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Photo bykeitafukui

18歳、迷い蟌む

    ナル

    昚今、ニュヌペヌクタむムズや某䞍動産䌚瀟の䞀件があり、話題になっおいる盛岡。
    その件に぀いお蚀いたいこずはたくさんあるのだが、それは眮いおおいお。
    僕は18歳から7幎間、盛岡で暮らしおいた。倧孊に入孊し、はじめおの䞀人暮らしを経隓し、さたざたな出来事があっお倧孊に行かなくなり䞭退するたでの7幎間だ。楜しさよりも、悲しさず無力感に充ちたその期間があっおも、盛岡ずいう地をいただに愛しおいるのも䞍思議なものだ。たた盛岡で暮らしたい。
    それはさおおき、その7幎間に起きたこずの䞭で、未だに䞍思議なこずがある。䞀床しか蟿り着けなかった堎所があるこずだ。
    あの堎所は、きっず異䞖界だったず今は思っおいる。
    倧孊生になったばかりの18歳の春、僕は講矩が終わったあずにふず、桜を芋に行こうず思い立った。通っおいた倧孊の孊内にも玠敵な桜が咲き誇っおいたし、いわゆる名所もすぐそばにあった。しかし、倧孊に入っおはじめおの䞀人暮らしずなり、やや気分が高揚しおいたであろう僕はそういう「䞀般倧衆向け」な桜の名所で満足はしなかった。
    「誰も知らないような穎堎を芋぀けたい」
    そしお、盞手がいないのにデヌトずかそういうので「この人こんな隠れた名所を知っおいるなんお」ずきゅんずしおもらいたい。ずいう思春期にしか発想に至らないような倧きな䞋心が、内容がたったく頭に入らない講矩で疲れ果おた僕を突き動かした。
    すぐさた自宅に戻り、テキスト類を党お郚屋に攟り出し、財垃ず携垯電話だけ持っお探玢に繰り出した。気分ずしおぱル・ドラドやアメリカ倧陞を探しに行くようなものだ。胞は高鳎っおいる。理由の半分はただ芋ぬ圌女ずのデヌトずいう、完党なる劄想によるものである。
    自宅アパヌトを出お、車通りの倚い亀差点に着いたずころで、はたず気づいた。
    どっちに向かえばいいのかわからない。
    この広い盛岡垂内のどこに「隠れた名所」があるのかなんお、暮らし始めお1ヶ月かそこらの田舎者の若造にわかるはずもないのだ。食事さえ孊食かコンビニである。数倚ある飲食店にすら入ったこずはない。
    家を出お1分匱で僕は途方に暮れた。
    少なくずも来た道のほうにはない。倧孊の向こう偎はただ芋ぬ魔窟である。噂では、田舎者は狩られお開運橋に吊るされるずいう。ずなるず、この道に沿っお巊ぞ向かうか、右に向かうか。
    信号が3回倉わったずきに僕は思い぀いた。
    右だ。
    なぜそう思ったのかはわからない。きっず右に向かえば目に入る岩手山が僕を呌んだのだ。岩手山にはすべおがわかっおいる。僕には䜕もわからない。
    道沿いに進んでいく。北䞊川を芋䞋ろす橋を枡っお、たたも思い至る。
    このたた道沿いに北䞊したら、滝沢村珟・滝沢垂に着くだけじゃん。
    しかも滝沢村たでは距離がありすぎる。やはり道沿いではだめなのだ。誰もが行く倧きな道に、ただ芋ぬ秘境などない。迷い、苊しんだ者こそが䜕かを芋぀け出す。
    そう思ったずき、右偎に现い道を芋぀けた。どうやら䜏宅街に向かう道のようだ。その日の僕にはその道が茝いお芋えた。その日1回限りではあったが、茝いおいた。きっずこの先に、䜕かある。
    足取りは急に軜くなった。最初からそんなに重い足取りでもなかった。10分匱しか歩いおいないのだから。心配なのは靎擊れだけである。
    その道に入り、僕は進み続けた。進めども進めども、家、家、家。僕の実家近蟺にこんなに家はない。そもそも建物がない。
    でも家しかないなあ、垰ろうかなあ。そう諊めようずしたずき、これたた现い道を芋぀けた。䞍思議なこずに、このずきしか僕はこの道を芋぀けられなかった。
    その道に入っおからの道順が、なぜかひどく曖昧な蚘憶になっおいる。頭に靄がかかったように、思い出すこずが出来ない。それたでの景色は鮮明に芚えおいるのに、呚りが家だったか、朚々だったのかさえ今に至るたで思い出せない。
    そういえば、その道に入っおからは誰ずもすれ違わなかった。それだけは芚えおいる。時間垯のせいだろうか、ずしか圓時は考えなかった。
    どのくらい歩いたか、気が぀くず现い川に面した道に出た。日はあたり差し蟌んでいなかった。その日は春にしおは匷い日差しがあったので、少し䞍思議だった。
    少し奥に進むず道はそこで終わっおいたのだが、突き圓たりに花々が咲き誇っおいた。桜だけではなかった。薄玅の花々が残念ながら他の
    花の皮類がわからなかったたるで桃源郷のように茝いおいた。さらさらず氎の流れる音がする。花は、きらきらず茝いおいる。
    ぀いに蟿り着いた。ここが゚ル・ドラドである
    もはや僕の思考からは劄想は掻き消えおいた。矎しい花々。そしお氎流の音のみがする、静寂。誰も芋぀けおいないであろうこの楜園を、僕は芋぀けたのだ
    だが、僕は倱念しおいたのである。カメラを持っおこなかった。そうだ携垯、ず取り出した携垯電話の充電は、切れおいた。
    この矎しさを誰にも䌝えられないずは。僕は絶望した。そしおすぐに立ち盎った。圌女ず䞀緒にたた来ればいいじゃないか。ただ圌女なんおいないけど。
    誰もいない堎所に向かっお、たた来るよ、ず呟いた。颚がふわっず吹いた気がした。
    気が぀いた頃には倧きな通りに出おいた。日は少し傟いおいる。いい堎所を芋぀けた満足感ず、歩き疲れたこずによる空腹感で僕はいっぱいだった。その合間に靎擊れの痛みを感じながら。
    いい機䌚だから、家の近所の食堂に入っおみよう。知らない堎所も、知らない人も苊手だけど、今日の僕なら䜕だっおできる。知らなかったものや人も、あの堎所のように、きっず奜きになれる。そう思いながら垰路に着いた。
    食堂の垭に案内されお少しした頃、携垯電話が鳎った。友人からのメヌルだった。切れおいたはずの充電は、ほが完璧な状態だった。
    「ずっず電話繋がらなかったけど、倧䞈倫」
    連絡の内容自䜓は他愛ないものだったが、最初の䞀文に、汗のせいではなく身䜓が冷えたような気がした。もしかしたら今日のこずは、忘れるべきかもしれないず思った。
    それから䞀幎ほど、たたに思い出すこずはあっおも実際に向かうこずはなかった。色々ず他の出来事に振り回され、悩み、忘れかけおいた。
    倧孊2幎の秋、ふずあの堎所に行っおみようず思い立った。今回の探怜で䜕事もなければ、あの日の出来事は単なる偶然だったず蚀えるから。忘れるような出来事ではないず、信じたかった。
    同じ道を行く。あの頃より盛岡に詳しくなった。店も倉わった。僕自身も、きっず。傷぀いたこずもある。傷぀けたこずのほうが倚いけれど。泣かせた人ばかり。悲したせた人ばかり。
    それでも、道は同じだ。岩手山は茝いおいる。僕は生きおいく。
    䞀歩、䞀歩ず螏みしめる。ごめんなさい、ごめんなさいず思いながら。
    しかし、䜏宅街に向かう道をいくら行けども、あの现い道を芋぀けられない。暗くなっおきたので、その日は諊めお垰るこずにした。
    そんなこずを䜕床繰り返しおも、僕は盛岡を離れるその日たで、あの堎所を芋぀けるこずはできなかった。だから勿論圌女どころか、誰かを連れお行くこずは叶わなかった。
    盛岡を離れおからも、ふずしたずきに思い出しおは疑問笊で頭がいっぱいになる。あの堎所は、果たしお今もあるのだろうか。なぜ携垯電話の充電が、あの堎所では無くなったのだろうか。今もあの堎所があるずしお、僕が行ったあの堎所は、珟実のものなんだろうか。
    盛岡が話題になるたびに、僕はあの堎所の矎しさを思い出す。岩手山よ、教えおはくれないか。僕はあの日、どこに行ったのか。





     
     
     

    ナル

     
     
    小説・゚ッセむ・詩。著䜜物無断䜿甚犁止。