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【エッセイ】終止符の向こう側


それが、いつから始まったのか、正確にはわからない。僕がいつも使っていた、ごく普通の終止符、つまり「。」が、ある日突然、誰かにとっての高圧的な記号になった。まるで、何かの暗号を解読するような気分だ。そして、僕たちは、その暗号が何であるかを理解しなければならない場所に立っていた。

僕が知る限り、句読点にはそれぞれの役割があった。コンマは、ひと息つくための小さな港のようなもの。終止符は、そこで旅が終わったことを告げる標識。それ以上でも、それ以下でもなかった。ところが、チャットという新しい世界に放り込まれた僕たちは、そのシンプルな標識が、見えない壁になってしまうことを学んだ。

「これで話はおしまいだ。君に話すことはもう何もない」

終止符は、そう告げているように見えた。それは、相手との関係を、まるで古いレコードの曲のように、プツンと途切れさせてしまう。でも、誰もそんな風に終わりたくなかった。僕たちは、レコードが回り続けることを、望んでいたのだ。

だから、僕たちは終止符をつけずに、言葉を空中に放り投げるようになった。それは、相手に「まだここにいるよ。もしよければ、続きを話そう」と、そっと伝えるジェスチャーだった。まるで、真夜中の台所で、ひっそりと冷えたビールを開けるような、そんな静かな合図。

もちろん、終止符が必要な場面だってある。銀行からの通知や、大切な仕事の連絡。そこで「…」と曖昧に終わらせてしまえば、たちまち世界は混乱に陥るだろう。すべてのものには、それぞれの場所がある。

僕たちは、もしかすると、もっとずっと前から、この奇妙なコミュニケーションのルールを探っていたのかもしれない。まるで、真夜中のカフェで、誰もいないテーブルを眺めながら、誰かが置いていった小説の、最後のページを読むように。そして、そこに終止符が打たれていないことに、心のどこかで安堵するのだ。なぜなら、その物語がまだ、どこかで続いているかもしれない、という小さな希望を抱くことができるから。

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