
おいしいご飯が食べたくて
仕事帰り、寄るところがあったので、いつもと少し違うルートで帰った日のこと。
乗り換えの時に先にホームに入ってきたのは通勤快速列車でした。
我が家の最寄り駅は各駅停車しか止まりません。
「これは通勤快速だから見送り」
そう思っていたのに、人の流れに乗って電車に乗ってしまいました。
最寄り駅に近づくまでは、それが通勤快速列車であることすら忘れていました。
最寄り駅が近くなり、車内モニターを見上げたところ
「・・・通過」
「あ~、やってしまった・・・通勤快速。見送るはずだった電車に乗ってしまった・・・」
すでに寄り道していたので、いつもより電車に乗る時間が遅かったのに…
次の停車駅で降りて逆方向の各駅停車で帰るから、さらに遅くなる。
お米炊いていないし、ごはんも遅くなりそう。
「そうだ!クーポンがあったから、今日はお弁当を買っていこう!」
そうして、メールで子どもたちにリクエストを聞き、お弁当を買って帰りました。
家に着いたのが夜7時半。
夕食はお弁当です。長男は牛丼、次男と私はとんかつ弁当です。
長男も次男も、にこにこしてお弁当を食べ始めました。はじめのうちは。
長男は着々と食べすすめていきますが、
途中で次男と私の箸がとまりました。
「ママ、ごはんあんまりおいしくない」
「だよね。食べれる?」
「わかんない」
「ママはおろしポン酢かけたから、キャベツとソースかけて食べてみる?」
「うん、がんばる」
お米にはたくさんの神様が宿ると言われている、という話をよくしているので、ご飯を残すことは少し気が引けました。なので何とかご飯は残さず食べましたが、ずっと喉の奥においしくない余韻がずっと残っていました。
しばらくして、あるお店が国産米のキャンペーンを始めたというのをXで目にしました。そこで私は気づきました。
これまで、そのお店で買ってもおいしくないと思ったことはなかったのに、その時お米が美味しくないと思ったのは、そのお店でも普段とは違ったお米を使っていたのかもしれません。
自分では意識していなかったけれど、私はお米にはうるさかったのを今になって気づきました。
私は米どころといわれるところで生まれ育ちました。
毎年秋にはおばあちゃんの田んぼで採れた新米をもらいます。
その後、春ごろまではおばあちゃんからお米をもらい、そのあとまた新米の季節まではお米屋さんで「二番目に高いお米」を買っていました。地元で採れたお米です。一番高いお米は違う地域のお米で、お米とお水の相性が合わないということでいつもニ番目のお米を買っていました。
中学生のころ、冷夏でコメの収穫量が減り、タイ米を輸入した時がありました。
そのとき農家でもお米がたりなくなり、おばあちゃんからもらえるお米もなく、お米屋さんにも国産米は少なかった記憶があります。
父が食にうるさい人でしたが、ものは試しに一度だけ母がタイ米を買ってきました。
どうやっても美味しく炊けない。ごはんを食べるときの箸が進まない。
美味しくないお米を食べたのはその時くらいでした。
子どもの頃、我が家には1升炊きの電気炊飯器の他に5升炊きのガス釜がありました。普段はあまり使わないけれど、お赤飯やおこわを炊く時、親戚がたくさん集まる時にはそのガス釜でご飯を炊いていました。また、強い火力で一気に炊き上げるので、ご飯を炊くのが遅くなった時にもたまに活躍しました。
どんな時でもガス栓の近く、ガスコンロの脇に鎮座して存在感を放っていたのですが、いつの頃からか、その炊飯器はなくなっていました。
ガスで炊いたお米は火力が強いからか、お急ぎで炊いたのにピカピカでふっくらしていて、とても美味しかった記憶があります。
今、実家では再びガスコンロで炊く炊飯器を使っています。コンロが自動で火力調整をしてくれて、炊き上がったら火は止まります。ガスコンロとはいえ、直火で炊くご飯はとてもおいしい。残ったご飯を冷蔵庫に入れて、温め直したものでも格段に味が違います。
私はずっと、おいしいお米に恵まれてきたんだなと改めて感じます。
実家を出た今、実家からお米を送ってもらったり、買うときも実家の近くで採れたお米を買うようにしています。
先日、実家からこちらに送ることができるだけのお米がなくなったと連絡があったので、実家の近隣の県で採れたお米を買ってみました。いつも2、3膳ご飯を食べる長男が、大好きなお刺身をおかずにしても、おかわりすることなく箸をおく日が続きました。
その後、そのお米がなくなったので実家の近くで採れたお米を買ったところ、にこにこしながらおかわりのごはんを自分でよそって食べるようになりました。
親も知らないうちに、息子の舌がお米の味を覚えたのでしょう。
おいしいお米が食べたい。
おいしいお米は、それだけで立派なごちそう。
おいしいお米は人に幸せを運んでくる。
だからおいしいお米が食べたい。
そして、そのおいしいお米をよりおいしく食べられるよう、
こだわってお米を研ぐ。
こだわってお米を炊く。
このこだわりは、ずっと続けていきたい。