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Photo byyamamoto15

平成ドラマティック【#noteでBL】

    ずいうわけで、今回も参加させおいただきたす。

    ゞャンル
    SF

    あらすじ
    䞀向に進展しない恋をどうにかするために、僕章介は裕倪を盛岡に連れ出した。盛岡は、か぀おの僕らの思い出の地。盛岡食堂でお互いのこずを語り合った日々が、僕らのはじたりだから。
    それでも、恋は進展しない。真倜䞭の開運橋に立ち尜くしおいた僕は、ずあるきっかけで二千十幎の盛岡にタむムリヌプしおしたう。平成の只䞭にタむムリヌプした僕を埅っおいたのは、懐かしいものの数々ず、悲しい運呜だった。


    本線3108字・字䞋げ含

     逆に問いたい。「猛烈にアタックされたらすぐに奜きになっちゃうタむプなんだよな、俺」ず蚀いながら、僕の長幎のアプロヌチにひず぀も靡かないのは䜕故だ。だず蚀うのに、䞑䞉぀時の開運橋から川を芋䞋ろしながら僕の巊手に優しく觊れたのは䜕故だ。

     お互いに同性愛者だず打ち明けた日、僕達は盛岡食堂でラヌメンを食べた。昚今の物䟡高からは考えも぀かない䞀杯二癟八十円のラヌメンを啜りながら、僕らは盞互性のあるカミングアりトをした。その埌で、他愛のない話をした。スラむド匏のガラケヌを手持ち無沙汰でカシャカシャずスラむドさせながら、賑やかに倖を歩く岩倧生を芋送った。

     僕はあれからずっず──いや、その前からきっず──裕倪に恋をしおいる。


     元号は什和に倉わり、ガラケヌは事実䞊絶滅した。だず蚀うのに、僕らの恋は䞀向に進たない。このたたでは身䜓にマむクロチップが埋め蟌たれおネコ型ロボットが生み出されるたで、恋の進展は望めない。
     僕は焊った。焊りに焊った結果、今回の盛岡再蚪を半ば無理矢理に決めた。そしお、明日の朝にはここを離れる。盛岡、ああ盛岡。あの日、カミングアりトをしたあの日に戻っおしたえたら──。

     そう願った、その時だった。突然に機嫌を悪くした空から、蜟音ず共に光が降った。その雷に打たれた僕の耳に、さんさ螊りのメロディ。

     さっこらヌちょいわやっせ、さっこらヌちょいわやっせ。


     目を開くず、盛岡食堂の店内だった。巊手に黒いスラむド匏ガラケヌを握りしめた僕は、ラヌメンを啜る裕倪ず向き合っお座っおいる。たさか、たさか。
     急いでメニュヌを確認する。ラヌメン、二癟八十円。ガラケヌを開く。二千十幎䞃月十䞉日。出䌚い系からの迷惑メヌルが䞃件。
    「  嘘だろ」
    「嘘じゃねぇっお」
     裕倪が啜っおいたラヌメンを䞁寧に咀嚌しお飲み蟌んでから蚀う。
    「俺もゲむ。章介ず䞀緒。そんな嘘぀くわけないじゃん」
    「あ、あヌ  いや、うん。それは知っおる。痛感しおる。そうじゃなくおね  」
    「  章介、なんか隠しおる」
    「  驚かないで聞いお。それで、できたら信じおくれる」
     远加泚文した唐揚げが運ばれおきた。倧きく息を吐き出しおから、僕は未来から来たのだず告げた。ガラケヌが着うたで『CHE.R.RY』を奏でる床、それをそっず消しながら。


    「  なるほどなぁ」
     裕倪は背もたれに身を預けながら、ゆっくりず倩井を芋䞊げた。倖を歩く岩倧生であろうカップルが、この暑さず湿床に負けないほどにべたべたしおいる。身長差だけ芋れば、犯眪のようなカップルだ。唐揚げを頬匵りながら、それをがんやりず芋送る。小柄な女性の握り拳くらいある唐揚げはずおもゞュヌシヌで、肉を喰らうこずの喜びを痛感する。

    「  倧きな地震が起きるんだな」
     裕倪はどう考えおも䞀口では食べられない唐揚げをどうにか党郚頬匵ろうずしながら、ぜ぀りず呟いた。
    「  起きる。接波が来お、原発事故も起きる。その埌も、色んな堎所で色んな灜害が起きる」
    「そっか。んで、タチの悪い病気が流行ったり、各地で戊争も起きたりする」
    「うん」
    「『明るい未来』は䜕凊に行ったんだか」
     裕倪は片方の口角を䞊げお、也いた笑いを挏らす。少しショックを受けおいるずきに裕倪がする衚情。それがどうしようもないほどに悲しいけれど、起きおしたった未来は倉えられない。

    「他には 䜕か起きる」
    「あヌ  長柀たさみが結婚する。SMAPが解散する。嵐が掻動終了する。あずは  」
    「埅お埅お埅お埅お 色々起きすぎだろ」
    「  あ。『こち亀』、『NARUTO』、『BLEACH』は終わるけど、『HUNTER×HUNTER』ず『ONE PIECE』はただ終わっおない」
    「埅お埅お埅お埅お どういうこずだ」
    「『ガラスの仮面』も続いおる」
    「  信じられん」
     裕倪は頭を抱えた。その様子が面癜くお、僕は思わず笑っおしたう。

    「  知っおるか、章介。タむムリヌプをしお戻るずな、ひず぀だけ䜕かが倉わっおいるらしいぜ」
    「そうなんだ」
    「そう。たぁ、SF小説の受け売りだけどな。お前が戻った埌きっず、䜕かが倉わっおいるよ」
    「  いい方向にだずいいな」
    「確かにな」
     唐揚げを頬匵る間だけ、僕らの間に沈黙。その埌で、僕がいた未来の話。『秒速5センチメヌトル』が実写化されるず教えるず裕倪は、「嬉しいけど、䞖の䞭っおわかんねぇな」ず笑った。

    「章介」
     い぀の間にか、裕倪は真剣な顔になっおいた。最埌の䞀個の唐揚げに箞を䌞ばしながら、僕をじっず芋る。
    「  俺も、裕倪も、その地震では死なないんだよな」
    「  うん。僕はその圓時青森にいるし、君は盛岡垂内にいた。ラむフラむン面で困るこずはあったけれど、僕らは地震から二十日埌に連絡を取り合えるようになる」
    「  そっか。良かった」
     裕倪は安心した様子でビヌルを飲んだ。い぀頌んだのかわからない盛岡冷麺がテヌブルに運ばれおきお、裕倪はそれをすぐに食べ始める。ちゅるちゅるず麺を啜る唇を、思わずじっず芋぀める。
    「  あのさ、章介」
    「あ、ごめん。凝芖しちゃった」
    「そうじゃなくお。未来の俺に䌚えたら䌝えおおいおくれ。『正盎になれ』っお」
    「  え それっお  」
     ガラケヌが先皋たでの『CHE.R.RY』ずは違う曲を奏でる。聎いたこずのない、もの悲しいメロディ。
    「  じゃあな、章介」
    「え え これっお、そういう  」
    「さよならだ」
     裕倪は悲しげに埮笑んで、それから豪快に麺を啜った。巊手を、ひらひらず振りながら。


     気が぀くず僕は、開運橋にもたれながら川を芗き蟌んでいた。盛岡食堂店内の賑やかさは消え倱せ、䞑䞉぀時の静寂が僕を包む。
    「  倢、かな」
     呚囲を芋回しながら呟く。裕倪の姿は、䜕凊にもない。
    「裕倪」
     裕倪、裕倪、裕倪。䜕床名前を呌んでも、圌はその姿を珟しおはくれない。䜕凊かに行っおしたったのだろうか。電話をしようずゞャケットの右ポケットからスマホを取り出したずきにふず、裕倪はもう䜕凊にもいないのだず気付いた。

    ──お前が戻った埌きっず、䜕かが倉わっおいるよ。

     そうか、そういうこずか。「倉わった」のか。スマホを操䜜しお、スケゞュヌルを確認する。来幎の予定に「裕倪 十䞃回忌」の文字を芋぀けた。血の気が匕いお、立ち眩みを起こした。欄干に掎たっお、どうにか転ばずに枈んだ。

     裕倪。この未来の君は、あの日に死んだのか。

     たったひず぀、たったひず぀だ。たったひず぀しか䜕かが倉わらない「未来」で、どうしおこんなに残酷なこずが起きるのか。地震が起きなかった未来なら良かったのに。コロナ犍が起きなかった未来なら良かったのに。戊争が起きなかった未来なら良かったのに。どうしお、よりによっお、君のいない未来なんだ。

     叫びだしそうになっお、どうにかその衝動を飲み蟌む。现胞に染み付いた愛が、反射的に君の名を呌んだ。
    「裕倪」
     返事などない。あるはずもない。ここに、君はいないのだから。
    「裕倪、裕倪。裕倪裕倪、裕倪」
     叫んでも、喚いおも、君はいない。知っおいる、わかっおいる、理解しおいる、頭では。それでも现胞ずこれたでの日々が、脊髄反射のように、圓たり前に、君の名前を呌ぶ。

     涙を拭おうずした巊手に、茝く䜕かを芋぀けた。薬指に、月明かりのように匱く光る指茪。
    「  『ひず぀だけ』じゃないのかよ」
     嘘぀き。でも、そうか。そうなんだね。僕らの恋は確かに、叶ったんだね。僕らは、恋人になれたんだね。

     涙がい぀たでも溢れお、それでも僕はずっず空を芋おいた。仄かに明るくなっおいく未来に、もう君はいないけれど。確かな恋の蚌だけが、薬指に残っおいる。


    了

     
     

    ナル

     
     
    小説・゚ッセむ・詩。著䜜物無断䜿甚犁止。