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Photo bykyoto_gonchan

【雚季の宿】第䞃章💀眠りは、泥氎のように浅かった。

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    第䞃章💀眠りは、泥氎のように浅かった。

    竹の床は倜の湿気をたっぷりず含み、䜓枩をゆっくりず、しかし確実に奪っおいく。

    凍えるほどではない。

    だが、眠りが底たで沈みきる前に、䜕床も意識を䞍快な衚面ぞず抌し戻すには十分な冷たさであった。

    目を閉じおいおも、難民キャンプの気配は消えない。  

    燻る火の匂い、濡れお也かない垃の匂い、埗䜓の知れない粥が煮詰たる匂い。

    それに、人が密集しお眠る堎所に特有の、枩んだ呌気ず汗の混じり合った重い空気が、薄い倜気の局の䞋にべったりず沈柱しおいる。

    どこかで赀子が泣き、すぐにあやす声が続く。  湿った咳がある。

    犬が䞀床だけ䜎く唞る。  そしお、たた静かになる。

    静かになる、ずいう蚀い方は正確ではないのかもしれない。

    音は消えおいない。

    ただ、ひず぀ひず぀の音が、この堎所では「異垞」ずしお立ち䞊がらないだけである。

    泣き声も咳も、寝返りを打぀床の軋みも、ここでは倜を構成する郚品の䞀郚にすぎない。

    わたしは、その郚品になりきれないたた、硬い竹の䞊に暪たわっおいた。

    疲匊しおいる。

    身䜓は、確実に限界に近い。  

    だが、意識のどこか䞀箇所だけが、どうしおも完党に沈もうずしない。

    難民キャンプのすぐ倖れにある、この壁すらたずもにない物眮のような空間に転がされおいるずいう事実が、眠りの底の底たで぀いおくるのだ。

    竹を線んだ隙間から倜が入り蟌み、その倜の向こうには、確実に「別の気配」がある。

    その気配の正䜓が䜕であるのかを、頭は考えたいずしおいおも、極限状態にある身䜓の现胞は忘れおくれなかった。

    目を閉じたたた、䜕床めかの泥のような眠りに沈みかけおいたずき、明確な違和があった。

    最初は、音である。  いや、足音ではない。

    人が動く気配の「止たり方」が違うのである。

    このキャンプの人間は、倜に動くずき、もっず静かで、もっず身䜓の重みが薄い。

    足の眮き方も、声の出し方も、火のそばで鍋を動かすかすかな音でさえ、どこかに怯えに䌌た遠慮がある。

    ここでは皆、音を立おればそれが暗闇の倖ぞ挏れるこずを、長いあいだの恐怖によっお身䜓で芚えおしたっおいるのだろう。

    だが、いた近づいおくる動きには、その遠慮が䞀切ない。

    完党に無遠慮ずいうわけではない。むしろ逆で、意図的に抑えようずしおいる。

    だが、抑え方の質が違うのだ。

    音を消すこずに慣れた難民ではなく、力によっお音を「抌し殺しおいる」ような暎力的な足取り。

    地面を知っおいる者の歩き方ではなく、最悪の堎合「誰を螏んでもかたわない」ず思っおいる者の歩き方。

    わたしは目を開ける。

    暗い。だが、完党な闇ではない。

    消えきらぬ焚き火の赀い光が、倖の茪郭をわずかに浮かび䞊がらせおいる。

    竹の線み目の隙間から、圱が動くのが芋える。ひず぀ではない。

    ふた぀、みっ぀、それ以䞊かもしれない。

    茪郭は䞍鮮明だが、立ち方に軍隊のような劙な揃いがある。ばらばらに立っおいるようでいお、互いの䜍眮関係や射線が厩れない。

    そういう皮類の人間たちである。

    わたしは䞊䜓を起こしかける。  その瞬間、䜎い声がした。

    蚀葉の意味はわからない。だが、絶察的な「呜什」の声であるこずだけはわかる。  

    動くな、ずいうこずだろう。

    声はすぐ近くで発せられたわけではない。

    少し離れた䜍眮から、こちらぞ向かっお正確に投げられおいる。

    距離を取りながら空間を支配する声である。

    わたしの背䞭に、冷たい汗が䞀筋流れる。  気枩のせいではない。  

    頭より先に、身䜓が理解したのである。

    これは、ただの倜の物音ではない。圧倒的な「死の気配」だ。

    竹の仕切りが乱暎に抌し分けられる。

    男がひずり、䞭ぞ入っおくる。

    背は高くない。だが、肩の暪幅があり、身䜓の茪郭に無駄な肉が䞀切ない。

    腰のあたりに䜕か重いものがある。

    倧型の刃物なのか、拳銃なのか、暗くお刀別できない。

    衣服は泥ず汗を吞っお重そうだが、それでも動きが埮塵も鈍く芋えないのは、たぶんその身䜓が「人を殺す」ずいう機胜に合わせお削り䞊げられおいるからだろう。

    圌は、わたしの顔を静かに芋䞋ろす。

    光が足りず、衚情は読めない。

    だが、確実に芋られおいるこずだけははっきりわかる。

    こちらが䜕者であるかを、顔の骚栌から、目の動きから、服の質感から、いたこの数秒で刀断しようずしおいる、冷培な捕食者の芖線である。

    男の背埌には、さらにふたりほどいる気配がある。  入っおはこない。

    入口のずころで立ち、倖の闇ず完党に䞀䜓化しおいる。

    わたしは、異垞に喉が也くのを感じる。  䜕か蚀うべきなのか。

    䞡手を䞊げるべきなのか。それずも䞀切動くべきではないのか。

    すべおが頭をかすめるが、どれも決めきれない。

    男が、短く䜕かを蚀う。  今床は少し倧きい。

    倖にも聞こえるように、わざずそうしおいるのかもしれない。  

    するず、背埌の闇からブラザヌの声がした。

    近いずころに寝おいたのか、それずも銃を突き぀けられお連れお来られたのかはわからない。

    圌はすぐに竹の隙間の向こうぞ珟れ、倖から䜕か蚀葉を返す。

    その声は䜎く、い぀ものように感情をほずんど含たない。

    だが、埮劙に口調が速い。

    完党に平静ではないこずが、その速床だけでわかる。

    男は、わたしから目を逞らさないたた、ブラザヌの方ぞ䜕か蚀う。

    やりずりは短い。

    だが、短さのわりに緊匵の密床が異垞に濃い。

    質問ず返答ずいうより、確認ず拒絶、あるいは尋問ず匁明の、その寞前の均衡のようであった。

    やがお、男の芖線がたたわたしに戻る。  今床は、英語で蚀った。

    「ナヌ」

    それだけで止たる。

    語圙が足りないのか、あるいはわざず切っお圧をかけおいるのか。どちらにしおも、その䞀語だけで空気が凍り぀くには十分だった。

    「ホりェア  フロムどこから来た」

    わたしは䞀瞬、答えを探す。  いや、探すたでもない。

    事実だけを蚀えばよい。嘘は即座に芋砎られ、臎呜傷になる。

    「ゞャパン」

    自分の声が、思ったよりもひどく也いおいる。喉の奥が砂を噛んだようにざら぀く。

    男は反応を芋せない。

    「ホワむ」

    短い。

    「ホワむ、ヒアなぜ、ここにいる」

    なぜここにいるのか。

    それは圓然の問いであり、同時に、この状況䞋においお最悪の問いでもあった。  

    なぜなら、本圓の理由をそのたた口にしたずころで、たるで質の悪い嘘にしか聞こえないからだ。

    昆虫を探しに来た。カブトムシを探しお、地雷ず野獣のゞャングルを歩き、難民キャンプたでやっおきた。

    そんな狂った話を、この歊装した男たちがどう信じろずいうのか。

    わたしは、口を開く。

    「ビヌトルカブトムシ」

    男は動かない。

    「アむ  サヌチ、ビヌトルわたしは、カブトムシを探しおいる」

    蚀いながら、自分でもひどく間抜けな響きだず思う。

    だが、それ以倖に蚀いようがない。

    男の背埌で、別の気配がわずかに動いた。

    倖にいた者たちのうち、ひずりが笑ったのかもしれない。

    笑いず断定するには也きすぎた、金属的な音だったが、それでも「そんなふざけた話があるか」ずいう空気だけは、暗がりの䞭にはっきりず挂った。

    男は、身䜓を少し屈める。  顔が近づく。

    汗ず、煙草ず、湿った垃の匷烈な匂いがする。

    そしおその奥に、機械油のような、火薬のような匂いが埮かに混じっおいた。

    歊噚の手入れに䜿うものに違いない。

    森の自然や、難民の生掻臭ではないこずだけは確かだった。

    「ビヌトル」

    圌は、その単語を無衚情に繰り返す。

    意味を確かめるようでもあり、底知れぬ嘲りを含んでいるようでもある。

    わたしは頷く。  それしかできない。

    男は、しばらく黙っおこちらを芋䞋ろしおいた。

    その氞遠にも䌌た沈黙のあいだ、わたしはようやく恐るべき事実に思い至る。

    ここたでの道のりを、圌らはすべお知っおいるのだ。

    わたしたちが森のどのルヌトを歩いお来たのか。どの集萜を経由したのか。

    䜕人で動いおいるのか。

    倖から来た芋慣れないファラン倖囜人がひずり混じっおいるこず。

    そのすべおが、すでに芋られおいたのである。

    森の䞭で、こちらは虫の気配を探し、暹液の朚を芋䞊げ、眠を避けお歩くこずに必死だった。

    そのあいだずっず、自分たちが「芋おいる偎」だず思っおいた。

    だが違った。わたしたちは、銃のスコヌプ越しに垞に「芳枬される偎」だったのだ。

    その事実が、遅れお冷氎のように胞の奥ぞ萜ちおくる。

    男は、さらに尋ねる。

    「フォト写真」

    その蚀葉ず同時に、手でカメラを構えるような仕草をする。

    写真を撮ったか。

    自分たちのルヌトやキャンプを蚘録したか。

    ゞャヌナリストかスパむではないか。 そういう意味だろう。

    わたしは静かに銖を振る。  本圓に撮っおいない。

    そもそも、カメラなど初めから持っおいなかった。

    だが、その「本圓」は、この堎ではさほど意味を持たない。

    信じるかどうかは、こちらではなく向こうが、圌らのルヌルで決めるこずだ。

    男は、わたしの足元にある荷物を顎で瀺す。

    「オヌプン開けろ」

    わたしは、ゆっくりず袋を匕き寄せる。  急な動きは絶察にしない。

    それくらいのこずは、もう分かっおいる。

    䞭身を床に出す。  

    生ぬるい氎。泥だらけの着替え。玙。小さな道具。

    そしお、虫を入れるための空の容噚。

    男がそれを芋る。ひず぀ひず぀を念入りに芋るのではない。

    党䜓を、である。

    森を歩いおきた人間の荷物ずしお䞍自然なもの、通信機や歊噚、カメラ、が隠されおいないかを、目の速さだけで刀断しおいる。

    倖で、たたブラザヌの声がする。  今床は少し匷い。

    蚀い争いに近いのかもしれない。

    だが、完党にぶ぀かるずころたでは行かない。

    互いに、䞀線を越えれば血が流れるこずを知っおいるような、ギリギリのやりずりである。

    男は、わたしから目を離さずに、倖ぞ向かっお䜕か蚀う。

    声は䜎いたただが、刃物のような鋭さが増す。

    するず、しばらくしお、あの若者の声が混じった。

    あの若者は、道䞭ほずんど話さなかった。

    だが、いたは䜕かを必死に説明しおいるらしい。その響きは短く、速い。

    自分たちが䜕をしにここたで来たのか。どこたでしか行っおいないのか。

    それずも、倖から来たこの間抜けなファランが、ただの狂った虫奜きで、぀いお来ただけだず、そう匁明しおいるのかもしれない。

    男は、しばらく黙る。

    その沈黙のあいだ、キャンプ党䜓も息を朜めおいるように感じられた。

    実際に音が止んだわけではない。

    赀子の寝息も、遠くの咳も、火のはぜる音もある。

    だが、すべおのトヌンが䞀段䜎くなっおいる。

    この呜がけのやりずりが、ここにいる誰の耳にも届いおいるこずだけは、確かだった。

    やがお、男はゆっくりず身䜓を起こす。

    「ゞャパン」

    もう䞀床、蚀う。  それから、口の端だけでわずかに笑った。  

    笑った、ずいうよりは、わたしの存圚を「あり埗ないが、あり埗なくもない無害な銬鹿」ずしお凊理したような顔であった。

    「ノヌ・ムヌブ動くな」

    ここから逃げるな、ずいう意味か。䜙蚈な真䌌をするな、ずいう意味か。

    どちらにしおも、埓う以倖の遞択肢はない。

    わたしは頷く。  男は、ただ数秒こちらを芳察しおいたが、やがお螵を返す。  

    背埌の圱も䞀緒に動く。

    竹の仕切りが抌し分けられ、倖の闇がたた元の圢ぞ戻る。足音が遠ざかる。

    だが、完党には消えない。

    すぐ近くに、ただ誰かが留たっおいる気配が残る。

    芋匵りずしお残されたのかもしれなかった。

    しばらくしお、ブラザヌが䞭ぞ入っおくる。  顔は芋えにくい。

    だが、その肩のラむンがい぀もより少し硬い。

    圌は䜕も蚀わず、床に散らばったわたしの荷物を䞀瞥し、たた倖の闇を窺う。

    それから、䜎く䞀蚀だけ蚀う。

    「スリヌプ寝ろ」

    眠れ、ずいう意味なのだろう。  無茶な話である。  

    だが、それ以倖にできるこずもない。

    わたしは、ただ譊鐘のように早鐘を打぀心臓を抱えたたた、再び竹の床ぞ身䜓を暪たえる。  

    目は閉じる。だが、眠りなど来るはずもない。  

    さっきの男の匂いが、ただ錻の奥にこびり぀いおいる。 汗、煙草、機械油。

    そしお、こちらを芋䞋ろしおいた目の、あの殺気すら感じさせない無駄のなさ。

    ゞャングルを歩いおきたあいだ、ずっず監芖されおいたのだ。

    その事実が、遅れお党身の毛穎ぞ広がる。  道䞭で感じた䞍自然な芖線。

    若者の説明の぀かぬ沈黙。 突然珟れたワむダヌや人間の痕跡。

    それらが、いたになっおたったく別の恐ろしい意味を持ち始める。

    わたしは、ただの虫を探しに来たのだず思っおいた。  

    だが、この狂った土地の䜏人たちにずっおは、そんなこずはどうでもいい。  
    芋慣れないファランが、囜境地垯をうろ぀いおいる。

    それだけで、撃ち殺すには十分すぎるほど怪しいのだ。

    虫の声が、たた倜の空間を満たし始める。

    だが、もう以前のようには聞こえない。

    その単調な音の䞋に、別の底知れぬ沈黙が朜っおいる。

    人間が息を朜めおいる沈黙。  暗闇の䞭から、じっずこちらを芋据えおいる者の沈黙。

    キャンプの倜は、再び元の静けさを取り戻したように芋える。

    だが、その静けさは、さっきたでずは別のものであった。

    それは、安心ではない。「猶予」である。

    いたは、ただ䜕も起きおいない。ただ、それだけだ。

    その事実を冷たい石のように抱いたたた、わたしは目を閉じ続けた。

    眠りが来るのか、それずも倜が明けるのが先か。

    あるいは、そのどちらも蚪れない結末が埅っおいるのかもわからぬたた、ただ身じろぎ䞀぀せずに暪たわっおいた。

    第八章ぞ続く

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    科孊技術や株匏投資に関する執筆䟝頌を随時受け付けおいたす。専門的な解説蚘事から気軜な゚ッセむたで幅広く察応可胜です。

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