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折り鶴

    夕暮れ、私が記憶を頼りにあなたの元へ帰ろうとするとき、あなたは教室で、折り紙を折っている。不器用な手で折られた鶴は、きっとどこにも飛べなくて、地面に転がっている。

    遠く離れた場所から信号を送りあって、もう一度あの小さな校舎の三階音楽室で一緒にピアノを弾きたい。現実もインターネットも、つまらないし、本当なんてどこにもないから、忘れてしまおうね。忘れていくことだけを、忘れないようにしようね。

    本物なんてここにはなくて、かといって嘘もなくて、神様に作られたわたしたちが死んでいく物語だけがある。そのことがうれしいとも思わない。悲しいとも思わない。それだけだった。

    あの子が狂ってしまったとき、安心した。人間は本当に狂えるんだと、狂いきってしまえばきっと楽になれるのに、狂いきれないわたしたちだってきっと、ちゃんと狂えるのだと、そんなことを思った。

    夜、あなたの姿がもうどこにもなくて、私の記憶の中にしかないと気づいて、それすらも忘れてしまって、忘れてしまったことだけをずっと覚えている。
    記憶の中のあなたは鶴になって、飛べやしないのに、飛んだ。三階の音楽室から。飛んだ。

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