
天才推理小説家の事件録 第19話「宝石強盗事件発生!!後編」
第19話「宝石強盗事件発生!!後編」
宝石店のバックヤード。
小さな防犯室にはモニターが並び、複数のカメラ映像が記録されている。
机には事件当日のデータを入れたSDとPC。
鑑識が一通り吸い出しを終えたあとだ。
潤、後藤、遥香が画面の前に立つ。
後藤 英正
「……先生、これが事件当時の映像です」
宝条 潤
「はい」
潤は椅子に座り、マウスを握る。
映像を呼び出す。
映像描写(モニター内)
店内には客がいない。
店員たちがショーケース付近で談笑。
入口のドアが開く。
次の瞬間――黒いフード、覆面の3人が入ってくる。
銃を見せ、店員たちは即座に床へ。
後藤 英正
「……」
後藤は拳を握る。
宝条 潤
「……動きが速い」
覆面Aが入口側、覆面Bがショーケース側。
無駄がない。リーダーは声を荒げず、短い命令だけで人を動かす。
後藤 英正
「いつ見ても……ひでえな、これ」
店員を後ろ手に拘束。
黒い布袋を配る。そして全員に袋を被せる。
潤は映像を進める。
リーダーがショーケースに近づき、迷わず特定の列へ。
覆面Aが「黒、3段目」と口にする。
さらに奥の保管室へ。
テンキー音。
宝条 潤
「……」
潤の目が冷える。
後藤 英正
「ケースを総当たりしてるように見えて、実際は取る場所が最初から決まってる?」
宝条 潤
「はい。強盗っていうより――回収です」
後藤 英正
「回収……?」
宝条 潤
「犯人グループは“宝石を探してる”んじゃなく……“知ってる宝石を取りに来てる”ということです」
神谷 遥香
「……つまり?」
宝条 潤
「つまり……」
潤は映像を止めたまま、淡々と言う。
宝条 潤
「やはり内部に犯人がいる」
後藤 英正
「……っ」
後藤は悔しそうに歯を食いしばる。
後藤 英正
「やっぱり……」
宝条 潤
「店の構造……死角……高額品の位置……そして第二庫という言葉……全部、外の人間が知るには不自然です」
潤はさらに映像を進める。
撤収の際、リーダーが一瞬だけモニターの方向を見る。まるで――監視カメラの死角を確認しているように。
宝条 潤
「……カメラ」
神谷 遥香
「……?」
宝条 潤
「この人、カメラ慣れしてる。死角を知ってる動きだ」
後藤 英正
「……ところで先生。この事件の黒幕は誰ですか?」
潤は画面を見たまま答える。
宝条 潤
「現時点で、一番疑わしいのは副店長の戸高基樹。でも、もう一段階必要です。戸高の“外回りアリバイ”、それを崩せば、決まる」
神谷 遥香
「アリバイ崩しの材料、取れますか?」
後藤 英正
「取るしかねえよ……絶対に」
その時――
ピピッ
後藤のスマホが鳴る。
後藤 英正
「……!」
後藤はすぐにスマホを耳に当てる。
後藤 英正
「後藤です」
電話相手(声のみ)
『……管理官から緊急報告です』
後藤 英正
「緊急?」
電話相手
『……例の宝石店を襲った実行犯グループが警察に出頭してきました』
後藤 英正
「……は?」
後藤の声が完全に素になる。
後藤 英正
「……出頭!?」
その一言で、室内の空気が変わる。
宝条 潤
「……え!?」
神谷 遥香
「……今、出頭って!?」
店員たち
「……!?」
佐山 里穂
「……出頭?」
水原 香澄
「……捕まった……?」
相沢 莉子
「……ほんとに……?」
武田 美聡
「冗談でしょ……?」
南雲 玲奈
「……」
後藤 英正
「……確認する。人数は?」
電話相手
『3人全員です』
後藤 英正
「……全員……で、理由は?」
電話相手
『……3人の供述によると、金で雇われたそうです』
宝条 潤
「……雇われ?」
電話相手
『3人ともギャンブルで金を使い果たして、首が回らなくなり、それで“仕事”に乗ったと』
後藤 英正
「……」
後藤のこめかみに血管が浮く。
やがて里穂がぽつり。
佐山 里穂
「……え……ギャンブル……?」
武田 美聡
「……は?」
相沢 莉子
「……そんな理由で……?」
南雲 玲奈
「……」
水原 香澄(呆れたように)
「……ほんとに、しょうもない……」
武田 美聡
「こんなクズのせいで……!」
美聡は思わず拳を握りしめる。
佐山 里穂
「……でも」
里穂は胸に手を当て、息を吐く。
佐山 里穂
「捕まったなら……よかった……」
相沢 莉子
「……はい……」
莉子は涙を滲ませながら、やっと笑う。
相沢 莉子
「……もう、来ない……んですよね……?」
後藤 英正
「ええ」
潤は静かに言う。
宝条 潤
「出頭したってことは、雇い主に関係を切られたか……」
後藤はスマホを強く握ったまま、低い声で言う。
後藤 英正
「……聞く。雇い主について、何か言ってたか」
電話相手
『はい。少し出てます』
後藤 英正
「特徴は?」
電話相手
『会ったのは一度だけ。顔はマスクで見えない。声は男。年齢は40前後だと思うと』
後藤 英正
「……」
電話相手
『連絡は全部使い捨てスマホ、金は封筒で手渡しだったそうです』
神谷 遥香(小声)
「典型的ね」
電話相手
『ただ――1つ、妙なことを言ってます』
後藤 英正
「妙なこと?」
電話相手
『雇い主が作戦説明の時、**「第二庫の位置は分かってるな」**って言ったそうです』
室内が一気に凍る。
水原 香澄
「……っ」
相沢 莉子
「……第二庫……!?」
潤はゆっくり息を吸う。
宝条 潤
「……やっぱり」
神谷 遥香
「雇い主は店の内部を知ってる」
後藤 英正
「他には?」
電話相手
『撤収時刻を妙に厳守させてたそうです。「16分で終われ」って』
宝条 潤
「……16分」
宝条 潤(心の声)
(犯行時間を分単位で切るということは、現場の動線を把握してる……そして、慣れてる……やっぱりこれは回収だ)
後藤 英正
「了解。すぐ行く」
後藤は電話を切る。そして拳を強く握る。
後藤 英正
「……ふざけやがって」
武田 美聡
「……最低ですね」
佐山 里穂
「……」
潤は静かに机に資料を並べる。
宝条 潤
「雇い主が『第二庫』を知っていた……そして犯行時間を“16分”で指定……これは――現場経験がある人間の発想です」
後藤 英正
「現場経験?」
宝条 潤
「店で働いてたなら、店の裏導線を歩いたことがありますよね?なら少なくとも、倉庫や保管庫の位置を身体で覚えてます」
神谷 遥香
「……やはり戸高が」
潤は頷き、写真を指でトン、と叩く。
宝条 潤
「戸高基樹、彼は事件当日、“外回り”で不在。でも外回りって言葉は便利なんです。証明しにくいから」
後藤 英正
「……確かに」
宝条 潤
「確か雇い主は3人にこう言ったはずです。『第二庫』……『16分で終われ』……『高額品だけ取れ』――つまりこれは強盗じゃなく、発覚して困る宝石を、外へ運ばせた回収です」
店員たちが息を呑む。
南雲 玲奈
「……回収……?」
宝条 潤
「本当の狙いは“金”じゃなく、特定の宝石です」
後藤 英正
「……戸高を引っ張ります」
宝条 潤
「待ってください」
潤が後藤を止める。
後藤 英正
「……!」
宝条 潤
「犯人は焦れば決まって逃げます。かといって証拠が弱いと、しらを切る。だから……確実に刺さる一撃が必要です」
後藤 英正
「一撃……」
宝条 潤
「戸高が事件当日に店の近くに“戻った”証拠、あるいは第二庫を知っていることを証明する会話ログ、それが必要です」
後藤 英正
「となれば、銀座エリアの防犯カメラを全洗いします」
遥香は店員たちに視線を向け、落ち着いた声で言う。
神谷 遥香
「皆さん、犯人は必ず捕まえます。実行犯も、黒幕も。あなたたちを殴ったこと、必ず後悔させます」
里穂が小さく頷く。
佐山 里穂
「……お願いします」
翌日/都内・銀座周辺 裏路地
警視庁はついに戸高基樹の所在を突き止める。
場所は銀座から少し外れた、ビル裏の駐車スペース。
張り込み班が無線を入れる。
男性刑事(無線)
『対象、確認。戸高、車へ向かいます!』
熊谷 仁志(無線)
『包囲を維持。動くな、下手に刺激するな』
戸高が周囲をキョロキョロ見て、車のドアを開ける。
別方向から捜査車両が一気に詰める。
キキィッ!
後藤が先頭の捜査車両から飛び出す。
後藤 英正
「戸高ァ!!」
戸高 基樹
「……っ!?」
戸高の顔面が一瞬で青ざめる。
戸高 基樹
「な、なんで……!?」
後藤 英正
「止まれ!!警察だ!!」
しかし戸高はドアを乱暴に閉め、エンジンをかける。
後藤 英正
「おい!!」
ブォン!!
戸高の車が急発進。
タイヤが鳴り、砂利が跳ねる。
後藤 英正
「……っ!!逃げた!!各車両!追跡!!」
無線が一斉に飛び交う。
捜査員A(無線)
『対象車両、銀座方面へ逃走!』
捜査員B(無線)
『歩行者多い、注意!』
銀座の大通りに出ようとする戸高。
しかし交通量が多く、思うようにスピードが出ない。
後方にはパトカー数台、捜査車両が連なり追走。サイレンが鳴り響く。
後藤 英正(車内・拡声器)
「止まれぇぇぇ!!」
戸高 基樹(車内)
「ひぃいいいい~~~っっ!!!」
戸高はハンドルを握りしめ、半泣きで叫ぶ。
戸高 基樹
「違う!!俺が悪いんじゃねえ!!」
後藤 英正(拡声器)
「言い訳はいい!止まれ!」
戸高 基樹
「だいたい店が悪いんだよォ!!俺を!!店長代理のまま一生こき使いやがって!!」
戸高は叫び続ける。
戸高 基樹
「結果を出しても!売上を出しても!どうせ社長のコネの奴が上に行くんだよ!!ふざけんな!!俺は!!俺は!!認められるはずだったんだ!!」
後藤の目が怒りで燃える。
後藤 英正(拡声器)
「……っ!認められたいなら真っ当に働け!!お前がやったのは“強盗”だ!!人質殴ってる時点で、終わりなんだよ!!」
戸高 基樹
「うるせえ!!殴ったのは俺じゃねえ!俺は頼んだだけだ!!」
後藤 英正
「……それが一番ムカつくんだよ!」
交差点の前にパトカーが滑り込んでくる。
捜査員C(無線)
『前方に封鎖線、形成!』
後藤 英正
「よし!」
戸高 基樹
「え……!?ま、待て!!」
戸高はハンドルを切り、脇道へ無理やり突っ込む。
通行人
「きゃあっ!?」
後藤 英正
「歩行者注意!!絶対当てるな!!」
戸高の車は狭い路地へ。だがその先は、行き止まりのように見える――
後藤 英正
「追い詰めたぞ……!」
裏路地
車が無理やり突っ込んだ先は――行き止まり。戸高の車はフェンス前で停止。エンジン音が荒い。
後方からパトカーと捜査車両のサイレンが迫る。
後藤 英正(拡声器)
「止まれ!!もう終わりだ戸高!!」
戸高 基樹
「うるせぇ!!」
戸高は焦った目で周囲を見回し――次の瞬間、車のドアを乱暴に開けて飛び出す。
戸高 基樹
「はぁっ…!はぁっ…!」
戸高は路地の脇にある高い塀へ駆け寄る。
後藤 英正(背後から)
「待て!!」
戸高 基樹
「捕まってたまるかぁぁ!!」
戸高は必死に塀に手をかける。
戸高は塀によじ登り、上から向こう側を覗く。
そこは小さな空き地。逃げ道は――ある。
戸高は勝ったと思い、笑いかける。
戸高 基樹
「……よし、抜け――」
しかし――塀の向こう側には既に、人影がいた。
松岡が手を後ろに組み、にこやかに立っている。
松岡 遼
「こんにちは〜」
戸高 基樹
「……は?」
戸高の顔が引きつる。
松岡 遼
「神谷管理官の指示に従って正解でした。宝条先生の読み通りですね〜」
戸高 基樹
「……クソが!」
戸高は塀から飛び降り、すぐ走り出す。
戸高 基樹
「どけ!!」
松岡 遼
「どきません」
戸高 基樹
「どけぇぇ!!」
松岡はのほほんとした顔のまま、ポケットから手を出す。
松岡 遼
「……ああ、そうですよね。逃げますよね、普通」
松岡は軽く首を傾げる。
松岡 遼
「では……都築君」
パチン!
松岡が指パッチンをしながら言う。
松岡 遼
「犯人にお見舞いしてあげなさい」
戸高 基樹
「は?」
建物の陰から、都築がゆっくりと出てくる。
都築は淡々と戸高の進路へ立つ。
都築 真也
「止まってください」
戸高 基樹
「……誰だよ!」
戸高は方向転換して逃げようとするが――都築が一瞬で間合いを詰める。
戸高の腕を掴み、体を密着させる。
戸高 基樹
「うわっ!?」
都築 真也
「……失礼」
都築が腰を深く落とす。
次の瞬間――
ドン!!
戸高の身体がふわりと浮き、綺麗な弧を描いて地面へ落ちる。
都築が特大の一本級の投げを戸高にお見舞いしたのだった。
戸高 基樹
「ぐぇっ!!」
都築 真也
「無駄な抵抗はやめてください」
松岡は満足げに頷く。
松岡 遼
「うん、完璧です。すごいですね都築君。今のは教科書に載せたい」
都築 真也
「ありがとうございます」
塀の向こうから後藤が飛び込んでくる。
後藤 英正
「戸高ぁ……!!」
後藤が状況を見る。
後藤 英正
「……おい、お前らが捕まえたのか」
松岡 遼
「はい」
後藤 英正
「早すぎだろ!!」
後藤が戸高の腕を押さえ、手錠をかける。
後藤 英正
「……戸高基樹、強盗致傷事件のの教唆、ならびに強盗の共犯容疑で逮捕する」
戸高 基樹
「ち、違う……俺は……俺は悪くない……!」
後藤 英正
「悪いんだよ」
手錠の音が鳴る。
戸高の逃走劇は、“塀の向こう”で終わった。
サイレンの音が徐々に遠のき、現場には緊張の余韻だけが残っている。
そこへ――黒塗りの車が滑り込むように止まり、熊谷が降りてくる。
熊谷 仁志
「……」
熊谷はまず戸高を見る。
次に後藤へ目を向け、短く頷く。
熊谷 仁志
「……確保したか?」
後藤 英正
「はい!戸高基樹を確保しました!」
熊谷 仁志
「……よくやった。お手柄だ、後藤」
後藤 英正
「……」
後藤は一瞬、言葉を飲み込み――すぐに首を振る。
後藤 英正
「……俺じゃありません」
熊谷 仁志
「?」
後藤 英正
「神谷です」
熊谷 仁志
「……神谷?」
後藤 英正
「変人の松岡と……」
松岡 遼
「変人とは心外ですね〜」
後藤 英正
「都築が捕まえました」
都築 真也
「……はい」
熊谷 仁志
「……」
熊谷は一瞬、目を閉じる。頭の中で状況整理している顔。
熊谷 仁志
「……つまり、神谷の指示で松岡が誘導して、都築が犯人を投げた」
後藤 英正
「その通りです」
松岡 遼
「補足します。都築君の投げが綺麗すぎて僕、ちょっと感動しました」
後藤 英正
「感動してる場合じゃねぇだろ!!」
都築 真也
「……任務なので」
熊谷は眉間に皺を寄せ、低い声で言う。
熊谷 仁志
「……お前ら、現場を“学園祭”みたいにするな」
松岡 遼
「すみません〜」
松岡は全然反省してない顔。
熊谷は戸高へ一歩近づく。
熊谷 仁志
「戸高、お前がやったのは“強盗”じゃない。人質の人生を壊す犯罪だ」
戸高 基樹
「……俺は……俺は……」
熊谷 仁志
「話は署で聞く」
熊谷が後藤に指示を出す。
熊谷 仁志
「後藤」
後藤 英正
「はい!」
熊谷 仁志
「戸高を本庁へ連行しろ。宝石の搬出ルートを吐かせる」
後藤 英正
「了解です!」
後日 取調室前
後藤が廊下を早足で進む。
熊谷が書類を手にして待っている。
熊谷 仁志
「……吐いた」
後藤 英正
「戸高がですか?」
熊谷 仁志
「ああ。宝石の流し先は買取業者の三崎直也だ」
後藤 英正
「……やっぱり」
熊谷 仁志
「令状は取った。行くぞ!」
後藤 英正
「はい!!」
買取業者 三崎の事務所
倉庫のような事務所。「買取」「査定」の看板。
シャッターが開き、刑事たちが雪崩れ込む。
熊谷 仁志
「警視庁だ!!」
三崎 直也
「……は?なんだよ……」
熊谷 仁志
「三崎直也。盗品等有償譲受け、並びに強盗事件の関与で逮捕する」
三崎 直也
「知らねぇよ!!俺はただ買っただけだ!」
後藤 英正
「その“ただ買っただけ”が犯罪なんだよ!!」
鑑識が証拠品を並べる。
仕入れ記録、偽名の伝票、宝石の写真。
熊谷 仁志
「戸高から直接買い取った。それは戸高が自白している。言い逃れはできない」
三崎 直也
「……っ」
三崎の顔が歪む。
後藤 英正
「宝石店の店員殴って奪った品だぞ。お前も同罪だ」
三崎 直也
「……クソ……」
熊谷 仁志
「連行しろ」
刑事たちが三崎に手錠をかけ、連行する。
宝条邸
潤が書斎で原稿を開いている。
そこへ遥香が静かに入ってくる。
神谷 遥香
「終わったわ。買取業者の三崎直也も逮捕された」
宝条 潤
「……やはり2人はグルだったんだな」
神谷 遥香
「ええ。戸高から買い取ったことも全部吐いた」
宝条 潤
「……よかった」
神谷 遥香
「後藤さんも、熊谷管理官も、相当怒ってた」
宝条 潤
「当然だよ。人質に手を出した時点で、“事件”じゃなくて“傷”になる」
遥香は少しだけ目を伏せ、潤を見る。
神谷 遥香
「あなたも、今回は怒ってたわね」
宝条 潤
「……うん。美人が殴られてたから」
神谷 遥香(無言でジト目)
「……」
宝条 潤
「ごめんなさい」
Jewelry Maison LUXE 銀座店
銀座の宝石店前に人が並ぶ。
「防犯強化」「安心の接客体制」の張り紙。雑誌の取材が入り、店内は活気に満ちている。
武田 美聡(明るく)
「いらっしゃいませ!」
相沢 莉子
「こちら、限定の新作になります…!」
佐山 里穂(笑顔)
「……」
店の外には刑事が警戒に立ち、パトロールが強化されている。
水原 香澄
「……あれ以来怖くて眠れない日もあったけど、でも……捕まってよかった」
相沢 莉子
「私、ちゃんと覚えててよかったです…!」
南雲 玲奈
「ええ。あなたが聴いた“音”が決め手になったのよ」
事件は幕を閉じた。実行犯も黒幕も、そして盗品の流し先も――すべて、裁きの場へ。
壊されたショーケースは新調され、奪われた宝石は戻り、店は以前よりも繁盛した。
だが、店員たちの心に残った傷は消えない。それでも彼女たちは、“光”を扱う場所に、もう一度立った。
銀座の街並みに、宝石が反射する。
第19話 完