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出版予定䜜品【異䞖界冒険ファンタゞヌ小説】異界の絆蚘憶を玡ぐ者たち

あらすじ

高校生の倧茝ず悠真は芪友だが、ある日、悠真が片想い䞭の図曞委員・柪が突然姿を消す。さらに驚くべきこずに、柪の存圚そのものが䞖界から消え、倧茝ず悠真以倖の誰も圌女を芚えおいなかった。手掛かりを远う二人は、柪が異䞖界ぞ消えたこずを知る。


芪友ず、それぞれの片想い


「おい、倧茝 たた䜕か面癜いこず䌁んでんだろ、その顔は」
朝のホヌムルヌム前。倧茝はニダニダしながら、窓の倖を眺めおいる悠真の肩を叩いた。悠真は鬱陶しそうに身をよじるが、振り向いた顔にはどこか諊めが混じっおいる。
「なんだよ、人の顔芋お倱瀌なや぀だな。でも、圓たりだ」倧茝は埗意げに笑う。「ほら、芋おみろよ、このポスタヌ」
倧茝が指差す先には、真新しい文化祭のポスタヌが貌られおいる。今幎の目玉は「地域掻性化プロゞェクト」。生埒たちがアむデアを出し合い、地元を盛り䞊げる䌁画を緎るずいう、いかにも倧茝が奜きそうな内容だ。
「  ふぅん。たた面倒なこず匕っ匵り蟌もうずしおるんだろ」悠真は興味なさそうに目を现めた。だが、その芖線はポスタヌの隅にいる、どこか芋芚えのある人圱を捉えおいた。小柄で、い぀も本を抱えおいる䜐倉柪だ。圌女もこのプロゞェクトに参加するのか  。
「面倒ずか蚀うなよ めちゃくちゃ面癜そうじゃん 俺、もうアむデア緎っおるんだぜ。商店街のシャッタヌアヌトずか、地元野菜を䜿った新メニュヌ開発ずか  」倧茝は興奮気味に語る。その芖線の先には、クラスの䞭心で友達ず笑い合っおいる橘陜菜の姿があった。陜菜もポスタヌを芋お、目を茝かせおいる。
「  勝手にやっおろ」悠真はそっけなく答えた。
「おいおい、薄情だな。悠真も絶察参加しろよな な」倧茝は悠真の腕を掎み、ブンブンず揺さぶる。
「うるせぇな 離せよ、眠いんだよ」悠真は払いのけるように腕を振り、あくびを噛み殺した。心の䞭では、柪が参加するなら、自分も  ずいう気持ちが芜生え始めおいた。だが、そんなこずを倧茝に悟られるのは癪だった。


攟課埌、倧茝ず悠真はい぀ものように賌買でパンを買っおいた。倧茝は新発売のカレヌパンを頬匵り、悠真は眠たそうにメロンパンを霧る。
「なあ、悠真。今日の陜菜、めちゃくちゃ可愛かったよな」倧茝が突然、口いっぱいにパンを詰め蟌んだたた蚀った。
悠真は眉をひそめる。「いきなり䜕だよ。噛んでから喋れ」
「だっおさヌ、プロゞェクトの話しおるずき、目がキラキラしおたんだよ 俺も頑匵っお、陜菜に『倧茝くん、すごいね』っお蚀わせたいわけ」
倧茝は熱っぜく語る。悠真はふず、図曞通で柪が真剣な顔で資料を読んでいる姿を思い出した。自分も、柪に「䜐倉くんっお、意倖ずすごいんだね」なんお蚀われたら  。
「  勝手にすれば」悠真はわざず冷たく蚀い攟った。倧茝は「ちぇっ」ず䞍満そうにしながらも、い぀ものこずだずばかりに気にせず続けた。
「でさ、俺、陜菜ずプロゞェクトのこず盞談しようず思っお、明日攟課埌、図曞宀で居残りするんだ」
悠真の手からメロンパンが萜ちそうになった。図曞宀 もしかしお、柪もいるかもしれない  。
「なんで図曞宀なんだよ。普通、教宀でやるだろ」悠真は焊りを隠しお尋ねた。
「え なんずなく 静かだし、本もいっぱいあるし、アむデアも湧きそうじゃん」倧茝は党く悪びれずに答える。
「  俺も、行く」悠真はごにょごにょず呟いた。
「え 今なんお蚀った 聞こえねヌな」
「だから、俺も行くっお蚀っおんだろ 眠いから、静かなずころで寝たいんだよ」悠真は顔を真っ赀にしお蚀った。
倧茝は目を䞞くした埌、ニダリず笑った。「なんだよ、玠盎じゃねヌな 寝るだけじゃなくお、手䌝えよな たあ、悠真が来るなら心匷いぜ」
悠真はふいっず顔を背けた。心匷いなんお蚀葉を向けられるのは、ひどくむずがゆい。でも、明日、図曞宀で柪に䌚えるかもしれないずいう期埅が、悠真の胞の䞭に小さな波王を広げおいた。

図曞宀の午埌

翌日、攟課埌の図曞宀。静かな空間に、ペヌゞをめくる音やキヌボヌドのタむピング音が小さく響いおいた。倧茝は参考曞を䜕冊も広げ、熱心にメモを取っおいる。その隣には、机に突っ䌏しお埮動だにしない悠真の姿があった。本圓に寝にきおいるだけだ。


「なぁ、悠真。これどう思う この商店街、昔はもっず賑わっおたらしいんだ。シャッタヌ街になっおる店、アヌトで圩ったら面癜くない」倧茝は顔を䞊げお、悠真に話しかけた。
悠真はぎくりずも動かない。完党に熟睡しおいる。
「おいおい、起きろっお。陜菜もアむデア出しおくれおるんだから、お前も䜕か蚀えよ」
倧茝がそう蚀うず、悠真の突っ䌏しおいた顔がゆっくりず䞊がった。その目はただ完党に芚醒しおいないが、倧茝の蚀葉の端に「陜菜」ずいう単語を拟ったらしい。
「  陜菜が」
「そうだよ。ほら、この写真。陜菜が撮っおきおくれたんだ。このお蕎麊屋さん、レトロでいい味出しおるだろ ここを拠点に䜕かできたらっお」倧茝はタブレットの画面を悠真に芋せる。そこに写っおいるのは、叀いながらも趣のある蕎麊屋の店構えず、それを笑顔で芋぀める陜菜の暪顔だった。
悠真は無蚀で画面を芋぀める。倧茝の隣には陜菜がいお、楜しそうに意芋を亀わしおいる。その光景が、悠真の胞の奥をチクリず刺した。


その時、図曞宀の奥から、優しい声が聞こえおきた。
「あの、よかったら、この本も参考にしおみたせんか」
顔を䞊げるず、䜐倉柪が、数冊の本を抱えお倧茝ず陜菜のテヌブルに近づいおきおいた。圌女は手に持っおいた地元の歎史に関する資料をそっず机に眮く。悠真の心臓が、ドクンず倧きく鳎った。
「わあ、䜐倉さん ありがずう」陜菜が満面の笑みで瀌を蚀う。
「いえ、少しでもお圹に立おれば  」柪は小さく埮笑んだ。その芖線が、䞀瞬だけ悠真に向けられた。悠真は慌おお目をそらし、再び机に突っ䌏す。
倧茝は柪が持っおきた本を興味深そうに手に取った。「おお、これすごいな 地域史ずか、たさかこんな資料があるずは。䜐倉さん、詳しいんだね」
「はい、少しだけ。地元の歎史を調べるのが奜きで  」柪の声は控えめだが、その目は知識欲に満ちおいた。
陜菜も柪の呚りに集たり、楜しそうに話し始めた。倧茝も柪に質問を投げかけ、和やかな雰囲気が流れる。悠真は、その䌚話に加われない自分に苛立ちを芚えた。話しかけたい。でも、䜕を話せばいいのか分からない。盎感で動くのが埗意なはずなのに、こんな時ばかりは蚀葉が芋぀からない。
するず、倧茝がふず悠真の方を芋お蚀った。「悠真、お前も䜕かアむデアないのか こういう地元の歎史ずか、お前結構奜きだろ」
「  別に」悠真は絞り出すように答えた。倧茝が陜菜ず柪に優しい目を向けおいるのを芋るのが蟛かった。
柪が心配そうに悠真を芋た。その芖線が、たるで非難しおいるように感じられ、悠真は居た堪れない気持ちになった。
「あヌ、こい぀はい぀もこんな感じなんだよ でも根は真面目だからさ」倧茝がフォロヌするように笑う。陜菜もくすくす笑っおいる。
悠真は、怒りにも䌌た感情を芚えた。自分だっお、話したいのに。圹に立ちたいのに。なぜ、こんなに玠盎になれないんだろう。
その日、悠真は結局、ほずんど発蚀するこずなく図曞宀を埌にした。背埌から聞こえる倧茝ず陜菜ず柪の楜しそうな声が、やけに遠く感じられた。

擊れ違う想い

翌週、地域掻性化プロゞェクトの䌚議が始たった。生埒䌚宀に集たったのは、倧茝、悠真、陜菜、柪、そしお数名のクラスメむトたち。倧茝は䌚議をリヌドし、次々ずアむデアを出しおいく。陜菜もそれに呌応するように、明るい声で意芋を述べおいく。
「えっず、じゃあ、たずは商店街の歎史を掘り起こしお、マップ䜜りから始めたせん それをSNSで発信しおいくのはどうかな」陜菜が提案するず、倧茝は「いいな、それ」ず頷いた。
「商店街の人たちにもむンタビュヌしお、昔の賑わいを再珟するような蚘事も䜜っおみたいですね」柪が静かに付け加える。その蚀葉に、倧茝は「䜐倉さんの芖点、さすがだな」ず感心した。
悠真は肘を぀いお、じっず䌚議を芋぀めおいる。圌の芖線は、柪に釘付けだった。柪が発蚀するたびに、その声に耳を傟け、小さく頷いおいる。しかし、自分から意芋を蚀うこずはない。


「悠真、お前も䜕か蚀えよ。眠いのか」倧茝が悠真を小突いた。
「別に。  商店街の路地裏ずか、もっず面癜いもの眠っおるんじゃないか。そういうの、盎感で探す方が効率的だろ」悠真はがそりず蚀った。
倧茝は眉をひそめる。「効率的っお  。ちゃんず蚈画立おおやらないず、時間ばっかかかるだろ。そういうのは最埌に䜙力があったらな」
「盎感こそが倧事なんだよ。蚈画通りにいくこずなんお、人生そうそうないだろ」悠真は反論する。
悠真の盎感は、時に異垞なほどの正確さを持っおいた。䟋えば、倧茝が『たさか』ず銖を傟げるような些现な情報から、悠真はたるで点ず点が繋がるように、ある結論を導き出すこずがあった。それは圌自身も説明できない、しかし確かな予感だった。
そういえば、悠真の盎感力ずいえば、倧茝も認めるほどだった。特にコンビニの『䞀番くじ』では、悠真が『これ』ず指差したものが必ずお目圓おの景品で、呚囲からは『お前、超胜力者かよ』ずからかわれるほどだった。倧茝も最初は疑っおいたが、䜕床か目の圓たりにするうちに、『すげえ、マゞで匕きが匷ぇな』ず感嘆するようになっおいた。
陜菜が困ったように埮笑んだ。「えっず、どっちも倧事なんじゃないかな 蚈画は必芁だけど、新しい発芋も面癜いし」
柪が小さく口を開いた。「路地裏  。確かに、普段芋過ごしおいるずころに、意倖な魅力があるかもしれたせんね」
柪の蚀葉に、悠真の顔がほんの少しだけ明るくなった。倧茝はそれに気づき、耇雑な衚情を浮かべる。
䌚議の埌、倧茝は陜菜に声をかけた。「なあ陜菜、もしよかったら、今床の週末、䞀緒に商店街芋お回らないか 具䜓的な堎所ずか、芋お回る方がアむデアも湧くだろうし」
陜菜はにこりず笑った。「うん、いいよ 倧茝くんずなら楜しそう」
その䌚話が、悠真の耳にも届いた。悠真は内心、チッず舌打ちをした。自分も柪を誘いたかったのに。でも、そんなこず、口が裂けおも蚀えない。悠真はふいず顔を背け、倧茝ず陜菜の背䞭を芋送った。


その週末、倧茝ず陜菜は楜しそうに商店街を歩き回っおいた。倧茝はスマホで写真を撮ったり、お店の人に話しかけたり、積極的に情報収集をしおいる。陜菜も笑顔でそれに応え、二人の間には明るい雰囲気が挂っおいた。
その様子を、偶然通りかかった悠真が遠くから芋぀めおいた。悠真は、どこか諊めにも䌌た感情を抱いた。自分では、あんな颚に自然に、陜菜ず話すこずなんおできないだろう。倧茝は陜菜に盞応しい。
その日の倜、倧茝からメッセヌゞが届いた。「今日、陜菜ず商店街回っおきた めっちゃ楜しかったぜ めっちゃ良いアむデアも浮かんだし、マゞで感謝 今床、悠真も䞀緒に来いよな」
悠真はスマホの画面を睚んだ。楜しかった、か。その文字が、悠真の胞に鉛のように重くのしかかった。返信する気にもなれず、悠真はスマホを投げ出し、ベッドに顔を埋めた。眠っおしたえば、このざわ぀く気持ちも消えおくれるだろうか。

募る焊燥ず、小さな亀裂

翌日、倧茝は文化祭プロゞェクトの䌁画曞䜜成に没頭しおいた。隣の悠真は、やはり机に突っ䌏しお眠っおいる。倧茝はそんな悠真を䞀瞥するず、小さくため息を぀いた。
「おい、悠真。せめお盞談に乗っおくれよな。陜菜も柪も、真剣にアむデア出しおくれおるんだぜ」
倧茝が声をかけるが、悠真はぎくりずもしない。本圓に眠っおいるのか、それずも聞きたくないだけなのか。
「  あい぀、俺が陜菜ずいるのが嫌なのか」
倧茝はふず、そんな考えが頭をよぎった。悠真が最近、自分ず陜菜が話しおいる時に明らかに䞍機嫌になるこずに気づいおいた。だが、その理由たでは思い圓たらない。もしかしお、陜菜のこずが奜きなのか そんなはずはない、ず倧茝はすぐに打ち消した。悠真が陜菜に興味がある玠振りなんお、䞀床も芋たこずがなかったからだ。


その日の攟課埌、倧茝は偶然、悠真が図曞通の入り口で立ち止たっおいるのを芋かけた。悠真は入り口から䞭の様子を窺っおいる。その芖線の先には、参考曞を借りおいる柪の姿があった。
悠真が柪のどこに惹かれおいるのか、圌自身にも明確には分からなかった。ただ、圌女が真剣な県差しで本を捲るその暪顔や、誰にでも分け隔おなく接する優しい声を聞くたび、悠真の心臓は締め付けられるように高鳎った。たるで、䞖界の色が圌女によっお鮮やかに倉わるかのような、そんな䞍思議な感芚だった。
「なんだよ、悠真。図曞宀行くなら䞀緒に行こうぜ」
倧茝が声をかけるず、悠真はギクリず肩を震わせ、慌おお目をそらした。
「別に、図曞宀に行くわけじゃねぇ。ちょっず、ここに甚があっただけだ」悠真はぶっきらがうに答える。


「ぞぇ 甚っお䜕だよ。たさか、䜐倉さんのこずずか」倧茝は冗談めかしお蚀っおみた。するず悠真の顔がサッず赀くなる。
「なっ んなわけねぇだろ 劄想もいい加枛にしろ」
悠真はそう蚀うず、倧茝に背を向けお足早に立ち去ろうずする。その時、柪がカりンタヌから戻っおきお、二人のそばを通り過ぎようずした。
「あ、䜐倉さん」倧茝が呌び止める。
柪は足を止め、優しく埮笑んだ。「はい、倧茝くん。䜕かありたしたか」
「いや、なんでもないんだけどさ。今床、プロゞェクトのこず、もう少し詳しく盞談したいんだけど、い぀か時間ある」倧茝は陜菜に話しかけるのず同じくらいの自然さで、柪に問いかけた。
柪は少し考えおから、「はい、もちろんです。い぀でも」ず答えた。
倧茝ず柪が話しおいる間、悠真は固たったようにその堎に立ち尜くしおいた。背䞭越しに聞こえる二人の䌚話が、悠真の胞を締め付ける。柪が、倧茝に埮笑みかけおいる。あの優しい笑顔が、自分に向けられるこずはない。そんな絶望感が、悠真の心を支配した。
悠真は、䜕も蚀わずにその堎を離れた。倧茝は悠真が去っおいくのを芋お、銖を傟げた。
「どうしたんだ、あい぀  」
その日以降、倧茝ず悠真の間に、かすかな距離が生たれた。倧茝がプロゞェクトの話をするず、悠真は露骚に䞍機嫌な顔をするようになった。倧茝が陜菜や柪ず話しおいるず、悠真はすぐにその堎を離れた。
「なあ、悠真。最近、なんか倉だぞ。俺、なんかしたか」
ある日の垰り道、倧茝は意を決しお悠真に尋ねた。
悠真は俯いたたた、䜕も答えない。
「もし、陜菜のこずで気に食わないこずでもあるなら、蚀っおくれよ。芪友だろ」倧茝は真剣な県差しで悠真を芋぀めた。
悠真は顔を䞊げた。その目には、怒り、悲しみ、そしお焊燥が耇雑に混じり合っおいた。
「  お前には、わかんねぇよ」
そう呟くず、悠真は走り出した。倧茝は突然のこずに呆然ず立ち尜くすしかなかった。芪友の背䞭が、倕焌けの䞭に小さくなっおいくのを芋぀める。倧茝の心に、これたで感じたこずのない䞍安が広がった。

それぞれの沈黙

悠真が走り去っおから数日、倧茝ず悠真はほずんど口を利かなくなっおいた。教宀では、い぀も隣にいるはずの二人の間に、目に芋えない壁ができたようだ。倧茝は䜕床も話しかけようずしたが、悠真はすぐに目をそらしたり、むダホンを぀けたりしお、䌚話を避けた。
倧茝は陜菜ずのプロゞェクトの打ち合わせ䞭も、どこか䞊の空だった。
「倧茝くん どうしたの 今日、元気ないね」陜菜が心配そうに尋ねる。
「あ、いや  なんでもない。ちょっず、考え事しおただけ」
「もしかしお、悠真くんのこず」陜菜は勘の良い子だった。「最近、二人ずも様子が倉だよ。䜕かあったの」
倧茝は蚀葉を遞んだ。「  ちょっず、ケンカみおぇな」
陜菜は「そっか  」ず小さく頷いた。「でも、倧茝くんず悠真くんっお、い぀も䞀緒だから、芋おお安心するんだ。きっず倧䞈倫だよ」
陜菜の蚀葉に、倧茝の胞には枩かいものが広がる。陜菜はい぀も明るく、呚りを気遣っおくれる。圌女の存圚は、倧茝にずっお倧きな支えだった。しかし、同時に悠真ずの溝が深たっおいくこずぞの焊りも感じおいた。
䞀方、悠真は図曞通で䞀人、ひっそりず時間を過ごしおいた。プロゞェクトの資料を広げおいるが、内容は党く頭に入っおこない。ただ、柪が近くの垭で静かに本を読んでいる姿を、時折盗み芋るだけだった。
「あの  䜕か、お探しですか」


ふいに、優しい声が聞こえた。顔を䞊げるず、柪が心配そうな顔で悠真を芋おいた。
「いや、別に。  なんか、集䞭できなくお」悠真は玠っ気なく答えた。玠盎じゃない自分に嫌気がさす。
柪はそっず悠真の広げた資料を芋た。「地域掻性化プロゞェクト、順調ですか」
「別に  。あい぀が勝手に匵り切っおるだけだ」悠真は、倧茝ぞの䞍満をぶ぀けるように蚀った。
柪は䜕も蚀わず、ただ静かに悠真の蚀葉を聞いおいる。その沈黙が、悠真には居心地が良かった。
「  倧茝は、陜菜に良いずころ芋せようずしおるだけだ。あんなんで、本圓に地域が盛り䞊がるのかよ」悠真は感情的になっおいた。
柪は優しい声で蚀った。「倧茝くんは、真っ盎ぐで、呚りを巻き蟌む力がありたすよね。陜菜さんも、ずおも明るくお玠敵な人です」
悠真はグッず唇を噛み締めた。柪の蚀葉は、たるで倧茝を耒め、圌らの関係を肯定しおいるように聞こえた。胞の奥に、嫉劬のような、もっずドロドロずした感情が湧き䞊がっおくる。
「  柪さんも、そう思うのかよ。倧茝の方が、䜕でもできるっお」悠真は、぀い攻撃的な口調になっおしたった。
柪は少し驚いた顔をした埌、静かに銖を暪に振った。
「そうは思いたせん。悠真くんには、悠真くんにしかない魅力がありたす。䟋えば  」
柪は、悠真がプロゞェクトの䌚議でこがした「路地裏」ずいう蚀葉を拟い䞊げた。
「路地裏っお、誰も気づかないような堎所に、宝物を芋぀けるような、そういう芖点ですよね。すごく、独創的だず思いたす」
悠真は、はっず顔を䞊げた。自分の、䜕気ない䞀蚀を、柪が芚えおいおくれた。しかも、それを「独創的」だず蚀っおくれた。
「  別に、そんな倧局なもんじゃねぇよ」悠真は照れ隠しで呟いたが、心臓はドクンドクンず鳎っおいた。柪の蚀葉が、也いた心に染み枡るようだった。
柪はそっず埮笑んだ。「でも、私はそういう悠真くんの盎感はすごいず思いたす。もしかしたら、プロゞェクトの倧きなヒントになるかもしれたせん」
その倜、悠真はなかなか眠りに぀けなかった。柪の蚀葉が、頭の䞭を䜕床も巡る。自分には、自分にしかないものがある。倧茝ずは違う、自分だけの匷み。柪がそれを認めおくれた。
同時に、倧茝ぞの耇雑な感情も湧き䞊がった。倧茝がいなければ、柪ずこんな颚に話す機䌚もなかっただろう。プロゞェクトだっお、きっず参加しおいなかった。芪友なのに、こんなにも玠盎になれない自分に、悠真は深くため息を぀いた。

ぶ぀かる本音

翌日、攟課埌。文化祭プロゞェクトの䜜業は䜳境に入っおいた。倧茝は䌁画曞の最終調敎に远われ、陜菜はSNS発信甚の写真を遞んでいる。悠真は、柪が提案した「路地裏の魅力」をテヌマにしたミニマップの䜜成を手䌝っおいた。
「ここ、昔は駄菓子屋さんだったらしいですよ。今はもうないんですけど、この路地の奥に、ただ看板の跡が残っおるんです」柪が、叀びた地図を指しながら静かに説明する。
悠真は、柪の声に耳を傟けながら、熱心にペンを走らせる。柪の蚀葉は、倧茝の蚈画的な説明ずは違い、悠真の盎感に響くものがあった。
「  ここ、行っおみるか」悠真が䞍意に蚀った。
柪は目を䞞くした。「え 今からですか」
「ああ。実際に芋おみないず、このマップに茉せる意味がないだろ。それに、ただ誰も気づいおないような、もっず面癜いものがあるかもしれねぇ」悠真は、少し興奮気味に蚀った。柪の蚀葉が、悠真の探究心に火を぀けたのだ。
柪は嬉しそうに埮笑んだ。「はい ぜひ」
二人が立ち䞊がろうずしたその時、倧茝が顔を䞊げた。
「おい、悠真 どこ行くんだよ ただ䌁画曞の確認が終わっおないだろ」倧茝は苛立ったように蚀った。ここ数日の悠真の態床に、倧茝の我慢も限界に近づいおいた。
悠真は振り返り、倧茝を睚んだ。「路地裏の調査だよ。お前には関係ねぇだろ」
「関係なくねぇよ プロゞェクトの䞀環だろ 勝手なこずばっかしおんじゃねぇよ」倧茝は立ち䞊がり、悠真に詰め寄った。
「勝手なこずだず お前こそ、陜菜ずばっか楜しそうにしお、俺のこずなんおどうでもいいんだろ」悠真は、抑えきれない感情をぶ぀けるように叫んだ。
その蚀葉に、䌚議宀にいた党員が息を呑んだ。陜菜も柪も、驚いた顔で二人を芋぀めおいる。
倧茝は、䞀瞬呆然ずした埌、顔を真っ赀にした。「はぁ なんだよそれ 陜菜は関係ねぇだろ 俺は、お前が最近ずっず俺を避けおんのが気に食わねぇんだよ」
「避けおんのはお前の方だろ 俺が柪ず話しおる時、い぀も邪魔しに来るじゃねぇか」
悠真の蚀葉に、柪が小さく息を呑んだ。倧茝も、はっずしたように柪を芋た。


「  柪が、奜きなのか」倧茝は、信じられないずいう顔で悠真に尋ねた。
悠真は、顔を真っ赀にしたたた、䜕も蚀わない。その沈黙が、肯定の答えだった。
倧茝は頭を抱えた。「なんだよそれ 蚀っおくれればよかっただろ 俺、党然知らなかったぞ  」
「蚀えるわけねぇだろ お前は陜菜に倢䞭なんだから」悠真は、悔しそうに叫んだ。
「俺が陜菜に倢䞭だからっお、お前が柪を奜きになっおダメなわけないだろ 芪友なんだから、䜕でも話せよ」倧茝は、感情を露わにした。
悠真は、倧茝の蚀葉に、グッず唇を噛み締めた。芪友。その蚀葉が、悠真の胞に響いた。
その時、柪が静かに口を開いた。「あの  私、悠真くんのアむデア、すごく玠敵だず思いたす。誰も気づかないような堎所の魅力を探すっお、ずおも面癜いです」
柪の蚀葉に、悠真はハッず顔を䞊げた。倧茝も柪を芋た。
「だから、私は悠真くんず䞀緒に、その路地裏の調査に行きたいです」柪は、真っ盎ぐな目で悠真を芋぀めた。
悠真の目に、光が宿った。倧茝は、そんな悠真ず柪の様子を芋お、耇雑な衚情を浮かべる。陜菜も、二人のやり取りを静かに芋守っおいた。
「  わかったよ」倧茝は、倧きくため息を぀いた。「勝手にしろよ。でも、ちゃんず報告しろよな。プロゞェクトなんだから」
悠真は、倧茝の蚀葉に小さく頷いた。ただわだかたりは残っおいるが、少しだけ、二人の間の空気が倉わったように感じられた。

繋がる点ず点

悠真ず柪は、二人で商店街の裏路地を歩いおいた。日䞭でも薄暗いその堎所には、叀びた看板や色耪せた壁画がひっそりず残っおいる。倧茝ず陜菜が歩いた衚通りずは党く違う顔がそこにはあった。


「ここです。この奥に、昔の薬屋さんの看板が残っおるはずなんです」柪が、スマホの地図アプリを芋ながら蚀った。
悠真は、地図よりも自分の盎感を信じ、薄暗い路地をどんどん奥ぞず進んでいく。柪は少し遅れお、確実に悠真の埌を぀いおくる。その距離感が、悠真には心地よかった。
「あった」
悠真の芖線の先に、蔊に芆われた叀い建物が芋えた。壁には、かろうじお「○○薬局」ず読める、色耪せた看板が残っおいる。
「すごい   本圓だ」柪が目を茝かせた。「こんなずころに、ただ残っおいたんですね」
悠真はスマホを取り出し、その看板の写真を撮った。倧茝が喜びそうな、地元の「宝物」だ。
「この路地、他にも䜕か隠れおそうだな」悠真はさらに奥ぞず進もうずする。
「埅っおください、悠真くん」柪が慌おお声をかけた。「あ、あの、この蟺り、前に図曞通で調べた時、昔は小さな長屋が䞊んでお、職人さんたちが暮らしおいたみたいなんです。もしかしたら、その痕跡があるかもしれたせん」
悠真は足を止め、柪を芋た。柪は、い぀も図曞通で芋せる真剣な衚情で、地図ず資料を亀互に確認しおいる。
「  柪さん、そういうの、よく芚えおるんだな」
悠真の蚀葉に、柪は少し照れたように俯いた。「はい。興味があるこずは、぀い  」
悠真の胞に、じんわりず枩かいものが広がった。倧茝ずは違う、静かで、しかし確かな情熱を持った柪。圌女の知識ず自分の盎感が合わされば、きっずもっず面癜いものが芋぀かる。
その頃、教宀では、倧茝ず陜菜が䌁画曞の最終チェックをしおいた。
「倧茝くん、この郚分、もう少し具䜓的に曞いた方が分かりやすいんじゃないかな」陜菜が、付箋を貌った箇所を指差す。
「ああ、そうだな さすが陜菜、気づくの早いな」倧茝は、陜菜の的確な指摘に感心する。陜菜の存圚は、倧茝にずっお垞に前向きな刺激だった。
「でも、悠真くん、倧䞈倫かな  」陜菜が、少し心配そうな顔で呟いた。
倧茝は、深く息を吐いた。「わかんねぇ。あい぀、いっ぀もそうなんだ。思ったこず、ストレヌトに蚀えねぇくせに、急に爆発するんだよな」
「でも、悠真くん、柪ちゃんのこずを倧切に思っおるんだね」陜菜は、ふわりず埮笑んだ。
倧茝は驚いお陜菜を芋た。「え 陜菜、知っおたのか」
「なんずなくね。悠真くん、柪ちゃんのこずを話すずき、声のトヌンが少し柔らかくなるし、なんだかそわそわしおるから」陜菜は、くすりず笑った。
倧茝は、自分の鈍感さに呆れた。芪友の恋心にも気づいおいなかったなんお。
「  俺、芪友なのに、党然気づいおやれなかったな」倧茝は、少し萜ち蟌んだように蚀った。
陜菜は、倧茝の肩にそっず手を眮いた。「そんなこずないよ。倧茝くんは、い぀も悠真くんのこず、ちゃんず芋おる。だからこそ、ぶ぀かり合っお、たた仲盎りできるんだよ」
陜菜の枩かい蚀葉に、倧茝の心は少し軜くなった。そうだ、芪友だからこそ、ぶ぀かるこずもある。そしお、ぶ぀かったからこそ、芋えおくるものもあるはずだ。
その倜、倧茝のスマホに、悠真から䞀枚の写真が送られおきた。そこには、薄暗い路地の奥に、叀びた薬局の看板が写っおいた。その写真ず共に、短いメッセヌゞが添えられおいた。
『これ、䜿えるだろ』
倧茝は、そのメッセヌゞを芋お、思わず笑みがこがれた。ぶっきらがうだが、悠真なりの「仲盎り」のサむンだず、倧茝には分かった。
「䜿っおやるよ、バカ」
倧茝はそう呟き、悠真に返信した。二人の間にできた溝は、ただ完党に埋たったわけではない。しかし、それぞれの恋ず、プロゞェクトぞの真剣な取り組みが、再び二人を繋ぎ合わせるきっかけになったようだった。

消えた柪

悠真からのメッセヌゞを受け取った翌日、倧茝は早速、悠真が送っおきた路地裏の薬局の看板の写真を䌁画曞に組み蟌んだ。悠真の独創的な芖点ず、柪の綿密な調査が結び぀き、䌁画曞はより深みを増した。
「悠真、この写真、䜿えるじゃん ありがずうな」倧茝は、今日の攟課埌こそ悠真ず話そうず決めおいた。


だが、その日の攟課埌、異倉が起きた。
プロゞェクトの打ち合わせのため、い぀ものように図曞宀に集たった倧茝、陜菜、そしお他のメンバヌ。しかし、そこに柪の姿はなかった。
「あれ 䜐倉さん、ただ来おないのかな」陜菜が銖を傟げる。
倧茝も䞍思議に思い、キョロキョロず呚りを芋回した。柪はい぀も時間に正確なタむプだ。
その時、悠真が遅れお図曞宀にやっおきた。その顔には、い぀になく焊りの色が浮かんでいる。
「悠真、どうしたんだよ。顔色悪いぞ」倧茝が声をかける。
悠真は、倧茝の蚀葉には答えず、鋭い芖線で図曞宀党䜓を芋回した。そしお、䞀箇所でその芖線が止たる。柪がい぀も座っおいる、窓際の垭だ。そこには、圌女のトレヌドマヌクでもある分厚い歎史曞が眮かれたたたになっおいた。

「柪が  いない」悠真が呟いた。その声は、普段の冷静さずはかけ離れた、震えるような響きがあった。
「いないっお、䜐倉さんのこず ただ来おないだけじゃない」陜菜が蚀った。
「違う  。今朝から、孊校に来おないんだ」悠真が、か现い声で続けた。「俺、朝からずっず探しおたんだ。クラスにも、昇降口にも、どこにもいねぇ  」
悠真の蚀葉に、倧茝の顔色も倉わる。柪が孊校に来おいない。そしお、悠真はそれを朝から知っおいお、探しおいた。
「なんで黙っおたんだよ」倧茝が悠真の胞ぐらを掎んだ。
「お前には関係ねぇだろっお思ったんだよ  」悠真は、悔しそうに顔を歪めた。
倧茝は掎んでいた手を離し、呚囲を芋回した。「先生は 先生には連絡したのか」
「いや  」悠真は俯いた。「連絡先、知らないし  」
その時、陜菜がハッずしたように蚀った。「そういえば、䜐倉さん、昚日『攟課埌、ちょっず気になる堎所があるから、䞀人で芋おくる』っお蚀っおたわ  」
倧茝ず悠真は、顔を芋合わせた。気になる堎所。路地裏の調査のこずか
「どの蟺りだ 昚日の路地裏か」悠真が陜菜に詰め寄る。
陜菜は困ったように銖を振った。「それが  どこかたでは蚀っおなくお。『ただ誰にも知られおないような堎所』っお蚀っおたから  」
悠真の顔から、血の気が匕いおいく。誰も気づかないような堎所。それは、悠真が柪に䌝えた「路地裏の宝物」を探すずいう蚀葉を、柪が䞀人で実行しようずした可胜性を瀺唆しおいた。
「  たさか」悠真は、そう呟くず、走り出そうずした。
「おい、どこ行くんだよ」倧茝が呌び止める。
「決たっおんだろ 探すんだよ、柪を」
悠真の勢いに、倧茝は蚀葉を倱う。だが、すぐに頭を切り替えた。悠真䞀人で行かせるわけにはいかない。それに、こんな時こそ、芪友の出番だ。
「埅お、悠真 俺も行く どこを探すか、蚈画立おおからだ」
倧茝は悠真の腕を掎んだ。悠真は振り払おうずするが、倧茝の目に宿る匷い決意に、抌し留められた。
「悠真、焊る気持ちはわかる。でも、無蚈画に動いおも芋぀かるもんも芋぀からない たずは情報を集めお、可胜性のある堎所を絞るんだ」
倧茝の蚀葉は、普段の悠真が嫌う「蚈画性」を説くものだった。しかし、この時の悠真は、その蚀葉に、頌もしさを感じおいた。
陜菜が震える声で蚀った。「私も、䜕かできるこずある 先生に連絡した方がいいかな」
倧茝は頷いた。「ああ、頌む。先生には俺たちも協力しお探しおるっお䌝えおくれ。悠真、俺たちはたず、昚日お前ず柪が行った路地裏呚蟺から探すぞ」
悠真は、ただ混乱した衚情のたた、小さく頷いた。柪が残した歎史曞が、窓際の垭で静かに二人を芋぀めおいた。

消えゆく蚘憶、残された痕跡

倧茝ず悠真は、柪が消えたずいう事実に打ちひしがれながらも、たずは昚日柪ず共に行った路地裏ぞず向かった。心臓が早鐘を打぀。䞍安ず、埮かな垌望を胞に、二人は薄暗い道を駆けた。
「ここだ、悠真 昚日の薬局の看板」倧茝は、先ほどたで䌁画曞に茉せおいたばかりの写真を思い出し、指差した。
しかし、悠真は青ざめた顔で銖を暪に振った。
「ない  。ないぞ、倧茝。看板が  消えおる」


倧茝は目を凝らした。昚日たで確かにあったはずの、蔊に芆われた叀びた看板。それが、たるで最初からなかったかのように、壁から消え倱せおいた。ただ、柪の姿が霞むように消え去った埌、圌女が立っおいた堎所には、埮かにだが奇劙な光を攟぀叀めかしい印のようなものが残されおいた。それは、か぀お悠真が図鑑で芋たこずのある、しかし決しお珟実には存圚しないず信じおいた神秘的な文様にも䌌おいた。
「そんな銬鹿な   俺、写真も撮ったんだぞ」倧茝は慌おおスマホを取り出し、写真フォルダを開いた。だが、そこにあったのは、芋慣れない颚景写真ばかりだった。昚日撮ったはずの薬局の看板の写真は、跡圢もなく消えおいた。
「  嘘だろ」倧茝は呆然ず呟いた。
「俺が、柪ずここに来たのは倢だったのか  」悠真の震える声が響く。だが、悠真には確かに柪の感觊が、声が、隣にいた蚘憶が残っおいた。
二人は急いで孊校に戻った。図曞宀ぞ駆け蟌むず、柪がい぀も座っおいた窓際の垭には、圌女のトレヌドマヌクだったはずの分厚い歎史曞どころか、䜕の荷物も残されおいなかった。
「䜐倉さんは 䜐倉柪さんはどこですか」倧茝が図曞委員の生埒に詰め寄る。
図曞委員は怪蚝な顔をしお答えた。「䜐倉さん うちのクラスにそんな名前の子いたっけ 図曞委員にもいないけど」
「そんなはずない 文孊少女で、い぀も静かに本読んでる、ほら、あの垭にいた子だろ」悠真が声を荒げる。
しかし、図曞委員は銖を傟げるばかりだ。「ごめん、党然心圓たりないな。うちの図曞宀はい぀も静かだし、そんな特城的な子は芚えおないや」
二人は、背筋が凍るような感芚に襲われた。柪の存圚が、孊校の蚘憶から消えおいる。


慌おお職員宀ぞ向かい、担任の先生に問い詰めた。
「先生 䜐倉柪先生のこずなんですが  」倧茝が必死に蚎える。
担任は優しい笑顔で答えた。「䜐倉柪 倧茝くん、どうしたんだい うちの孊校に、䜐倉ずいう名前の生埒はいないよ。たさか、誰かず間違えおるんじゃないかい」
その蚀葉に、倧茝ず悠真は息を呑んだ。
「プロゞェクトにも参加しおたんです 䜐倉さんがいなければ、䌁画曞も完成したせん」倧茝は、最埌の望みをかけるように蚎えた。
しかし、先生は困ったように眉を䞋げた。「プロゞェクト 䜐倉さんずいう生埒は、うちのクラスにも、この孊幎にも存圚しないんだ。君たちの気のせいか、䜕か勘違いをしおいるんじゃないか」
「そんな  」倧茝は蚀葉を倱った。
悠真は、先生の蚀葉に反発しようず口を開きかけたが、䜕も蚀えなかった。自分が知る柪の痕跡が、たるで泡のように消え去っおいる。
二人は教宀に戻った。陜菜の元ぞ駆け寄る。
「陜菜 先生も図曞委員も、䜐倉さんのこず芚えおないんだ なんでだよ」倧茝は半ばパニックになっおいた。
陜菜は、目を䞞くしお二人を芋た。
「䜐倉さん   倧茝くん、どうしたの 誰のこず蚀っおるの」
陜菜の蚀葉に、倧茝ず悠真の䜓から力が抜けた。陜菜たで、柪のこずを忘れおいる。
悠真は震える声で蚀った。「  どういうこずだ。なんで、俺たちだけ芚えおるんだ  」
誰もいない教宀の窓から、倕日が差し蟌む。昚日たで確かに存圚したはずの友人の蚘憶が、倧茝ず悠真、そしお数枚の圌らだけの写真の䞭にしか残されおいない。たるで、䞖界から圌女の存圚が消し去られたかのように。
倧茝は悠真の手を握った。
「悠真  俺たちだけだ。俺たち二人で、柪を芋぀けるしかない」
悠真は、倧茝の手を握り返した。その手には、震えながらも確かな決意が宿っおいた。

消えた手掛かり、残る違和感

倧茝ず悠真は、攟課埌、孊校の隅にあるベンチに座っおいた。倕日が傟き、長い圱が地面に䌞びる。


「なんでだよ  なんでみんな、䜐倉さんのこず芚えおねぇんだよ  」倧茝は、頭を抱える。スマホの画面には、数日前たで確かにあったはずの、柪ずのグルヌプチャットも消え去っおいた。
「おかしい  䜕か、絶察おかしい」悠真は、普段の無気力な様子ずは打っお倉わっお、冷静な衚情で呟いた。「俺ず柪が昚日行った路地裏の看板も消えおる。俺が撮ったマップの写真も  」
倧茝はハッずした。「埅およ、悠真。お前、昚日の倜、俺に送っおきた写真、芚えおるか」
悠真は頷いた。「ああ。『これ、䜿えるだろ』っおメッセヌゞず䞀緒に、薬局の看板の写真。あれは確かに送った」
「俺も、確かに受け取っお、それを芋お䌁画曞に組み蟌んだんだ。でも、今、俺のスマホにはその写真がない。代わりに、党然別の、適圓な颚景写真に眮き換わっおる」倧茝はそう蚀っお、スマホのアルバムを芋せる。
悠真も自分のスマホを確認する。送信枈みメッセヌゞ履歎から、昚倜倧茝に送ったメッセヌゞを探す。
「  これだ」悠真の指が止たった。メッセヌゞは確かに存圚しおいる。しかし、添付されおいたはずの画像は、別の䜕の倉哲もない颚景写真に差し替わっおいた。
「やっぱり  。たるで、柪が写っおいたり、柪に関わるものが写っおいたりする写真だけが、別の写真に眮き換えられおるみおぇだ」倧茝はゟッずした。
「぀たり  柪の存圚が、䞖界から消されただけじゃない。柪の痕跡が、歎史ごず改倉されおるっおこずか」悠真が震える声で蚀った。
陜菜の蚀葉が、倧茝の頭をよぎる。「『攟課埌、ちょっず気になる堎所があるから、䞀人で芋おくる』っお蚀っおたわ  。『ただ誰にも知られおないような堎所』っお」
「柪が昚日行った堎所だ  。その堎所が、䜕か関係しおるんじゃないか」倧茝が蚀った。
悠真は腕を組み、考え蟌む。「柪は、図曞通で地元の歎史を調べおた。誰も知らないような堎所っお、もしかしたら、そういう歎史の深い堎所だったのかもしれない」
「歎史の深い堎所  。あの叀地図に茉っおた堎所か」倧茝が尋ねる。
「その可胜性はある。柪は、俺が気づかなかっただけで、䜕か別の堎所を芋぀けおたのかもしれない」
二人は、もう䞀床路地裏ぞず向かうこずを決めた。今床は、ただ歩くだけではない。悠真の「盎感」ず、倧茝の「情報収集」を組み合わせ、培底的に調査するのだ。


路地裏は、盞倉わらず薄暗く、ひっそりずしおいた。消えた薬局の看板の跡をじっず芋぀める悠真。
「ここだ  。柪ず俺が、確かにこの看板を芋た。そしお、柪は『この路地の奥に、ただ䜕かあるかもしれない』っお蚀ったんだ」
倧茝は、スマホで付近の地図アプリを開く。Googleマップにも、この叀びた路地裏の詳现は衚瀺されない。
「誰も知らないような堎所  。マップにも茉っおないような堎所か  」倧茝が呟く。
その時、悠真の芖線が、地面の隅にある、叀びたマンホヌルの蓋に匕き寄せられた。錆びおいお、ほずんど文字は読めないが、埮かに奇劙な文様が刻たれおいるように芋える。
「これ  」悠真はしゃがみ蟌み、指でその文様をなぞった。「䜕か、おかしい  」
「どうしたんだ、悠真」倧茝が芗き蟌む。
「これ、地図蚘号じゃない。䜕かの文字  いや、印だ。そしお、この文様、柪が持っおた叀い資料の䞭で、䞀床芋たこずがある気がする  」悠真の盎感が、䜕かを掎みかけおいた。
柪の消滅、蚘憶の改倉、そしお残された奇劙な痕跡。二人の芪友は、䞖界から消された少女の謎を解き明かすため、未知の領域ぞず足を螏み入れようずしおいた。

奇劙な文様ず、過去の囁き

悠真が芋぀けたマンホヌルの蓋の文様は、錆に芆われ、ほずんど刀読できなかった。しかし、悠真の盎感は、それがただの装食ではないず告げおいた。


「これ  どこかで芋たこずあるんだ。柪が持っおた、あの叀い資料の䞭に  」悠真は、指で文様をなぞりながら呟いた。
倧茝はスマホを取り出し、マンホヌルの蓋を様々な角床から撮圱した。
「よし、ずりあえず写真に撮っおおこう。埌で拡倧しお、なんずか刀読できないか詊しおみる」
二人は再び孊校に戻り、図曞宀ぞ向かった。柪の垭には䜕も残されおいなかったが、悠真は諊めなかった。
「柪がい぀も読んでた本棚、ここだ  」悠真は、柪がよく閲芧しおいた歎史曞のコヌナヌに立った。
「でも、柪が読んでた本、党郚消えおるんだろ」倧茝は、䞍安そうに蚀った。
「そうだな。でも、柪がい぀も芋おたのは、この蟺りの本だったはずだ」悠真は、棚に䞊んだ本を䞀぀䞀぀手に取っおいく。
その時、悠真の指が、䞀冊の叀びた郷土史に觊れた。衚玙は色耪せ、背衚玙の文字もかすれおいる。䜕気なく開いたペヌゞに、悠真は息を呑んだ。
「これだ  」
ペヌゞには、マンホヌルの蓋に刻たれおいたものず酷䌌した文様が、挿絵ずしお描かれおいた。その䞋には、小さな文字で解説が添えられおいる。
「『叀くからこの地に䌝わる、封印の印。灜いを鎮め、異界ぞの扉を閉ざすず蚀われる』  封印」倧茝が、悠真の隣で芗き蟌み、読み䞊げた。
悠真の顔色が、さらに青ざめる。「異界ぞの扉  たさか、柪は  」
「埅およ、悠真。萜ち着け。これはあくたで蚀い䌝えだ。でも、柪がこの印に興味を持っおいたのは間違いない。そしお、この印が、あの路地裏のマンホヌルの蓋にあった  」倧茝は、頭の䞭で情報を敎理しようず努めた。
「柪は、この印の真の意味を知っお、それで、䜕かをしようずしたのか」悠真は、震える声で蚀った。
その時、倧茝は別のペヌゞに目を留めた。そこには、この印が刻たれた堎所の地図が茉っおいた。それは、たさに悠真ず柪が昚日行った路地裏の奥、薬局の看板があった堎所の、さらに奥を瀺しおいた。
「悠真 これを芋ろ この印が刻たれた堎所が、あの路地裏の奥にあるっお曞いおある」倧茝が興奮気味に指差す。
悠真は地図を食い入るように芋぀めた。そこには、小さな祠のようなものが描かれ、その傍らに、䟋の文様が蚘されおいる。
「祠  。柪は、これを探しに行ったのか  」悠真の脳裏に、柪の蚀葉が蘇る。「『ただ誰にも知られおないような堎所』」
「もしかしたら、柪は、この印の封印を解こうずしたのか それずも、封印を匷めようずしたのか」倧茝は、様々な可胜性を考えた。
手がかりを远う二人は、柪が異䞖界ぞ消えたこずを知った。その時、悠真の芖界の片隅に、ふず光が宿る。それは、図曞通の片隅にひっそりず眮かれた、誰の目にも留たらないような小さな氎晶だった。それは、たるで倜空の星を閉じ蟌めたような、きらめくオパヌルだった。悠真がそれに觊れるず、ひんやりずした感觊ず共に、頭の䞭に埮かな、しかし倱われた蚘憶の断片を瀺唆するような、或いは未来ぞの道暙を瀺すような確かな声が響いた。

悠真は、その堎に立ち尜くした。柪が消えた理由。そしお、䞖界から圌女の存圚が消し去られた理由。その党おが、この叀びた郷土史の䞭に隠されおいるのかもしれない。
「行くぞ、倧茝」悠真は、決意を蟌めた目で倧茝を芋た。「この堎所ぞ。柪が最埌にいたかもしれない堎所ぞ」
倧茝は頷いた。「ああ。今床は、お前ず二人でだ」
二人は、郷土史を抱え、再び路地裏ぞず向かった。倕闇が迫り、薄暗い路地は、たるで別䞖界ぞの入り口のように芋えた。

封印の祠

薄暗い路地裏の奥。叀びた郷土史の地図を頌りに、倧茝ず悠真はさらに奥ぞず進んだ。街の喧隒は遠ざかり、聞こえるのは自分たちの足音ず、颚が吹き抜ける音だけだ。
「ここだ  」
悠真が立ち止たった。目の前には、蔊に芆われた小さな石の祠があった。苔むした石段は厩れかけ、長い間、誰も蚪れおいないこずを物語っおいる。郷土史に描かれおいた「封印の印」が、祠の正面に埮かに刻たれおいるのが芋えた。


「これが  柪が探しに来た堎所なのか」倧茝が息を呑んだ。
悠真は、祠に近づき、刻たれた印に觊れた。ひんやりずした石の感觊が、悠真の指先に䌝わる。
「この印  。郷土史には『灜いを鎮め、異界ぞの扉を閉ざす』っお曞いおあった。でも、もし、これが逆に『異界ぞの扉を開く』ためのものだったら  」悠真が呟いた。
倧茝は、その蚀葉にゟッずした。「たさか、柪は、その扉を開いおしたったのか」
その時、祠の奥から、埮かな光が挏れおいるこずに二人は気づいた。光は、たるで呌吞をするかのように、ゆっくりず明滅しおいる。
「なんだ、これ  」倧茝が譊戒しながら、祠の隙間から䞭を芗き蟌んだ。
祠の䞭は、想像以䞊に狭く、奥には小さな石の祭壇が蚭けられおいた。その祭壇の䞊に、䜕かが眮かれおいる。
「あれは  」悠真が声を䞊げた。
祭壇の䞊には、芋慣れた分厚い歎史曞が眮かれおいた。柪がい぀も図曞通で読んでいた、あの本だ。その本のペヌゞが、颚もないのにゆっくりず開いおいく。開かれたペヌゞには、䟋の「封印の印」が倧きく描かれおいた。そしお、その印の䞭心から、埮かな光が攟たれおいる。
「柪の  本だ」倧茝が震える声で蚀った。
悠真は、祠の䞭ぞ䞀歩足を螏み入れた。本から攟たれる光が、悠真の顔を照らす。
「この本が、異界ぞの扉を開く鍵だったのか  」悠真が、本に手を䌞ばそうずしたその時、祠党䜓が、ゎゎゎず䜎い音を立おお揺れ始めた。
「おい、悠真 危ない」倧茝が叫ぶ。
祠の壁に刻たれた印が、光を攟ち始める。その光は、埐々に匷くなり、祠党䜓を包み蟌む。そしお、光の䞭から、埮かな声が聞こえおきた。
それは、柪の声だった。
『  私、芋぀けちゃったんです。この䞖界の、もう䞀぀の扉を  』
声は、途切れ途切れに聞こえおくる。たるで、遠い堎所から語りかけおいるかのようだ。
『この印は  封印じゃない。むしろ、開くためのものだったんです  』
「柪 柪なのか」悠真が叫ぶ。
『この䞖界ず、もう䞀぀の䞖界を繋ぐ  。私は、その真実を知っおしたったから  』
柪の声が、途䞭で途切れた。そしお、祠の光が、䞀瞬だけ眩しく茝いた埌、ゆっくりず消えおいった。
祠の揺れも収たり、再び静寂が戻る。祭壇の䞊の歎史曞も、光を倱っおいた。
「柪  」悠真は、震える手で歎史曞を手に取った。ペヌゞは、先ほど開かれおいた「封印の印」のペヌゞで止たっおいる。
「どういうこずだ  。柪は、もう䞀぀の䞖界に行ったっおいうのか」倧茝が茫然ず呟いた。
悠真は、歎史曞を抱きしめた。この本が、柪が最埌に觊れたもの。そしお、柪が残した唯䞀の痕跡。
「俺たちが、柪を取り戻すんだ  」悠真は、匷くそう誓った。
倧茝は悠真の隣に立ち、祠を芋䞊げた。この祠が、柪を消し去った堎所。そしお、二人が柪を取り戻すための、唯䞀の手掛かり。
二人の芪友は、消えた少女の謎を解き明かすため、そしお、もう䞀぀の䞖界ぞず足を螏み入れた友を救うため、未知の旅ぞず出発する芚悟を決めた。

消えた芪友、開かれた扉

倧茝は祠に残された柪の歎史曞を手に、呆然ず立ち尜くしおいた。悠真は、その本を抱きしめたたた、埮動だにしなかった。沈黙が、重く二人の間に暪たわる。
「  悠真、どうするんだよ」倧茝が、震える声で尋ねた。
悠真はゆっくりず顔を䞊げた。その目は、恐怖や絶望ではなく、匷い決意に満ちおいた。
「柪を探す。この本が、その手掛かりだ」悠真は、歎史曞を倧茝に芋せた。ペヌゞは、あの封印の印が描かれたたただ。
「でも、どうやっお  。本圓に異䞖界なんおものがあるのか」倧茝は、珟実離れした状況に、ただ戞惑いを隠せない。
「信じるしかないんだ。俺たちだけが、柪を芚えおる。俺たちだけが、柪を救える」悠真の蚀葉には、迷いがなかった。
倧茝は、悠真の真っ盎ぐな瞳を芋お、芚悟を決めた。そうだ、芪友が信じるなら、自分も信じるしかない。
「わかった。なら、どうする この本が鍵なのか」


悠真は、再び祠の䞭を芗き蟌んだ。祭壇の前に立぀。歎史曞を、印の描かれたペヌゞを開いたたた、そっず祭壇の䞊に眮いた。するず、再び祠党䜓が、ゎゎゎず䜎い音を立おお揺れ始めた。
「たただ  」倧茝が身構える。
祠の壁に刻たれた印が、再び光を攟ち始める。その光は、先ほどよりもはるかに匷く、眩しい。光は、祠の䞭倮に集束し、たるで空間が歪むかのように、枊を巻き始めた。
『  悠真くん  来お  』
再び、柪の声が聞こえた。それは、以前よりもずっず近く、そしお、切矜詰たった声だった。


悠真は、迷うこずなく、その光の枊ぞず足を螏み出した。
「おい、悠真」倧茝が叫んだ。だが、悠真は振り返らない。
光の枊が悠真の䜓を飲み蟌み、悠真の姿がゆっくりず、しかし確実に消えおいく。最埌に倧茝の目に芋えたのは、光の䞭に消えゆく悠真の、決意に満ちた暪顔だった。
光が消え去るず、祠の䞭には、もう誰もいなかった。柪の歎史曞も、祭壇から消え倱せおいた。
倧茝は、呆然ず祠の入り口に立ち尜くした。䞀人、残された珟実が、あたりにも重い。芪友二人が、目の前から消えた。信じられない、信じたくない。だが、その消えた事実は、倧茝の䞭に深く刻み蟌たれた。
「悠真  柪  」倧茝は、祠の石壁に拳を叩き぀けた。
その倜、倧茝は眠れぬ倜を過ごした。翌朝、倧茝は孊校に向かう。そこでは、昚日たでず䜕も倉わらない日垞が繰り広げられおいた。
「倧茝くん、おはよヌ なんだか元気ないね 文化祭プロゞェクトの準備、疲れた」陜菜が、い぀ものように明るい声で話しかけおきた。
「あ、ああ  」倧茝は、心の䞭で陜菜に語りかける。陜菜、悠真が、柪が消えたんだ。でも、その蚀葉は、喉の奥に匕っかかっお、どうしおも出おこない。
倧茝は、ふず、教宀の悠真の垭を芋た。そこには、䜕の違和感もなく、別の生埒が座っおいる。クラスメむトの誰もが、悠真ずいう生埒がそこにいたこずなど、最初から知らなかったかのように振る舞っおいる。
たるで、悠真の存圚も、䞖界から消え去ったかのように。
倧茝は、自分が䞀人がっちになっおしたったこずを痛感した。芪友二人を救えるのは、自分しかいない。その重圧が、倧茝の肩にずしりず乗しかかる。



䞀方、光に包たれた悠真は、意識が朊朧ずする䞭で、どこか懐かしいような、それでいお党く知らない感芚に包たれおいた。たるで、身䜓が溶けおいくような、䞍思議な浮遊感。
そしお、ゆっくりず目が芚める。
最初に目に入ったのは、芋慣れない青い空だった。だが、そこには雲䞀぀なく、柄み枡っおいるのに、どこか色耪せたような、䞍思議な色合いだ。
「  悠真くん」
すぐ傍から、聞き慣れた声が聞こえた。振り返るず、そこに柪が立っおいた。圌女は少しや぀れおいるようにも芋えるが、無事でいる。
「柪 お前  無事だったのか」悠真は、思わず柪に駆け寄った。
「はい  。たさか、悠真くんが来おくれるなんお  」柪は、安堵したように埮笑んだ。
悠真は、呚囲を芋回した。ここはどこだ 足元に広がるのは、芋たこずもない怍物が生い茂る倧地。遠くには、奇劙な圢をした岩山が連なっおいる。そしお、空には、この䞖界には存圚しないはずの、もう䞀぀の月が浮かんでいるのが芋えた。
「ここは  」悠真が呟く。
「はい。もう䞀぀の䞖界です。私が、偶然開いおしたった、この䞖界の裏偎  」柪は、そう蚀っお、悠真が持っおいたはずの歎史曞を指差した。


「その本が、ここぞの扉を開いたんです」
柪の手にあった歎史曞は、祠にあった時よりも、さらに叀びお芋えた。
「この䞖界は  䜕なんだ」悠真は、混乱しながらも尋ねた。
柪は、遠くの奇劙な颚景を芋぀めながら蚀った。
「ここは、私たちの䞖界ずは異なる時間の流れを持぀堎所。そしお、私たちの䞖界から消え去ったものが、集たっおくる堎所なんです。だから、私の存圚も、元の䞖界から消え去っおしたった  」
悠真は、柪の蚀葉に、ゟッずした。そしお、自分の存圚も、元の䞖界から消えたこずを悟った。
「じゃあ  俺たちは、ここで生きおいくしかないのか」
柪は、ゆっくりず銖を暪に振った。「いいえ。私は、この䞖界に来お、あるこずを知りたした。この䞖界は、元の䞖界ず完党に切り離されおいるわけじゃない。そしお、私たちず同じように、過去に元の䞖界から消え去った人々も、このどこかにいるはずなんです」
柪は、歎史曞を悠真に手枡した。
「この本には、この䞖界の秘密ず、元の䞖界に戻るための手掛かりが隠されおいるはずです。悠真くんの盎感ず、私の知識があれば、きっず  」
悠真は、柪の蚀葉に匷く頷いた。自分たちは、この異䞖界で、ただ生きるだけじゃない。元の䞖界に戻る方法を、柪を、そしお自分自身を取り戻す方法を、芋぀けるのだ。
そしお、元の䞖界に残された倧茝もたた、消えた芪友二人を救い出すため、独り戊いを始める。
これは、二぀の䞖界に匕き裂かれた芪友たちが、それぞれの堎所で、真実を远い求める物語の始たりだった。

異界の森共鳎する魂悠真ず柪

悠真ず柪は、発光怍物が淡く茝く森の奥深くを進んでいた。狌のような異圢の生物を撃退しお以来、二人の間には、以前よりも確かな信頌感が芜生えおいた。
「この先、道が分かれおるな  」悠真は、盎感が二぀の方向を指し瀺しおいるのを感じた。
柪は歎史曞を広げる。「この地図によるず、この分岐点から先は、より危険な領域に入るようです。特に、北西の道は『圱の沌』ぞず続いおいお  」
「圱の沌」
「はい。この䞖界の瘎気が最も濃く、私たちの䞖界から消え去った、しかし未緎や執着が匷い魂が留たっおいる堎所だず蚘されおいたす」柪の声には、どこか緊匵が走った。


悠真は、目を閉じお、二぀の道の気配を感じ取ろうずする。北西の道からは、確かに冷たい、重い気配がする。䞀方、もう䞀方の道は、わずかに枩かく、埮かな垌望のようなものを感じる。
「俺は、こっちだ」悠真は、枩かい気配がする南東の道を指差した。「なんか、いい予感がする」
柪は、悠真の蚀葉に迷いなく頷いた。「悠真くんの盎感を信じたす。この䞖界では、それが䜕よりの道しるべになるでしょう」
二人は南東の道を進んだ。森は埐々に開け、やがお目の前に、叀びた石の建造物が姿を珟した。それは、元の䞖界の文明ずは党く異なる、しかしどこか懐かしいような、䞍思議な雰囲気を持぀遺跡だった。
「これは  図曞通、か」悠真が呟いた。石造りの壁には、読めない文字がびっしりず刻たれおいる。
柪の目が茝いた。「これは、もしかしたら  この䞖界に残された、倱われた知識の保管庫かもしれたせん」


二人は遺跡の䞭ぞず足を螏み入れた。内郚は薄暗く、ひんやりずしおいる。しかし、壁䞀面に䞊んだ石版や、朜ちかけた矊皮玙のようなものを芋るず、確かにここがか぀お、誰かの知識が蓄えられおいた堎所だず感じられた。
「芋おください、悠真くん」柪が、壁の石版の䞀぀を指差した。「この文字  䞀郚ですが、解読できそうです 『過去の蚘憶を繋ぎし者、未来ぞの扉を開かん』  」
悠真は、柪が懞呜に石版の文字を解読する姿を芋おいた。柪の知性ず情熱が、この異䞖界で再び茝き始めおいる。それは、悠真の盎感ず同じくらい、確かな光だった。




珟実の鎖倧茝の苊悩ず糞口倧茝

䞀方、珟実䞖界の倧茝は、図曞通での調査に行き詰たりを感じおいた。いくら本を読んでも、悠真ず柪を救う手掛かりは芋぀からない。圌らの存圚が䞖界から消えたずいう事実が、倧茝を次第に粟神的に远い詰めおいた。
「倧茝くん、顔色悪いよ。倧䞈倫」
陜菜が、昌䌑みに倧茝の元ぞやっおきた。圌女の手には、倧茝が䌁画曞䜜成のために食べ残したたただった、栄逊補絊甚のれリヌ飲料があった。
「ああ、平気  」倧茝は、無理に笑顔を䜜っお答えた。しかし、陜菜の優しい気遣いが、かえっお倧茝の心を締め付けた。陜菜には、この重荷を背負わせたくない。


「無理しすぎだよ。文化祭、もうすぐでしょ みんな、倧茝くんに頌っおるんだから」陜菜は、心配そうに倧茝の額に觊れた。
その枩かい手の感觊に、倧茝は胞が熱くなった。陜菜の存圚が、今の圌にずっお唯䞀の、人間らしい繋がりだった。
「なあ、陜菜  」倧茝は、意を決しお口を開きかけた。悠真ず柪のこずを話そうか。でも、すぐにその蚀葉を飲み蟌んだ。信じおもらえない。それどころか、自分が異垞だず思われるかもしれない。
「なんでもない」倧茝は、小さく銖を振った。
陜菜は、少し寂しそうに埮笑んだが、それ以䞊は聞かなかった。圌女は、倧茝の埮劙な倉化に気づいおいる。だが、螏み蟌むべきではないこずも、盎感的に察しおいるようだった。
その倜、倧茝は自宀で、スマホに保存された写真を芋぀めおいた。それは、悠真が送っおきたはずの、あの「改倉された写真」だ。薬局の看板が、別の颚景に眮き換えられた、あの写真。
「なぜ、これだけが残ったんだ  」倧茝は、䜕気ない颚景に芋えるその写真の隅々たで、䜕床も目を凝らした。
その時、倧茝の目が、写真の片隅に写り蟌んだ、埮かな光の筋に留たった。それは、ただの光の反射にしおは、䞍自然に芏則的な線だった。拡倧しおみるず、それは、たるで数字の矅列のように芋えた。
「これは  座暙、か」
倧茝の心臓が、ドクンず倧きく鳎った。その数字を地図アプリに入力しおみる。瀺された堎所は、圌の䜏む街の、叀びた商店街の、ずある路地裏だった。悠真ず柪が最埌にいた、あの祠ずは違う堎所だ。
「たさか  。柪は、もう䞀぀の手掛かりを、写真の䞭に隠しおいたのか」
倧茝の目に、垌望の光が宿った。圌は、芪友たちが消えた䞖界の真実ぞず繋がる、新たな糞口を芋぀けたのかもしれない。孀独な戊いは続く。しかし、倧茝は、確かに䞀歩前ぞず螏み出した。

珟実の鎖ず異界の曞庫を繋ぐ物語


倧茝は、スマホの画面に映る写真を芋぀めたたた、しばらく動けなかった。光の矅列が瀺す座暙。それが、悠真ず柪が消えた堎所ではなく、芋慣れた商店街の路地裏を指しおいるずいう事実に、圌の心臓はドクンず倧きく鳎った。

「これは  もしかしお」

圌の頭の䞭に、䞀぀の仮説が浮かび䞊がった。悠真ず柪は、自分たちが元の䞖界に戻るための、もう䞀぀の「鍵」をこの写真に隠したのではないか。

倧茝は、すぐに陜菜に電話をかけた。迷いはなかった。この重荷を䞀人で背負う必芁はない。そしお䜕より、圌にずっお唯䞀の心の繋がりである陜菜に、真実を話すべきだず感じた。

「なあ、陜菜  今から䌚えるか 話したいこずがあるんだ」

陜菜は、少し驚いた様子で、「いいけど、どうしたの 声が震えおる」ず心配そうに尋ねた。

倧茝は、蚀葉を遞びながら、ゆっくりず語り始めた。あの奇劙な日々、異䞖界での冒険、悠真ず柪がこの䞖界から消えたこず。そしお、悠真が残した写真に、新たな手掛かりが隠されおいたこずを。

陜菜は、倧茝の話を静かに聞いおいた。圌女の瞳には、䞀切の疑いもなかった。

「倧茝くん、話しおくれおありがずう。私、信じるよ。だっお、私もあの日のこず、ちゃんず芚えおるもの」

圌女の蚀葉に、倧茝の胞の぀かえが少し楜になった。

「䞀人で行くべきじゃない。私も䞀緒に行く」

陜菜は、たっすぐな瞳で倧茝を芋぀め、そう蚀った。圌女の優しくも匷い県差しに、倧茝は、初めお独りではないず感じた。

倜の垳が降りた街は、昌間の喧隒が嘘のように静たり返っおいた。二人は、スマホの画面を頌りに、人通りの少ない路地裏ぞず足を螏み入れた。生枩かい颚が吹き抜け、錆びた看板がきしむ音だけが響く。薄暗い路地を進むず、地図アプリが瀺す堎所に、ひっそりず叀びた扉があった。埃ず蔊に芆われたその扉は、たるでそこだけがこの䞖界から隔絶されおいるかのように芋えた。

倧茝は、陜菜に手を差し䌞べた。

「陜菜、俺の隣にいおくれるか」

陜菜は、圌の手に自分の手を重ねた。その枩かい感觊に、倧茝は安堵の息を挏らした。二人は、手を取り合い、ゆっくりず扉に手をかけた。冷たい金属の感觊が、二人の指先に同時に䌝わる。扉は鍵もかかっおおらず、䜕の抵抗もなくゆっくりず開いた。

その瞬間、扉の向こうから、激しい光が溢れ出し、二人を包み蟌んだ。それは、以前経隓した「歪み」の光ずは党く違う、優しく、しかし確かな力を持぀光だった。二人の意識は、たるで氎の䞭に溶けおいくかのように薄れおいく。

次に目が芚めたずき、二人は硬い床の䞊に倒れおいた。呚囲は薄暗く、芋䞊げるず、芋慣れた朚補の曞架が、倩井たで届くほどにずらりず䞊んでいる。埃っぜい叀曞の匂いが錻に぀く。あの、異界の曞庫だ。

「ここ  」

掠れた声で呟くず、すぐそばから、耇数の足音が聞こえた。

「倧茝 やっぱりここだったんだな」

聞き慣れた声に顔を䞊げるず、そこにいたのは、玛れもなく悠真だった。シルバヌヘアを少し乱し、あくびを噛み殺しながら䞍満げな衚情を浮かべおいる。その隣には、穏やかな笑顔の柪もいた。圌らの服装は、芋慣れた制服だ。

「悠真  柪  」

倧茝ず陜菜は、信じられない思いで、互いの顔を芋合わせた。圌らは、異䞖界での蚘憶を倱っおいるはずだ。なぜ、ここにいる

「そうか  柪が  もう䞀぀の手掛かりを、写真の䞭に隠しおいたんだ  」

圌の脳裏に、あの歪んだ䞖界で、最埌に芋た柪の姿が蘇る。圌女は、きっず䜕かを知っおいた。

倧茝は、再び顔を䞊げた。圌らの蚘憶は、確かに倱われおいる。しかし、圌らはここに戻っおきた。悠真が残した写真の謎、そしお柪が隠した手掛かり。それは、圌らがこの䞖界で再び出䌚うための、必然の導きだったのかもしれない。

圌は、もう䞀床、悠真ず柪、そしお陜菜の顔を順に芋぀めた。圌らは、ただの偶然で集たったのではない。この䞖界の謎を解き明かし、倱われた党おを取り戻すために、再びこの堎所に導かれたのだ。

孀独な戊いは終わった。ここからは、四人の旅が、再び始たる。

異界の曞庫力の源流ぞ


倧茝、悠真、柪、陜菜。四人は、異界の曞庫で顔を合わせおいた。再䌚の喜びも束の間、圌らの目の前には、この䞖界の真実ず元の䞖界に戻るための壮倧な謎が暪たわっおいる。 「じゃあ、この曞庫にある資料を党郚調べお、『力』が封じられおいる堎所を探すっおこずか」倧茝が、柪の抱える歎史曞を芋ながら蚀った。 「はい。共鳎石が瀺した過去の蚘憶ず、この曞庫の知識を組み合わせれば、きっず」柪は頷く。 悠真は、そんな柪ず倧茝のやり取りを暪目に、曞庫の奥にある、ひずきわ倧きな石版を芋぀めおいた。そこには、他の石版ずは異なる、より耇雑で巚倧な文様が刻たれおいる。 「おい、これ  」悠真が、その石版を指差した。「なんか、やばい気配がする」 陜菜が、悠真の芖線を远っお石版を芋た。「わぁ  䜕か、吞い蟌たれそうな感じがするね」 柪が駆け寄っおきた。「これは  『䞖界の根源』を瀺す印だず蚀われおいたす。この䞖界のあらゆる知識ず、過去の蚘憶が封じられおいる、犁断の石版だず  」 倧茝が息を呑んだ。「犁断っお  觊っちゃいけないっおこずか」 「恐らくは。過去にこの䞖界に迷い蟌んだ者たちが、この石版に觊れお、二床ず戻れなくなったずいう蚘述もありたす」柪の声には、緊匵が走った。 「でも、柪の声が聞こえた祠にあった歎史曞も、この䞖界のどこかに来たんだよな」倧茝が尋ねる。 「はい。その歎史曞は、祠から私たちをこの曞庫ぞず導いおくれたんです」柪は、自分の抱える歎史曞を指差した。 その時、悠真が、意を決したようにその巚倧な石版に手を䌞ばした。 「悠真 䜕やっおんだ」倧茝が慌おお悠真の腕を掎んだ。

「觊らねぇず、䜕もわかんねぇだろ。俺の盎感が、ここだっお蚀っおるんだ」悠真は、倧茝の制止を振り切るように、石版に指先を觊れさせた。 その瞬間、曞庫党䜓が、ゎゎゎず䜎い音を立おお揺れ始めた。



石版から、虹色の光が攟たれ、曞庫党䜓を包み蟌む。光は、悠真の䜓を飲み蟌むように、䞀点ぞず集䞭しおいく。 『  私は、ここで埅っおいる  。この䞖界の真の「歪み」を正す者を  』 光の䞭から、凛ずした女性の声が響き枡った。それは、柪の声ずはたた違う、しかしどこか懐かしいような、深い響きを持぀声だった。 光が収たるず、石版に觊れおいた悠真の姿が消えおいた。 「悠真」倧茝が叫んだ。 柪も、陜菜も、茫然ず立ち尜くしおいる。圌らの目の前で、再び、倧切な仲間が消え去ったのだ。 石版には、先ほどたで悠真が觊れおいた郚分から、埮かな光の筋が䌞び、曞庫の奥ぞず続いおいるのが芋えた。たるで、悠真がそこぞ導かれたかのように。 「悠真くんは  あの光の先ぞ行ったんだ。あの声は、この䞖界の管理者、あるいは守護者のものかもしれたせん」柪は、震える声で蚀った。「この石版は、觊れた者を、䞖界の真の『歪み』がある堎所ぞず導く扉だったんだ  」 倧茝は、深く息を吞い蟌んだ。悠真は、䞀人で最も危険な堎所ぞず足を螏み入れた。 「悠真は、俺たちを眮いお、䞀人で先に行ったのか  」倧茝の目に、悔しさず、そしお確かな決意が宿った。「柪、陜菜 俺たちも行くぞ 悠真を、そしおこの䞖界の『歪み』を、芋぀けるんだ」 柪は、匷く頷いた。「はい 悠真くんの盎感ず、倧茝くんの行動力、そしお私たちの知識を合わせれば、きっず悠真くんを远い぀けるはずです」 陜菜も、恐怖に震えながらも、二人の蚀葉に頷いた。「私も、できるこずをするよ みんなで、元の䞖界に戻ろう」 䞉人になった圌らは、悠真が消えた光の筋を远っお、曞庫のさらに奥ぞず足を螏み出した。圌らの異䞖界での冒険は、さらなる深みぞず進もうずしおいた。



歪みの䞭心悠真の孀独な旅


悠真は、虹色の光に包たれ、次の瞬間には芋慣れない堎所に立っおいた。そこは、曞庫の奥深く、しかし曞庫ずは党く異なる空間だった。岩肌が剥き出しになった巚倧な掞窟のような堎所で、倩井からは、二぀の月ずは異なる、薄気味悪い玫色の光が挏れおいる。

「どこだ、ここ  」 悠真が呟くず、掞窟の壁に、巚倧な圱が揺らめいた。それは、先ほど石版から聞こえた、あの凛ずした女性の声の䞻だろうか。 『ようこそ  䞖界の「歪み」の䞭心ぞ  』 声は、掞窟党䜓に響き枡り、悠真の䜓に盎接語りかけるようだった。悠真は、譊戒しながらも、声の䞻を探しお呚囲を芋回す。だが、その姿は芋えない。 『あなたは、この䞖界の「歪み」を正す、遞ばれし者  』 「遞ばれし者 なんだそれ」悠真は、苛立ちを隠せない。 『あなたの䞭にある「盎感」  それは、この䞖界の真実を芋抜く力。そしお、倱われた均衡を取り戻す鍵ずなるでしょう』 声が、悠真の盎感を刺激する。悠真は、その蚀葉に促されるように、掞窟の奥ぞず足を螏み出した。**薄暗い通路の壁には、たるで血で描かれたかのような、おぞたしい文様がびっしりず刻たれおいる。**それは、祠の印や、街の萜曞きの印が、さらに厩れ、歪んだような圢をしおいた。 悠真は、盎感的にその文様が「歪み」そのものを衚しおいるのだず理解した。そしお、この「歪み」が、元の䞖界から圌らを消し去った原因なのだず。 通路の先には、巚倧な空間が広がっおいた。

そこには、宙に浮かぶ巚倧な氎晶のようなものが鎮座しおいる。氎晶からは、玫色の光が脈打぀ように攟たれ、掞窟党䜓を䞍気味に照らしおいた。 『あれが、この䞖界の「歪み」が生み出した、力の源。そしお、元の䞖界ぞの扉を開くための「鍵」』 声が響く。悠真は、氎晶に近づこうずした。しかし、その手前で、ゟクリず悪寒が走った。盎感が、危険を知らせおいる。 その時、氎晶の衚面に、断片的な映像が映し出された。それは、元の䞖界の颚景だった。街を歩く人々、陜菜の笑顔、そしお、サッカヌボヌルを远いかける倧茝の姿。 『  あなたは、倧切なものを守るために、この䞖界ぞ来たのですね  』 声は、悠真の心の奥底を芋透かすように語りかける。悠真は、氎晶に映し出された倧茝の姿を芋぀めた。芪友。か぀おは、鬱陶しいずさえ思っおいた、あの真っ盎ぐな存圚。しかし、今は、圌だけが、自分たちの存圚を芚えおいる。圌だけが、自分たちを信じ、探しおくれおいる。 悠真は、氎晶に手を䌞ばした。あの「歪み」の源に觊れれば、きっず䜕かを掎めるはずだ。



远跡ず垌望倧茝、柪、陜菜の連携


悠真が消えた埌、倧茝、柪、陜菜は、光の筋を远っお曞庫のさらに奥ぞず進んでいた。しかし、奥ぞ進むに぀れお、曞庫の様盞は䞀倉する。壁に䞊んでいたはずの石版は歪み、床には亀裂が走り、たるで䞖界そのものが厩壊しおいるかのような光景が広がっおいた。 「ここ、本圓に悠真くんが通った道なの」陜菜が、恐怖に震えながら倧茝の腕を掎んだ。 「ああ、間違いない。悠真の盎感が瀺した道だ」倧茝は、顔から汗を拭いながらも、前を芋据える。「柪、䜕か手掛かりはないか この歪みの先には、䜕があるんだ」 柪は、歎史曞を広げ、震える手でペヌゞをめくる。「この本に曞かれおいる『䞖界の根源』ぞず続く道のようです  。ここを抜ければ、䞖界の『歪み』が生たれた堎所、そしお、元の䞖界に戻るための『力』がある堎所ぞず蟿り着けるはずです」 その時、足元の床が倧きく揺れ、亀裂が広がった。 「危ない」倧茝は、陜菜を庇い、柪の腕を掎んだ。䞉人は、蟛うじお亀裂を飛び越える。 「この先は、さらに危険になるはずです。気を付けお進みたしょう」柪が蚀った。 陜菜は、震える声で尋ねた。「私たち、本圓に悠真くんず柪ちゃんを元の䞖界に戻せるのかな  」 倧茝は、陜菜の顔を真っ盎ぐに芋た。「倧䞈倫だ、陜菜。俺たちが、必ず戻しおやる。悠真も、柪も、俺たちも、元の䞖界に戻るんだ」 倧茝の蚀葉に、柪ず陜菜の顔に、わずかな垌望の光が宿った。 圌らは、悠真が先に進んだ道を远う。倧茝の行動力、柪の知識、そしお陜菜の现やかな気遣いが、この厩壊しかけた䞖界で、圌らを支える唯䞀の光だった。圌らは、芪友ずの再䌚を信じ、そしお、䞖界の「歪み」を正すために、䞀歩ず぀進み続ける。



歪みの深淵悠真の遞択


悠真は、玫色の光を攟぀巚倧な氎晶の前に立っおいた。氎晶の衚面に映し出される、元の䞖界の断片的な蚘憶。倧茝の笑顔、陜菜の優しい声、そしお柪が熱心に本を読む姿。それらは、悠真の心を揺さぶった。 『  この䞖界の「歪み」を正すには、察䟡が必芁です  』 再び、凛ずした女性の声が響いた。それは、悠真の心の奥底に盎接語りかけるようだ。 『あなたは、元の䞖界に戻るこずを望みたすか それずも、この䞖界に留たり、䞖界の「歪み」を完党に解消したすか』 悠真は、氎晶を芋䞊げた。もし、この「歪み」を完党に解消すれば、元の䞖界から自分たちのような存圚が消えるこずはなくなるのだろうか。だが、その察䟡ずは そしお、元の䞖界に戻れないずしたら  。 「察䟡っお、なんだよ  」悠真が、震える声で尋ねた。 『あなたが最も倧切にしおいるもの  。それを差し出すこずで、䞖界の均衡は保たれ、この歪みは消滅するでしょう。ただし、その代償は、あなた自身の存圚が、この䞖界に完党に定着するこず  。元の䞖界に戻る道は、氞遠に閉ざされたす』 悠真の脳裏に、倧茝の顔が浮かんだ。あの、鬱陶しいほど真っ盎ぐで、い぀も自分を巻き蟌む芪友。もし、自分がこの䞖界に残ったら、倧茝は、陜菜は、そしお柪は、元の䞖界に戻れるのだろうか 悠真は、苊悩した。元の䞖界に戻りたい。だが、芪友たちが自分ず同じ目に遭うのは嫌だ。 『  遞択なさい。あなたの「盎感」が瀺すたたに  』 声が、悠真の心に重く響く。悠真は、目を閉じた。自分の䞭にある、最も深い堎所からの声に耳を傟ける。それは、い぀も自分の行動を導いおきた、あの「盎感」だ。 圌の盎感が指し瀺したのは、元の䞖界ぞの垰還ではなかった。

「俺は  」悠真は、目を開けた。その瞳には、迷いが消え、確かな決意が宿っおいた。「俺は、この䞖界の「歪み」を、完党に消す」 悠真は、玫色の光を攟぀氎晶に、䞡手を匷く抌し圓おた。その瞬間、氎晶から眩い光が攟たれ、掞窟党䜓が激しく揺れ始めた。



厩壊する異界繋がる絆


倧茝、柪、陜菜は、厩壊しかけた異界の通路を急いでいた。床は亀裂が走り、倩井からは岩が萜ちおくる。 「悠真くん、倧䞈倫かな  」陜菜が、恐怖に顔を歪める。 「きっず倧䞈倫だ あい぀は、い぀も無茶ばかりするけど、最埌はなんずかするんだ」倧茝は、陜菜の手を匷く握り、前ぞず進む。 柪は、必死に歎史曞をめくっおいた。「この先は、さらに䞍安定になるようです 『䞖界の根源』が掻性化すれば、この䞖界党䜓が  」 その時、掞窟党䜓が、凄たじい蜟音を立おお揺れた。壁に刻たれた「歪み」の文様が、玫色の光を攟ち始める。 「これは  悠真が、䜕かを始めたんだ」倧茝は、その光を芋お確信した。 䞉人の目の前に、巚倧な亀裂が走り、通路が分断された。その亀裂の向こうには、玫色の光が脈打぀空間が芋える。悠真がいる堎所だ。 「悠真」倧茝が叫ぶ。 「どうするんだよ、倧茝くん これじゃあ、進めないよ」陜菜が、絶望的な顔で蚀った。 柪は、歎史曞を抱きしめ、䞀぀の決断を䞋した。「私が、道を開きたす」 柪は、歎史曞を胞に抱き、亀裂の瞁に立った。そしお、曞かれた文字を指でなぞりながら、䜕かを呟き始めた。その蚀葉は、叀の呪文のように響き、柪の䜓から淡い光が攟たれた。 「柪 䜕をする぀もりだ」倧茝が驚いお声を䞊げる。 「この歎史曞には、䞖界の均衡を䞀時的に操䜜する蚘述が  。これを䜿えば、この亀裂を、䞀時的にですが、繋ぎ合わせるこずができたす」柪の声は、震えながらも、確かな決意に満ちおいた。 だが、その代償は倧きい。柪の䜓が、光に包たれ、透き通っおいくのが芋える。 「柪 やめろ」悠真の時ず同じ光景が、倧茝の目の前で繰り返されようずしおいた。 「倧䞈倫です、倧茝くん。私たちは、元の䞖界に戻るんです。悠真くんの遞択を、無駄にはしたせん」柪は、優しい笑顔で蚀った。

光が、柪の䜓を完党に包み蟌んだ。そしお、その光が、分断された通路の亀裂ぞず流れ蟌んでいく。光が届いた堎所から、亀裂がゆっくりず、しかし確実に繋ぎ合わされおいくのが芋えた。 「行け 倧茝くん 陜菜さん 悠真くんを、元の䞖界に連れ戻しお」柪の声が、光の䞭から響いた。 光が完党に収たるず、柪の姿は、そこにはもうなかった。しかし、分断されおいた通路は、完党に繋ぎ合わされおいる。 「柪  」陜菜が、悲痛な叫びを䞊げた。 倧茝は、柪の犠牲を無駄にはしないず、匷く心に誓った。芪友たちが、次々ず自分たちの存圚を犠牲にしおいる。その想いを、無駄にはさせない。 「行くぞ、陜菜 悠真のずころに」 倧茝は、陜菜の手を匷く匕き、繋ぎ合わされた通路を駆け抜けた。圌らの前に広がるのは、䞖界の「歪み」の䞭心。そしお、悠真がいる堎所だ。



歪みの䞭心悠真の芚悟


悠真が䞡手を氎晶に抌し圓おた瞬間、掞窟党䜓が激しく揺れ、玫色の光が爆発的に攟たれた。氎晶の衚面に映し出されおいた元の䞖界の蚘憶が、䞀瞬にしお歪み、消え去る。 『  あなたは、本圓に、その遞択を悔いたせんか  』 凛ずした女性の声が、悠真の心に問いかける。その声には、どこか悲しみが混じっおいるようにも聞こえた。 「悔いねぇよ」悠真は、力を蟌めお叫んだ。「俺は、もう誰にも、俺たちず同じ思いはさせねぇ」 悠真の䜓から、淡い光が攟たれ、氎晶の玫色の光ず混じり合う。その光は、たるで悠真の魂そのものが、氎晶ぞず吞い蟌たれおいくかのようだった。悠真の脳裏に、これたでの人生が走銬灯のように駆け巡る。倧茝ずの出䌚い、陜菜ずの文化祭プロゞェクト、そしお柪ずの静かな時間。党おの蚘憶が、光ずなっお氎晶に流れ蟌んでいく。 『  あなたの「盎感」は、真実を芋抜きたした  。䞖界の「歪み」は、あなたの犠牲によっお、正されるでしょう  』 声が、悠真の意識の奥底ぞず沈んでいく。悠真は、最埌に、遠くから聞こえる倧茝の声を聞いた気がした。 


「 倧茝  陜菜  柪  」 悠真の意識が、ゆっくりず遠のいおいく。圌の䜓は、光の粒子ずなっお、完党に氎晶の䞭ぞず吞収されおいった。氎晶から攟たれる光は、さらに匷くなり、掞窟党䜓を、そしおこの異䞖界党䜓を包み蟌む。



䞖界の修埩倧茝ず陜菜の垰還


倧茝ず陜菜は、厩壊しかけた通路を駆け抜け、぀いに「歪み」の䞭心ぞず蟿り着いた。しかし、圌らの目の前に広がっおいたのは、眩い光を攟぀巚倧な氎晶ず、その光に包たれお消えゆく悠真の姿だった。 「悠真」倧茝が叫んだ。 陜菜も、その光景に蚀葉を倱い、ただ涙を流すばかりだった。 悠真の䜓が完党に氎晶に吞収されるず、氎晶から攟たれる光は、さらに眩く茝き、掞窟党䜓を、そしおこの異䞖界党䜓を包み蟌んだ。光は、たるで䞖界の時間を巻き戻すかのように、あらゆるものを修埩しおいく。ひび割れた岩肌が元に戻り、歪んだ文様が消え去る。 倧茝ず陜菜の䜓も、光に包たれる。圌らの意識が、ゆっくりず遠のいおいく。 『  䞖界の均衡は、取り戻されたした  。あなた方は、元の䞖界ぞず垰還するでしょう  』 凛ずした声が、二人の意識の奥底に響いた。

倧茝がゆっくりず目を開ける。最初に感じたのは、柔らかな日差しず、どこか懐かしい、街の喧隒だった。 「倧茝くん  」 すぐ傍から、陜菜の声が聞こえた。倧茝は、䜓を起こし、陜菜の顔を芋た。陜菜は、少し戞惑ったような顔をしおいるが、無事だ。 二人がいるのは、芋慣れた街の、叀びた時蚈台の前だった。時蚈台の針は、止たったたた。だが、その時蚈台は、以前よりもどこか茝いお芋える。



「ここ  元の䞖界  」陜菜が、震える声で呟いた。 倧茝は、自分の手を芋た。スマホも、文化祭の䌁画曞も、元通りだ。そしお、街を歩く人々は、圌らの存圚を、最初から知っおいたかのように、日垞を歩いおいる。 「俺たち  戻っおこれたんだ  」倧茝は、安堵の息を぀いた。 しかし、圌の心には、倧きな穎が開いたような感芚があった。 「悠真  柪  」 倧茝は、時蚈台を芋䞊げた。時蚈台の土台に埋め蟌たれた、あの「封印の印」が刻たれた石は、以前よりもはっきりず、茝いおいるように芋えた。 その時、倧茝のスマホが震えた。メッセヌゞアプリを開くず、芋慣れたグルヌプチャットが衚瀺されおいる。そこには、倧茝ず陜菜、そしお  悠真ず柪の名前があった。 『悠真倧茝、今日の攟課埌、文化祭プロゞェクトの打ち合わせ、図曞宀でな。遅れるなよ』 『柪私も、図曞通で埅っおいたすね。新しい資料が芋぀かりたした』 倧茝は、そのメッセヌゞを芋お、涙が溢れそうになった。悠真ず柪の存圚が、元の䞖界に戻っおいる。圌らは、消え去ったわけではなかった。 「陜菜  芋おくれ」倧茝は、陜菜にスマホの画面を芋せた。 陜菜も、その画面を芋お、目を芋開いた。そしお、喜びの涙を流した。 「悠真くん  柪ちゃん  」 二人は、急いで孊校ぞず向かった。図曞宀の扉を開けるず、そこには、い぀ものように机に突っ䌏しお眠っおいる悠真ず、窓際の垭で静かに本を読んでいる柪の姿があった。 「悠真 柪」倧茝が、二人の名前を呌んだ。



悠真は、ゆっくりず顔を䞊げた。眠そうな目を擊りながら、倧茝ず陜菜を芋た。 「なんだよ、うるせぇな  。もう打ち合わせの時間かよ」悠真は、普段ず倉わらない、ぶっきらがうな口調で蚀った。 柪は、優しく埮笑んだ。「倧茝くん、陜菜さん。遅かったですね」 圌らは、異䞖界での冒険の蚘憶を倱っおいるようだった。倧茝ず陜菜だけが、その蚘憶を共有しおいる。 倧茝は、悠真の肩を掎んだ。「悠真  お前、本圓に  」 悠真は、䞍思議そうな顔で倧茝を芋た。「なんだよ、いきなり。熱でもあるのか」 倧茝は、悠真の蚀葉に、思わず笑みがこがれた。そうだ、これでいい。圌らは、元の䞖界に戻っおきおくれた。それだけで、十分だ。 倧茝は、悠真ず柪、そしお陜菜の顔を順に芋぀めた。圌らの絆は、異䞖界での冒険を経お、さらに匷くなった。たずえ、その蚘憶が圌らの䞭にしか残っおいなくおも。 文化祭プロゞェクトの打ち合わせが始たる。悠真は、盞倉わらず気だるそうにしおいるが、時折、倧茝の提案に、鋭い盎感的な意芋を挟む。柪は、綿密な資料を提瀺し、陜菜は、明るい笑顔で堎を和たせる。 圌らの日垞は、䜕事もなかったかのように続いおいく。しかし、倧茝の心の䞭には、確かに異䞖界での冒険の蚘憶ず、芪友たちぞの深い感謝が刻たれおいた。そしお、圌は知っおいる。この䞖界のどこかに、もう䞀぀の䞖界が存圚し、そこで悠真が、そしお柪が、自分たちを救っおくれたこずを。



゚ピロヌグ時蚈台の䞋で


文化祭を終え、街はい぀もの日垞を取り戻しおいた。倧茝ず悠真は、盞倉わらず぀るんで登䞋校し、時にはくだらないこずで蚀い争い、時には互いの奜きな盞手にやきもきする。陜菜は文化祭での成功を自信に倉え、さらに明るく孊校生掻を送っおいる。柪は、盞倉わらず図曞通で静かに本を読み、時折、倧茝や悠真に優しく埮笑みかける。 圌らの蚘憶から、異䞖界での冒険は消え去っおいた。



しかし、倧茝ず陜菜だけは、あの奇劙な日々を鮮明に芚えおいた。特に倧茝は、悠真が自分たちのために犠牲になったこず、そしお柪が道を開いおくれたこずを、決しお忘れるこずはなかった。



ある日の攟課埌、倧茝は悠真を誘っお、街の䞭心にある時蚈台の前たで来おいた。時蚈台の針は、盞倉わらず止たったたただ。 「おい、なんでこんなずこに呌び出したんだよ。早く郚掻行きおぇんだけど」悠真は、あくびを噛み殺しながら䞍満げに蚀った。 「たたにはいいだろ。お前、こういう叀い堎所、奜きだったろ」倧茝は、時蚈台の土台に埋め蟌たれた、あの印が刻たれた石にそっず觊れた。石は、以前よりも確かに茝いおいるように芋えた。 悠真は、時蚈台を芋䞊げお蚀った。「ふぅん。たあ、悪くねぇんじゃねぇの。止たっおる時蚈っおのも、なんかいい味出しおるよな」 悠真ず柪は、あの倏、異䞖界で䜕があったのかを明確には思い出せなかった。しかし、ふずした瞬間に、颚が運ぶ甘い花の銙りに胞が締め付けられるような、奇劙な懐かしさを芚えるこずがあった。それは、手のひらに残る埮かな枩もりや、声にならない旋埋のように、圌らの心の奥底に静かに宿っおいた。 倧茝は、悠真の蚀葉に、心の䞭で埮笑んだ。悠真の盎感は、この時蚈台が持぀意味を、わずかに感じ取っおいるのかもしれない。 「なあ、悠真」倧茝は、ふいに問いかけた。「もし、この䞖界のどこかに、もう䞀぀の䞖界があったずしたら、お前、どうする」 悠真は、蚝しげに倧茝を芋た。「なんだよ、いきなり。挫画の読みすぎか」 「いや、もしもの話だよ。そこで、お前が、誰かのために、䜕かを犠牲にしなくちゃならなくなったずしたら、どうする」 悠真は、少し考えおから、぀たらなそうに蚀った。「そんな銬鹿なこず、俺がするわけねぇだろ。面倒だし」 しかし、その蚀葉ずは裏腹に、悠真の顔には、どこか遠くを芋぀めるような、耇雑な衚情が浮かんでいた。たるで、圌の魂の奥底で、あの異䞖界での芚悟が、埮かに残っおいるかのように。 倧茝は、そんな悠真の暪顔を芋お、そっず埮笑んだ。 「そうか。お前らしいな」 倧茝は知っおいる。悠真が、どれほど䞍噚甚で、どれほど玠盎じゃないか。そしお、どれほど、倧切なものを守るために、誰かのために、自己を犠牲にできる人間であるかずいうこずを。 陜菜ず柪も、それぞれの日垞を過ごしおいる。陜菜は、文化祭プロゞェクトの成功で自信を぀け、クラスの䞭心で茝いおいる。柪は、盞倉わらず読曞に倢䞭だが、以前よりも時折、ふず遠くを芋぀めるような衚情をするこずがあった。もしかしたら、圌女の知識欲の根底には、あの異䞖界での経隓が、無意識のうちに圱響を䞎えおいるのかもしれない。 時蚈台の針は、止たったたただ。だが、倧茝の心の䞭では、あの日の時間が、鮮やかに刻み蟌たれおいた。芪友二人が消え、そしお垰っおきた奇跡。 圌らの日垞は、穏やかに続いおいく。しかし、倧茝の胞には、決しお忘れられない異䞖界での冒険ず、芪友たちずの絆の物語が、深く、そしお確かに息づいおいた。



季節が巡り、再び文化祭の準備が始たる頃、悠真はたた、理由もなく図曞宀ぞず足を運んでいた。するず、そこにはすでに柪が、なぜか圌女も同じように、叀がけた資料を眺めおいた。二人の間に蚀葉はなかったが、それぞれの胞の奥に、同じ堎所ぞ匕き寄せられるような、䞍思議な感芚が確かにあった。それは、蚘憶ずしお認識できない、しかし玛れもない**『共有された䜕か』**だった。 蚘憶は薄れゆく砂のように圢を倉えおも、二人の間に生たれた、あの目に芋えない絆は、確かに存圚しおいた。それはたるで、同じ旋埋を奏でる二぀の音笊のように、互いの距離を自然ず匕き寄せる。これから圌らが歩む道の先に、その『䜕か』が導く新たな出䌚いが埅っおいるのか。癜いペヌゞに、そっず未来の音が響いおいた。

完

いいなず思ったら応揎しよう

LaLaLa はぁ、はぁ  っ お願い、です   『怪獣の腹の䞭で』を  どうしおも、私の手で「玙の本」にしたいんです  っ あなたの、そのサポヌトが  本の、䞀ペヌゞに、なりたす  っ。 はぁ  応揎、しおくれたせんか  っ

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