
「検討します」で終わらせない|不動産営業の初回接客で使える質問30選
希望条件は聞いた。
予算も聞いた。
購入時期も聞いた。
家族構成も確認した。
それなのに、提案した物件を見せると、
「うーん……ちょっと違いますね」
そして最後は、
「一度、検討します」
で終わってしまう。
そんな経験はないでしょうか。
営業マンからすると、
「これだけ聞いたのに、何が足りなかったんだ?」
と思います。
私も昔はそうでした。
でも、長く営業をやってきて、今はこう思っています。
質問したことと、ヒアリングできたことは同じではありません。
そして、もう一つ。
希望条件を聞いたことと、そのお客様を理解したことも、まったく別です。
ここを勘違いすると、どれだけ物件知識を増やしても、提案はなかなか刺さりません。
この記事では、不動産営業の初回接客で私が大切だと思っている30の質問を紹介します。
ただし、
「この30個を順番に聞けば売れます」
という記事ではありません。
そんな簡単な話なら、営業は苦労しません。
この30の質問を通して伝えたいのは、
お客様の言葉を、そのまま条件として受け取らないこと。
そして、
その言葉の奥にある理由まで考えること。
です。
質問が一つ変われば、
見えるものが変わります。
見えるものが変われば、
提案する物件が変わります。
そして提案が変われば、
「検討します」の中身まで変わってきます。
はじめに|追客が下手なのではなく、初回接客で「次に連絡する理由」を作れていない
私は訪問販売から営業の仕事を始め、不動産売買仲介を含めて30年以上、営業に携わってきました。
それでも今でも、
接客が終わったあとに、
「あそこ、もう一つ聞けたな」
と思うことがあります。
営業経験が長くなれば、お客様のことが何でも分かるようになる。
私は、そんなことはないと思っています。
むしろ経験が長くなるほど怖いのは、
「たぶん、こういうことだろう」
と、自分の経験で答えを決めてしまうことです。
初回接客でも同じです。
お客様が、
「駅徒歩10分以内がいいです」
と言う。
営業マンは、
「10分以内ですね」
とメモする。
間違ってはいません。
でも、まだ何も分かっていないんです。
なぜ10分なのでしょうか。
毎朝電車通勤だからなのか。
奥様が夜遅く帰ってくるからなのか。
将来、子どもが電車通学するからなのか。
買い物の利便性を考えているのか。
それとも、
「駅近の方が資産価値が高そう」
と思っているだけなのか。
理由が違えば、同じ「徒歩10分以内」でも提案する物件は変わります。
ここに、ヒアリングの面白さがあります。
そして私は、初回接客が終わったあとに、
「次は何を送ろうかな」
「何日くらい空けて電話しようかな」
とゼロから考えているのであれば、
少し厳しい言い方ですが、
接客中にまだ聞けることが残っていた可能性が高い
と思っています。
追客になってから、
「何を送ろう」
と考えるのではありません。
初回接客の中で、
次に何を送るのか。
なぜ送るのか。
いつ連絡するのか。
そこまで決めてしまう。
そうすると追客は、
「その後いかがでしょうか?」
ではなくなります。
「前回気にされていた〇〇について確認できました」
という、お客様にとって意味のある連絡になります。
ここはかなり大きな違いです。
第1章|希望条件は「提案条件」ではない
初回接客で、お客様からよく言われます。
「何か良い物件ありますか?」
営業マンとしては腕の見せどころです。
すぐ検索したくなります。
築浅。
駅近。
価格が安い。
日当たりがいい。
土地が広い。
でも、その前に一つ確認したいことがあります。
そのお客様にとって、何が良ければ「良い物件」なのでしょうか。
ここが分からない状態で物件を出すということは、
営業マンが自分の基準で、
「たぶん、これが良いだろう」
と選んでいるだけです。
私は、
希望条件は物件を探すための「検索条件」でしかない
と思っています。
一方、
その条件を希望する理由は、物件を提案するための「判断基準」です。
この二つは似ているようで、まったく違います。
たとえば、
「駐車場2台必要です」
と言われたとします。
営業マンが、
「分かりました。2台ですね」
で終われば、
検索条件は取れました。
でも提案条件は、まだ取れていません。
毎日2台使うのか。
来客時だけ2台必要なのか。
数年後に子どもが車を持つ予定なのか。
仕事で大きな車を使っているのか。
毎日2台使うなら、
縦列駐車では毎朝入れ替えが必要になるかもしれません。
来客用なら、
近くにコインパーキングがあれば、敷地内は1台でも困らないかもしれません。
つまり、
同じ「駐車場2台」という条件でも、その理由によって重要度が変わる。
ここが分かると、
希望条件から少し外れた物件も提案できるようになります。
ただし、
「条件を下げてください」
ではありません。
「なぜ、この物件をお客様に見てもらいたいのか」
を説明できるようになるんです。
これが提案だと思っています。
条件どおりの物件を検索して送るだけなら、
極端な話、お客様自身でもできます。
営業マンの価値は、
条件の奥まで聞いたからこそ見える物件を提案すること。
私はそこにあると思っています。
第2章|初回接客で提案をズラす5つの失敗
失敗1|説明しすぎる
新人の頃ほど、
沈黙が怖いものです。
何か説明しなければ。
知識がないと思われたくない。
そう思って、
物件。
住宅ローン。
周辺環境。
設備。
学校。
とにかく説明する。
もちろん説明は必要です。
でも、覚えておきたいのは、
営業マンが話している時間は、お客様のことを知る時間ではない
ということです。
接客後、
「今日はうまく説明できた」
ではなく、
「今日はお客様がどれだけ自分のことを話してくれたか」
を振り返ってみてください。
こちらの方が、私は大事だと思っています。
失敗2|希望条件を聞いて安心する
エリア。
価格。
間取り。
駅距離。
築年数。
駐車台数。
全部聞いた。
営業マンとしては、
「よし、ヒアリングできた」
と思います。
でも、その情報だけで分かるのは、
検索画面に何を入力すればいいか
です。
まだ、
なぜその物件を紹介するのか
は分かりません。
希望条件を聞き終わったところは、
ヒアリングのゴールではありません。
私はむしろ、
そこからがヒアリングのスタート
だと思っています。
失敗3|お金の話を遠慮する
お金の話は聞きづらいです。
年収。
借入。
自己資金。
月々の支払い。
踏み込みすぎだと思われないか。
警戒されないか。
気になります。
でも、
聞かないことがお客様への優しさとは限りません。
予算を曖昧にしたまま何件も見てもらい、
散々気に入ったあとで、
「この支払いは厳しいですね」
となる方がつらい。
大切なのは、
金額を聞き出すことではありません。
無理なく買えるラインを一緒に整理するために聞く。
この姿勢だと思っています。
失敗4|目の前にいない人を見ていない
ご主人は気に入っている。
でも奥様はまだ見ていない。
ご夫婦は前向き。
でも資金援助をする親御様には話していない。
こういうことは普通にあります。
ここで、
「決定権者は誰ですか?」
と聞きたいわけではありません。
知りたいのは、
誰の、どんな不安を置き去りにしてはいけないのか。
です。
最後になって突然反対が出るのではなく、
出てくる可能性がある話なら、
できるだけ前で知っておく。
その方がお客様にとっても楽です。
失敗5|「検討します」を、そのまま受け取る
私は、
「検討します」
と言われること自体が悪いとは思っていません。
家です。
何千万円もします。
考えて当然です。
問題は、
何を検討するのか分からないまま帰してしまうこと。
です。
価格なのか。
住宅ローンなのか。
奥様との相談なのか。
エリアなのか。
ほかの物件との比較なのか。
ここが分からなければ、
次の連絡は当然、
「その後、いかがでしょうか?」
になります。
逆に、
何を検討するのか分かっていれば、
次に送るものが決まります。
私は、
「検討します」をなくすことより、「検討します」の中身を知ることの方が大切
だと思っています。
初回接客のゴールは「その日に決めてもらうこと」だけではない
初回接客が終わった時点で、最低でも、
なぜ住まいを探しているのか。
何を基準に比較するのか。
今、何に迷っているのか。
次に何を確認するのか。
営業マンが何を準備するのか。
次にいつ連絡するのか。
ここまで整理できていれば、
その日に契約にならなくても、
接客は次につながっています。
逆に、
物件を10件見せても、
次に何をするのか決まっていなければ、
その接客は途切れています。
初回接客は、その場をうまく終わらせる時間ではありません。
次の提案を作る時間です。
ここまで読んで、「では実際に何を聞けばいいのか」と思った方へ
ここまで読んで、
「自分も希望条件を聞いて終わっていたかもしれない」
と思った方もいるかもしれません。
でも、ここからが一番難しいところです。
「理由まで聞いた方がいい」
それは分かった。
では実際の接客で、
何を、どんな順番で、どう聞けばいいのでしょうか。
ここを間違えると、
せっかく深く聞こうとしても、
「なぜですか?」
「それはなぜですか?」
と質問を重ねるだけになり、
お客様からすると、
ただの尋問になってしまいます。
年収を聞けば警戒される。
自己資金を聞けば身構えられる。
購入時期を聞けば、
「急かされているのかな」
と思われる。
家族のことを聞けば、
「そこまで聞く必要ある?」
と思われることもあります。
つまり、
何を聞くかと同じくらい、どう聞くかが重要です。
30個の質問を覚えることが目的ではありません
ここから先では、
私が不動産営業の初回接客で確認したいと思っている30の質問を紹介します。
ただし、
この30個を暗記して、
上から順番にお客様へ質問するための記事ではありません。
それをやったら、おそらくお客様は疲れます。
私が本当に持ち帰ってほしいのは、
「この答えが返ってきたら、次に何を考えるのか」
という部分です。
たとえば、
「駅徒歩10分以内が希望です」
と言われたとします。
そこで、
「10分以内ですね」
とメモして終われば、
10分以内の物件しか探せません。
でも、
「なぜ10分なのか」
まで分かれば、
状況は変わります。
もし理由が、
「毎朝の通勤が大変だから」
だったらどうでしょう。
徒歩12分でも、
駅まで平坦で、
電車の乗り換えが一回少なく、
結果的に通勤時間が短くなる家なら、
提案する価値が出てきます。
つまり、
聞く内容が変わると、今まで“条件外”だった物件が“提案できる物件”に変わることがあります。
これが、ヒアリングの面白いところです。
ヒアリングが変わると、追客まで変わります
もう一つあります。
初回接客で、
お客様が何を気にしているのか分からないまま帰してしまえば、
数日後の連絡は、
「その後いかがでしょうか?」
になります。
でも、
「駅距離よりも、実は夜道の暗さを気にしている」
と分かっていれば、
次の連絡は変わります。
「前回、奥様が夜道を気にされていたので、駅から現地まで実際に歩いて確認してきました」
と言える。
同じ追客でも、
まったく意味が違います。
一方は、
営業マンが状況を知りたいだけの連絡。
もう一方は、
お客様が判断するために必要な情報を届ける連絡です。
私は、
この差はかなり大きいと思っています。
「良い物件がない」の前に、確認したいことがある
営業をしていると、
「このお客様に合う物件がない」
と思うことがあります。
もちろん、本当にないこともあります。
でも時々、
物件がないのではなく、営業マンが“探せる条件”を狭くしているだけ
ということがあります。
「駅徒歩10分以内」
「4LDK」
「築10年以内」
「予算4,000万円」
その条件だけを検索画面へ入れて、
「ありません」
となる。
でも、
なぜ4LDKなのか。
なぜ築10年なのか。
なぜ4,000万円なのか。
そこまで聞けば、
別の選択肢が見えてくることがあります。
ここに気づけるようになると、
ヒアリングは、
単なる情報収集ではなくなります。
提案の可能性を増やす仕事
になります。
ここから先でお伝えすること
ここからは、
「ヒアリングが大切です」
という抽象的な話ではありません。
実際の初回接客で使える形まで落とし込みます。
具体的には、
同じ質問でも警戒される人と、本音を話してもらえる人の違い
住まい探しの「本当の理由」と期限を見つける質問
「4LDK」「駅徒歩10分」をそのまま条件にしない質問
お金の話を嫌がられずに確認する方法
「全部大事です」というお客様から優先順位を見つける方法
同席していない奥様・ご主人・親御様の意見をどう確認するか
「検討します」の中身を確認する3つの質問
次回連絡の理由とタイミングまで初回接客で作る方法
年収・借入・自己資金など、聞きづらい質問の言い換え
接客後に残すべきメモと、次回提案へのつなげ方
まで解説します。
私は、
この30の質問を読んだから、明日から急にトップセールスになれる
とは思っていません。
営業はそんなに簡単ではありません。
でも、
今までなら、
「駅徒歩10分ですね」
で終わっていたところで、
もう一つ聞けるようになる。
今までなら、
「4LDKですね」
と検索していたところで、
「その4部屋、何に使うんだろう」
と考えられるようになる。
今までなら、
「検討します」
で帰していたところで、
「何を検討するんだろう」
と確認できるようになる。
その一つ一つは小さな違いです。
でも私は、
営業力というのは、こういう小さな違いの積み重ねだと思っています。
ここから先は、
明日の接客で一つでも試してもらえるように、
具体的な質問と、
「なぜこの質問をするのか」
まで一つずつ解説していきます。
もし今、
「これ、自分はちゃんと聞けているだろうか」
と一つでも思ったなら、
この先の30の質問を、自分の接客と照らし合わせながら読んでみてください。
一つ質問が変わるだけでも、
お客様から返ってくる答えは変わります。
そして、その答えが変われば、
次に提案する物件も変わります。