く。
宇垣 綾
「そう思った。だから昨日、川崎で遠山を確保しようとした」
宝条 潤
「……川崎に」
宇垣 綾
「ええ。無線で、『遠山が川崎の廃工場に入った』という通報が入った。そこで私たちは突入した」
潤が腕を組む。
宝条 潤
「……でも、逃げられた」
宇垣 綾
「そう」
綾の目に悔しさがにじみ出る。
宇垣 綾
「銃を持っていて、追跡中に発砲もあった。私が撃った弾は、遠山の右腕をかすめた」
宝条 潤
「……右腕を負傷した逃亡犯」
潤がここで顔を上げる。
宝条 潤
「そして、東京へ逃げ込んだ」
遥香と綾が同時に頷く。
神谷 遥香
「ええ。それで警視庁に連絡が来て、こうして合同捜査となったの」
宇垣 綾
「でもどこにいるかわからない……だから――」
綾が潤をまっすぐ見る。
宇垣 綾
「あなたの力を借りたい」
潤は写真を見つめたまま静かに答える。
宝条 潤
「……分かりました。ただし……」
顔を上げ、はっきりと言う。
宝条 潤
「“右腕を負傷している男”として探すのは、危険かもしれません」
遥香と綾が同時に反応する。
神谷 遥香
「……どういう意味?」
宇垣 綾
「……続けて」
宝条 潤
「……まず最初に言っておきます」
潤が資料を指先で軽く揃えながら言う。
宝条 潤
「“右腕を負傷した逃亡犯”は――右腕を負傷した逃亡犯としては動かない」
神谷 遥香
「……どういうこと?」
宇垣 綾
「負傷してるなら、普通は隠れるか治療に行く」
宝条 潤
「ええ。普通ならそうです」
潤は淡々と続ける。
宝条 潤
「でも、遠山は銃を持っている。しかも、神奈川で撃たれた直後に県境を越えた。つまり彼は――痛みより恐怖が勝っている。自分が捕まることを、何より恐れている」
神谷 遥香
「……」
宇垣 綾
「……だから、治療にも行かず動ける」
宝条 潤
「そう。負傷してるのに大胆に動ける人間は――『計画がある人間』です」
遥香の目が細くなる。
神谷 遥香
「……遠山は、最初から東京へ逃げるつもりだった?」
宝条 潤
「可能性は高い」
綾が顎に手を当てる。
宇垣 綾
「でも……右腕の傷は必ず足を引っ張る。いずれ病院に行くはず」
宝条 潤
「……“病院”ならね」
神谷 遥香
「……なら?」
潤が静かに言う。
宝条 潤
「『病院に行く』と警察が思うのを、彼も分かってる」
遥香が納得したように息を吐く。
神谷 遥香
「……だから違う場所で治療する」
宝条 潤
「そう。例えば、裏で繋がりのある場所。医者じゃなくても、処置できる人間のところ」
潤が立ち上がり、窓の外を見る。
表情がいつもの“事件モード”になっている。
宝条 潤
「……そしてもう1つ」
宇垣 綾
「何?」
潤が指を1本立てる。
宝条 潤
「遠山は物流の人間だ。港湾の闇も知っている。逃走ルートも、潜伏場所も……“普通の人間が行かない場所”を選べる。ただ……」
潤が資料を見下ろす。
宝条 潤
「現時点の情報だけでは、正直……」
遥香と綾が息を呑む。
宝条 潤
「決定打に欠ける」
宇垣 綾
「……潤君でも?」
宝条 潤
「僕でも、です」
潤がすぐに切り替えるように言う。
宝条 潤
「だから、友人の助けを借りる。東大時代の同級生が弁護士をやってるんだ
」
潤が書斎の扉の方へ顔を向ける。
宝条 潤
「須田」
執事の須田が現れる。
須田
「はい、旦那様」
宝条 潤
「車を出して」
須田
「承知しました。行き先は?」
潤が迷いなく言う。
宝条 潤
「清水法律事務所」
須田
「清水法律事務所でございますか?」
宝条 潤
「うん」
潤が上着を羽織る。
神谷 遥香
「清水法律事務所って……弁護士の清水友里奈先生?」
宝条 潤
「うん。敏腕で推理力も高い」
宇垣 綾
「……どうして弁護士が?」
潤が淡々と答える。
宝条 潤
「逃亡犯を捕まえる鍵は――“法”ではなく、**“闇の仕組み”**にあります」
遥香と綾が顔を見合わせる。
神谷 遥香
「……潤、何を掴んでるの?」
宝条 潤
「まだ何も」
潤が振り返り、静かに笑う。
宝条 潤
「……だから掴みに行く」
須田がすぐに動き出す。
潤がスマホで電話しながら屋敷を出る。遥香と綾は状況が飲み込めず首をかしげながらも、潤の背中を追う。
清水法律事務所(昼)
都内・丸の内の一角。
ガラス張りの高層ビル。エントランスは静かで上品。
エレベーターを降りると「清水法律事務所」のプレートがある。
受付前に潤、遥香、綾の3人が到着する。
受付
「ご予約でしょうか?」
宝条 潤
「宝条潤です。清水先生に連絡しています」
受付が即座に表情を変える。
受付
「失礼いたしました、宝条先生……!すぐにお通しいたします」
遥香と綾は心の中で同時に思う。
神谷 遥香(心の声)
(あぁ……潤はこういうところでも有名なのよね……)
宇垣 綾(心の声)
(さすが……友人の事務所でも有名なのね……)
応接室へ案内される。
応接室
落ち着いた応接室。大きな窓から東京の街が見える。
ドアがノックされ、入ってくるのは――清水友里奈、29歳。黒髪をまとめ、スーツ姿。美人で知的。鋭い目をしているが、表情は柔らかい。
清水 友里奈
「……宝条君?」
潤が懐かしそうに微笑む。
宝条 潤
「久しぶり、友里奈」
次の瞬間――
清水 友里奈
「ちょっと!!本当に宝条君だ!!」
友里奈が思わず駆け寄ってくる。
宝条 潤
「本当にって……来るとき連絡したろ?」
清水 友里奈
「だって!テレビの中の人じゃない!東大の頃の顔そのまんまなの、反則なんだけど!」
宝条 潤(苦笑)
「そっちも変わってないよ」
清水 友里奈
「えへへ……まあ、私はこうして自分の事務所も立ち上げたけどね」
宝条 潤
「言うと思った」
2人がすごく親しげに笑う。
その後ろで――遥香と綾が無言で潤を見ている。
神谷 遥香(ジト目)
「…………」
宇垣 綾(ジト目)
「…………」
2人の視線が突き刺さる。
宝条 潤(心の声)
(……あ、これ……今ものすごく空気が悪い)
友里奈が遥香と綾に気づく。
清水 友里奈
「……あれ?そちらのお2人は?」
遥香が警察手帳を見せる。
神谷 遥香
「警視庁の神谷です」
清水 友里奈
「え?刑事さんですか?」
神谷 遥香
「捜査一課です」
清水 友里奈
「……捜査一課……」
続けて綾も前へ。落ち着いた空気で警察手帳を出す。
宇垣 綾
「神奈川県警の宇垣です」
清水 友里奈
「えっ、神奈川?」
友里奈が思わず部屋を見回す。
清水 友里奈
「……ここ、東京ですよね?神奈川県警は管轄外のはず……」
宝条 潤
「それは今から説明する」
潤が椅子に座り、落ち着いて説明する体勢になる。遥香・綾も座る。
友里奈も真剣な表情で向かいに座り、メモ帳を出す。
宝条 潤
「簡単に言うと今、神奈川県警が追っていた殺人事件の犯人が、東京に逃げ込んでるんだ。だから警視庁と神奈川県警が合同で捜査してる」
清水 友里奈
「……殺人事件」
宝条 潤
「犯人は銃を所持。そして、神奈川で撃たれて右腕を負傷している」
友里奈の目がスッと鋭くなる。
清水 友里奈
「……なるほど。それで神奈川の警察が東京まで追ってきた、と」
宝条 潤
「そういうこと」
遥香と綾が写真を見せて説明する。
神谷 遥香
「先週、横浜の港湾物流会社の管理職の奥村正樹が殺害されまして、その犯人がこの男、遠山武夫です」
宇垣 綾
「昨日、我々神奈川県警が川崎の廃工場で遠山を発見し、私の撃った銃が遠山の右腕をかすりました」
綾は悔しさを隠せない。
宇垣 綾
「……ですが、東京に逃げられました……」
友里奈は静かに頷き、潤を見る。
清水 友里奈
「それで……皆さんが私のところに来た理由は?」
潤が目を細める。
宝条 潤
「友里奈の得意分野に関係している……“横流し”と“密輸”だ」
友里奈の表情が、完全にプロの弁護士の顔になる。
清水 友里奈
「……なるほどね」
友里奈がペンを走らせ始める。
ここから“弁護士視点の推理”が始まる。
第23話 完