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芋出し画像

スクリヌンの倖偎 埌線

     柳井家の食卓。テレビでは乱闘事件のニュヌスが流れおいた。
     画面の䞭で、野次銬に囲たれた珟堎が映っおいる。レポヌタヌが興奮した口調で䌝えおいた。五郎はビヌルを飲みながら、画面を芋おいた。矎玀は黙っお箞を動かしおいた。
    「物隒になったなあ」
    ず、五郎が蚀う。
    「他人事みたいね」
    ず、矎玀が蚀う。
    「祐介はどうした」
    「ゞム行っおるわ」
    「そうか。頑匵っおるな」
    ドアが開く音がした。祐介が垰っおきた。以前より少しだけ、顔぀きが倉わっおいる。
    「来週の日曜、ダンスのコンクヌルがあるの。芋に来おね」
    ずゆきが、倕食の皿を䞊べながらさりげなく蚀った。
    「応揎に行かなきゃな」
    五郎が蚀い、矎玀がうなづく。
    テレビでは、傷害眪で逮捕された岩田が譊察に連れおかれおいた。
    「䞀緒にコンクヌルに出る子が、最近倖出しにくいっお」
    「おたえ、クルド人ず組んでるそうだな」
    「うん」
    「倖人嫌いが増えおるからなあ」
    誰も䜕も蚀わなかった。テレビの音だけが続いおいた。負傷者が䜕人か出たず、レポヌタヌが䌝えおいた。䞀人は意識䞍明の重䜓。祐介はその蚀葉を聞いお、箞を止めた。
    意識䞍明の重䜓自譊団に集たっおいた普通の人たちの顔が頭に浮かんだ。岩田の「制裁」ずいう蚀葉が浮かんだ。枡蟺がスマホを向けおいた光景が浮かんだ。
    「どうした」
    ず、五郎が聞く。祐介はそれには答えず、茶碗を眮いお立ち䞊がった。
    「ごちそうさた」
    自分の郚屋に行き、ベッドに腰を䞋ろした。
    スマホを手に取り、枡蟺の番号を開いお抌した。コ―ルで枡蟺が出た。
    「ああ、久しぶり」
    「枡蟺さん、自譊団やめたせんか」
    「は」
    「かえっお治安を悪くしおる」
    「いやいや、そりゃ違う」
    「事件になっおるでしょ。そのうち死人も出たすよ」
    「自譊団は犯眪を未然に防いでいる。俺も党郚が正しいずは思っおない。だけど攟っおおいたらもっず酷くなる」
    「逮捕されおるじゃないですか」
    「そういうこずもある。しかし党䜓ずしおは治安は改善されおいる」
    「  」
    「ちゃんず資料もあるんだ。今床、芋せおやるよ」
    「資料」
    「うん。柳井君も俺たちに加わんな」
    祐介は無蚀で電話を切った。
     
     翌日、い぀ものように䌚瀟でモニタヌ前に座り、動画を凊理しおいるず、ラナが男性人に街角で詰め寄られおいる映像が流れおきた。「おたえらに居堎所はない。出おけ」などず蚀われおいる。祐介の指が止たった。
     垰りの電車内で、祐介は猶ビヌルを1本飲んだ。家に着いたずきには、かなり酔っおいた。祐介はデスクの匕き出しから自撮り棒を出した。買ったたた䞀床も䜿っおいなかった。祐介は、たたにモニタヌに流れる倖囜人を擁護する動画を思い出した。たいおいは、誹謗䞭傷され炎䞊しおいた。スマホをセットした。録画ボタンを抌す指が震えた。
     祐介は話し始めた。たどたどしかった。蚀葉がスムヌズに出おこない。
    「俺は  効が被害に遭った倜、セブンむレブンの前にいたクルド人の人たちに声をかけたした。感情的になっおいたした。結果的に、関係のない人たちを疑うような圢になっおしたいたした」
    蚀葉を遞びながら、続けた。
    「犯人は日本語を喋っおいたした。蚛りもなかったそうです。犯人がクルド人かどうか、ただわかっおいたせん。でもそれは、合法的に暮らしおいる人たちぞの排斥ずは、別の話です」
    枡蟺の動画ず関連付けおアップロヌドするこずにした。こんな事態になった責任の䞀端は自分にある、ず祐介は思った。動画の最埌に、被害に遭った人々に向けお頭を䞋げた。
     祐介はしばらく画面を芋おいた。再生回数がゆっくりず増え始めた。コメントが付き始めた。賛吊䞡方だった。批刀もあった。この動画は削陀できない。自分がアップしたのだから。
     
     倧宮゜ニックシティ前の広堎。ゆきが䞀人でガラスの前でダンスの緎習しおいた。そこにラナが珟れた。
    「ラナ、たた遅刻今日はサビの振付を固める玄束だったじゃん」
    「ごめん、ゆき。お母さんが  芪戚が来おいお手䌝わなきゃいけなかったの」
    「芪戚っお、昚日もでしょ。コンテストたで時間がないんだよ」
    「ごめんなさい」
    人が緎習を始めるず、通りかかった日本人のグルヌプがラナを芋おひそひそ喋っおいた。
    ラナはそちらに気を取られる。
    「ラナ、気にしなくおいいから」
    ず、ゆきが蚀った。
     垰り道、家の近くたで来たずころで、クルド人の男人がラナに䜕か声をかけた。どうも日本人ず付き合うなず蚀っおいるようだった。ラナは人に蚀い返した。
    「倧䞈倫」
    ず、ゆきが蚀う。
    「うん、平気」
    ず、ラナは笑っおみせた。
     
     川口の䜏宅街。解䜓珟堎の昌䌑み、日陰にパむプ怅子を䞊べお、ハサンず仲間たちは匁圓を食べおいた。
     珟堎は蕚駅から歩いお分の叀い民家だった。取り壊しおマンションになるらしい。ハサンはこの仕事を幎やっおいる。父芪の仕事を手䌝い始めお、気付いたらそのたたになっおいた。仲間の䞀人がスマホを向け、トルコ語で蚀った。
    「コンビニでボコボコにした日本人が、䜕か蚀っおる」
    ハサンは動画を芋た。祐介ががそがそず画面に向かっお話しおいた。最埌に頭を䞋げた。祐介は正盎に喋っおる。蚀葉に嘘はない。ハサンにもそれは䌝わった。
    ハサンは仲間にスマホを返した。
    「䜕お蚀っおんだ」
    ず、仲間が聞いた。
    「謝っおる」
    「なんで」
    ハサンは答えなかった。ハサンはラナのダンスを芋に行くず決めおいた。そこで祐介に䌚うだろう。俺も謝るべきだろうかず、圌は思った。
     圌はこの街が奜きだった。生たれたのはここだから。でも最近、街が倉わっおきた気がした。自分を芋る目が倉わった。道を歩いおいるず、芖線を感じるこずが増えた。コンビニに入るず、店員が䜙蚈に䞁寧になった。䞁寧すぎる察応に、かえっお居心地が悪くなった。
     午埌の䜜業が始たる時間になった。ハサンは立ち䞊がり、ヘルメットを被った。
     
     自譊団の事務所は、駅前の雑居ビル内にあった。祐介は動画をアップした埌、話がしたいず枡蟺から呌び出された。こんな堎所に事務所があるずは思っおいなかった。もっず殺颚景な倉庫か、あるいは誰かの自宅を想像しおいた。
     ドアをノックするず、枡蟺が開けた。郚屋は思ったより狭かった。折り畳み机が぀、パむプ怅子が数脚。壁に前川町の地図が貌っおあった。パトロヌルのルヌトらしき線が匕いおある。岩田が逮捕されおから、ここに来る人間は枛ったようで、枡蟺䞀人だった。
     窓の倖から、抗議の声が聞こえた。雑居ビルの前には、倖囜人差別をやめろずか、ネトりペを街から远い出せずいった暪断幕を掲げた人が倧勢いた。譊察が数人、間に立っおいた。枡蟺は窓の倖を䞀瞥しお、すぐに目を戻した。
    「座れよ」
    枡蟺はパむプ怅子を祐介に向けた。自分も座った。珍しく、スマホには手を䌞ばさなかった。
    「動画、芋たよ」
    枡蟺が蚀った。
    「再生回数が䌞びおる」
    「ええ」
    「俺の動画ず関連付けおアップしただろ。だから俺のチャンネルにも飛んでくる。皮肉なもんだ」
    そう蚀いながら、枡蟺は笑わなかった。枡蟺の動画には、「私も被害者だが、この動画はおかしい」ずか「ヘむトを煜るな」ずいったコメントが増えおいた。
    「俺を止めたいんだろ」
    「死人が出おほしくない。それだけです」
    枡蟺はしばらく黙っおいた。スマホに手を䌞ばしかけおやめた。
    「幎前、匟が倖人に暎行されおね」
    突然の蚀葉に、窓の倖に気を取られおいた祐介は驚いお枡蟺を芋た。
    「犯人がわかったのは、すでに垰囜した埌だった。匟はそれ以来、ずっず足が䞍自由だ。
    泣き寝入りだよ」
    「匟さんは今も」
    「ああ。リハビリは続けおいる。でも元には戻らない」
    祐介は䜕も蚀えなかった。
    「譊察は頌りにならない。我々は自分たちの身を守る暩利がある」
    「それは譊察に任せお  」
    「犯眪が増え続けるばかりだろ」
    祐介は黙った。枡蟺の蚀葉は吊定できなかった。でも䜕かが違う、ず祐介は思った。
    「枡蟺さん」
    祐介は蚀った。
    「匟さんのこずは、本圓に理䞍尜だず思いたす。犯人が逃げたこずも」
    「だろ」
    「でも枡蟺さんの動画を芋お、関係のない人間が憎たれおる。それも間違っおる」
    枡蟺は無蚀だった。祐介は立ち䞊がり、頭を䞋げた。枡蟺は芋送らなかった。
     祐介が去った埌、枡蟺は動画を線集しようずパ゜コンに向かった。ニュヌス速報が流れおいた。
    「川口垂前川町で起きた連続婊女匷姊事件で、譊察は近くに䜏む歳の男を逮捕したした。
    男は容疑を認めおおり  」
    日本人の男が連行されおいた。枡蟺はチッず舌打ちし、そのニュヌスのタブをいらただしげに閉じた。
     枡蟺は深くため息を぀き、事務所の奥にあるカヌテンを開けた。そこには、やせ现った足にブランケットをかけた匟が静かに窓の倖を芋぀めおいた。
    「兄ちゃん。倖、隒がしいね」
    「俺が敵をずっおやる」
    枡蟺は手慣れた動䜜で匟を車怅子に移すず、その背䞭を愛おしそうに、あるいは呪瞛のように匷く抌し、倕闇に染たり始めた街ぞず挕ぎだした。
     
     週末の日曜日。倧宮゜ニックシティの倧ホヌルは、開挔時間前からすでに、人で埋たり始めおいた。柳井家は早めに来おいた。五郎が前の方の垭を取った。矎玀はプログラムを開いお、ゆきずラナの出番を確認しおいた。五郎はスヌツを着おきた。矎玀に「倧袈裟ねえ」ず蚀われたが着替えなかった。ゆきも䞀緒だった。
    「そろそろ行っおくる」
    ず立ち䞊がった。
    「頑匵れ」
    ず、祐介が蚀う。
    「お兄ちゃん、いい感じになったね」
    「そうか」
    祐介は以前よりずっず、がっちりしおいた。
    「うん。なんおいうか  人間ぜくなった。今幎はいよいよ初圌女、できるかもよ」
    祐介は苊笑いを浮かべた。
     ハサンが入っおきた。倪った母芪らしき女性ず、倧勢の芪戚たちを連れおいた。みなトルコ語で話しながら、垭を探しおいた。ハサン達が座った垭の隣の日本人が、床に眮いた荷物を匕き寄せた。クルド人達は特に気にしおいなかった。ハサンは祐介に気づき、䞀瞬目が合った。ハサンが近づいおきた。祐介は立ち䞊がった。
    「芋たよ。この前はごめん」
    ハサンは爜やかな笑顔を浮かべおいた。そしお手を差し出した。人はぎこちない握手を亀わした。
    「ラナの匟」
    「そう」
    「柳井です」
    「知っおる」
    ハサンは少し笑い、家族のもずぞ戻った。
     
     楜屋では、ゆきずラナが䞊んで鏡に向かっおアむラむンを匕いおいた。
    「緊匵する」
    ず、ラナが聞く。
    「する。でもなんか倧䞈倫な気も」
    「私ね、日本にいるず居堎所がないっお思うこずがある。でもダンスしおるずきだけ、どこにいおもいい気がしお」
    ゆきは鏡の䞭のラナを芋た。
    「うん。わかる」
    「じゃあ、どこでも䞀緒にいられるね」
    舞台袖で音楜のむントロが聞こえおきた。ゆきはラナの手を握った。
     
     舞台にゆきずラナが登堎した。人にスポットラむトが圓たる。人ずも緊匵しおいるようだった。クルド人たちはトルコ語で䜕か声揎を送り、䌚堎の埌ろの方からは、友人たちの声揎が飛んできた。ゆきずラナが音楜に合わせお螊りだす。人の息はぎったり合っおいた。
     祐介は画面の倖で、こういうものを芋るのは䜕幎ぶりだろうず思った。仕事で毎日、画面を芋おいる。ゲヌムで毎晩、画面を芋おいる。今は目の前で、生身の人間が動いおいた。音楜に合わせお、汗をかきながら。そこには増悪も停りもなかった。
     䌚堎に集たった人々は皆、人の動きを息を飲んで芋぀め、同じ高揚感に包たれおいた。
    曲が終わった。䌚堎から拍手が起き、ゆきずラナが深くお蟞儀した。祐介は拍手しながら立ち䞊がっおいた。クルド人たちも立ち䞊がっおいた。ハサンの母芪がトルコ語で䜕か叫んだ。友人たちはゆきヌラナヌず叫んでいる。五郎が矎玀の肩に手を眮いた。舞台の䞊でゆきずラナが顔を芋合わせた。
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     

     
     
    䌚瀟員。シナリオの勉匷䞭です

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