春夏秋冬から、二十四節気へ。三条店店長が語る、季節と仕事とお客さまのこと【スタッフインタビュー】
京都・三条の町家。京都洛柿庵(らくしあん)の実店舗に、8年間立ち続けてきた人がいます。
三条店の店長の橋本さんです。もともと和小物を扱いたいという気持ちがあり、いくつかのお店を比較した上で洛柿庵を選びました。
「商品の雰囲気も、世界観も、好きだと思えた」
——その直感から始まった8年間は、季節の感じ方まで変えていきました。
和小物を扱いたかった、という入り口

橋本さんがこの仕事に就いたきっかけは、前職での接客経験と、和小物への関心でした。祇園のお店での接客など、様々な現場を経験する中で、「和小物を扱う仕事がしたい」という気持ちが固まっていきました。
京都洛柿庵を選んだのは、商品と世界観が好きだと感じたからです。
入社してみると、二十四節気という考え方が仕事の中心にあることを知ります。そこから、季節の見え方が少しずつ変わっていきました。
「働く前は、季節は春夏秋冬の大きな区切りでしか捉えられていませんでした。でも、二十四節気のことを意識するようになってからは、細やかな季節の変化に目を向けるようになって」
スタッフ4人全員で、節気のディスプレイを担う

三条店には現在、橋本さんを含めて4名のスタッフがいます。節気が変わるたびに行うディスプレイの入れ替えは、誰か一人が担当するのではなく、そのタイミングで出勤していたスタッフが行う形にしています。
「節気が変わるタイミングで入っていたスタッフが変える。スタッフ全員が交代でやるので、みんなが少しずつ季節の進みを感じられるようになりました」
この仕組みは、誰かの指示で動くのではなく、各々の感性が暮らしているような現場の空気を生んでいます。ディスプレイを考えるときにはスタッフ同士の会話も生まれます。

「『これもいいよね』とか、『これはちょっと早くない?』とか言いながら決めていく。私だけが決めるんじゃなくて、みんなの感性も入っていた方がいいと思っています」
最近は生花も取り入れ、ショーウィンドウがより豊かになってきているそうです。
京都洛柿庵の作品は何を組み合わせても違和感がないと橋本さんは言います。
同じ季節の作品であれば、不思議と統一感が生まれる——そこにブランドの一貫性があります。
来店客の半分以上が、外国からのお客さまに

三条店の接客で大きく変わったのが、お客さまの顔ぶれです。現在、来店されるお客さまの半分以上が海外からのインバウンドのお客さまになっています。
「暖簾がとても人気で、タペストリーとして絵画のように壁にじゃらじゃら付ける方が多くいらっしゃいます。そのため、暖簾本来の使い方を説明しています。また、ろうけつ染めや藍染めなどの技法についても聞かれます」
言葉の壁がある中で、特に印象に残っているのが「円相」が描かれた暖簾の接客です。
「あの暖簾の意味を英語で説明するために、ChatGPTで英語の説明文をつくって、自分のスマートフォンの画面をお客さまに見せるんです。そうしたら喜んでくれて、その画面の写真を撮って帰ってくださることもあって」
伝わった瞬間の喜び。そしてお客さまが自分の国に戻ってから、ふとその暖簾のことを思い出してくれたら——その思いが接客の奥にあります。
「もっといろいろ説明したい気持ちはあります。京都洛柿庵の思いや制作の背景を、もっとうまく伝える手段が欲しいんです」
この声が、このnoteが生まれた理由のひとつでもあります。
好きな節気は「小寒」。その理由

一年で最も好きな節気を聞くと、少し考えてから「小寒」と答えてくれました。
「誕生日が冬なので、その頃の冬の澄んだ空気が子供の頃からずっと好きで。『寒っ』て言いながら学校に行くあの感覚が、なんとなく今でも好きなんです」
主婦でもある橋本さんにとって、年末年始は怒涛の日々。それが落ち着いて、日常が戻ってくる小寒の頃——その静けさの感触が好きだと言います。
その季節に合わせて、好きな作品も教えてくれました。
「『白雪南天(しらゆきなんてん)』の細タペが好きです。顔料で描かれているんですけど、水彩画みたいな透明感がある。その仕上がりが好きなんです」

白い雪をのせてしなやかにたわむ南天の枝。澄んだ冬の空気と、透明感のある描写——小寒という節気への好みと、好きな作品の雰囲気が、静かに重なっています。
京都洛柿庵の作品を、暮らしの中に

「実は自分では商品を持っていないんです。でも、プレゼントとしては何度か使っています。母親の実家に行くと、贈ったタペストリーが掛かっていて、『わぁ』と思います」
もうひとつの取り入れ方として話してくれたのが、麻はがきのことです。

「ご縁のあったお客さまへのお礼状として、季節の絵柄の麻はがきを毎月お送りしているんです。受け取った方が額に入れて飾ってくださっていて、季節の飾りものになっているみたいで。影の人気商品なんですよ」
大きく飾らなくても、小さな麻の一枚が誰かの暮らしに季節を届けている。京都洛柿庵が届けたい暮らしのあり方が、こういうところにも現れています。
三条店に来てほしい理由

最後に、実店舗に足を運んでほしい理由を聞かせてくれました。
「スペースの関係で全部の商品を飾ることはできないので、カタログを見ていただいて取り寄せる形が多いんです。でも、手触りや光の透け具合は実際に見ないとわからなくて。染めの状態や麻生地の織りの仕上がり、糸の色による違いも、ぜひ実物で感じていただきたいと思っています」
ネットの画面では伝えきれないものが、三条の町家の空間にはあります。手に取ったときの麻の重さ、光に透かしたときの色の深まり——それを感じに来てほしいと、橋本さんは静かに話してくれました。
▼京都洛柿庵 オンラインショップ・三条店にてお取り扱い中
https://shop-kyoto-rakushian.com/
京都洛柿庵 三条店
住所:京都府京都市中京区三条町339
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