【お題】この物語の続きを男視点女視点を交互に約600文字づつ

俺に黙って恋するなんて、ずるいよね
【蓮の視点】
「お前、それ……反則」
絞り出すようにそう告げた俺の声は、情けないほどに震えていた。
背中に感じる教室の壁の冷たさが、余計に体の中心の熱を際立たせる。
形勢逆転。俺の手首を掴み返し、鮮やかに位置を入れ替えた美咲は、至近距離で最高に可愛い笑顔を浮かべていた。
はまったね、なんて。
全部、こいつの計算だったわけだ。俺を焦らせて、この場所に引きずり出すための。
他の男に見せていたあの笑顔すら、俺に嫉妬の火をつけるための罠だったのだと気付かされる。美咲は俺の気持ちを分かっていないどころか、俺が美咲を好きすぎて限界寸前なことまで全部お見通しだったんだ。
「……まじで、ずるいのはどっちだよ」
降伏の証として、掴まれたままの手の力を抜く。
でも、ただで負けてやるつもりはない。
真っ赤になっているだろう顔を必死に隠すように、俺はわざと視線を美咲の唇へと落とした。
強がって俺を壁に押しつけている美咲の呼吸が、わずかに乱れる。形勢を逆転したつもりでいる美咲の、そのさらに上をいってやる。
「待たせたお詫び。……覚悟しろよ?」
次は俺が、この生意気で愛おしい恋人を完全に狂わせる番だ。
(520文字)
【美咲の視点】

「待たせたお詫び。……覚悟しろよ?」
蓮の視線が私の唇に落ちた瞬間、今度は私の心臓が爆発しそうになった。
嘘。蓮の顔は確かに耳まで真っ赤なのに、その瞳の奥にある熱は、ちっとも引いていない。むしろ、私を完全に捕らえて逃がさないような、猛獣みたいな光を帯びていた。
壁に押しつけて、主導権を握ったはずだった。
蓮の焦る顔が見たくて、ずっと仕込んできた計画は大成功だったはずなのに。
「っ……、ひゃっ」
蓮が絡めていた指にグッと力を込め、私の体を自分のほうへと引き寄せた。
壁ドンしているのは私なのに、なぜか蓮の胸の中に自分から飛び込むような形になってしまう。
蓮の大きな体が視界を奪う。
香水のつけていない、蓮だけの清潔な体温が鼻腔をくすぐって、一気に頭がクラクラし始めた。
「かっこつけた仕返し、今からたっぷりしてあげる」
耳元で囁かれた低音ボイスに、私の強気な仮面は一瞬で粉々に砕け散る。
はまったのは蓮のほうなのに、結局、私はこの人の腕の中から逃げられない。
「……蓮の、ばか」
観念して目を閉じかけた私の唇に、夕日の熱よりもずっと熱いものが、優しく重なった。
(509文字)

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