絶海の孤島:第1話 船が沈んだ――家族5人が流れ着いた島には、何かがいる
家族5人で楽しんでいた南の海への旅行。ところが突然、海が荒れ始めた。
巨大な波に襲われ、船は大きく傾き、家族は海へ投げ出されてしまう。
父、母、二人の息子、そして娘。必死に互いを探しながら海を泳ぎ、ようやくたどり着いたのは、見知らぬ島の浜辺だった。助かった。そう思った家族だったが――島の奥から、巨大な木が倒れる音が響く。そして砂浜には、人間のものとは思えない巨大な足跡が残されていた。この島には、何かがいる。家族5人のサバイバルが、今始まる。
海は、最初は穏やかだった。
青い空。白い雲。どこまでも続く青い海。
父の健一は、船の甲板から海を眺めながら、隣にいる妻の美奈子に笑いかけた。
「いい旅行になったな」
「ええ。子供たちも喜んでるわ」
少し離れたところでは、二人の息子と娘が楽しそうに話していた。
長男の翔太。次男の海斗。そして末っ子の娘、由奈。
家族5人の旅行だった。

だが、その日の午後。
空の色が変わった。
「……あれ?」
美奈子が海の向こうを見つめた。
遠くに黒い雲が広がっていた。
やがて風が強くなった。
波が高くなる。
船が大きく揺れ始める。

「全員、船内へ!」
船員の声が響いた。
しかし、間に合わなかった。
巨大な波が船の横腹に激突した。
ドォォォン――!
船が大きく傾いた。
悲鳴が上がる。
「お父さん!」
由奈の声が聞こえた。
健一が振り返った瞬間、さらに大きな波が船を覆った。
視界が白くなる。
体が浮いた。
そして――海へ投げ出された。
「由奈!」
叫んだ。
だが、答えはない。

荒れ狂う海の中で、健一は必死に泳いだ。
妻はどこだ。
子供たちは。
一人ずつ名前を叫び続けた。
やがて、波の向こうから声が聞こえた。
「お父さん!」
翔太だった。
その近くに海斗がいる。
さらに少し離れた場所で、美奈子が由奈を抱きかかえていた。
「みんな、いるのか!」
「いる!」
5人は互いの姿を確認した。
だが、船はもう見えなかった。
それから、どれくらい泳いだのか。
誰にも分からなかった。
ただ、波に流され続けた。
そして突然――
健一の足が砂に触れた。
「……陸だ!」
5人は力を振り絞り、浜辺へ這い上がった。

白い砂浜。
青い海。
その向こうには、深い緑色の森が広がっている。
5人とも、生きていた。
しばらく誰も話せなかった。
やがて美奈子が、震える声で言った。
「……助かったのね」
健一は海を見た。
船はない。
携帯電話は濡れている。
食料もほとんどない。
そして、この島がどこなのかも分からない。
それでも今は、生きていることだけで十分だった。
「大丈夫だ」
健一は子供たちに言った。
「必ず助けが来る」
そのときだった。
森の奥から、
バキッ――!
という大きな音がした。
5人が同時に振り向く。

一本の木が倒れた。
……風ではない。
さらに奥で、何かが動いた。
ズシン。
ズシン。
地面がわずかに震えた。
「……今の、何?」
海斗が呟いた。
誰も答えなかった。
健一は子供たちを自分の後ろに下がらせた。
そのとき、由奈が砂浜を指差した。
「お父さん……」
そこには、足跡があった。

大きな足跡だった。
人間のものではない。
長さは、由奈の体より大きい。
しかも、その足跡は一つではなかった。
森の中から浜辺へ。
そして――
再び森の奥へ向かって続いている。
健一は息をのんだ。
この島には、自分たち以外の何かがいる。
しかも、それはかなり大きい。
「……今日は、森に入らない」
健一は静かに言った。
「ここで夜を明かす」
5人は互いに身を寄せた。
夕日が海に沈んでいく。
美しい景色だった。
だが、森の奥はもう暗い。
そして日が完全に沈んだ瞬間――
森の奥から、
低く長い鳴き声が響いた。
ウォォォォォ……。
家族5人は、一言も話さなかった。
ただ、暗闇の森を見つめていた。
この島での本当の冒険は、
まだ始まったばかりだった。

次回予告
夜になった。
焚き火の小さな炎だけが、家族5人を照らしている。
しかし、森の奥では何かが動いている。
近づいてくるのか。
それとも、こちらを観察しているのか。
朝を待つべきなのか。
それとも、暗くなる前に安全な場所を探すべきだったのか。
そして翌朝、家族は砂浜で新たな痕跡を発見する。
この島には、いったい何がいるのか。
次回、家族は最初の決断を迫られる。
次の話はこちら
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