
カモフラージュ
【あらすじ】大人になってから「幼なじみ三人組」の輪に加わった優姫(ゆうき)は、親友の恋人・陽菜(ひな)を愛し続ける戒(かい)の瞳に映りたくて、必死に彼女の真似を重ね、やがて戒と仮初の結婚を交わす。しかし陽菜の突然の死をきっかけに、陽菜の夫・純(じゅん)の脳は現実を拒絶し、狂い始める。優姫の『悲しい努力』は純の狂気を侵食し、純は優姫を「亡き妻」と誤認して寝室へと迫る。傷つき拒む優姫。そして、仕事を終えて帰宅した夫の戒は、全てを察しながらも助けようとはせず、ただ冷徹に、壊れた親友と引き金を引いた妻を部屋の隅から見つめていた。誰の瞳にも「私」が映らない、死者の生霊を消費し合う三人の、冷たく美しい共依存サイコサスペンス。
私を抱いているこの男の瞳には、死んだ別の女が映っている。そしてそれを、私の夫は部屋の隅で静かに見つめている。
「陽菜……陽菜……」
愛おしいという感情を溢れさせながら私を抱く貴方の瞳には、どんな私が映ってる?
「愛してるよ、陽菜」
――違う。私は陽菜(ひな)じゃない。優姫(ゆうき)だ。純(じゅん)くんの腕の中で息を呑みながら、私は視線だけで、部屋の隅にある椅子に腰掛けた男を見た。私の夫、戒(かい)。戒は私を助けようともせず、ただ冷めきった瞳で、壊れてしまった親友の姿をじっと見つめている。どうして、こんなことになってしまったのだろう。
頭の芯が痺れるような感覚の中で、私は、まだ世界が壊れていなかったあの日のことを思い出していた。
あの日、純くんと陽菜ちゃんと戒と私の4人は、恒例になっている飲み会の席にいた。学生時代からの強固な絆を持つ3人の中に、大人になってから加わった私。少しの疎外感を抱えながらも、その温かい空間が私は好きだった。
けれど、宴もたけなわになった頃。純くんがグラスを置き、改まった顔で微笑んだ。それが、全ての始まりだった。
「戒、優姫さん、2人に話したいことがあるんだ」「何だよ、改まって」
戒がいつも通り、ぶっきらぼうに返す。
「実は、俺達結婚するんだ」
「えっ……」
私の声は、小さく掠れて消えた。隣に座る陽菜ちゃんが、頬を少し赤くしながら純くんの腕に手を添える。
「家族以外で真っ先に伝えたくて……。ね、純」
「あぁ、そうなんだよ。2人は俺達の、一番の親友だから」
目の前が、真っ暗になった。世界から光が消え去るような、一瞬の暗転。気づけば、飲み会は終わっていた。純くんと陽菜ちゃんを見送り、夜の冷たい空気の中、私のワンルームマンションの前に、私と戒の2人だけが残されていた。陽菜ちゃんを失った戒の絶望が、背中から痛いほど伝わってくる。
「……戒……あの……」
かける言葉が見つからず、震える声で名前を呼ぶ。戒は遠い夜空を見つめたまま、乾いた声で呟いた。
「とうとう結婚か」
「…………」
戒はいつも通りの乾いた声で、私にこう言ったのだ。
「あの二人が離れることはない。そんな事分かってる。でも俺は……」
戒は冷たい声を夜の静寂に落としながら、一歩、私に歩み寄った。私の顔をじっと見つめるその瞳が、奈落の底のように深く私を捉える。
「それでもいいなら、受け入れられるなら君と付き合うよ。――だって優姫、俺が好きだよね?」
心臓が跳ね上がった。私の好意を人質に取るような、あまりにも残酷で、確信犯的な問いかけ。
それは、告白ですらなかった。本命に失恋した男の、ただの『妥協』の受け皿。それでも――身代わりでもいいからこの男の隣にいたいと願ってしまった私は、愚かにも、その手を取ってしまったのだ。
そうして始まった、冷え切った恋人ごっこ。
付き合い始めて数日後、私たちはいつものように純くんと陽菜ちゃんに呼び出され、居酒屋にいた。2人の結婚祝いの席だ。
そこで戒は、メニューを開いたまま、まるで行ってきますと言うのと同じくらいの平坦な声で、2人に告げた。
「あぁ、それと。俺たち、付き合うことになったから」
一瞬の静寂の後、最初に声を上げたのは陽菜ちゃんだった。
「えっ……! 本当!? やったぁ、おめでとう!!」
陽菜ちゃんは弾かれたように立ち上がり、自分のことのように顔を輝かせて、パチパチと嬉しそうに手を叩いた。
「私、ずっと2人ってお似合いだなって思ってたの! 本当に嬉しい! ねえ、純!」
「あぁ、びっくりした。でも、最高だな。おめでとう、戒、優姫さん」
純くんも温かい拍手を送ってくれる。まぶしかった。陽菜ちゃんの笑顔は、1ミリの悪意も、曇りもない、純粋な祝福そのものだった。だからこそ、残酷だった。陽菜ちゃんは一生気づかないのだ。目の前で生気のない笑みを浮かべている戒が、自分への恋心を永遠に葬るために、私を妥協の受け皿にしたことなんて。
私は陽菜ちゃんのまぶしさに目を細めながら、隣に座る戒の、拳をきつく握りしめた手を、机の下でそっと握り直すことしかできなかった。
その歪な関係のまま、私たちは、純くんと陽菜ちゃんの結婚式の日を迎えた。純白のウェディングドレスに身を包んだ陽菜ちゃんは、世界中の誰よりも綺麗で、ひだまりのように輝いていた。タキシード姿の純くんが、愛おしそうにその手を引く。
「本当におめでとう、2人とも」
私は戒の『彼女』として、精いっぱいの笑顔で祝福の言葉を口にした。けれど、隣に立つ私の彼氏(戒)の横顔からは、完全に血の気が引いていた。戒は、純くんに薬指の指輪をはめられる陽菜ちゃんの姿を、まるで自分の心臓を抉られるのを見つめるような瞳で見つめている。その拳は、爪が手のひらに食い込むほど強く握りしめられている。自分の命よりも大切な人が、一番の親友のものになる。私は戒の隣でその手をそっと握りしめながら、
「この人が見ているのは私じゃない」という痛みに、静かに耐えていた。そして、2人が夫婦になった後、私たちの関係はさらに形を変えることになる。新婚の純くんが、満面の笑みで私たちに問いかけてきたのだ。
『俺たちは結婚したけど、お前らは? 付き合ってるんだろ?』
純くんに不審に思われたくない。
3人の絆を壊したくない。
その一心で、私の部屋にやってきた戒は、私に冷徹な『契約』を突きつけてきた。
「結婚しても、一番はあの子だから」
私の目を見ようともせず、戒は淡々と義務のように言葉を重ねる。
「一つ、この事は絶対に誰にも言わない事。表面はいい夫でいるから。二つ、何があってもあの子が優先。さすがに君がケガとか入院したら付き添うけど」
それは、愛のない、ただの完璧なおままごと。戒は私の顔を見つめながら、まるで事務手続きをこなすように、最後のトドメを刺した。
「仮初の家族だけど……あぁそうだな、子供はいる? あいつらに『子供作らないの?』って聞かれたら、完璧な言い訳が立たないから」
純くんへの完璧なカモフラージュ(自己防衛)のために、私たちは籍を入れ、形だけの夫婦になった。けれど、運命はさらに歪んだ形で私たちを嘲笑った。
私たちの結婚から半年も経たないうちに、陽菜ちゃんが突然の事故で、この世を去ったのだ。
「陽菜……」
ぽつりと、戒の口からその名前が零れ落ちる。戒の手元には、一枚の写真があった。学生時代の、私がまだ知らない、3人だけのときの写真。そこに写る陽菜ちゃんの姿を、戒は切なく見つめながら、壊れ物を扱うように愛おしげに指先で触れている。その横顔を見て、私は思い知る。陽菜ちゃんは死んでしまったのではない。戒の心の中で、永遠に誰も勝てない『完璧な一番』として、生き続けることになったのだと。
ただひたすらに、深いショックを受けて絶望していた。
愛する妻を失い毎日を抜け殻のように過ごす親友の姿を、戒も私も、胸を痛めながら見守っていたはずだった。
少しでも純くんを元気づけるため、私たちの家に彼を呼び出すことが増えた。
そんな日が続いていた、ある日のこと。お酒を煽り、うつむいていた純くんが、ふと顔を上げて私を見つめ、ぽつりと言ったのだ。
「優姫さん、少し……陽菜と似てるね……」
それが、狂気の始まりだった。陽菜ちゃんが死んだという耐えがたい絶対的な現実を、彼の脳が拒絶し始めたのだろう。
最初は、現実逃避の痛々しい冗談だと思っていた。けれど彼の目は、本気だった。
純くんの頭の中で、記憶は都合よく改ざんされていく。かつて陽菜ちゃんが私たちの交際を純粋に祝福し、結婚を急かしたあの日の記憶が、彼の壊れた脳の拠り所になってしまったのだ。
『戒と優姫は結婚している。……そして、俺の隣には陽菜がいる』
そうして純くんは、かつて陽菜ちゃんが楽しそうに訪れていた我が家に、さらに頻繁にやってくるようになった。
陽菜ちゃんをカモフラージュしたこの家で、彼は生きているはずのない妻の幻影を追う。
「陽菜と似てるね」
彼女が選んだ夫である純くんが言うほどなら、本当に似ているのだろう。
――似てるんだ、と私は心の中で苦笑してしまう。だって、そうだ。
私はずっと、戒に、陽菜ちゃんしか見ていない彼の瞳に少しでも映りたくて、ほんの一瞬でもいいから意識して欲しくて、必死に彼女の仕草や髪型、服の好みを真似ていたのだから。
愛する夫に見てほしくて血の滲むような思いで重ねてきた努力の成果を、最初に受け取ったのが、目の前で壊れかけている別の男だなんて、何の冗談だろう。
けれど、純くんの狂気はそこから一気に加速していった。陽菜ちゃんが死んだという耐えがたい絶対的な現実を、彼の脳が拒絶し、私の『努力』を都合よく利用し始めたのだ。
少しずつ、少しずつ、純くんは私を陽菜ちゃんで塗りつぶすように、侵食してくる。
「優姫さん、これ……好きだよね?」
そう言って微笑みながら差し出してくるものは、私の好みではない。
それは、陽菜ちゃんの好物だった。
「あれ……前に着けていた髪飾りは?」
ある日、私の髪をじっと見つめながら、純くんが不思議そうに首を傾げた。
「えっ?」
「俺があげたやつだよ。黄色の石がついた……」
――それはずっと前、純くんが陽菜ちゃんにプレゼントしたものだ。
私はそんなもの、一度だって着けたことはない。けれど純くんの壊れた脳内では、私が陽菜ちゃんの真似をして着けていた全てのものが、本物の陽菜ちゃんの記憶と混ざり合い、境界線を失っていく。
「あぁ、ごめん。今日はないんだね」
切なそうに笑う純くんの目は、もう私を見ていなかった。陽菜ちゃんが死んだという絶対的な現実を彼の脳が拒絶し、私を完全に私を陽菜ちゃんそのものに書き換えていく。
純くんが帰ったあとの、静まり返ったリビング。
私は耐えきれなくなって、ソファに座る夫に声をかけた。
「戒……、純くんのことなんだけど……」
「あぁ」
戒はスマホ画面から目を上げようともせず、低く短く応じる。
「……私を陽菜ちゃんと間違えてる。差し出すものも、話す記憶も、全部陽菜ちゃんのものなの」
「みたいだな」
他人事のような平坦な声だった。
私は戒の前に歩み寄り、縋るように言葉を重ねる。「戒からも、純くんにちゃんと伝えて……。私は陽菜ちゃんじゃない、もう……陽菜ちゃんは、この世にいないんだって……っ」
その瞬間、戒がゆっくりと顔を上げた。私を見つめるその瞳には、軽蔑を孕んだ、冷徹な光が宿っていた。
「自分で蒔いた種だろ」
「え……」
頭を殴られたような衝撃に、息が止まる。
「俺に見てほしくて、あの子の真似をしてたんだろ。純があの子と誤認したのは、君が仕向けたようなもんだ」
戒は立ち上がり、怯える私を冷たく見下ろした。その瞳にあるのは、私への無関心ではなく、私の姑息な努力に対する、明確な嫌悪と侮蔑だった。
「君がどれだけ真似したって、陽菜は陽菜だけ。代わりなんていないんだよ」
「それ、は……っ」
「陽菜の真似するの、楽しかったか?」
絞り出すような戒の嘲笑が、私の胸に深く突き刺さる。そうか。戒は最初からすべて気づいていて、私の浅はかな願いを、ずっと腹の底で激しく軽蔑していたのだ。
翌日。一人で過ごす部屋の中で、戒の言葉が頭から離れなかった。
私はふらふらと洗面所に向かい、鏡に映る自分の姿を見つめた。
鏡の中の私は、陽菜ちゃんとまったく同じくらいの髪の長さで、よく似た色に染められている。
身にまとっているのは、私自身の好みではなく、自分じゃ絶対に選ばない色やデザインの服。そして、彼女が好んでいたような、可憐なアクセサリー。
『陽菜の真似するの、楽しかったか?』
脳内で、戒の冷徹な嘲笑が何度も響く。
――楽しいわけない。こんな自分を殺した歪なおままごと、楽しいはずがない。でも、こうでもしないと、戒に、陽菜ちゃんしか見ていないあの人の瞳に写れない。少しでも意識して欲しかった、見て欲しかった。ただ、それだけだったのに。
『君がどれだけ真似したって、陽菜は陽菜だけ。代わりなんていないんだよ』
胸の奥が、鋭い刃物で抉られるように痛む。でも、本当にその通りだ。確かに私が勝手に陽菜ちゃんの真似をしただけ。戒がそうしろと言ったわけじゃない。
私が、戒の瞳に映りたくて、勝手に始めたことなのだ。すべては、私が自分の寂しさを埋めるために蒔いた種。昨日の戒との残酷なやり取りを思い出し、胸が押しつぶされそうになっていた、その時だった。ガチャッ、と静かな部屋に、玄関のドアが開く音が響いた。
「戒……?」
夫が帰ってきたのだと思い、私はリビングの入り口に目を向けた。けれど、そこに立っていたのは、戒ではなかった。
「ただいま、陽菜」
鍵を開けて入ってきたのは、愛おしげな笑みを浮かべた純くんだった。その瞳は完全に濁り、私のことなど1ミリも見ていない。純くんの脳内で、私たちのこの家は、とうとう『自分と陽菜の愛の巣』に完全に書き換わってしまったのだ。
「遅くなってごめんね」
純くんが私に近づき、迷いなくその腕を伸ばしてくる。
純くんが私に近づき、迷いなくその腕を伸ばしてくる。私は恐怖で身体を震わせながら、必死に両手を突き出して彼を拒んだ。
「待って純くん! 私は陽菜ちゃんじゃない! この家も、戒と私の……っ」
「何言ってるの? 陽菜」
純くんは優しく、けれどどこか噛み合わない瞳で私を見つめ、ふっと微笑んだ。
「もしかして、拗ねてる? 俺がこないだ髪飾りの事、少し責めた感じで言っちゃったから……」
「違っ……!」
「怒ってないよ。それより陽菜……」
私の必死の叫びは、彼の壊れた脳には1ミリも届かない。再び伸ばされる、拒めないほど力強い腕。純くんは私の耳元に顔を寄せ、愛おしそうに囁いた。
「最近、戒もいたから……ね?」
――あぁ、もうだめだ。純くんの頭の中では、かつて4人で、あるいは3人で過ごした全ての記憶が、私を陽菜ちゃんとして抱くための都合のいい理由にすり替えられてしまっている。
拒むことも、逃げることも許されないまま、私はその腕に囚われた。そして、とうとうその狂気は一線を越えた。
「へぇ……」
その時、玄関で静かに男の声がした。仕事を終えて帰宅した私の夫、戒だ。
リビングから聞こえる優姫の大きな拒絶の声に何事かと思ったが、そこに純の靴があるのを見た時点で、おおよその見当はついていた。『最近、戒もいたから……ね?』純のその言葉の後に、この家で何が起こるのかなんて、学生時代から長く一緒に過ごしてきた戒には簡単に想像がついた。
純の脳は完全に壊れ、目の前の優姫を陽菜として抱こうとしている。普通なら、部屋に飛び込んで親友を殴りつけ、妻を助ける場面だろう。けれど、戒は助けようとなんてしなかった。
カチャリ、と鍵の音だけを残し、戒は足音を鳴らさないように静かに廊下を進んだ。向かった先は、一応夫婦の形を保つための、私たちの寝室だ。純に腕を引かれ、寝室のベッドに押し倒される私の視界に、ゆっくりとドアを開けて入ってくる戒の姿が映る。
戒は、純に「陽菜」と呼ばれて組み伏せられている私を助けることもせず、部屋の隅にある椅子に腰掛けた。ただ冷めきった瞳で、壊れてしまった親友の姿をじっと見つめるために。
――そうして、物語はあの現在の寝室(冒頭)へと戻ってくる。
「陽菜……陽菜……」
愛おしいという感情を溢れさせながら私を抱く貴方の瞳には、どんな私が映ってる?
俺は、夫婦の寝室の隅にある椅子に腰掛け、ただ冷めきった瞳で、壊れてしまった親友の姿をじっと見つめている。
純に組み伏せられ、助けを求めるように俺を見つめてくる優姫。そして、俺の妻を抱きしめながら、亡き妻の名前を呼び続ける純。
壊れてしまった純と、自ら陽菜の真似をしてその狂気の引き金を引いた優姫。
私は2人の姿を、どこか遠い、違う世界のおままごとでも見るように冷ややかに眺めていた。
「陽菜……陽菜……」
馬鹿なやつだな、純。お前が今、愛おしそうに抱いているのは陽菜じゃない。
あれだけ陽菜だけを愛してたくせに、結局、見た目や仕草が似ているなら別の女でも抱けるのか。
なら、お前にとっての陽菜なんて、本当は誰でもよかったんじゃないか?
だったら、あの時、最初から俺に陽菜をくれよ。俺なら、あの子が死んだあの日、一人で逝かせたりしなかった。今すぐ後を追って、一緒に死んだって良かった。
それなのに、生き長らえたお前は、あの子を追いかけることもしなかったくせに、別の女の身体で妥協して満足している。お前は、ただの哀れな敗北者だ。
純が優姫を強く抱きしめるたびに、俺の心の中で、俺だけの純愛の価値がどんどん跳ね上がっていく。
「陽菜……愛してる、陽菜」
耳元で囁かれる別の女の名前を聴きながら、優姫が静かに目を閉じるのが見えた。純の目にも、俺の目にも、この世界で優姫自身の姿を見ている人間は、もう一人もいない。