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『ドラむボヌト』DryVault 第26章支配されない暮らし

    第26章支配されない暮らし

    倜明け前、詩織は、䞀人で、島の高台にある、特攻隊の慰霊碑を、蚪れた。

    氞田に案内された、その小さな石碑の前に立぀ず、県䞋に広がる、ただ暗い海が、静かに、波の音を、響かせおいた。

    詩織は、ポケットから、昚日、ペシからもらった、䞀枚の、黄色い花――特攻花を、取り出した。それを、慰霊碑の前に、静かに、眮いた。

    「あなたたちが、遞べなかった自由を」詩織は、静かに、呟いた。「私たちは、今、䜿わせおもらいたす」

    倜が明け始める頃、詩織は、氞田の家ぞ戻った。葵ずゞェむ゜ンが、すでに、機材の準備を、終えおいた。

    「準備は」詩織は、尋ねた。

    「敎っおいたす」ゞェむ゜ンが、答えた。「衛星通信、安定しおいたす。YouTube、そしお、分散型プラットフォヌムぞの、同時配信も、可胜です」

    詩織は、深く、息を吞った。それから、カメラの前に、座った。

    「始めたしょう」

    配信が、始たった。

    「皆さん、おはようございたす。あるいは、こんばんは」詩織は、静かに、しかし、確かな声で、語り始めた。「私は、今、鹿児島県の、喜界島ずいう、小さな島から、お話ししおいたす」

    カメラには、倜明けの、淡い光に包たれた、サトりキビ畑ず、海が、映っおいた。

    「これたで、私たちは、Stratos Globalの気候支配、䞖界の食料ず゚ネルギヌの独占、そしお、その裏で、富ず暩力を、さらに集䞭させようずする、人々の姿を、远い続けおきたした」詩織は、続けた。「その調査は、今も、終わっおいたせん。Stratos Globalの『テラ・シヌルド』は、今も、䞖界の倚くの囜の、気候・経枈システムを、管理し続けおいたす」

    「しかし」詩織は、少し、声を、萜ずした。「今日、私が、皆さんに、お䌝えしたいのは、別のこずです」

    詩織は、カメラを、ゆっくりず、自分の呚りの景色に、向けた。

    「この島は、80幎前、特攻隊員たちが、出撃した堎所です」詩織は、語った。「倚くの若者が、自分の意志ではなく、時代の力に、抌し流されお、呜を、萜ずしたした」

    「私は、この島で、䞀人の女性に、出䌚いたした」詩織は、続けた。「圌女は、100歳を超えお、今も、この島で、生きおいたす。圌女が、私に、教えおくれたこずを、皆さんに、䌝えたいず思いたす」

    詩織は、ペシの蚀葉を、䞁寧に、語った。「逃げるこずもできる。それでも、戊うこずを、遞ぶ自由」。「倧きなものに、頌らない。隣の人ず、助け合う。それだけで、人間は、生きおいける」。

    「私は、この島で」詩織は、続けた。「持垫の人たちが、海底火山の被害から、立ち盎っおいく姿を、芋たした。蟲家の人たちが、塩害を受けた土地で、新しい䜜物を、育おようずする姿を、芋たした。お金が、ほずんど、䜿われない、物々亀換の垂堎を、芋たした」

    「それは」詩織は、静かに、しかし、力匷く、蚀った。「巚倧な䌁業や、囜家のシステムに、頌らずずも、人間が、生きおいけるずいう、蚌でした」

    葵が、カメラの暪で、画面を、共有した。䞖界各地から届いた、無数の蚌蚀――むタリアのパン職人、ドむツの蟲家、日本の䞻婊、フランスの垂民たちの、声を、䞀぀ず぀、玹介しおいった。

    「䞖界䞭で、今、同じこずが、起きおいたす」葵は、蚀った。「人々は、巚倧なシステムに、すべおを、委ねるのではなく、自分たちの手で、生掻を、立お盎そうずしおいたす」

    ゞェむ゜ンが、続けた。「僕の村は、噎火で、すべおを、倱いたした。でも、村の人たちは、今、新しい土地で、もう䞀床、蟲業を、始めようずしおいたす。誰かに、䞎えられるのを、埅぀のではなく、自分たちの力で」

    詩織は、最埌に、カメラを、たっすぐ、芋぀めた。

    「䞖界には、ただ、富ず暩力を、自分たちだけのために、囲い蟌もうずする人々がいたす」詩織は、蚀った。「その構造は、すぐには、倉わらないかもしれたせん。でも、皆さん䞀人䞀人が、『支配されない暮らし』を、遞び続けるこずが、最も、確かな抵抗の圢だず、私は、信じおいたす」

    「質玠な暮らし。隣人ずの、助け合い。䜕気ない、日垞の幞せ」詩織は、続けた。「それこそが、誰にも、奪うこずのできない、私たちの、本圓の豊かさです」

    配信は、静かに、終わった。

    その日の午埌、䞖界各地から、反響が、届き始めた。

    ゞェむ゜ンが、䞖界䞭のニュヌス速報を、次々ず、衚瀺した。

    『パリ、垂民数䞇人が、「方舟の䞻たちに、屈しない」ず、シュプレヒコヌル』
    『ベルリン、「質玠な暮らしを、守る」抗議デモ、拡倧』
    『ゞャカルタ、垂民が、独自の物々亀換ネットワヌクを、正匏に、組織化』
    『東京、霞ヶ関前、桐谷氏を含む、垂民グルヌプが、座り蟌み抗議』

    詩織は、䞖界䞭の街頭に、集たった、無数の人々の映像を、芋぀めた。圌らは、皆、それぞれの蚀葉で、しかし、同じ思いを蟌めお、声を䞊げおいた。

    『我々の暮らしは、支配されない』
    『質玠であるこずは、匱さではない』
    『本圓の豊かさは、ここにある』

    葵が、その映像を芋ながら、静かに、涙ぐんでいた。「䞖界が、聞いおくれた」

    ゞェむ゜ンも、深く、頷いた。「僕たちの声が、確かに、届いた」

    しかし、その同じ日、Stratos Globalの本瀟では、い぀もず倉わらず、「テラ・シヌルド」の管理画面が、静かに、皌働しおいた。アラン・チェンは、盞倉わらず、䞖界の経枈ず気候のデヌタを、芋぀めながら、次の戊略を、緎っおいた。モルディブの島の暩力者たちも、それぞれの「方舟」の䞭で、倉わらぬ、豪奢な生掻を、続けおいた。

    䞖界は、すぐには、倉わらなかった。

    しかし、詩織は、その事実を、もはや、絶望ずしおは、捉えおいなかった。

    倕暮れの、喜界島の瞁偎で、詩織は、葵ずゞェむ゜ンず䞊んで、海を、芋぀めおいた。

    「私たちは、䞖界を、倉えられなかったのかもしれない」詩織は、静かに、蚀った。

    「うん」葵が、頷いた。

    「でも」詩織は、続けた。「䞖界䞭の、無数の人たちが、自分の足で、立぀こずを、遞び始めた。それは、確かに、私たちが、灯した、小さな光」

    ゞェむ゜ンが、静かに、蚀った。「ペシさんが、蚀っおいたように」

    「支配されるのではなく、自分の力で、生きるこず」詩織は、頷いた。

    䞉人は、しばらく、䜕も蚀わずに、倕日に染たる、海を、芋぀めおいた。庭の、黄色い花が、倕颚に、静かに、揺れおいた。

    その花は、誰に、䞖話をされなくおも、荒れた土地に、力匷く、咲き続ける。

    䞖界の、富ず暩力の構造は、ただ、倉わっおいない。しかし、その足元では、無数の、小さな、しかし、確かな呜が、静かに、しかし、力匷く、根を、匵り始めおいた。

    『ドラむボヌト』――完――

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