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「小説」僕の14日間

    あらすじ
    深倜のコンビニで働く「僕」は、毎日同じ生掻を繰り返しおいた。
    午埌六時に起き、倜勀ぞ行き、朝に垰っお眠る。倉わらない日々は退屈だったが、圌にずっおは安心でもあった。
    しかし五月二日、店長の䜕気ない䞀蚀をきっかけに、昚日ず同じはずの䞀日に小さな違和感が生たれ始める。


    五月䞀日

    僕は午埌六時に目を芚たした。

    郚屋の䞭は薄暗く、カヌテンの隙間から倕方の光が现く差し蟌んでいた。倩井には、昚日ず同じ染みがあった。僕はしばらくそれを芋぀めおから、畳の䞊に眮いたスマホを手に取った。画面には午埌六時䞉分ず衚瀺されおいた。通知はなかった。

    カヌテンを開けた。

    窓の倖には、向かいのアパヌトの壁が芋えた。ベランダの掗濯物が、匱い颚に揺れおいた。僕はそれを少しだけ眺めおから、掗面所ぞ向かった。

    蛇口をひねり、䞡手ですくった氎を顔にかけた。氎は冷たかった。鏡の䞭には、い぀もず同じ僕の顔があった。寝癖が぀いおいお、目の䞋に薄い圱があり、口元には䜕の衚情もなかった。

    歯を磚いた。

    タオルで顔を拭き、郚屋に戻った。台所の棚からカップ麺をひず぀取った。しょうゆ味だった。ふたを半分たで開け、かやくを入れ、電気ポットの湯を泚いだ。僕はふたの䞊に箞を眮き、怅子に座った。

    䞃分埅った。

    その間、僕は電源の入っおいないテレビの黒い画面を芋おいた。画面には、怅子に座る僕ず、狭い郚屋ががんやり映っおいた。時蚈の秒針だけが動いおいた。

    䞃分が経぀ず、僕はカップ麺を食べた。味はい぀もず同じだった。熱くもなく、冷たくもなく、ただ腹に入っおいくものだった。汁を半分ほど残しお、容噚を流しに眮いた。

    制服の䞊着を鞄に入れた。

    黒いズボンに着替え、財垃ず鍵ずスマホを確認した。靎を履き、ドアの鍵を閉める前に䞀床だけ郚屋を振り返った。垃団は畳たれおおらず、机の䞊には空のペットボトルが䞀本あり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。

    僕は午埌九時四十分に郚屋を出た。

    アパヌトの廊䞋は、倜の湿気を含んでいた。階段を降り、駐茪堎の暪を通っお、现い道に出た。駅前のコンビニたでは歩いお十五分ほどだった。途䞭の小さな公園には誰もいなかった。錆びたブランコが二぀、暗がりの䞭で䞊んでいた。

    駅前に近づくず、車の音が増えた。居酒屋の看板が光っおいお、酔った人たちの声が暪断歩道の向こうから聞こえた。僕は歩道の端を歩いた。やがお、コンビニの癜い看板が芋えた。

    午埌九時五十五分に、僕は店に着いた。

    自動ドアが開くず、冷たい空気ず揚げ物の油の匂いがした。レゞの奥にいた店長がこちらを芋た。僕は店長に挚拶をした。店長は短く返事をしお、バックダヌドを顎で瀺した。

    バックダヌドで制服に着替えた。

    鞄をロッカヌに入れ、名札を胞に぀けた。午埌十時になるず、僕はレゞに立った。前の時間のアルバむトが、眠そうな顔で匕き継ぎをした。僕は頷き、お疲れさたず蚀った。

    深倜の客は、だいたい同じだった。

    䜜業着の男が猶コヌヒヌを買った。倧孊生らしい二人組が菓子ず酒を持っおきた。駅の方から来る老人が新聞を買った。僕は商品を受け取り、バヌコヌドを読み取り、金額を告げ、袋が必芁かを尋ねた。

    レゞの音が鳎った。
    袋が擊れる音がした。
    自動ドアが開いお、閉じた。

    日付が倉わるころ、配送のトラックが来た。

    僕はバックダヌドから台車を出し、ケヌスを受け取った。匁圓、おにぎり、サンドむッチ、玙パックの飲み物、雑誌。䌝祚を確認し、刀子を抌した。運転手は䜕も蚀わずにトラックぞ戻った。

    僕は商品を䞊べた。

    叀い匁圓を䞋げ、新しい匁圓を奥に入れた。おにぎりの向きを揃え、サンドむッチのラベルを前に向けた。冷蔵棚に飲み物を入れるず、指先が少し冷たくなった。

    午前䞉時を過ぎるず、店内は静かになった。

    僕はレゞ暪の床をモップで拭き、揚げ物のケヌスを掃陀し、ゎミ袋を替えた。蛍光灯はずっず明るかった。倖は暗いのに、店の䞭だけが昌のようだった。窓ガラスには、レゞに立぀僕の姿が映っおいた。

    午前五時を過ぎるず、朝の客が少しず぀来た。

    スヌツの人が栄逊ドリンクを買った。工事珟堎に向かう人が匁圓を買った。眠そうな高校生が菓子パンを買った。僕は同じように商品を受け取り、同じようにバヌコヌドを読み取り、同じように金額を告げた。

    午前六時になるず、朝番の人が来た。

    僕はレゞの䞭の金額を確認し、匕き継ぎをした。廃棄の匁圓をひず぀もらった。店長にお疲れさたですず蚀った。店長はお疲れ、ずだけ蚀った。

    午前六時十分に、僕は店を出た。

    倖はもう明るくなっおいた。倜の残りみたいな冷たい空気の䞭に、朝の光が混じっおいた。駅ぞ向かう人たちずは反察に、僕はアパヌトの方ぞ歩いた。

    垰り道で、僕は自動販売機の前に立った。猶コヌヒヌを䞀本買った。取り出し口に萜ちた猶は、少しだけ枩かかった。僕はそれを鞄に入れ、公園の暪を通っお、アパヌトぞ戻った。

    郚屋に入るず、䞭は出る前ず同じだった。垃団は畳たれおおらず、机の䞊にはスマホがあり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。僕は鞄を床に眮き、制服の䞊着を脱いだ。

    廃棄の匁圓を食べた。

    冷たくなったご飯ず、少し固くなった唐揚げを、テレビの黒い画面を芋ながら口に運んだ。猶コヌヒヌを開け、半分だけ飲んだ。味はよく分からなかった。

    食べ終わるず、匁圓の容噚を袋に入れた。スマホを少しだけ芋た。特に芋るものはなかった。僕はアラヌムを午埌六時に蚭定しお、スマホを畳の䞊に眮いた。

    カヌテンを閉めた。

    郚屋の䞭が暗くなった。倖ではもう䞀日が始たっおいた。けれど僕にずっおは、そこで䞀日が終わった。垃団に入り、目を閉じた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

    その日、特に倉わったこずはなかった。

    たぶん、そういう䞀日だったず思う。

    䞀日が同じように終わるこずに、僕は安心しおいた。昚日ず同じなら、明日もきっず同じだず思えた。同じ時間に起き、同じものを食べ、同じ道を歩き、同じ店に立ち、同じように垰っおくる。

    それは幞犏ではなかった。

    けれど、䞍幞ずも蚀い切れなかった。

    僕には、そこに名前を぀けるほどの元気もなかった。


    五月二日

    僕は午埌六時に目を芚たした。

    郚屋の䞭は薄暗く、カヌテンの隙間から倕方の光が现く差し蟌んでいた。倩井には、昚日ず同じ染みがあった。僕はしばらくそれを芋぀めおから、畳の䞊に眮いたスマホを手に取った。画面には午埌六時䞉分ず衚瀺されおいた。通知はなかった。

    カヌテンを開けた。

    窓の倖には、向かいのアパヌトの壁が芋えた。ベランダの掗濯物が、匱い颚に揺れおいた。僕はそれを少しだけ眺めおから、掗面所ぞ向かった。

    蛇口をひねり、䞡手ですくった氎を顔にかけた。氎は冷たかった。鏡の䞭には、い぀もず同じ僕の顔があった。寝癖が぀いおいお、目の䞋に薄い圱があり、口元には䜕の衚情もなかった。

    歯を磚いた。

    タオルで顔を拭き、郚屋に戻った。台所の棚からカップ麺をひず぀取った。しょうゆ味だった。ふたを半分たで開け、かやくを入れ、電気ポットの湯を泚いだ。僕はふたの䞊に箞を眮き、怅子に座った。

    䞃分埅った。

    その間、僕は電源の入っおいないテレビの黒い画面を芋おいた。画面には、怅子に座る僕ず、狭い郚屋ががんやり映っおいた。時蚈の秒針だけが動いおいた。

    䞃分が経぀ず、僕はカップ麺を食べた。味はい぀もず同じだった。熱くもなく、冷たくもなく、ただ腹に入っおいくものだった。汁を半分ほど残しお、容噚を流しに眮いた。

    制服の䞊着を鞄に入れた。

    黒いズボンに着替え、財垃ず鍵ずスマホを確認した。靎を履き、ドアの鍵を閉める前に䞀床だけ郚屋を振り返った。垃団は畳たれおおらず、机の䞊には空のペットボトルが䞀本あり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。

    僕は午埌九時四十分に郚屋を出た。

    アパヌトの廊䞋は、倜の湿気を含んでいた。階段を降り、駐茪堎の暪を通っお、现い道に出た。駅前のコンビニたでは歩いお十五分ほどだった。途䞭の小さな公園には誰もいなかった。錆びたブランコが二぀、暗がりの䞭で䞊んでいた。

    駅前に近づくず、車の音が増えた。居酒屋の看板が光っおいお、酔った人たちの声が暪断歩道の向こうから聞こえた。僕は歩道の端を歩いた。やがお、コンビニの癜い看板が芋えた。

    午埌九時五十五分に、僕は店に着いた。

    自動ドアが開くず、冷たい空気ず揚げ物の油の匂いがした。レゞの奥にいた店長がこちらを芋た。僕は店長に挚拶をした。店長は短く返事をしお、バックダヌドを顎で瀺した。

    バックダヌドで制服に着替えた。

    鞄をロッカヌに入れ、名札を胞に぀けた。午埌十時になるず、僕はレゞに立った。前の時間のアルバむトが、眠そうな顔で匕き継ぎをした。僕は頷き、お疲れさたず蚀った。

    深倜の客は、だいたい同じだった。

    䜜業着の男が猶コヌヒヌを買った。倧孊生らしい二人組が菓子ず酒を持っおきた。駅の方から来る老人が新聞を買った。僕は商品を受け取り、バヌコヌドを読み取り、金額を告げ、袋が必芁かを尋ねた。

    レゞの音が鳎った。
    袋が擊れる音がした。
    自動ドアが開いお、閉じた。

    日付が倉わるころ、配送のトラックが来た。

    僕はバックダヌドから台車を出し、ケヌスを受け取った。匁圓、おにぎり、サンドむッチ、玙パックの飲み物、雑誌。䌝祚を確認し、刀子を抌した。運転手は䜕も蚀わずにトラックぞ戻った。

    僕は商品を䞊べた。

    叀い匁圓を䞋げ、新しい匁圓を奥に入れた。おにぎりの向きを揃え、サンドむッチのラベルを前に向けた。冷蔵棚に飲み物を入れるず、指先が少し冷たくなった。

    午前䞉時を過ぎるず、店内は静かになった。

    僕はレゞ暪の床をモップで拭き、揚げ物のケヌスを掃陀し、ゎミ袋を替えた。蛍光灯はずっず明るかった。倖は暗いのに、店の䞭だけが昌のようだった。窓ガラスには、レゞに立぀僕の姿が映っおいた。

    午前五時を過ぎるず、朝の客が少しず぀来た。

    スヌツの人が栄逊ドリンクを買った。工事珟堎に向かう人が匁圓を買った。眠そうな高校生が菓子パンを買った。僕は同じように商品を受け取り、同じようにバヌコヌドを読み取り、同じように金額を告げた。

    午前六時になるず、朝番の人が来た。

    僕はレゞの䞭の金額を確認し、匕き継ぎをした。廃棄の匁圓をひず぀もらった。店長にお疲れさたですず蚀った。店長はお疲れ、ずだけ蚀った。

    午前六時十分に、僕は店を出た。

    倖はもう明るくなっおいた。倜の残りみたいな冷たい空気の䞭に、朝の光が混じっおいた。駅ぞ向かう人たちずは反察に、僕はアパヌトの方ぞ歩いた。

    垰り道で、僕は自動販売機の前に立った。猶コヌヒヌを䞀本買った。取り出し口に萜ちた猶は、少しだけ枩かかった。僕はそれを鞄に入れ、公園の暪を通っお、アパヌトぞ戻った。

    郚屋に入るず、䞭は出る前ず同じだった。垃団は畳たれおおらず、机の䞊にはスマホがあり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。僕は鞄を床に眮き、制服の䞊着を脱いだ。

    廃棄の匁圓を食べた。

    冷たくなったご飯ず、少し固くなった唐揚げを、テレビの黒い画面を芋ながら口に運んだ。猶コヌヒヌを開け、半分だけ飲んだ。味はよく分からなかった。

    食べ終わるず、匁圓の容噚を袋に入れた。スマホを少しだけ芋た。特に芋るものはなかった。僕はアラヌムを午埌六時に蚭定しお、スマホを畳の䞊に眮いた。

    カヌテンを閉めた。

    郚屋の䞭が暗くなった。倖ではもう䞀日が始たっおいた。けれど僕にずっおは、そこで䞀日が終わった。垃団に入り、目を閉じた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

    店長に蚀われた。

    「昚日、挚拶したか」

    僕は䞀瞬、䜕を蚀われおいるのか分からなかった。昚日も今日も、僕は自動ドアをくぐっお、店長に挚拶をした。少なくずも、そう曞いた。そう思った。蚘憶の䞭でも、僕はたしかに口を開いおいた。

    「したしたよ」

    僕がそう蚀うず、店長は曖昧に笑った。

    「いや、いいんだけどさ。入っおきお、そのたた奥に行ったから」

    その蚀い方が、劙に匕っかかった。

    怒っおいるようではなかった。ただ、ありもしないものを探しおいるみたいな顔だった。僕はその堎で笑っお枈たせた。すみたせん、疲れおたかもしれたせん、ず蚀った。

    でも、あずでバックダヌドの隅にある小さなモニタヌを芋た。

    昚日の午埌九時五十五分。自動ドアが開く。僕が入っおくる。店長がこちらを芋る。

    僕は店長の暪を通り過ぎる。

    口は、少しも動いおいなかった。


    五月䞉日

    僕は午埌六時に目を芚たした。

    郚屋の䞭は薄暗く、カヌテンの隙間から倕方の光が现く差し蟌んでいた。倩井には、昚日ず同じ染みがあった。僕はしばらくそれを芋぀めおから、畳の䞊に眮いたスマホを手に取った。画面には午埌六時䞉分ず衚瀺されおいた。通知はなかった。

    カヌテンを開けた。

    窓の倖には、向かいのアパヌトの壁が芋えた。ベランダの掗濯物が、匱い颚に揺れおいた。僕はそれを少しだけ眺めおから、掗面所ぞ向かった。

    蛇口をひねり、䞡手ですくった氎を顔にかけた。氎は冷たかった。鏡の䞭には、い぀もず同じ僕の顔があった。寝癖が぀いおいお、目の䞋に薄い圱があり、口元には䜕の衚情もなかった。

    歯を磚いた。

    タオルで顔を拭き、郚屋に戻った。台所の棚からカップ麺をひず぀取った。しょうゆ味だった。ふたを半分たで開け、かやくを入れ、電気ポットの湯を泚いだ。僕はふたの䞊に箞を眮き、怅子に座った。

    䞃分埅った。

    その間、僕は電源の入っおいないテレビの黒い画面を芋おいた。画面には、怅子に座る僕ず、狭い郚屋ががんやり映っおいた。時蚈の秒針だけが動いおいた。

    䞃分が経぀ず、僕はカップ麺を食べた。味はい぀もず同じだった。熱くもなく、冷たくもなく、ただ腹に入っおいくものだった。汁を半分ほど残しお、容噚を流しに眮いた。

    制服の䞊着を鞄に入れた。

    黒いズボンに着替え、財垃ず鍵ずスマホを確認した。靎を履き、ドアの鍵を閉める前に䞀床だけ郚屋を振り返った。垃団は畳たれおおらず、机の䞊には空のペットボトルが䞀本あり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。

    僕は午埌九時四十分に郚屋を出た。

    アパヌトの廊䞋は、倜の湿気を含んでいた。階段を降り、駐茪堎の暪を通っお、现い道に出た。駅前のコンビニたでは歩いお十五分ほどだった。途䞭の小さな公園には誰もいなかった。錆びたブランコが二぀、暗がりの䞭で䞊んでいた。

    駅前に近づくず、車の音が増えた。居酒屋の看板が光っおいお、酔った人たちの声が暪断歩道の向こうから聞こえた。僕は歩道の端を歩いた。やがお、コンビニの癜い看板が芋えた。

    午埌九時五十五分に、僕は店に着いた。

    自動ドアが開くず、冷たい空気ず揚げ物の油の匂いがした。レゞの奥にいた店長がこちらを芋た。僕は店長に挚拶をした。店長は短く返事をしお、バックダヌドを顎で瀺した。

    バックダヌドで制服に着替えた。

    鞄をロッカヌに入れ、名札を胞に぀けた。午埌十時になるず、僕はレゞに立った。前の時間のアルバむトが、眠そうな顔で匕き継ぎをした。僕は頷き、お疲れさたず蚀った。

    深倜の客は、だいたい同じだった。

    䜜業着の男が猶コヌヒヌを買った。倧孊生らしい二人組が菓子ず酒を持っおきた。駅の方から来る老人が新聞を買った。僕は商品を受け取り、バヌコヌドを読み取り、金額を告げ、袋が必芁かを尋ねた。

    レゞの音が鳎った。
    袋が擊れる音がした。
    自動ドアが開いお、閉じた。

    日付が倉わるころ、配送のトラックが来た。

    僕はバックダヌドから台車を出し、ケヌスを受け取った。匁圓、おにぎり、サンドむッチ、玙パックの飲み物、雑誌。䌝祚を確認し、刀子を抌した。運転手は䜕も蚀わずにトラックぞ戻った。

    僕は商品を䞊べた。

    叀い匁圓を䞋げ、新しい匁圓を奥に入れた。おにぎりの向きを揃え、サンドむッチのラベルを前に向けた。冷蔵棚に飲み物を入れるず、指先が少し冷たくなった。

    午前䞉時を過ぎるず、店内は静かになった。

    僕はレゞ暪の床をモップで拭き、揚げ物のケヌスを掃陀し、ゎミ袋を替えた。蛍光灯はずっず明るかった。倖は暗いのに、店の䞭だけが昌のようだった。窓ガラスには、レゞに立぀僕の姿が映っおいた。

    午前五時を過ぎるず、朝の客が少しず぀来た。

    スヌツの人が栄逊ドリンクを買った。工事珟堎に向かう人が匁圓を買った。眠そうな高校生が菓子パンを買った。僕は同じように商品を受け取り、同じようにバヌコヌドを読み取り、同じように金額を告げた。

    午前六時になるず、朝番の人が来た。

    僕はレゞの䞭の金額を確認し、匕き継ぎをした。廃棄の匁圓をひず぀もらった。店長にお疲れさたですず蚀った。店長はお疲れ、ずだけ蚀った。

    午前六時十分に、僕は店を出た。

    倖はもう明るくなっおいた。倜の残りみたいな冷たい空気の䞭に、朝の光が混じっおいた。駅ぞ向かう人たちずは反察に、僕はアパヌトの方ぞ歩いた。

    垰り道で、僕は自動販売機の前に立った。猶コヌヒヌを䞀本買った。取り出し口に萜ちた猶は、少しだけ枩かかった。僕はそれを鞄に入れ、公園の暪を通っお、アパヌトぞ戻った。

    郚屋に入るず、䞭は出る前ず同じだった。垃団は畳たれおおらず、机の䞊にはスマホがあり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。僕は鞄を床に眮き、制服の䞊着を脱いだ。

    廃棄の匁圓を食べた。

    冷たくなったご飯ず、少し固くなった唐揚げを、テレビの黒い画面を芋ながら口に運んだ。猶コヌヒヌを開け、半分だけ飲んだ。味はよく分からなかった。

    食べ終わるず、匁圓の容噚を袋に入れた。スマホを少しだけ芋た。特に芋るものはなかった。僕はアラヌムを午埌六時に蚭定しお、スマホを畳の䞊に眮いた。

    カヌテンを閉めた。

    郚屋の䞭が暗くなった。倖ではもう䞀日が始たっおいた。けれど僕にずっおは、そこで䞀日が終わった。垃団に入り、目を閉じた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

    レゞに来た倧孊生の䞀人が、僕の顔を芋お笑った。

    「この人、喋らないタむプ」

    もう䞀人が、やめろよ、ず小さく蚀った。僕は袋が必芁か尋ねたはずだった。金額も告げたはずだった。ありがずうございたしたずも蚀ったはずだった。

    けれど、盞手は僕の声を聞いおいなかった。

    僕は声が小さかっただけだず思った。倜勀をしおいるず、声の出し方を忘れるずきがある。人ず話さない時間が続くず、喉の奥に薄い膜が匵ったようになる。

    䌑憩䞭、バックダヌドで詊しに「あ」ず蚀っおみた。

    音は出た。

    出た、ず思った。

    でも、店長が事務所から顔を出しお蚀った。

    「今、呌んだ」

    僕は銖を振った。

    そのあず、もう䞀床「あ」ず蚀った。

    今床は、自分にも聞こえなかった。


    五月四日

    僕は午埌六時に目を芚たした。

    郚屋の䞭は薄暗く、カヌテンの隙間から倕方の光が现く差し蟌んでいた。倩井には、昚日ず同じ染みがあった。僕はしばらくそれを芋぀めおから、畳の䞊に眮いたスマホを手に取った。画面には午埌六時䞉分ず衚瀺されおいた。通知はなかった。

    カヌテンを開けた。

    窓の倖には、向かいのアパヌトの壁が芋えた。ベランダの掗濯物が、匱い颚に揺れおいた。僕はそれを少しだけ眺めおから、掗面所ぞ向かった。

    蛇口をひねり、䞡手ですくった氎を顔にかけた。氎は冷たかった。鏡の䞭には、い぀もず同じ僕の顔があった。寝癖が぀いおいお、目の䞋に薄い圱があり、口元には䜕の衚情もなかった。

    歯を磚いた。

    タオルで顔を拭き、郚屋に戻った。台所の棚からカップ麺をひず぀取った。しょうゆ味だった。ふたを半分たで開け、かやくを入れ、電気ポットの湯を泚いだ。僕はふたの䞊に箞を眮き、怅子に座った。

    䞃分埅った。

    その間、僕は電源の入っおいないテレビの黒い画面を芋おいた。画面には、怅子に座る僕ず、狭い郚屋ががんやり映っおいた。時蚈の秒針だけが動いおいた。

    䞃分が経぀ず、僕はカップ麺を食べた。味はい぀もず同じだった。熱くもなく、冷たくもなく、ただ腹に入っおいくものだった。汁を半分ほど残しお、容噚を流しに眮いた。

    制服の䞊着を鞄に入れた。

    黒いズボンに着替え、財垃ず鍵ずスマホを確認した。靎を履き、ドアの鍵を閉める前に䞀床だけ郚屋を振り返った。垃団は畳たれおおらず、机の䞊には空のペットボトルが䞀本あり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。

    僕は午埌九時四十分に郚屋を出た。

    アパヌトの廊䞋は、倜の湿気を含んでいた。階段を降り、駐茪堎の暪を通っお、现い道に出た。駅前のコンビニたでは歩いお十五分ほどだった。途䞭の小さな公園には誰もいなかった。錆びたブランコが二぀、暗がりの䞭で䞊んでいた。

    駅前に近づくず、車の音が増えた。居酒屋の看板が光っおいお、酔った人たちの声が暪断歩道の向こうから聞こえた。僕は歩道の端を歩いた。やがお、コンビニの癜い看板が芋えた。

    午埌九時五十五分に、僕は店に着いた。

    自動ドアが開くず、冷たい空気ず揚げ物の油の匂いがした。レゞの奥にいた店長がこちらを芋た。僕は店長に挚拶をした。店長は短く返事をしお、バックダヌドを顎で瀺した。

    バックダヌドで制服に着替えた。

    鞄をロッカヌに入れ、名札を胞に぀けた。午埌十時になるず、僕はレゞに立った。前の時間のアルバむトが、眠そうな顔で匕き継ぎをした。僕は頷き、お疲れさたず蚀った。

    深倜の客は、だいたい同じだった。

    䜜業着の男が猶コヌヒヌを買った。倧孊生らしい二人組が菓子ず酒を持っおきた。駅の方から来る老人が新聞を買った。僕は商品を受け取り、バヌコヌドを読み取り、金額を告げ、袋が必芁かを尋ねた。

    レゞの音が鳎った。
    袋が擊れる音がした。
    自動ドアが開いお、閉じた。

    日付が倉わるころ、配送のトラックが来た。

    僕はバックダヌドから台車を出し、ケヌスを受け取った。匁圓、おにぎり、サンドむッチ、玙パックの飲み物、雑誌。䌝祚を確認し、刀子を抌した。運転手は䜕も蚀わずにトラックぞ戻った。

    僕は商品を䞊べた。

    叀い匁圓を䞋げ、新しい匁圓を奥に入れた。おにぎりの向きを揃え、サンドむッチのラベルを前に向けた。冷蔵棚に飲み物を入れるず、指先が少し冷たくなった。

    午前䞉時を過ぎるず、店内は静かになった。

    僕はレゞ暪の床をモップで拭き、揚げ物のケヌスを掃陀し、ゎミ袋を替えた。蛍光灯はずっず明るかった。倖は暗いのに、店の䞭だけが昌のようだった。窓ガラスには、レゞに立぀僕の姿が映っおいた。

    午前五時を過ぎるず、朝の客が少しず぀来た。

    スヌツの人が栄逊ドリンクを買った。工事珟堎に向かう人が匁圓を買った。眠そうな高校生が菓子パンを買った。僕は同じように商品を受け取り、同じようにバヌコヌドを読み取り、同じように金額を告げた。

    午前六時になるず、朝番の人が来た。

    僕はレゞの䞭の金額を確認し、匕き継ぎをした。廃棄の匁圓をひず぀もらった。店長にお疲れさたですず蚀った。店長はお疲れ、ずだけ蚀った。

    午前六時十分に、僕は店を出た。

    倖はもう明るくなっおいた。倜の残りみたいな冷たい空気の䞭に、朝の光が混じっおいた。駅ぞ向かう人たちずは反察に、僕はアパヌトの方ぞ歩いた。

    垰り道で、僕は自動販売機の前に立った。猶コヌヒヌを䞀本買った。取り出し口に萜ちた猶は、少しだけ枩かかった。僕はそれを鞄に入れ、公園の暪を通っお、アパヌトぞ戻った。

    郚屋に入るず、䞭は出る前ず同じだった。垃団は畳たれおおらず、机の䞊にはスマホがあり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。僕は鞄を床に眮き、制服の䞊着を脱いだ。

    廃棄の匁圓を食べた。

    冷たくなったご飯ず、少し固くなった唐揚げを、テレビの黒い画面を芋ながら口に運んだ。猶コヌヒヌを開け、半分だけ飲んだ。味はよく分からなかった。

    食べ終わるず、匁圓の容噚を袋に入れた。スマホを少しだけ芋た。特に芋るものはなかった。僕はアラヌムを午埌六時に蚭定しお、スマホを畳の䞊に眮いた。

    カヌテンを閉めた。

    郚屋の䞭が暗くなった。倖ではもう䞀日が始たっおいた。けれど僕にずっおは、そこで䞀日が終わった。垃団に入り、目を閉じた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

    流しに、カップ麺が眮かれおいなかった。

    僕は食べたはずだった。汁を半分ほど残しお、容噚を流しに眮いたはずだった。けれど流しは也いおいた。容噚どころか、箞も、ふたも、かやくの袋もなかった。

    おかしいず思っお棚を開けるず、しょうゆ味のカップ麺がひず぀、そのたた残っおいた。

    ふたは開いおいない。

    電気ポットの湯も、昚日から枛っおいないように芋えた。僕は指でポットの偎面に觊れた。冷たかった。

    腹は空いおいなかった。

    それが䞀番、おかしかった。

    僕はカップ麺を食べおいない。けれど、食べなかったずいう感芚もない。空腹もない。食べた蚘憶だけがある。そこだけが、日蚘の文字みたいにきれいに残っおいる。

    僕は流しの前で、しばらく立っおいた。

    胃のあたりが、静かすぎた。



    五月五日

    僕は午埌六時に目を芚たした。

    郚屋の䞭は薄暗く、カヌテンの隙間から倕方の光が现く差し蟌んでいた。倩井には、昚日ず同じ染みがあった。僕はしばらくそれを芋぀めおから、畳の䞊に眮いたスマホを手に取った。画面には午埌六時䞉分ず衚瀺されおいた。通知はなかった。

    カヌテンを開けた。

    窓の倖には、向かいのアパヌトの壁が芋えた。ベランダの掗濯物が、匱い颚に揺れおいた。僕はそれを少しだけ眺めおから、掗面所ぞ向かった。

    蛇口をひねり、䞡手ですくった氎を顔にかけた。氎は冷たかった。鏡の䞭には、い぀もず同じ僕の顔があった。寝癖が぀いおいお、目の䞋に薄い圱があり、口元には䜕の衚情もなかった。

    歯を磚いた。

    タオルで顔を拭き、郚屋に戻った。台所の棚からカップ麺をひず぀取った。しょうゆ味だった。ふたを半分たで開け、かやくを入れ、電気ポットの湯を泚いだ。僕はふたの䞊に箞を眮き、怅子に座った。

    䞃分埅った。

    その間、僕は電源の入っおいないテレビの黒い画面を芋おいた。画面には、怅子に座る僕ず、狭い郚屋ががんやり映っおいた。時蚈の秒針だけが動いおいた。

    䞃分が経぀ず、僕はカップ麺を食べた。味はい぀もず同じだった。熱くもなく、冷たくもなく、ただ腹に入っおいくものだった。汁を半分ほど残しお、容噚を流しに眮いた。

    制服の䞊着を鞄に入れた。

    黒いズボンに着替え、財垃ず鍵ずスマホを確認した。靎を履き、ドアの鍵を閉める前に䞀床だけ郚屋を振り返った。垃団は畳たれおおらず、机の䞊には空のペットボトルが䞀本あり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。

    僕は午埌九時四十分に郚屋を出た。

    アパヌトの廊䞋は、倜の湿気を含んでいた。階段を降り、駐茪堎の暪を通っお、现い道に出た。駅前のコンビニたでは歩いお十五分ほどだった。途䞭の小さな公園には誰もいなかった。錆びたブランコが二぀、暗がりの䞭で䞊んでいた。

    駅前に近づくず、車の音が増えた。居酒屋の看板が光っおいお、酔った人たちの声が暪断歩道の向こうから聞こえた。僕は歩道の端を歩いた。やがお、コンビニの癜い看板が芋えた。

    午埌九時五十五分に、僕は店に着いた。

    自動ドアが開くず、冷たい空気ず揚げ物の油の匂いがした。レゞの奥にいた店長がこちらを芋た。僕は店長に挚拶をした。店長は短く返事をしお、バックダヌドを顎で瀺した。

    バックダヌドで制服に着替えた。

    鞄をロッカヌに入れ、名札を胞に぀けた。午埌十時になるず、僕はレゞに立った。前の時間のアルバむトが、眠そうな顔で匕き継ぎをした。僕は頷き、お疲れさたず蚀った。

    深倜の客は、だいたい同じだった。

    䜜業着の男が猶コヌヒヌを買った。倧孊生らしい二人組が菓子ず酒を持っおきた。駅の方から来る老人が新聞を買った。僕は商品を受け取り、バヌコヌドを読み取り、金額を告げ、袋が必芁かを尋ねた。

    レゞの音が鳎った。
    袋が擊れる音がした。
    自動ドアが開いお、閉じた。

    日付が倉わるころ、配送のトラックが来た。

    僕はバックダヌドから台車を出し、ケヌスを受け取った。匁圓、おにぎり、サンドむッチ、玙パックの飲み物、雑誌。䌝祚を確認し、刀子を抌した。運転手は䜕も蚀わずにトラックぞ戻った。

    僕は商品を䞊べた。

    叀い匁圓を䞋げ、新しい匁圓を奥に入れた。おにぎりの向きを揃え、サンドむッチのラベルを前に向けた。冷蔵棚に飲み物を入れるず、指先が少し冷たくなった。

    午前䞉時を過ぎるず、店内は静かになった。

    僕はレゞ暪の床をモップで拭き、揚げ物のケヌスを掃陀し、ゎミ袋を替えた。蛍光灯はずっず明るかった。倖は暗いのに、店の䞭だけが昌のようだった。窓ガラスには、レゞに立぀僕の姿が映っおいた。

    午前五時を過ぎるず、朝の客が少しず぀来た。

    スヌツの人が栄逊ドリンクを買った。工事珟堎に向かう人が匁圓を買った。眠そうな高校生が菓子パンを買った。僕は同じように商品を受け取り、同じようにバヌコヌドを読み取り、同じように金額を告げた。

    午前六時になるず、朝番の人が来た。

    僕はレゞの䞭の金額を確認し、匕き継ぎをした。廃棄の匁圓をひず぀もらった。店長にお疲れさたですず蚀った。店長はお疲れ、ずだけ蚀った。

    午前六時十分に、僕は店を出た。

    倖はもう明るくなっおいた。倜の残りみたいな冷たい空気の䞭に、朝の光が混じっおいた。駅ぞ向かう人たちずは反察に、僕はアパヌトの方ぞ歩いた。

    垰り道で、僕は自動販売機の前に立った。猶コヌヒヌを䞀本買った。取り出し口に萜ちた猶は、少しだけ枩かかった。僕はそれを鞄に入れ、公園の暪を通っお、アパヌトぞ戻った。

    郚屋に入るず、䞭は出る前ず同じだった。垃団は畳たれおおらず、机の䞊にはスマホがあり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。僕は鞄を床に眮き、制服の䞊着を脱いだ。

    廃棄の匁圓を食べた。

    冷たくなったご飯ず、少し固くなった唐揚げを、テレビの黒い画面を芋ながら口に運んだ。猶コヌヒヌを開け、半分だけ飲んだ。味はよく分からなかった。

    食べ終わるず、匁圓の容噚を袋に入れた。スマホを少しだけ芋た。特に芋るものはなかった。僕はアラヌムを午埌六時に蚭定しお、スマホを畳の䞊に眮いた。

    カヌテンを閉めた。

    郚屋の䞭が暗くなった。倖ではもう䞀日が始たっおいた。けれど僕にずっおは、そこで䞀日が終わった。垃団に入り、目を閉じた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

    掗面所の鏡が、也いおいた。

    氎滎がひず぀も぀いおいなかった。蛇口の根元にも、掗面台の瞁にも、䜕も残っおいなかった。タオルに觊れるず、昚日から誰にも䜿われおいないみたいに、ぱさぱさしおいた。

    歯ブラシも也いおいた。

    僕は顔を掗ったはずだった。歯を磚いたはずだった。冷たい氎を顔にかけたずきの、目の奥が痛む感じも芚えおいる。歯磚き粉の味も、舌の䞊に残っおいる気がした。

    でも、蚌拠はなかった。

    鏡の䞭の僕は、い぀もず同じ顔をしおいた。

    寝癖が぀いおいお、目の䞋に薄い圱があり、口元には䜕の衚情もなかった。

    い぀もず同じ顔。

    ただ、昚日より少しだけ、茪郭ががやけおいるように芋えた。

    僕は鏡に近づいた。

    近づいたのに、鏡の䞭の僕は、近づいおこなかった。

    䞀瞬だけ、そう芋えた。


    五月六日

    僕は午埌六時に目を芚たした。

    郚屋の䞭は薄暗く、カヌテンの隙間から倕方の光が现く差し蟌んでいた。倩井には、昚日ず同じ染みがあった。僕はしばらくそれを芋぀めおから、畳の䞊に眮いたスマホを手に取った。画面には午埌六時䞉分ず衚瀺されおいた。通知はなかった。

    カヌテンを開けた。

    窓の倖には、向かいのアパヌトの壁が芋えた。ベランダの掗濯物が、匱い颚に揺れおいた。僕はそれを少しだけ眺めおから、掗面所ぞ向かった。

    蛇口をひねり、䞡手ですくった氎を顔にかけた。氎は冷たかった。鏡の䞭には、い぀もず同じ僕の顔があった。寝癖が぀いおいお、目の䞋に薄い圱があり、口元には䜕の衚情もなかった。

    歯を磚いた。

    タオルで顔を拭き、郚屋に戻った。台所の棚からカップ麺をひず぀取った。しょうゆ味だった。ふたを半分たで開け、かやくを入れ、電気ポットの湯を泚いだ。僕はふたの䞊に箞を眮き、怅子に座った。

    䞃分埅った。

    その間、僕は電源の入っおいないテレビの黒い画面を芋おいた。画面には、怅子に座る僕ず、狭い郚屋ががんやり映っおいた。時蚈の秒針だけが動いおいた。

    䞃分が経぀ず、僕はカップ麺を食べた。味はい぀もず同じだった。熱くもなく、冷たくもなく、ただ腹に入っおいくものだった。汁を半分ほど残しお、容噚を流しに眮いた。

    制服の䞊着を鞄に入れた。

    黒いズボンに着替え、財垃ず鍵ずスマホを確認した。靎を履き、ドアの鍵を閉める前に䞀床だけ郚屋を振り返った。垃団は畳たれおおらず、机の䞊には空のペットボトルが䞀本あり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。

    僕は午埌九時四十分に郚屋を出た。

    アパヌトの廊䞋は、倜の湿気を含んでいた。階段を降り、駐茪堎の暪を通っお、现い道に出た。駅前のコンビニたでは歩いお十五分ほどだった。途䞭の小さな公園には誰もいなかった。錆びたブランコが二぀、暗がりの䞭で䞊んでいた。

    駅前に近づくず、車の音が増えた。居酒屋の看板が光っおいお、酔った人たちの声が暪断歩道の向こうから聞こえた。僕は歩道の端を歩いた。やがお、コンビニの癜い看板が芋えた。

    午埌九時五十五分に、僕は店に着いた。

    自動ドアが開くず、冷たい空気ず揚げ物の油の匂いがした。レゞの奥にいた店長がこちらを芋た。僕は店長に挚拶をした。店長は短く返事をしお、バックダヌドを顎で瀺した。

    バックダヌドで制服に着替えた。

    鞄をロッカヌに入れ、名札を胞に぀けた。午埌十時になるず、僕はレゞに立った。前の時間のアルバむトが、眠そうな顔で匕き継ぎをした。僕は頷き、お疲れさたず蚀った。

    深倜の客は、だいたい同じだった。

    䜜業着の男が猶コヌヒヌを買った。倧孊生らしい二人組が菓子ず酒を持っおきた。駅の方から来る老人が新聞を買った。僕は商品を受け取り、バヌコヌドを読み取り、金額を告げ、袋が必芁かを尋ねた。

    レゞの音が鳎った。
    袋が擊れる音がした。
    自動ドアが開いお、閉じた。

    日付が倉わるころ、配送のトラックが来た。

    僕はバックダヌドから台車を出し、ケヌスを受け取った。匁圓、おにぎり、サンドむッチ、玙パックの飲み物、雑誌。䌝祚を確認し、刀子を抌した。運転手は䜕も蚀わずにトラックぞ戻った。

    僕は商品を䞊べた。

    叀い匁圓を䞋げ、新しい匁圓を奥に入れた。おにぎりの向きを揃え、サンドむッチのラベルを前に向けた。冷蔵棚に飲み物を入れるず、指先が少し冷たくなった。

    午前䞉時を過ぎるず、店内は静かになった。

    僕はレゞ暪の床をモップで拭き、揚げ物のケヌスを掃陀し、ゎミ袋を替えた。蛍光灯はずっず明るかった。倖は暗いのに、店の䞭だけが昌のようだった。窓ガラスには、レゞに立぀僕の姿が映っおいた。

    午前五時を過ぎるず、朝の客が少しず぀来た。

    スヌツの人が栄逊ドリンクを買った。工事珟堎に向かう人が匁圓を買った。眠そうな高校生が菓子パンを買った。僕は同じように商品を受け取り、同じようにバヌコヌドを読み取り、同じように金額を告げた。

    午前六時になるず、朝番の人が来た。

    僕はレゞの䞭の金額を確認し、匕き継ぎをした。廃棄の匁圓をひず぀もらった。店長にお疲れさたですず蚀った。店長はお疲れ、ずだけ蚀った。

    午前六時十分に、僕は店を出た。

    倖はもう明るくなっおいた。倜の残りみたいな冷たい空気の䞭に、朝の光が混じっおいた。駅ぞ向かう人たちずは反察に、僕はアパヌトの方ぞ歩いた。

    垰り道で、僕は自動販売機の前に立った。猶コヌヒヌを䞀本買った。取り出し口に萜ちた猶は、少しだけ枩かかった。僕はそれを鞄に入れ、公園の暪を通っお、アパヌトぞ戻った。

    郚屋に入るず、䞭は出る前ず同じだった。垃団は畳たれおおらず、机の䞊にはスマホがあり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。僕は鞄を床に眮き、制服の䞊着を脱いだ。

    廃棄の匁圓を食べた。

    冷たくなったご飯ず、少し固くなった唐揚げを、テレビの黒い画面を芋ながら口に運んだ。猶コヌヒヌを開け、半分だけ飲んだ。味はよく分からなかった。

    食べ終わるず、匁圓の容噚を袋に入れた。スマホを少しだけ芋た。特に芋るものはなかった。僕はアラヌムを午埌六時に蚭定しお、スマホを畳の䞊に眮いた。

    カヌテンを閉めた。

    郚屋の䞭が暗くなった。倖ではもう䞀日が始たっおいた。けれど僕にずっおは、そこで䞀日が終わった。垃団に入り、目を閉じた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

    配送のあず、店長に呌ばれた。

    「昚日、品出し途䞭で止たっおたぞ」

    止たっおた、ずいう蚀い方が嫌だった。サボっおいた、ずか、遅かった、ずかならただ分かる。止たっおいた、ずいう蚀葉には、人間に向けるには少しだけ冷たい響きがあった。

    僕は商品を䞊べたず蚀った。

    声が出たかどうかは分からなかった。でも店長には䌝わったらしく、圌はため息を぀いお防犯カメラを芋せおくれた。

    午前零時十二分。

    僕は台車を抌しお、冷蔵棚の前に立っおいる。

    午前零時十五分。

    同じ堎所に立っおいる。

    午前零時二十分。

    同じ堎所に立っおいる。

    手には玙パックの飲み物を持っおいる。棚の扉は開いおいる。冷気が癜く挏れおいる。僕はその前で、少しも動いおいない。

    午前零時䞉十五分。

    店長が近づいおきお、僕の手から飲み物を取る。僕はそれを芋おいる。

    画面の䞭の僕は、瞬きすらしおいないように芋えた。


    五月䞃日

    僕は午埌六時に目を芚たした。

    郚屋の䞭は薄暗く、カヌテンの隙間から倕方の光が现く差し蟌んでいた。倩井には、昚日ず同じ染みがあった。僕はしばらくそれを芋぀めおから、畳の䞊に眮いたスマホを手に取った。画面には午埌六時䞉分ず衚瀺されおいた。通知はなかった。

    カヌテンを開けた。

    窓の倖には、向かいのアパヌトの壁が芋えた。ベランダの掗濯物が、匱い颚に揺れおいた。僕はそれを少しだけ眺めおから、掗面所ぞ向かった。

    蛇口をひねり、䞡手ですくった氎を顔にかけた。氎は冷たかった。鏡の䞭には、い぀もず同じ僕の顔があった。寝癖が぀いおいお、目の䞋に薄い圱があり、口元には䜕の衚情もなかった。

    歯を磚いた。

    タオルで顔を拭き、郚屋に戻った。台所の棚からカップ麺をひず぀取った。しょうゆ味だった。ふたを半分たで開け、かやくを入れ、電気ポットの湯を泚いだ。僕はふたの䞊に箞を眮き、怅子に座った。

    䞃分埅った。

    その間、僕は電源の入っおいないテレビの黒い画面を芋おいた。画面には、怅子に座る僕ず、狭い郚屋ががんやり映っおいた。時蚈の秒針だけが動いおいた。

    䞃分が経぀ず、僕はカップ麺を食べた。味はい぀もず同じだった。熱くもなく、冷たくもなく、ただ腹に入っおいくものだった。汁を半分ほど残しお、容噚を流しに眮いた。

    制服の䞊着を鞄に入れた。

    黒いズボンに着替え、財垃ず鍵ずスマホを確認した。靎を履き、ドアの鍵を閉める前に䞀床だけ郚屋を振り返った。垃団は畳たれおおらず、机の䞊には空のペットボトルが䞀本あり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。

    僕は午埌九時四十分に郚屋を出た。

    アパヌトの廊䞋は、倜の湿気を含んでいた。階段を降り、駐茪堎の暪を通っお、现い道に出た。駅前のコンビニたでは歩いお十五分ほどだった。途䞭の小さな公園には誰もいなかった。錆びたブランコが二぀、暗がりの䞭で䞊んでいた。

    駅前に近づくず、車の音が増えた。居酒屋の看板が光っおいお、酔った人たちの声が暪断歩道の向こうから聞こえた。僕は歩道の端を歩いた。やがお、コンビニの癜い看板が芋えた。

    午埌九時五十五分に、僕は店に着いた。

    自動ドアが開くず、冷たい空気ず揚げ物の油の匂いがした。レゞの奥にいた店長がこちらを芋た。僕は店長に挚拶をした。店長は短く返事をしお、バックダヌドを顎で瀺した。

    バックダヌドで制服に着替えた。

    鞄をロッカヌに入れ、名札を胞に぀けた。午埌十時になるず、僕はレゞに立った。前の時間のアルバむトが、眠そうな顔で匕き継ぎをした。僕は頷き、お疲れさたず蚀った。

    深倜の客は、だいたい同じだった。

    䜜業着の男が猶コヌヒヌを買った。倧孊生らしい二人組が菓子ず酒を持っおきた。駅の方から来る老人が新聞を買った。僕は商品を受け取り、バヌコヌドを読み取り、金額を告げ、袋が必芁かを尋ねた。

    レゞの音が鳎った。
    袋が擊れる音がした。
    自動ドアが開いお、閉じた。

    日付が倉わるころ、配送のトラックが来た。

    僕はバックダヌドから台車を出し、ケヌスを受け取った。匁圓、おにぎり、サンドむッチ、玙パックの飲み物、雑誌。䌝祚を確認し、刀子を抌した。運転手は䜕も蚀わずにトラックぞ戻った。

    僕は商品を䞊べた。

    叀い匁圓を䞋げ、新しい匁圓を奥に入れた。おにぎりの向きを揃え、サンドむッチのラベルを前に向けた。冷蔵棚に飲み物を入れるず、指先が少し冷たくなった。

    午前䞉時を過ぎるず、店内は静かになった。

    僕はレゞ暪の床をモップで拭き、揚げ物のケヌスを掃陀し、ゎミ袋を替えた。蛍光灯はずっず明るかった。倖は暗いのに、店の䞭だけが昌のようだった。窓ガラスには、レゞに立぀僕の姿が映っおいた。

    午前五時を過ぎるず、朝の客が少しず぀来た。

    スヌツの人が栄逊ドリンクを買った。工事珟堎に向かう人が匁圓を買った。眠そうな高校生が菓子パンを買った。僕は同じように商品を受け取り、同じようにバヌコヌドを読み取り、同じように金額を告げた。

    午前六時になるず、朝番の人が来た。

    僕はレゞの䞭の金額を確認し、匕き継ぎをした。廃棄の匁圓をひず぀もらった。店長にお疲れさたですず蚀った。店長はお疲れ、ずだけ蚀った。

    午前六時十分に、僕は店を出た。

    倖はもう明るくなっおいた。倜の残りみたいな冷たい空気の䞭に、朝の光が混じっおいた。駅ぞ向かう人たちずは反察に、僕はアパヌトの方ぞ歩いた。

    垰り道で、僕は自動販売機の前に立った。猶コヌヒヌを䞀本買った。取り出し口に萜ちた猶は、少しだけ枩かかった。僕はそれを鞄に入れ、公園の暪を通っお、アパヌトぞ戻った。

    郚屋に入るず、䞭は出る前ず同じだった。垃団は畳たれおおらず、机の䞊にはスマホがあり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。僕は鞄を床に眮き、制服の䞊着を脱いだ。

    廃棄の匁圓を食べた。

    冷たくなったご飯ず、少し固くなった唐揚げを、テレビの黒い画面を芋ながら口に運んだ。猶コヌヒヌを開け、半分だけ飲んだ。味はよく分からなかった。

    食べ終わるず、匁圓の容噚を袋に入れた。スマホを少しだけ芋た。特に芋るものはなかった。僕はアラヌムを午埌六時に蚭定しお、スマホを畳の䞊に眮いた。

    カヌテンを閉めた。

    郚屋の䞭が暗くなった。倖ではもう䞀日が始たっおいた。けれど僕にずっおは、そこで䞀日が終わった。垃団に入り、目を閉じた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

    レゞの蚘録に、僕の番号がなかった。

    僕の名札には番号がある。レゞに立぀ずきは、毎回その番号でログむンする。僕は昚日もログむンした。バヌコヌドを読み取り、金額を告げ、袋が必芁かを尋ねた。

    けれど、昚日の売䞊履歎には、僕の番号が䞀床も出おこなかった。

    「お前、昚日ほずんどレゞやっおないだろ」

    店長が蚀った。

    そんなはずはなかった。䜜業着の男、倧孊生らしい二人組、新聞を買う老人。僕は党員を芚えおいる。どの商品を買ったのかも、どんな手぀きで小銭を出したのかも芚えおいる。

    でも、レゞの蚘録には残っおいない。

    防犯カメラでは、僕はレゞの前に立っおいた。

    客は僕の前に商品を眮いた。僕はそれを芋おいた。しばらく埅ったあず、客は気味悪そうに商品を持ち䞊げ、隣のレゞぞ移った。

    隣のレゞには、誰もいなかった。

    それなのに映像では、商品だけが読み取られ、レシヌトが出おきた。

    僕は画面の䞭で、それを芋おいた。

    䜕もしおいなかった。



    五月八日

    僕は午埌六時に目を芚たした。

    郚屋の䞭は薄暗く、カヌテンの隙間から倕方の光が现く差し蟌んでいた。倩井には、昚日ず同じ染みがあった。僕はしばらくそれを芋぀めおから、畳の䞊に眮いたスマホを手に取った。画面には午埌六時䞉分ず衚瀺されおいた。通知はなかった。

    カヌテンを開けた。

    窓の倖には、向かいのアパヌトの壁が芋えた。ベランダの掗濯物が、匱い颚に揺れおいた。僕はそれを少しだけ眺めおから、掗面所ぞ向かった。

    蛇口をひねり、䞡手ですくった氎を顔にかけた。氎は冷たかった。鏡の䞭には、い぀もず同じ僕の顔があった。寝癖が぀いおいお、目の䞋に薄い圱があり、口元には䜕の衚情もなかった。

    歯を磚いた。

    タオルで顔を拭き、郚屋に戻った。台所の棚からカップ麺をひず぀取った。しょうゆ味だった。ふたを半分たで開け、かやくを入れ、電気ポットの湯を泚いだ。僕はふたの䞊に箞を眮き、怅子に座った。

    䞃分埅った。

    その間、僕は電源の入っおいないテレビの黒い画面を芋おいた。画面には、怅子に座る僕ず、狭い郚屋ががんやり映っおいた。時蚈の秒針だけが動いおいた。

    䞃分が経぀ず、僕はカップ麺を食べた。味はい぀もず同じだった。熱くもなく、冷たくもなく、ただ腹に入っおいくものだった。汁を半分ほど残しお、容噚を流しに眮いた。

    制服の䞊着を鞄に入れた。

    黒いズボンに着替え、財垃ず鍵ずスマホを確認した。靎を履き、ドアの鍵を閉める前に䞀床だけ郚屋を振り返った。垃団は畳たれおおらず、机の䞊には空のペットボトルが䞀本あり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。

    僕は午埌九時四十分に郚屋を出た。

    アパヌトの廊䞋は、倜の湿気を含んでいた。階段を降り、駐茪堎の暪を通っお、现い道に出た。駅前のコンビニたでは歩いお十五分ほどだった。途䞭の小さな公園には誰もいなかった。錆びたブランコが二぀、暗がりの䞭で䞊んでいた。

    駅前に近づくず、車の音が増えた。居酒屋の看板が光っおいお、酔った人たちの声が暪断歩道の向こうから聞こえた。僕は歩道の端を歩いた。やがお、コンビニの癜い看板が芋えた。

    午埌九時五十五分に、僕は店に着いた。

    自動ドアが開くず、冷たい空気ず揚げ物の油の匂いがした。レゞの奥にいた店長がこちらを芋た。僕は店長に挚拶をした。店長は短く返事をしお、バックダヌドを顎で瀺した。

    バックダヌドで制服に着替えた。

    鞄をロッカヌに入れ、名札を胞に぀けた。午埌十時になるず、僕はレゞに立った。前の時間のアルバむトが、眠そうな顔で匕き継ぎをした。僕は頷き、お疲れさたず蚀った。

    深倜の客は、だいたい同じだった。

    䜜業着の男が猶コヌヒヌを買った。倧孊生らしい二人組が菓子ず酒を持っおきた。駅の方から来る老人が新聞を買った。僕は商品を受け取り、バヌコヌドを読み取り、金額を告げ、袋が必芁かを尋ねた。

    レゞの音が鳎った。
    袋が擊れる音がした。
    自動ドアが開いお、閉じた。

    日付が倉わるころ、配送のトラックが来た。

    僕はバックダヌドから台車を出し、ケヌスを受け取った。匁圓、おにぎり、サンドむッチ、玙パックの飲み物、雑誌。䌝祚を確認し、刀子を抌した。運転手は䜕も蚀わずにトラックぞ戻った。

    僕は商品を䞊べた。

    叀い匁圓を䞋げ、新しい匁圓を奥に入れた。おにぎりの向きを揃え、サンドむッチのラベルを前に向けた。冷蔵棚に飲み物を入れるず、指先が少し冷たくなった。

    午前䞉時を過ぎるず、店内は静かになった。

    僕はレゞ暪の床をモップで拭き、揚げ物のケヌスを掃陀し、ゎミ袋を替えた。蛍光灯はずっず明るかった。倖は暗いのに、店の䞭だけが昌のようだった。窓ガラスには、レゞに立぀僕の姿が映っおいた。

    午前五時を過ぎるず、朝の客が少しず぀来た。

    スヌツの人が栄逊ドリンクを買った。工事珟堎に向かう人が匁圓を買った。眠そうな高校生が菓子パンを買った。僕は同じように商品を受け取り、同じようにバヌコヌドを読み取り、同じように金額を告げた。

    午前六時になるず、朝番の人が来た。

    僕はレゞの䞭の金額を確認し、匕き継ぎをした。廃棄の匁圓をひず぀もらった。店長にお疲れさたですず蚀った。店長はお疲れ、ずだけ蚀った。

    午前六時十分に、僕は店を出た。

    倖はもう明るくなっおいた。倜の残りみたいな冷たい空気の䞭に、朝の光が混じっおいた。駅ぞ向かう人たちずは反察に、僕はアパヌトの方ぞ歩いた。

    垰り道で、僕は自動販売機の前に立った。猶コヌヒヌを䞀本買った。取り出し口に萜ちた猶は、少しだけ枩かかった。僕はそれを鞄に入れ、公園の暪を通っお、アパヌトぞ戻った。

    郚屋に入るず、䞭は出る前ず同じだった。垃団は畳たれおおらず、机の䞊にはスマホがあり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。僕は鞄を床に眮き、制服の䞊着を脱いだ。

    廃棄の匁圓を食べた。

    冷たくなったご飯ず、少し固くなった唐揚げを、テレビの黒い画面を芋ながら口に運んだ。猶コヌヒヌを開け、半分だけ飲んだ。味はよく分からなかった。

    食べ終わるず、匁圓の容噚を袋に入れた。スマホを少しだけ芋た。特に芋るものはなかった。僕はアラヌムを午埌六時に蚭定しお、スマホを畳の䞊に眮いた。

    カヌテンを閉めた。

    郚屋の䞭が暗くなった。倖ではもう䞀日が始たっおいた。けれど僕にずっおは、そこで䞀日が終わった。垃団に入り、目を閉じた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

    午前䞉時過ぎの掃陀が消えおいた。

    揚げ物のケヌスには油の跡が残り、ゎミ箱は袋がふくらんだたた、入口のマットはずれおいた。店長は朝になっおからそれに気づき、僕に少し匷い声で蚀った。

    「やっおないなら、やっおないっお蚀え」

    僕は謝った。謝った぀もりだった。

    けれど声は出なかった。口だけが動いた。店長は僕の顔を芋お、怒るのをやめた。

    「  倧䞈倫か」

    その声が、ひどく遠くから聞こえた。

    僕は倧䞈倫です、ず蚀いたかった。

    しかし、倧䞈倫ずいう蚀葉を出すために必芁なものが、䜓の䞭のどこにも芋぀からなかった。喉も、舌も、唇も、党郚そこにあるのに、蚀葉だけがなかった。

    その日の垰り、窓ガラスに映る自分を芋た。

    コンビニの明るい窓に、僕は映っおいた。

    でも、モップは映っおいなかった。

    手ぶらの僕が、床を拭くふりをしおいた。


    五月九日

    僕は午埌六時に目を芚たした。

    郚屋の䞭は薄暗く、カヌテンの隙間から倕方の光が现く差し蟌んでいた。倩井には、昚日ず同じ染みがあった。僕はしばらくそれを芋぀めおから、畳の䞊に眮いたスマホを手に取った。画面には午埌六時䞉分ず衚瀺されおいた。通知はなかった。

    カヌテンを開けた。

    窓の倖には、向かいのアパヌトの壁が芋えた。ベランダの掗濯物が、匱い颚に揺れおいた。僕はそれを少しだけ眺めおから、掗面所ぞ向かった。

    蛇口をひねり、䞡手ですくった氎を顔にかけた。氎は冷たかった。鏡の䞭には、い぀もず同じ僕の顔があった。寝癖が぀いおいお、目の䞋に薄い圱があり、口元には䜕の衚情もなかった。

    歯を磚いた。

    タオルで顔を拭き、郚屋に戻った。台所の棚からカップ麺をひず぀取った。しょうゆ味だった。ふたを半分たで開け、かやくを入れ、電気ポットの湯を泚いだ。僕はふたの䞊に箞を眮き、怅子に座った。

    䞃分埅った。

    その間、僕は電源の入っおいないテレビの黒い画面を芋おいた。画面には、怅子に座る僕ず、狭い郚屋ががんやり映っおいた。時蚈の秒針だけが動いおいた。

    䞃分が経぀ず、僕はカップ麺を食べた。味はい぀もず同じだった。熱くもなく、冷たくもなく、ただ腹に入っおいくものだった。汁を半分ほど残しお、容噚を流しに眮いた。

    制服の䞊着を鞄に入れた。

    黒いズボンに着替え、財垃ず鍵ずスマホを確認した。靎を履き、ドアの鍵を閉める前に䞀床だけ郚屋を振り返った。垃団は畳たれおおらず、机の䞊には空のペットボトルが䞀本あり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。

    僕は午埌九時四十分に郚屋を出た。

    アパヌトの廊䞋は、倜の湿気を含んでいた。階段を降り、駐茪堎の暪を通っお、现い道に出た。駅前のコンビニたでは歩いお十五分ほどだった。途䞭の小さな公園には誰もいなかった。錆びたブランコが二぀、暗がりの䞭で䞊んでいた。

    駅前に近づくず、車の音が増えた。居酒屋の看板が光っおいお、酔った人たちの声が暪断歩道の向こうから聞こえた。僕は歩道の端を歩いた。やがお、コンビニの癜い看板が芋えた。

    午埌九時五十五分に、僕は店に着いた。

    自動ドアが開くず、冷たい空気ず揚げ物の油の匂いがした。レゞの奥にいた店長がこちらを芋た。僕は店長に挚拶をした。店長は短く返事をしお、バックダヌドを顎で瀺した。

    バックダヌドで制服に着替えた。

    鞄をロッカヌに入れ、名札を胞に぀けた。午埌十時になるず、僕はレゞに立った。前の時間のアルバむトが、眠そうな顔で匕き継ぎをした。僕は頷き、お疲れさたず蚀った。

    深倜の客は、だいたい同じだった。

    䜜業着の男が猶コヌヒヌを買った。倧孊生らしい二人組が菓子ず酒を持っおきた。駅の方から来る老人が新聞を買った。僕は商品を受け取り、バヌコヌドを読み取り、金額を告げ、袋が必芁かを尋ねた。

    レゞの音が鳎った。
    袋が擊れる音がした。
    自動ドアが開いお、閉じた。

    日付が倉わるころ、配送のトラックが来た。

    僕はバックダヌドから台車を出し、ケヌスを受け取った。匁圓、おにぎり、サンドむッチ、玙パックの飲み物、雑誌。䌝祚を確認し、刀子を抌した。運転手は䜕も蚀わずにトラックぞ戻った。

    僕は商品を䞊べた。

    叀い匁圓を䞋げ、新しい匁圓を奥に入れた。おにぎりの向きを揃え、サンドむッチのラベルを前に向けた。冷蔵棚に飲み物を入れるず、指先が少し冷たくなった。

    午前䞉時を過ぎるず、店内は静かになった。

    僕はレゞ暪の床をモップで拭き、揚げ物のケヌスを掃陀し、ゎミ袋を替えた。蛍光灯はずっず明るかった。倖は暗いのに、店の䞭だけが昌のようだった。窓ガラスには、レゞに立぀僕の姿が映っおいた。

    午前五時を過ぎるず、朝の客が少しず぀来た。

    スヌツの人が栄逊ドリンクを買った。工事珟堎に向かう人が匁圓を買った。眠そうな高校生が菓子パンを買った。僕は同じように商品を受け取り、同じようにバヌコヌドを読み取り、同じように金額を告げた。

    午前六時になるず、朝番の人が来た。

    僕はレゞの䞭の金額を確認し、匕き継ぎをした。廃棄の匁圓をひず぀もらった。店長にお疲れさたですず蚀った。店長はお疲れ、ずだけ蚀った。

    午前六時十分に、僕は店を出た。

    倖はもう明るくなっおいた。倜の残りみたいな冷たい空気の䞭に、朝の光が混じっおいた。駅ぞ向かう人たちずは反察に、僕はアパヌトの方ぞ歩いた。

    垰り道で、僕は自動販売機の前に立った。猶コヌヒヌを䞀本買った。取り出し口に萜ちた猶は、少しだけ枩かかった。僕はそれを鞄に入れ、公園の暪を通っお、アパヌトぞ戻った。

    郚屋に入るず、䞭は出る前ず同じだった。垃団は畳たれおおらず、机の䞊にはスマホがあり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。僕は鞄を床に眮き、制服の䞊着を脱いだ。

    廃棄の匁圓を食べた。

    冷たくなったご飯ず、少し固くなった唐揚げを、テレビの黒い画面を芋ながら口に運んだ。猶コヌヒヌを開け、半分だけ飲んだ。味はよく分からなかった。

    食べ終わるず、匁圓の容噚を袋に入れた。スマホを少しだけ芋た。特に芋るものはなかった。僕はアラヌムを午埌六時に蚭定しお、スマホを畳の䞊に眮いた。

    カヌテンを閉めた。

    郚屋の䞭が暗くなった。倖ではもう䞀日が始たっおいた。けれど僕にずっおは、そこで䞀日が終わった。垃団に入り、目を閉じた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

    タむムカヌドに、僕の退勀蚘録がなかった。

    出勀蚘録はあった。午埌九時五十䞃分。い぀もより二分遅い。でも退勀蚘録がない。午前六時になっおも、午前六時十分になっおも、僕は店を出たこずになっおいなかった。

    店長は僕に蚀った。

    「お前、昚日、垰ったよな」

    僕は頷いた。

    頷いた぀もりだった。

    店長の目が少し现くなった。

    「いや、聞いおるんだよ。垰ったよな」

    防犯カメラを確認するず、午前六時十分、僕は店の出口に向かっおいた。自動ドアの前で立ち止たっおいる。倖は明るい。通勀の人たちが窓の向こうを歩いおいる。

    僕はドアの前に立っおいる。

    自動ドアは開かない。

    僕はしばらくそこにいる。

    やがお画面が飛び、次の映像では、僕はバックダヌドの怅子に座っおいた。制服を着たたた、壁を芋おいた。

    午前䞃時。

    午前八時。

    午前九時。

    画面の䞭の僕は、ずっず座っおいた。

    でも僕は、郚屋に垰った蚘憶がある。

    公園の暪を通った。自動販売機で猶コヌヒヌを買った。アパヌトの階段を䞊った。鍵を開けた。

    その蚌拠に、郚屋の机には猶コヌヒヌがあった。

    開けられおいない猶コヌヒヌが、䞉本䞊んでいた。


    五月十日

    僕は午埌六時に目を芚たした。

    郚屋の䞭は薄暗く、カヌテンの隙間から倕方の光が现く差し蟌んでいた。倩井には、昚日ず同じ染みがあった。僕はしばらくそれを芋぀めおから、畳の䞊に眮いたスマホを手に取った。画面には午埌六時䞉分ず衚瀺されおいた。通知はなかった。

    カヌテンを開けた。

    窓の倖には、向かいのアパヌトの壁が芋えた。ベランダの掗濯物が、匱い颚に揺れおいた。僕はそれを少しだけ眺めおから、掗面所ぞ向かった。

    蛇口をひねり、䞡手ですくった氎を顔にかけた。氎は冷たかった。鏡の䞭には、い぀もず同じ僕の顔があった。寝癖が぀いおいお、目の䞋に薄い圱があり、口元には䜕の衚情もなかった。

    歯を磚いた。

    タオルで顔を拭き、郚屋に戻った。台所の棚からカップ麺をひず぀取った。しょうゆ味だった。ふたを半分たで開け、かやくを入れ、電気ポットの湯を泚いだ。僕はふたの䞊に箞を眮き、怅子に座った。

    䞃分埅った。

    その間、僕は電源の入っおいないテレビの黒い画面を芋おいた。画面には、怅子に座る僕ず、狭い郚屋ががんやり映っおいた。時蚈の秒針だけが動いおいた。

    䞃分が経぀ず、僕はカップ麺を食べた。味はい぀もず同じだった。熱くもなく、冷たくもなく、ただ腹に入っおいくものだった。汁を半分ほど残しお、容噚を流しに眮いた。

    制服の䞊着を鞄に入れた。

    黒いズボンに着替え、財垃ず鍵ずスマホを確認した。靎を履き、ドアの鍵を閉める前に䞀床だけ郚屋を振り返った。垃団は畳たれおおらず、机の䞊には空のペットボトルが䞀本あり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。

    僕は午埌九時四十分に郚屋を出た。

    アパヌトの廊䞋は、倜の湿気を含んでいた。階段を降り、駐茪堎の暪を通っお、现い道に出た。駅前のコンビニたでは歩いお十五分ほどだった。途䞭の小さな公園には誰もいなかった。錆びたブランコが二぀、暗がりの䞭で䞊んでいた。

    駅前に近づくず、車の音が増えた。居酒屋の看板が光っおいお、酔った人たちの声が暪断歩道の向こうから聞こえた。僕は歩道の端を歩いた。やがお、コンビニの癜い看板が芋えた。

    午埌九時五十五分に、僕は店に着いた。

    自動ドアが開くず、冷たい空気ず揚げ物の油の匂いがした。レゞの奥にいた店長がこちらを芋た。僕は店長に挚拶をした。店長は短く返事をしお、バックダヌドを顎で瀺した。

    バックダヌドで制服に着替えた。

    鞄をロッカヌに入れ、名札を胞に぀けた。午埌十時になるず、僕はレゞに立った。前の時間のアルバむトが、眠そうな顔で匕き継ぎをした。僕は頷き、お疲れさたず蚀った。

    深倜の客は、だいたい同じだった。

    䜜業着の男が猶コヌヒヌを買った。倧孊生らしい二人組が菓子ず酒を持っおきた。駅の方から来る老人が新聞を買った。僕は商品を受け取り、バヌコヌドを読み取り、金額を告げ、袋が必芁かを尋ねた。

    レゞの音が鳎った。
    袋が擊れる音がした。
    自動ドアが開いお、閉じた。

    日付が倉わるころ、配送のトラックが来た。

    僕はバックダヌドから台車を出し、ケヌスを受け取った。匁圓、おにぎり、サンドむッチ、玙パックの飲み物、雑誌。䌝祚を確認し、刀子を抌した。運転手は䜕も蚀わずにトラックぞ戻った。

    僕は商品を䞊べた。

    叀い匁圓を䞋げ、新しい匁圓を奥に入れた。おにぎりの向きを揃え、サンドむッチのラベルを前に向けた。冷蔵棚に飲み物を入れるず、指先が少し冷たくなった。

    午前䞉時を過ぎるず、店内は静かになった。

    僕はレゞ暪の床をモップで拭き、揚げ物のケヌスを掃陀し、ゎミ袋を替えた。蛍光灯はずっず明るかった。倖は暗いのに、店の䞭だけが昌のようだった。窓ガラスには、レゞに立぀僕の姿が映っおいた。

    午前五時を過ぎるず、朝の客が少しず぀来た。

    スヌツの人が栄逊ドリンクを買った。工事珟堎に向かう人が匁圓を買った。眠そうな高校生が菓子パンを買った。僕は同じように商品を受け取り、同じようにバヌコヌドを読み取り、同じように金額を告げた。

    午前六時になるず、朝番の人が来た。

    僕はレゞの䞭の金額を確認し、匕き継ぎをした。廃棄の匁圓をひず぀もらった。店長にお疲れさたですず蚀った。店長はお疲れ、ずだけ蚀った。

    午前六時十分に、僕は店を出た。

    倖はもう明るくなっおいた。倜の残りみたいな冷たい空気の䞭に、朝の光が混じっおいた。駅ぞ向かう人たちずは反察に、僕はアパヌトの方ぞ歩いた。

    垰り道で、僕は自動販売機の前に立った。猶コヌヒヌを䞀本買った。取り出し口に萜ちた猶は、少しだけ枩かかった。僕はそれを鞄に入れ、公園の暪を通っお、アパヌトぞ戻った。

    郚屋に入るず、䞭は出る前ず同じだった。垃団は畳たれおおらず、机の䞊にはスマホがあり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。僕は鞄を床に眮き、制服の䞊着を脱いだ。

    廃棄の匁圓を食べた。

    冷たくなったご飯ず、少し固くなった唐揚げを、テレビの黒い画面を芋ながら口に運んだ。猶コヌヒヌを開け、半分だけ飲んだ。味はよく分からなかった。

    食べ終わるず、匁圓の容噚を袋に入れた。スマホを少しだけ芋た。特に芋るものはなかった。僕はアラヌムを午埌六時に蚭定しお、スマホを畳の䞊に眮いた。

    カヌテンを閉めた。

    郚屋の䞭が暗くなった。倖ではもう䞀日が始たっおいた。けれど僕にずっおは、そこで䞀日が終わった。垃団に入り、目を閉じた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

    店から電話が来おいた。

    着信は䞃件。メッセヌゞが䞀件。

    今日、䌑みだっけ。
    シフト入っおるよな。
    連絡しお。

    僕はコンビニに行ったはずだった。

    午埌九時四十分に郚屋を出お、午埌九時五十五分に店に着いたはずだった。店長に挚拶をしお、バックダヌドで制服に着替えお、レゞに立ったはずだった。

    でも、タむムカヌドに僕の名前はなかった。

    防犯カメラにも、僕は映っおいなかった。

    店長は電話の向こうで、少し苛立っおいた。僕は謝ろうずした。けれど声は出なかった。仕方なく、スマホのメッセヌゞ画面を開いた。

    文字を打ずうずした。

    指が、画面の䞊で止たった。

    「すみたせん」

    たった五文字が打おなかった。

    芪指は確かにそこにある。爪もある。指王もある。なのに、動かそうずするず、䜕かに薄く包たれおいるみたいに、呜什が届かなかった。

    僕は郚屋の玄関を芋た。

    靎は、きちんず䞊んでいた。

    倖に出た圢跡はなかった。

    鍵は、内偎からかかったたただった。


    五月十䞀日

    僕は午埌六時に目を芚たした。

    郚屋の䞭は薄暗く、カヌテンの隙間から倕方の光が现く差し蟌んでいた。倩井には、昚日ず同じ染みがあった。僕はしばらくそれを芋぀めおから、畳の䞊に眮いたスマホを手に取った。画面には午埌六時䞉分ず衚瀺されおいた。通知はなかった。

    カヌテンを開けた。

    窓の倖には、向かいのアパヌトの壁が芋えた。ベランダの掗濯物が、匱い颚に揺れおいた。僕はそれを少しだけ眺めおから、掗面所ぞ向かった。

    蛇口をひねり、䞡手ですくった氎を顔にかけた。氎は冷たかった。鏡の䞭には、い぀もず同じ僕の顔があった。寝癖が぀いおいお、目の䞋に薄い圱があり、口元には䜕の衚情もなかった。

    歯を磚いた。

    タオルで顔を拭き、郚屋に戻った。台所の棚からカップ麺をひず぀取った。しょうゆ味だった。ふたを半分たで開け、かやくを入れ、電気ポットの湯を泚いだ。僕はふたの䞊に箞を眮き、怅子に座った。

    䞃分埅った。

    その間、僕は電源の入っおいないテレビの黒い画面を芋おいた。画面には、怅子に座る僕ず、狭い郚屋ががんやり映っおいた。時蚈の秒針だけが動いおいた。

    䞃分が経぀ず、僕はカップ麺を食べた。味はい぀もず同じだった。熱くもなく、冷たくもなく、ただ腹に入っおいくものだった。汁を半分ほど残しお、容噚を流しに眮いた。

    制服の䞊着を鞄に入れた。

    黒いズボンに着替え、財垃ず鍵ずスマホを確認した。靎を履き、ドアの鍵を閉める前に䞀床だけ郚屋を振り返った。垃団は畳たれおおらず、机の䞊には空のペットボトルが䞀本あり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。

    僕は午埌九時四十分に郚屋を出た。

    アパヌトの廊䞋は、倜の湿気を含んでいた。階段を降り、駐茪堎の暪を通っお、现い道に出た。駅前のコンビニたでは歩いお十五分ほどだった。途䞭の小さな公園には誰もいなかった。錆びたブランコが二぀、暗がりの䞭で䞊んでいた。

    駅前に近づくず、車の音が増えた。居酒屋の看板が光っおいお、酔った人たちの声が暪断歩道の向こうから聞こえた。僕は歩道の端を歩いた。やがお、コンビニの癜い看板が芋えた。

    午埌九時五十五分に、僕は店に着いた。

    自動ドアが開くず、冷たい空気ず揚げ物の油の匂いがした。レゞの奥にいた店長がこちらを芋た。僕は店長に挚拶をした。店長は短く返事をしお、バックダヌドを顎で瀺した。

    バックダヌドで制服に着替えた。

    鞄をロッカヌに入れ、名札を胞に぀けた。午埌十時になるず、僕はレゞに立った。前の時間のアルバむトが、眠そうな顔で匕き継ぎをした。僕は頷き、お疲れさたず蚀った。

    深倜の客は、だいたい同じだった。

    䜜業着の男が猶コヌヒヌを買った。倧孊生らしい二人組が菓子ず酒を持っおきた。駅の方から来る老人が新聞を買った。僕は商品を受け取り、バヌコヌドを読み取り、金額を告げ、袋が必芁かを尋ねた。

    レゞの音が鳎った。
    袋が擊れる音がした。
    自動ドアが開いお、閉じた。

    日付が倉わるころ、配送のトラックが来た。

    僕はバックダヌドから台車を出し、ケヌスを受け取った。匁圓、おにぎり、サンドむッチ、玙パックの飲み物、雑誌。䌝祚を確認し、刀子を抌した。運転手は䜕も蚀わずにトラックぞ戻った。

    僕は商品を䞊べた。

    叀い匁圓を䞋げ、新しい匁圓を奥に入れた。おにぎりの向きを揃え、サンドむッチのラベルを前に向けた。冷蔵棚に飲み物を入れるず、指先が少し冷たくなった。

    午前䞉時を過ぎるず、店内は静かになった。

    僕はレゞ暪の床をモップで拭き、揚げ物のケヌスを掃陀し、ゎミ袋を替えた。蛍光灯はずっず明るかった。倖は暗いのに、店の䞭だけが昌のようだった。窓ガラスには、レゞに立぀僕の姿が映っおいた。

    午前五時を過ぎるず、朝の客が少しず぀来た。

    スヌツの人が栄逊ドリンクを買った。工事珟堎に向かう人が匁圓を買った。眠そうな高校生が菓子パンを買った。僕は同じように商品を受け取り、同じようにバヌコヌドを読み取り、同じように金額を告げた。

    午前六時になるず、朝番の人が来た。

    僕はレゞの䞭の金額を確認し、匕き継ぎをした。廃棄の匁圓をひず぀もらった。店長にお疲れさたですず蚀った。店長はお疲れ、ずだけ蚀った。

    午前六時十分に、僕は店を出た。

    倖はもう明るくなっおいた。倜の残りみたいな冷たい空気の䞭に、朝の光が混じっおいた。駅ぞ向かう人たちずは反察に、僕はアパヌトの方ぞ歩いた。

    垰り道で、僕は自動販売機の前に立った。猶コヌヒヌを䞀本買った。取り出し口に萜ちた猶は、少しだけ枩かかった。僕はそれを鞄に入れ、公園の暪を通っお、アパヌトぞ戻った。

    郚屋に入るず、䞭は出る前ず同じだった。垃団は畳たれおおらず、机の䞊にはスマホがあり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。僕は鞄を床に眮き、制服の䞊着を脱いだ。

    廃棄の匁圓を食べた。

    冷たくなったご飯ず、少し固くなった唐揚げを、テレビの黒い画面を芋ながら口に運んだ。猶コヌヒヌを開け、半分だけ飲んだ。味はよく分からなかった。

    食べ終わるず、匁圓の容噚を袋に入れた。スマホを少しだけ芋た。特に芋るものはなかった。僕はアラヌムを午埌六時に蚭定しお、スマホを畳の䞊に眮いた。

    カヌテンを閉めた。

    郚屋の䞭が暗くなった。倖ではもう䞀日が始たっおいた。けれど僕にずっおは、そこで䞀日が終わった。垃団に入り、目を閉じた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

    眠れなかった。

    いや、違う。

    眠ったずいう行動が、なくなっおいた。

    垃団に入った蚘憶はある。目を閉じた蚘憶もある。暗い郚屋の䞭で、倖を走る車の音を聞いた蚘憶もある。

    けれど垃団は、朝になっおも平らだった。

    僕の䜓の重みで沈んだ跡がなかった。枕にも、髪の匂いがなかった。掛け垃団はきれいに畳たれたたた、郚屋の隅にあった。

    スマホの画面䜿甚時間を芋るず、午前六時から午埌六時たで、ずっず起動しおいた。

    䜕を芋おいたのかは分からない。

    履歎には䜕も残っおいなかった。

    ただ、画面䜿甚時間だけが十二時間を超えおいた。

    その間、僕は䜕をしおいたのだろう。

    垃団に入っお、目を閉じたはずなのに。

    僕は眠ったはずなのに。

    僕は、僕の眠った時間を倱くしおいた。


    五月十二日

    僕は午埌六時に目を芚たした。

    郚屋の䞭は薄暗く、カヌテンの隙間から倕方の光が现く差し蟌んでいた。倩井には、昚日ず同じ染みがあった。僕はしばらくそれを芋぀めおから、畳の䞊に眮いたスマホを手に取った。画面には午埌六時䞉分ず衚瀺されおいた。通知はなかった。

    カヌテンを開けた。

    窓の倖には、向かいのアパヌトの壁が芋えた。ベランダの掗濯物が、匱い颚に揺れおいた。僕はそれを少しだけ眺めおから、掗面所ぞ向かった。

    蛇口をひねり、䞡手ですくった氎を顔にかけた。氎は冷たかった。鏡の䞭には、い぀もず同じ僕の顔があった。寝癖が぀いおいお、目の䞋に薄い圱があり、口元には䜕の衚情もなかった。

    歯を磚いた。

    タオルで顔を拭き、郚屋に戻った。台所の棚からカップ麺をひず぀取った。しょうゆ味だった。ふたを半分たで開け、かやくを入れ、電気ポットの湯を泚いだ。僕はふたの䞊に箞を眮き、怅子に座った。

    䞃分埅った。

    その間、僕は電源の入っおいないテレビの黒い画面を芋おいた。画面には、怅子に座る僕ず、狭い郚屋ががんやり映っおいた。時蚈の秒針だけが動いおいた。

    䞃分が経぀ず、僕はカップ麺を食べた。味はい぀もず同じだった。熱くもなく、冷たくもなく、ただ腹に入っおいくものだった。汁を半分ほど残しお、容噚を流しに眮いた。

    制服の䞊着を鞄に入れた。

    黒いズボンに着替え、財垃ず鍵ずスマホを確認した。靎を履き、ドアの鍵を閉める前に䞀床だけ郚屋を振り返った。垃団は畳たれおおらず、机の䞊には空のペットボトルが䞀本あり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。

    僕は午埌九時四十分に郚屋を出た。

    アパヌトの廊䞋は、倜の湿気を含んでいた。階段を降り、駐茪堎の暪を通っお、现い道に出た。駅前のコンビニたでは歩いお十五分ほどだった。途䞭の小さな公園には誰もいなかった。錆びたブランコが二぀、暗がりの䞭で䞊んでいた。

    駅前に近づくず、車の音が増えた。居酒屋の看板が光っおいお、酔った人たちの声が暪断歩道の向こうから聞こえた。僕は歩道の端を歩いた。やがお、コンビニの癜い看板が芋えた。

    午埌九時五十五分に、僕は店に着いた。

    自動ドアが開くず、冷たい空気ず揚げ物の油の匂いがした。レゞの奥にいた店長がこちらを芋た。僕は店長に挚拶をした。店長は短く返事をしお、バックダヌドを顎で瀺した。

    バックダヌドで制服に着替えた。

    鞄をロッカヌに入れ、名札を胞に぀けた。午埌十時になるず、僕はレゞに立った。前の時間のアルバむトが、眠そうな顔で匕き継ぎをした。僕は頷き、お疲れさたず蚀った。

    深倜の客は、だいたい同じだった。

    䜜業着の男が猶コヌヒヌを買った。倧孊生らしい二人組が菓子ず酒を持っおきた。駅の方から来る老人が新聞を買った。僕は商品を受け取り、バヌコヌドを読み取り、金額を告げ、袋が必芁かを尋ねた。

    レゞの音が鳎った。
    袋が擊れる音がした。
    自動ドアが開いお、閉じた。

    日付が倉わるころ、配送のトラックが来た。

    僕はバックダヌドから台車を出し、ケヌスを受け取った。匁圓、おにぎり、サンドむッチ、玙パックの飲み物、雑誌。䌝祚を確認し、刀子を抌した。運転手は䜕も蚀わずにトラックぞ戻った。

    僕は商品を䞊べた。

    叀い匁圓を䞋げ、新しい匁圓を奥に入れた。おにぎりの向きを揃え、サンドむッチのラベルを前に向けた。冷蔵棚に飲み物を入れるず、指先が少し冷たくなった。

    午前䞉時を過ぎるず、店内は静かになった。

    僕はレゞ暪の床をモップで拭き、揚げ物のケヌスを掃陀し、ゎミ袋を替えた。蛍光灯はずっず明るかった。倖は暗いのに、店の䞭だけが昌のようだった。窓ガラスには、レゞに立぀僕の姿が映っおいた。

    午前五時を過ぎるず、朝の客が少しず぀来た。

    スヌツの人が栄逊ドリンクを買った。工事珟堎に向かう人が匁圓を買った。眠そうな高校生が菓子パンを買った。僕は同じように商品を受け取り、同じようにバヌコヌドを読み取り、同じように金額を告げた。

    午前六時になるず、朝番の人が来た。

    僕はレゞの䞭の金額を確認し、匕き継ぎをした。廃棄の匁圓をひず぀もらった。店長にお疲れさたですず蚀った。店長はお疲れ、ずだけ蚀った。

    午前六時十分に、僕は店を出た。

    倖はもう明るくなっおいた。倜の残りみたいな冷たい空気の䞭に、朝の光が混じっおいた。駅ぞ向かう人たちずは反察に、僕はアパヌトの方ぞ歩いた。

    垰り道で、僕は自動販売機の前に立った。猶コヌヒヌを䞀本買った。取り出し口に萜ちた猶は、少しだけ枩かかった。僕はそれを鞄に入れ、公園の暪を通っお、アパヌトぞ戻った。

    郚屋に入るず、䞭は出る前ず同じだった。垃団は畳たれおおらず、机の䞊にはスマホがあり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。僕は鞄を床に眮き、制服の䞊着を脱いだ。

    廃棄の匁圓を食べた。

    冷たくなったご飯ず、少し固くなった唐揚げを、テレビの黒い画面を芋ながら口に運んだ。猶コヌヒヌを開け、半分だけ飲んだ。味はよく分からなかった。

    食べ終わるず、匁圓の容噚を袋に入れた。スマホを少しだけ芋た。特に芋るものはなかった。僕はアラヌムを午埌六時に蚭定しお、スマホを畳の䞊に眮いた。

    カヌテンを閉めた。

    郚屋の䞭が暗くなった。倖ではもう䞀日が始たっおいた。けれど僕にずっおは、そこで䞀日が終わった。垃団に入り、目を閉じた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

    目を芚たした蚘憶がなかった。

    気づいたら、机の前に座っおいた。ノヌトが開かれおいた。ペンが眮かれおいた。そこには、今日のこずがもう曞かれおいた。

    僕は午埌六時に目を芚たした。

    その䞀行を芋たずき、背䞭に冷たいものが通った。

    僕は本圓に目を芚たしたのだろうか。

    午埌六時にアラヌムが鳎ったのだろうか。スマホを手に取ったのだろうか。カヌテンを開けたのだろうか。顔を掗ったのだろうか。

    分からなかった。

    分からないのに、文字だけが残っおいた。

    ノヌトの文字は、僕の字だった。少し右に傟いお、急いで曞くず「を」の圢が厩れる。僕は昔からそうだった。だから、これは僕が曞いたもののはずだった。

    でも、指先にはペンを握った感芚がなかった。

    手を芋る。

    僕の手だった。

    動かそうずする。

    動かない。

    手の甲に血管が芋える。爪の先が少し䌞びおいる。皮膚はそこにある。手は、確かにある。

    なのに、僕のものではないみたいだった。

    その倜、店長からたた電話が来た。

    出られなかった。

    鳎っおいるスマホを、僕は芋おいるこずしかできなかった。


    五月十䞉日

    僕は午埌六時に目を芚たした。

    郚屋の䞭は薄暗く、カヌテンの隙間から倕方の光が现く差し蟌んでいた。倩井には、昚日ず同じ染みがあった。僕はしばらくそれを芋぀めおから、畳の䞊に眮いたスマホを手に取った。画面には午埌六時䞉分ず衚瀺されおいた。通知はなかった。

    カヌテンを開けた。

    窓の倖には、向かいのアパヌトの壁が芋えた。ベランダの掗濯物が、匱い颚に揺れおいた。僕はそれを少しだけ眺めおから、掗面所ぞ向かった。

    蛇口をひねり、䞡手ですくった氎を顔にかけた。氎は冷たかった。鏡の䞭には、い぀もず同じ僕の顔があった。寝癖が぀いおいお、目の䞋に薄い圱があり、口元には䜕の衚情もなかった。

    歯を磚いた。

    タオルで顔を拭き、郚屋に戻った。台所の棚からカップ麺をひず぀取った。しょうゆ味だった。ふたを半分たで開け、かやくを入れ、電気ポットの湯を泚いだ。僕はふたの䞊に箞を眮き、怅子に座った。

    䞃分埅った。

    その間、僕は電源の入っおいないテレビの黒い画面を芋おいた。画面には、怅子に座る僕ず、狭い郚屋ががんやり映っおいた。時蚈の秒針だけが動いおいた。

    䞃分が経぀ず、僕はカップ麺を食べた。味はい぀もず同じだった。熱くもなく、冷たくもなく、ただ腹に入っおいくものだった。汁を半分ほど残しお、容噚を流しに眮いた。

    制服の䞊着を鞄に入れた。

    黒いズボンに着替え、財垃ず鍵ずスマホを確認した。靎を履き、ドアの鍵を閉める前に䞀床だけ郚屋を振り返った。垃団は畳たれおおらず、机の䞊には空のペットボトルが䞀本あり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。

    僕は午埌九時四十分に郚屋を出た。

    アパヌトの廊䞋は、倜の湿気を含んでいた。階段を降り、駐茪堎の暪を通っお、现い道に出た。駅前のコンビニたでは歩いお十五分ほどだった。途䞭の小さな公園には誰もいなかった。錆びたブランコが二぀、暗がりの䞭で䞊んでいた。

    駅前に近づくず、車の音が増えた。居酒屋の看板が光っおいお、酔った人たちの声が暪断歩道の向こうから聞こえた。僕は歩道の端を歩いた。やがお、コンビニの癜い看板が芋えた。

    午埌九時五十五分に、僕は店に着いた。

    自動ドアが開くず、冷たい空気ず揚げ物の油の匂いがした。レゞの奥にいた店長がこちらを芋た。僕は店長に挚拶をした。店長は短く返事をしお、バックダヌドを顎で瀺した。

    バックダヌドで制服に着替えた。

    鞄をロッカヌに入れ、名札を胞に぀けた。午埌十時になるず、僕はレゞに立った。前の時間のアルバむトが、眠そうな顔で匕き継ぎをした。僕は頷き、お疲れさたず蚀った。

    深倜の客は、だいたい同じだった。

    䜜業着の男が猶コヌヒヌを買った。倧孊生らしい二人組が菓子ず酒を持っおきた。駅の方から来る老人が新聞を買った。僕は商品を受け取り、バヌコヌドを読み取り、金額を告げ、袋が必芁かを尋ねた。

    レゞの音が鳎った。
    袋が擊れる音がした。
    自動ドアが開いお、閉じた。

    日付が倉わるころ、配送のトラックが来た。

    僕はバックダヌドから台車を出し、ケヌスを受け取った。匁圓、おにぎり、サンドむッチ、玙パックの飲み物、雑誌。䌝祚を確認し、刀子を抌した。運転手は䜕も蚀わずにトラックぞ戻った。

    僕は商品を䞊べた。

    叀い匁圓を䞋げ、新しい匁圓を奥に入れた。おにぎりの向きを揃え、サンドむッチのラベルを前に向けた。冷蔵棚に飲み物を入れるず、指先が少し冷たくなった。

    午前䞉時を過ぎるず、店内は静かになった。

    僕はレゞ暪の床をモップで拭き、揚げ物のケヌスを掃陀し、ゎミ袋を替えた。蛍光灯はずっず明るかった。倖は暗いのに、店の䞭だけが昌のようだった。窓ガラスには、レゞに立぀僕の姿が映っおいた。

    午前五時を過ぎるず、朝の客が少しず぀来た。

    スヌツの人が栄逊ドリンクを買った。工事珟堎に向かう人が匁圓を買った。眠そうな高校生が菓子パンを買った。僕は同じように商品を受け取り、同じようにバヌコヌドを読み取り、同じように金額を告げた。

    午前六時になるず、朝番の人が来た。

    僕はレゞの䞭の金額を確認し、匕き継ぎをした。廃棄の匁圓をひず぀もらった。店長にお疲れさたですず蚀った。店長はお疲れ、ずだけ蚀った。

    午前六時十分に、僕は店を出た。

    倖はもう明るくなっおいた。倜の残りみたいな冷たい空気の䞭に、朝の光が混じっおいた。駅ぞ向かう人たちずは反察に、僕はアパヌトの方ぞ歩いた。

    垰り道で、僕は自動販売機の前に立った。猶コヌヒヌを䞀本買った。取り出し口に萜ちた猶は、少しだけ枩かかった。僕はそれを鞄に入れ、公園の暪を通っお、アパヌトぞ戻った。

    郚屋に入るず、䞭は出る前ず同じだった。垃団は畳たれおおらず、机の䞊にはスマホがあり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。僕は鞄を床に眮き、制服の䞊着を脱いだ。

    廃棄の匁圓を食べた。

    冷たくなったご飯ず、少し固くなった唐揚げを、テレビの黒い画面を芋ながら口に運んだ。猶コヌヒヌを開け、半分だけ飲んだ。味はよく分からなかった。

    食べ終わるず、匁圓の容噚を袋に入れた。スマホを少しだけ芋た。特に芋るものはなかった。僕はアラヌムを午埌六時に蚭定しお、スマホを畳の䞊に眮いた。

    カヌテンを閉めた。

    郚屋の䞭が暗くなった。倖ではもう䞀日が始たっおいた。けれど僕にずっおは、そこで䞀日が終わった。垃団に入り、目を閉じた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

    僕はもう、曞いおいなかった。

    ノヌトは開かれおいた。今日の日付があり、その䞋に、昚日ず同じ文章が䞊んでいた。文字の圢は、やはり僕のものだった。

    でも僕は、ペンを握っおいなかった。

    握れなかった。

    指先は机の䞊に眮かれたたた、少しも動かなかった。力を入れようずした。曲げようずした。芪指だけでも、爪先だけでも、ほんの少しでいいから動かそうずした。

    動かなかった。

    それなのに、ペヌゞの最埌には、黒いむンクで䞀行が足されおいた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

    その文字だけが、ただ濡れおいた。

    むンクの匂いがした。

    僕はそれを芋おいた。

    芋おいるだけだった。

    郚屋の倖で、誰かが階段を䞊がる音がした。革靎のような音だった。僕の郚屋の前で止たる。しばらくしお、ドアが叩かれた。

    「いたすか」

    店長の声だった。

    返事をしようずした。

    声は出なかった。

    䜓も動かなかった。

    もう、呌吞をしおいるのかも分からなかった。

    ドアの向こうで、店長がもう䞀床蚀った。

    「いるなら返事しおくれ」

    僕は返事をしたかった。

    その気持ちだけが、ただ残っおいた。

    でも、気持ちは行動ではなかった。



    五月十四日

    僕は午埌六時に目を芚たした。

    郚屋の䞭は薄暗く、カヌテンの隙間から倕方の光が现く差し蟌んでいた。倩井には、昚日ず同じ染みがあった。僕はしばらくそれを芋぀めおから、畳の䞊に眮いたスマホを手に取った。画面には午埌六時䞉分ず衚瀺されおいた。通知はなかった。

    カヌテンを開けた。

    窓の倖には、向かいのアパヌトの壁が芋えた。ベランダの掗濯物が、匱い颚に揺れおいた。僕はそれを少しだけ眺めおから、掗面所ぞ向かった。

    蛇口をひねり、䞡手ですくった氎を顔にかけた。氎は冷たかった。鏡の䞭には、い぀もず同じ僕の顔があった。寝癖が぀いおいお、目の䞋に薄い圱があり、口元には䜕の衚情もなかった。

    歯を磚いた。

    タオルで顔を拭き、郚屋に戻った。台所の棚からカップ麺をひず぀取った。しょうゆ味だった。ふたを半分たで開け、かやくを入れ、電気ポットの湯を泚いだ。僕はふたの䞊に箞を眮き、怅子に座った。

    䞃分埅った。

    その間、僕は電源の入っおいないテレビの黒い画面を芋おいた。画面には、怅子に座る僕ず、狭い郚屋ががんやり映っおいた。時蚈の秒針だけが動いおいた。

    䞃分が経぀ず、僕はカップ麺を食べた。味はい぀もず同じだった。熱くもなく、冷たくもなく、ただ腹に入っおいくものだった。汁を半分ほど残しお、容噚を流しに眮いた。

    制服の䞊着を鞄に入れた。

    黒いズボンに着替え、財垃ず鍵ずスマホを確認した。靎を履き、ドアの鍵を閉める前に䞀床だけ郚屋を振り返った。垃団は畳たれおおらず、机の䞊には空のペットボトルが䞀本あり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。

    僕は午埌九時四十分に郚屋を出た。

    アパヌトの廊䞋は、倜の湿気を含んでいた。階段を降り、駐茪堎の暪を通っお、现い道に出た。駅前のコンビニたでは歩いお十五分ほどだった。途䞭の小さな公園には誰もいなかった。錆びたブランコが二぀、暗がりの䞭で䞊んでいた。

    駅前に近づくず、車の音が増えた。居酒屋の看板が光っおいお、酔った人たちの声が暪断歩道の向こうから聞こえた。僕は歩道の端を歩いた。やがお、コンビニの癜い看板が芋えた。

    午埌九時五十五分に、僕は店に着いた。

    自動ドアが開くず、冷たい空気ず揚げ物の油の匂いがした。レゞの奥にいた店長がこちらを芋た。僕は店長に挚拶をした。店長は短く返事をしお、バックダヌドを顎で瀺した。

    バックダヌドで制服に着替えた。

    鞄をロッカヌに入れ、名札を胞に぀けた。午埌十時になるず、僕はレゞに立った。前の時間のアルバむトが、眠そうな顔で匕き継ぎをした。僕は頷き、お疲れさたず蚀った。

    深倜の客は、だいたい同じだった。

    䜜業着の男が猶コヌヒヌを買った。倧孊生らしい二人組が菓子ず酒を持っおきた。駅の方から来る老人が新聞を買った。僕は商品を受け取り、バヌコヌドを読み取り、金額を告げ、袋が必芁かを尋ねた。

    レゞの音が鳎った。
    袋が擊れる音がした。
    自動ドアが開いお、閉じた。

    日付が倉わるころ、配送のトラックが来た。

    僕はバックダヌドから台車を出し、ケヌスを受け取った。匁圓、おにぎり、サンドむッチ、玙パックの飲み物、雑誌。䌝祚を確認し、刀子を抌した。運転手は䜕も蚀わずにトラックぞ戻った。

    僕は商品を䞊べた。

    叀い匁圓を䞋げ、新しい匁圓を奥に入れた。おにぎりの向きを揃え、サンドむッチのラベルを前に向けた。冷蔵棚に飲み物を入れるず、指先が少し冷たくなった。

    午前䞉時を過ぎるず、店内は静かになった。

    僕はレゞ暪の床をモップで拭き、揚げ物のケヌスを掃陀し、ゎミ袋を替えた。蛍光灯はずっず明るかった。倖は暗いのに、店の䞭だけが昌のようだった。窓ガラスには、レゞに立぀僕の姿が映っおいた。

    午前五時を過ぎるず、朝の客が少しず぀来た。

    スヌツの人が栄逊ドリンクを買った。工事珟堎に向かう人が匁圓を買った。眠そうな高校生が菓子パンを買った。僕は同じように商品を受け取り、同じようにバヌコヌドを読み取り、同じように金額を告げた。

    午前六時になるず、朝番の人が来た。

    僕はレゞの䞭の金額を確認し、匕き継ぎをした。廃棄の匁圓をひず぀もらった。店長にお疲れさたですず蚀った。店長はお疲れ、ずだけ蚀った。

    午前六時十分に、僕は店を出た。

    倖はもう明るくなっおいた。倜の残りみたいな冷たい空気の䞭に、朝の光が混じっおいた。駅ぞ向かう人たちずは反察に、僕はアパヌトの方ぞ歩いた。

    垰り道で、僕は自動販売機の前に立った。猶コヌヒヌを䞀本買った。取り出し口に萜ちた猶は、少しだけ枩かかった。僕はそれを鞄に入れ、公園の暪を通っお、アパヌトぞ戻った。

    郚屋に入るず、䞭は出る前ず同じだった。垃団は畳たれおおらず、机の䞊にはスマホがあり、流しには汁の残ったカップ麺が眮かれおいた。僕は鞄を床に眮き、制服の䞊着を脱いだ。

    廃棄の匁圓を食べた。

    冷たくなったご飯ず、少し固くなった唐揚げを、テレビの黒い画面を芋ながら口に運んだ。猶コヌヒヌを開け、半分だけ飲んだ。味はよく分からなかった。

    食べ終わるず、匁圓の容噚を袋に入れた。スマホを少しだけ芋た。特に芋るものはなかった。僕はアラヌムを午埌六時に蚭定しお、スマホを畳の䞊に眮いた。

    カヌテンを閉めた。

    郚屋の䞭が暗くなった。倖ではもう䞀日が始たっおいた。けれど僕にずっおは、そこで䞀日が終わった。垃団に入り、目を閉じた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

    五月十四日、午埌䞃時二十二分。

    管理䌚瀟の立ち䌚いのもず、郚屋の鍵が開けられた。

    最初に入ったのは店長だった。圌は玄関で名前を呌んだ。返事はなかった。靎はそろえられおいた。黒いズボンず、コンビニの制服の䞊着が、床の䞊に萜ちおいた。

    カヌテンは閉たっおいた。

    郚屋は薄暗かった。倖では倕方の光があったはずなのに、その郚屋の䞭だけ、時間が止たっおいるように暗かった。

    流しには、カップ麺の容噚がなかった。

    机の䞊には、開けられおいない猶コヌヒヌが四本䞊んでいた。冷蔵庫には、廃棄の匁圓が䞉぀入っおいた。どれも食べられおいなかった。

    掗面台は也いおいた。

    タオルも、歯ブラシも、䜿われた圢跡はなかった。

    垃団は畳たれたたただった。

    僕は、机の前に座っおいた。

    ノヌトが開かれおいた。そこには、五月䞀日から五月十四日たでの日蚘が残されおいた。どの日付にも、同じ文章が曞かれおいた。起きたこず。顔を掗ったこず。カップ麺を食べたこず。郚屋を出たこず。店に行ったこず。働いたこず。垰ったこず。眠ったこず。

    譊察の人が、ペヌゞをめくった。

    店長は黙っおいた。

    圌はあずで、䜕床も同じこずを蚀ったらしい。

    あい぀は真面目だった。
    倉ではあったけど、真面目だった。
    毎日、同じ時間に来るや぀だった。
    急に来なくなったから、おかしいず思った。

    死亡掚定時刻は、はっきりしなかった。

    けれど医垫は、少なくずも五月十二日の時点で、僕がたずもに動ける状態ではなかっただろうず蚀った。食事をしおいない。氎も飲んでいない。眠った圢跡もない。郚屋を出た圢跡もない。

    それでも、日蚘は続いおいた。

    五月十二日も。
    五月十䞉日も。
    五月十四日も。

    文字は同じだった。

    僕の字だった。

    最埌のペヌゞの䞋には、ただ也ききっおいないむンクで、同じ䞀行が残っおいた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

    その日、僕の生掻から、最埌の行動が消えた。

    起きるこずも。
    芋るこずも。
    曞くこずも。
    返事をするこずも。
    息をするこずも。

    党郚、消えおいた。

    そしお、党郚が消えたずき、僕はようやく分かった。

    僕は死んだ。

    同じ日々の䞭で、少しず぀、毎日、昚日ず同じ顔をしお、昚日ず同じ文章を曞きながら、もうずっくに消えおいた。

    僕は今日も、昚日ず同じ䞀日を終えた。

     
     
    デンブルグの䌚 第7出入口の調敎係 灰の海峡 僕の14日間

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