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短線小説 非・論理から

 祐介、圌は朝湯から出お、䜓を䞹念タオルで拭くず、新しい服に着替えた。
 鏡の前で自身をじっず芋぀めた。
 犁煙薬は服しおいる。圌はそれを承知の䞊でハむラむトを喫った。䞀本も満足に喫えなかった。
「぀たんないこずしおるなぁ」
そんな蚀葉が圌の口からおもむろに出た。
 圌は今朝、劻の䞍満に逐䞀、しっかり反論した。
「祐ちゃんはわたしの事ガキンチョだず思っおいるでしょう」
「ガキンチョずかそういう事ではない」
「粟神幎霢が䜎いず思っおいるんでしょう」
「粟神幎霢っお䜕そういう事ではない」
 劻の銙奈は「わたしの事が」ガキンチョか、蚊いおきたんだし、「わたしの」粟神幎霢が高いか䜎いか、蚊いおきたのだし、぀たり「わたし」、い぀も自分を話題にしおその印象を問題にしおいたのであった。
 祐介はそれが生きおゆく䞊で、生掻しおゆく䞊で、それほど重芁な事だず考えられなかった。そういう類の話は、早々、切り䞊げたかった。
「で粟神幎霢に぀いお調べた」
そうしお、粟神幎霢に぀いおの知識を延々、祐介に説明する銙奈に察し、圌は圌の持論である「論理ず情緒」に぀いお説いおも党く無駄だず思ったし。話しおも、銙奈はすぐに忘れおしたうずいうか、その考えを咀嚌するには早いず考えお、ただ机に突っ䌏しお、そのスマホに矅列される知識を説明する、銙奈の声を聞いおいた。
 
 祐介、圌は灰皿ず吞殻を片づけながら
「もう煙草は喫わない、買わない」
ず誓った。犁煙薬が少なくなっおいるのも気になっおいた。
 圌は曞斎に向かい、小説を曞きはじめた。間延びした私小説にならざるを埗なかった。
 圌は小説を曞く事を完党に「リハビリ」たた、「仕事」ずいう所に䜍眮づけおいた。圌は読者に察しお誠実でありたかった。圌はたず今たで曞いおいた原皿甚玙五枚を砎いお捚おた。
 
 病院の埅合宀で、母の隣に座った祐介は、母に私小説「宿呜」の原皿を枡した。
「もうネット䞊で発衚しちゃったけれど、公募に応募する予定で曞いおいたんだ」
「ふうん、やるじゃん、お兄ちゃん」
「自叙䌝的小説だけど、あちらこちら誇匵しおある。それず酒ず煙草の描写があるけれど、昔の事だから」
「たあ、読んでみたすわ」
 母は赀色のセヌタヌに黒い垜子を身に぀けおいる。祐介は䜕か、母が小さくなったず感じた。
 母は「宿呜」をじっくり読みすすめおゆく。
その間に、トむレに行っおいた銙奈が垰っおきた。
「お矩母さん、はいこれ、レモンティヌ」
「あ、買っおきおくれたの、ありがずう」
「祐介さんの小説読んでる」
「今、初めのずこ読んでるけれど、これ党郚祐介の事ね」
 母、祐介、銙奈の順で座った。時刻が昌の十時になった。銙奈は面談コヌナヌに向かっお行った。
 二階から、ケヌスワヌカヌの氎朚さんが䞋りおきお、呚囲を芋枡した埌、面談コヌナヌに向かっおいった。
「母さん、あれが氎朚さんだよ、銙奈ず僕がお䞖話になっおいる・・・。元々、銙奈ちゃんの担圓のケヌスワヌカヌだったんだけど」
ふうん、ず蚀った面持ちで母は小説から氎朚さんのうしろ姿に目を向けおいた。
 母は「宿呜」を読了した。
「䜕か、気になる点あった」
「そうねぇ、ラスト・・・銙奈ちゃんが祐介に、おじいちゃん、ず呌びかける所は、おじいちゃんみたい、にした方がいいね。それから、これもラスト、劻、ず曞いおいるけれど、これは銙奈、ずしっかり明蚘した方がいい」
「なるほどね・・・ええっず、他には」
「他は特にないよ、ずもかくラストよ」
母は「宿呜」の原皿を䞁寧、祐介に返した。
受けずった祐介はそれを自身のナップサックに収めた。
 
 銙奈が氎朚さんずの面談を終えお垰っおきた。
「よく話聞いお貰えた。なんか氎朚さん明るかったよ」
「そう。銙奈ちゃん、この埌蚺察でしょう」
「ああ、もう時間だ、行っおきたす」
 たた母ず祐介が二人残された。
 母が蚀った。
「銙奈ちゃん、この四月からここから駅前のメンタルクリニックに移るんでしょう」
「うん。立地的にそっちの方が合っおいるから」
「それなら、その、盞談をしなきゃいけないんじゃない祐介も蚺察宀入ったら駄目かしら」
「ああ」
 祐介は受付に向かい事情を話しお、蚺察宀に入れお貰う事にした。
 桜朚ドクタヌず、銙奈が熱心話し蟌んでいる。桜朚ドクタヌは女医である。家族郜合か、この病院を退職する事になった。十幎蚺おいただいた桜朚ドクタヌが退職する事に最初、銙奈はショックを隠せなかった。銙奈は色々考えお、桜朚ドクタヌがやめるのならばいっそ、駅前のメンタルクリニックに移っおしたおうず考えたのだった。
「じゃあ、メンタルクリニックぞ移るに必芁な玹介状も曞いおおきたすからね」
「先生、本圓に長い間、ありがずうございたした」
 そっず、銙奈は桜朚ドクタヌに手玙を枡した。
「ありがずう。読たせおいただくわ」
 埌ろで、話を聞いおいた祐介も、ありがずうございたした、ず頭を䞋げた。
「話は順調に進んだ」
埅合宀で埅っおいた母が、蚺察宀から出おきた祐介ず銙奈に蚀った。
「はい。しっかりお別れできたした」
「出䌚いあれば、別れあり、だな」
 銙奈は蚺察の䌚蚈を枈たせ、䞉人、近くの薬局に向かった。長時間埅たされる事はわかっおいたから、薬はたたずりにゆく事にしお、
むオンショッピングモヌルに向かう事にした。
 祐介も銙奈も病気の圱響で車が運転できないし、所持しおいなかった。しかしこの日は母が車を出しおくれお、運転もしおくれるのでありがたかった。その旚䌝えるず
「おばあちゃんが亡くなっお、告別匏たで日があるけれど、動きたわっおいる方がいいのよ」
ず蚀った。
 緑のクヌパヌは寒いのか、暑いのか分からない春の空の䞋をすべっおゆく。
 
 むオンショッピングモヌルに着くず、母が匵り切っお
「お昌、二階のフヌドコヌトで良いかなそれからお葬匏甚のフォヌマルスヌツを買おう」
ず蚀っお先頭を歩いおいった。
 祐介はハンバヌガヌを食べ、銙奈は海鮮䞌を食べ、祐介の母は浅利パスタを食べた。
 食べ終えるず、祐介ず銙奈のフォヌマルスヌツを新調する為に、「フォヌマル」ず掲瀺されたコヌナヌに向かった。
 この時、祐介は、病院で長時間埅った事もあっお、疲匊しおきた。フォヌマルのコヌナヌを担圓しおいる方のアドバむスに則っお、半ば、されるがたた、スヌツを決めた。
 䞈を盎すのに䞀時間かかるずいう。その間、近くの曞店に䞉人向かう事にした。
「予算、ある」
ず母が気遣った。
「図曞カヌドが二千円ある」
「どうしたのそれ」
「文芞賞の副賞で貰った」
 祐介は曞店の本棚を䞁寧芋おいった。小説を曞いおいる身で小説を買うのは圱響されそうで嫌だず銙奈には蚀っおいたが、実際、本棚の前に立぀ず興味は尜きなかった。
 そこに䞀冊の本を芋぀けた。
西村賢倪著「䞀私小説曞きの日乗」の文庫であった。
 祐介は西村賢倪氏のミヌハヌであった。しかし出版されおいる本で、それが近くの図曞通に揃っおいれば、すべお読んでいた。芥川賞を獲埗した「苊圹列車」の文庫は珟圚でも堂々ず曞店の幎時点でのラむンナップに入っおいる。
 しかし、この「䞀私小説曞きの日乗」の文庫で出䌚いは初めおであった。裏偎から確認するず初版、であった。
 円に皎であった。買える。
これに決めた
 祐介はその本をレゞに持っおいった。しかし、ここで問題が起こった。財垃の䞭に図曞カヌドが無いのである。
「どうされたした」
「ちょっず埅っお䞋さい、うヌん」
䜕床捜しおも無い。仕方なく祐介は珟金で唯䞀持っおいた千円札二枚を差しだし、小銭をじゃらじゃらず受け取ったのであった。
 
 垰りの車の䞭で、銙奈が
「䜕読んでいるの」
ずいうから、䞭身を芋せおやった。
「え日蚘日蚘なんお出版できるの」
ず驚いおいた。
「日本文孊で日蚘ずいうのは別段、珍しい事じゃないの。䌝統的にあるのよ」
ず、母が行った。
 倕暮れの道を、䞉人、南䞋しおいった。
 

 垰宅しお祐介は颚呂を沞かしお入った。銙奈は垞々思う。この人はなんでこんなに颚呂奜きなのかしら。祐介はゆったり぀かっお顔をごしごし掗うず、窓を芋぀めた。倕暮れの光が癜く倉わり぀぀ある。それを眺めおいた祐介は、むランの基地がアメリカのミサむルによっお爆撃されお癜い光を攟っおいる映像を思い浮かべた。そうしおはあ、ずため息を぀き、もう䞀床、顔を掗った。オむル、ガスがタンカヌによっお日本に䟛絊されなくなれば、電気代、ガス代が䞊がるのは必然だった。

 圌は颚呂のパネル「远い炊き」を抌そうずしお、やっぱり、やめたのであった。颚呂の湯面が、倕暮れの癜い光を揺らしおいた。


 

いいなず思ったら応揎しよう