
お別れの朝
目が覚めると、
今日も横に彼の寝顔があった。
でもすぐに、もう朝なんだって思った。
彼が目を覚まして、
「おはよ」
と言って、優しくキスしてくれた。
何度も、何度も。
これで最後なのかもしれないと思って、
涙が止まらなくなった。
キスをしながら泣いたのは、
初めてだった。
彼は私を抱きしめながら、
「また会えるよ。絶対会おう」
「ちゃんと連絡するから。電話もしよう」
そう言ってくれた。
⸻
今まで、
独占欲なんてほとんど見せなかった彼が、
私の太ももにキスマークをつけた。
「すぐ消えちゃうかもしれないけど、お守りね」
そう言って笑った。
そして彼が、はっきりと言った。
「あお、好きだよ」
その言葉を、
彼から聞いたのは初めてだった。
言わなくても分かっているつもりだった。
でも本当は、
心のどこかでずっと欲しかった言葉だった。
「私も好き」
そう返した瞬間、また涙が溢れた。
⸻
少しだけ腕枕をしながら、
いつも通りくだらない話をした。
でも時間は待ってくれない。
「そろそろ行かなきゃな」
そう言って、彼は着替え始めた。
私は寂しさで潰れそうだったけど、
笑顔でバイバイしようと思っていた。
お別れの時。
「じゃあね」
「うん、ありがとう。
連絡してね。
いなくならないでね」
軽くハグをして、
軽くキスをした。
これじゃ足りないよって思うくらい、
本当に軽いキスだった。
でも今思えば、
あの去り際の軽さは、
彼なりの優しさだったのかもしれない。
ドアが閉まった。
部屋が、急に静かになった。
我慢していたのに、
彼が部屋を出て行ってから、
涙が止まらなかった。
⸻
彼は、
また会えるよと言ってくれた。
その言葉は嬉しかった。
でも同時に、
期待してはいけないと思っていた。
期待通りにならなかった時、
私はきっと立ち直れない。
だからこの時の私は、
もうこれで会えないかもしれない、
そんな気持ちでいた。
帰りの新幹線では、
ずっと静かに泣いていた。
でも駅に着く頃には、
悲しさと同じくらい、
彼への感謝も込み上げていた。
彼は海外で、これから頑張りどき。
私も来週から、新しい職場が始まる。
頑張ろう。
少しだけ、
そう思えた。