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海の王者オルカ 第6話「ルナとの出会い」

    第6話「ルナとの出会い」

    晴れた午前。修行の合間、シリウスに「今日は自由に泳いでこい」と言われたオルカ。
    広い外洋を1頭で泳いでいる。海流に乗って、気の向くままに。
    修行を始めてから初めての「ひとり時間」。どこか手持ち無沙汰そうだ。

    オルカ(独り言)
    「自由に泳げって言われても……何すれば……」

    そのとき、遠くから何か声が聞こえてくる。明るく弾んだ声。

    ルナ(遠くから)
    「わあーっ!マンタだ!」

    オルカが声の方を向くと、大きなマンタが悠々と泳いでいるそばで、1頭のメスのシャチが飛び跳ねている。
    好奇心旺盛な目で、まるで宝物を見つけたように輝いている。

    オルカはしばらくその様子を遠くから眺める。

    オルカ(独り言)
    「……誰だ?あれ」

    オルカが近づいていくと、ルナが振り返る。まったく警戒していない。

    ルナ(明るく)
    「あ!シャチだ!こんにちは!」

    オルカ(少し戸惑って)
    「……こんにちは」

    ルナ
    「ねえ、今のマンタ見た?すごく大きかった!翼みたいで!」

    オルカ
    「見てた」

    ルナ
    「あんなに大きいマンタ、初めて見た!あなたは見たことある?」

    オルカ
    「……ない、かな」

    ルナ
    「でしょ!?珍しいよね!あ、私はルナ。あなたは?」

    勢いに押されながら、オルカは答える。

    オルカ
    「オルカ」

    ルナ(ぴんと来たように)
    「オルカ……!もしかして、シリウス様のそばにいるっていうシャチ?」

    オルカ(驚いて)
    「なんで知ってるの?」

    ルナ
    「海の噂って広まるの早いんだよ。シリウス様に育てられてる子がいるって、ずっと前から聞いてた」

    ルナはまじまじとオルカを見る。オルカは少し居心地が悪そうだ。

    ルナ
    「……シャーオン様の息子でしょ?」

    オルカの体が、わずかに固まる。

    オルカ
    「……そう、だけど」

    ルナ(静かに、しかし真剣に)
    「うちの親、シャーオン様に助けてもらったことがあるって。それで、ずっとお礼を言いたかったって言ってた」

    オルカはルナを見る。ルナの目に、嘘や下心はない。

    岩の上に並んで(水面近くで並んで浮かびながら)、2頭が話している。
    ルナは話が尽きない。オルカは最初戸惑っていたが、少しずつ緊張がほぐれていく。

    ルナ
    「シリウス様ってどんな人?すごく怖そうなイメージなんだけど」

    オルカ
    「怖くはない。厳しいけど、優しい」

    ルナ
    「厳しくて優しいって、どっちなの?(笑)」

    オルカ(少し考えて)
    「両方」

    ルナが笑う。オルカもつられてほんの少し笑う。

    ルナ
    「ねえ、修行って何やってるの?」

    オルカ
    「海流の読み方とか、狩りとか」

    ルナ
    「海流の読み方!それ私も知りたい。教えてくれる?」

    オルカ(少し驚いて)
    「僕が?」

    ルナ
    「だってあなたはシリウスに習ってるでしょ?私は独学だから、いつも迷子になる」

    オルカ
    「迷子に……なるの?」

    ルナ(あっけらかんと)
    「しょっちゅう。この辺も実は、追いかけてたクラゲを見失ってたどり着いたの」

    オルカは思わず笑ってしまう。ルナも笑う。

    オルカ
    「……クラゲを追いかけてたの?」

    ルナ
    「半透明でふわふわしてて、きれいじゃない?食べるわけじゃないけど、つい追いたくなっちゃう」

    オルカ(小さく)
    「変わってるな……」

    ルナ(全然気にせず)
    「よく言われる!」

    少し時間が経つ。空が少し傾いてきた。
    2頭の会話が、少しだけ深くなっていく。

    ルナ
    「……シャーオン様って、どんな人だったか知ってる?」

    オルカ(静かに)
    「直接は知らない。シリウス様やドルンから聞いただけ」

    ルナ
    「そっか……」

    ルナはしばらく黙る。珍しく、言葉を選んでいるようだ。

    ルナ
    「私のお父さんがね、こう言ってたの。『シャーオンは見返りを求めない人だった』って。助けてもらったのに、お礼を言おうとしたら『次に困ってる誰かを助けてやれ』って言ったって」

    オルカはその話を聞いて、黙って目を細める。

    オルカ
    ……そういう人だったんだね。
    ルナ
    「だからね、オルカ。あなたのこと、初めて会ったけど応援したいって思った。シャーオン様の息子だからじゃなくて……なんか、あなた自身が、ちゃんとした人だなって感じたから」

    オルカはルナを見る。真っ直ぐな目だ。

    オルカ
    「……ありがとう」

    ルナ(さっぱりと)
    「どういたしまして!また会えるといいね」

    オルカ(少し間を置いて)
    「……また、会いに来ていい?」

    ルナ(明るく)
    「もちろん!私はだいたいこのあたりにいるから。またクラゲ追いかけてると思うけど」

    オルカはまた笑う。今日一番の自然な笑顔で。

    岩礁の海域

    夕暮れ。岩礁に戻ったオルカ。シリウスが静かに待っている。

    シリウス
    「遅かったな」

    オルカ(少し照れながら)
    「……友達ができた」

    シリウス(わずかに目を細めて)
    「ほう」

    オルカ
    「ルナっていうシャチ。好奇心旺盛で、すごくよく喋る」

    シリウス
    「お前の正反対だな」

    オルカ(むっとして)
    「僕だって喋るし」

    シリウス
    「修行中、あまり話さんだろう?」

    オルカ
    「……それはそうだけど……」

    シリウス(静かに)
    「自分にないものを持つ者と出会うのは、修行以上の学びになることがある」

    オルカはその言葉を聞いて、ルナの顔を思い出す。

    オルカ
    「……ルナのお父さん、僕の父さんに助けてもらったことがあるって言ってた」

    シリウス
    「シャーオン殿はそういう縁をたくさん持っていた。それが今、お前のところへ戻ってきている」

    オルカ
    「縁が……戻ってくる?」

    シリウス
    「海はつながっている。善いことをすれば、いつか誰かを通じて戻ってくる。シャーオン殿はそれを知っていたから、見返りを求めなかった」

    オルカは空を見上げる。夕焼けが海を赤く染めている。

    オルカ(静かに)
    「……父さんって、すごいな」

    シリウス(穏やかに)
    「お前もそうなれる」

    夕暮れの海に、2頭の影が並んでいる。
    遠くで、ルナが元気よく跳ねる姿が小さく見える。

    第6話 完

     
     
     
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