
小説2 光と影ー愛を与える人として生きるためにー11話 癒しと決意
第10章 ー癒しと決意ー
私は17歳で母になった。
出産から1ヶ月が経った頃、
ようやく体が少しずつ回復し、
赤ちゃんの生活リズムも整ってきた頃だった。
けれど、心はずっとざわついていた。
夜中の授乳は2時間おき。
私は母乳がよく出たから、粉ミルクには頼らなかった。
節約もあったし、何より
「母としてちゃんとしなきゃ」という
焦りと責任があったからだ。
布おむつを洗い続け、
寝不足と疲労で思考もぼんやりする。
それでも、赤ちゃんの顔を見るたび、
胸の奥から不思議な“癒し”が湧いてきた。
この小さな命が、
暴力にも、怒鳴り声にも触れずに育つ未来を
私はどうしても守りたかった。
そんなある日、
限界がきた。
旦那が突然怒り出した。
「子どもの泣き声には反応すんのに、
なんで俺が何言っても返事せぇへんねん」
私は返事が遅れただけだった。
疲れていただけ。
眠たかっただけ。
でも、彼にはそれが“無視”に見えた。
昔の父を思い出す。
怒鳴り声、暴力、支配。
あの頃の恐怖が、胸の奥で再生される。
…また、繰り返すんやろか。
私の人生は、どこまでこのループが続くんやろ。
私はもう、この小さな赤ちゃんに
父親の“そういう姿”を見せたくなかった。
18歳になった私は、
か弱い女ではなく、
“母親”という強さを手に入れていた。
だから、動いた。
娘を友達に預けて、
私はひとり、旦那の住むマンションへ向かった。
手には離婚届。
最初は、穏やかに切り出した。
「あなたは私と娘にとって必要な人です。
どうか、一緒に住んでほしい。
ちゃんと父親になってほしい。」
でも、旦那は首を縦には振らなかった。
喧嘩の延長線のように、
ふてくされた表情のままだった。
私は静かに、でも強い目で言った。
「じゃあ…これを書いて。
お守りでいいから。
いつか本当に無理になったら、一緒に出しに行こう」
そう言うと、旦那はしぶしぶ離婚届にサインをした。
私は、その瞬間を待っていた。
彼の迷いも、怒りも、全部わかっていたから。
……でも、もう十分だった。
私は“母としての未来”を選んだ。
その2日後、約束を破って離婚届を提出した。
罪悪感?
なかったと言えば嘘になる。
でも、胸の奥にははっきりと確信があった。
この子を守るために、私は正しい選択をした。
私は18歳にして、
誰にも怯えず、誰にも支配されず、
娘と自分の未来のために、初めて「自由」をつかんだ。
癒しとは、
誰かに与えられるものじゃなく、
自分でつかみにいくものだと
このとき初めて知った。
続く…
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