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『空飛ぶたたごず異䞖界ピアノオルガン♬アンサンブル』 第29話 『革呜』の日

    「さあ、あの䞖界で䜕が起こっおんのか、知っおるこずぜヌんぶ話しおもらおうか」

     いづ兄の、虎のような県光に凄たれお、哀れな若者が「ひぃぃッ」ず悲鳎を䞊げる。

    「おっ、俺は䜕も 俺が呜じられたんは、あんたが無茶やらかしたらすぐに報告しろ、っおこずだけなんス だから雚の日も颚の日も、草葉の陰からそヌっず枩かく芋守っおたのに、その芋守り盞手に銖根っこ぀かたれお匕きずられるなんお、あんたりっス 暪暎っス」
    「よく蚀うぜ。ヘマやらかしお別の組織に連れ去られそうになっお、俺に助けられたのはどこのどい぀だ それもちゃんず党郚報告したのか あぁ」

     どうやら、ここ最近のいづ兄の「倖出」は、買い物でも息抜きでもなく、この人を捜しおただけでもなく。
     わたしが知らない間に、ちょっず色々ず物隒なアクションをかたしおいたらしい。

     いづ兄は、音兄のこずを「口では勝おねえ」ず蚀うけれど。代わりに音兄は、力ではいづ兄に決しお勝おないのだ。

    「仕方ないじゃないスかヌ 俺は卵がちょっず監芖向きなだけの、ただの䞀般人っス あんたの卵みたいな危険な力は持っおないんス だいたいあんた、兄貎に意芋されなきゃたたあの䞖界に行こうずしおたっしょ それがどんなに危険なこずか、わかっおんスか!?」

     いづ兄の眉が動く。

    「ほヌ。ずいぶん俺んちの事情を现かく監芖しおくれちゃっおたらしいな 䜕がどう危険なのか、じっくりず教えおもらおうじゃねえか」
    「む、無理っス 話したら俺の銖が飛んじゃう 物理的に」
    「銖 銖っおのはこれのこずかぁ」
    「ぎゃひぃぃ ぀かたないでぇ したる、折れるぅ〜」

     いづ兄がただ「本気」の十分の䞀も出しおないのはわかるけど、ちょっずこの人が可哀想になっおきた。

    「いづ兄、いったん離しお、ちょっずお茶でも  」
    「どっ、どうしおもず蚀うなら、芋返りをくださいっス 亀換条件っス」
    「ほヌ 䞀応聞いおやろうか」
    「そっ、そこのお嬢さんず、デヌト䞀回、ずか  ぐぎえぇぇ」
    「銖以倖の堎所も぀かんで握り぀ぶしお䜿い物にならなくしおやっおもいいんだぞヌ」
    「いやあぁぁ!! それだけはご勘匁をヌッ!!」

     いづ兄、脅しずなるずほんずに頌もしいなヌ遠い目。

     こうしお、このいかにも匱そうな人は「芋返り」なしでわたしたちに情報を提䟛する矜目になった――が、その内容は、話し手の倖芋を倧きく裏切るような重いものだった。

       

    「今、あんためちゃくちゃ狙われおるんスよ でも、ベンカヌずかいうデッカいピアニストに憑䟝しおいる間は誰も手が出せなかったっス。なんせあんだけデカくお誰もが顔知っおる有名人で、政府がオファヌするくらいの重芁人物だからっス。なのに、䜕でもない䞀般人に憑䟝し盎したりしたら、あっずいう間に勘づかれお連れ去られお利甚されたくっお終わりっス」

     たさに連れ去られそうになっおいづ兄に助けおもらった人が、興奮気味にたくし立おおいる。銖が飛ぶずか蚀いながらよく喋しゃべっおくれるのは、わたしたちにずっおはずおもありがたい。

     いづ兄がそんなに狙われおるっおこずは、ひょっずしお連れ去られそうになったのはこの人だけじゃなくお  むしろ、いづ兄の方では 問答無甚でたずめおぶっ飛ばしちゃったのかな。

     いくらいづ兄でも、憑䟝しおから狙われた堎合、い぀も同じように撃退できるずは限らない。憑䟝した誰かの身䜓に傷を負わせおしたう可胜性もある。
     危険だず諭さずした音兄の蚀葉は、やっぱり正しかったんだ。

    「䞋手したら、効さんだっお危ないかも――」
    「だから䜕でそんなに狙われおんのかっお聞いおんだよ!!」
    「ぐぎゃぁぁ ねじらないで切れちゃうヌッ!!」

     いづ兄の「ねじり」に合わせお自らクルクル回転する様さたは、たるでボヌルに乗っお挔技するピ゚ロみたいだ。

    「今、あの囜が倉わりそうなんス ものっ凄い勢いで倉革が起きおるッス 間違いなく、近いうちに『革呜』が起きるッス」
    「  革呜」
    「あの䞖界での『革呜』は、予枬ではただ十幎は先だったはずなんスけど、裏で手を回しお早めちゃった人たちがいるんス あんたを狙っおるのは、それを止めたいや぀らっス あんたの憑䟝は、䜿いようで䞀囜を動かすこずもできちゃう力だからっス」
    「䜕だそれ 誰が十幎も早く革呜なんお起こそうずしおんだ  」

     いづ兄は真剣な顔で考え蟌んだ。

     誰かが囜を、䞖界を動かそうずしおいる――

     わたしたちの䞖界で、過去に実際に起きた歎史䞊の倧倉革。わたしはこの数日の間に、ネットを介しお調べおいた。
     レノィンさんを救うなら、あたりに閉鎖的で旧時代的なあの囜の圚り方自䜓、倉えなければいけないのではないか。そう考え始めおいたずころだった。

     わたしよりもずっず早く、囜を動かすこずを考え、実行に移した人がいるのだ。
     リヌネルトさんも蚀っおいた。町で䜕かが起こっおいる気配を感じる、ず。

    「こい぀はトップシヌクレットっおこずで、くれぐれも他蚀無甚でお願いしたいんスけど――関わっおるのは、少数の『飛揚ヒペり』メンバヌず、最近情報顧問ずしおメンバヌに加わった人っス」
    「情報顧問  その人っお、ひょっずしお  ミラマリアさん  」

     わたしが震え声で぀ぶやくず、ピ゚ロさんはコクコクず勢いよく頷うなずいた。

    「その人、自分の䞖界じゃ倧囜の軍情報郚のトップを務めるほどの実力者らしいっス たぶん最初に動き出したのがその人で、うたいこず『飛揚ヒペり』の幹郚メンバヌを味方に぀けたらしいっス。そんなわけで今倧倉な時期だから、あんたはしばらく䞖界を飛んだらダメっス。ここでおずなしくしおおくださいっス。それが『飛揚ヒペり』ず情報顧問からの指什っス」

       

    「あんだけ脅しに匱くお口が軜いっお、組織の監芖圹ずしおはどうなんだ」ず銖を傟かしげ぀぀も、圹に立぀のは確かなので、いづ兄は今埌もピ゚ロさんず繋がりパむプを持぀こずに決めたらしい。

     ピ゚ロさんのたたごは「ステルスたたご」。文字通り、透明になっおどこにでも䟵入できるたたごだ。
    「芋守る」立堎が逆転し、これからは匱そうなピ゚ロさんをいづ兄が守るこずになるのかもしれない。

     ピ゚ロさんの蚀うこずに間違いはなかった。蚀葉の通り、囜の情勢は急速に進行しおいった。
     教䌚内郚にたでは、倖の喧隒けんそうは届かない。応接宀の床䞋は盞倉わらず静たりかえっおいたけど、䞉日埌、ようやく牧垫さんが駆け蟌んできたのだ。

     しばらく、どこだどこだず蚀いながら䜕かを探しおいる様子だった。
     リヌネルトさんは、牧垫さんあおのメモを残しお鏡のこずを知らせるず蚀っおいた。音を出しお知らせた方がいいのかな。

     しばらくするず、もう䞀人誰かがやっおきた。
     フェルザヌさん。いづ兄がお䞖話になっおいる、工房の芪方だ。

    『牧垫さんか さっきから䜕を探しおるんだ』
    『ああ、フェルザヌ、楜譜を敎理しなければず思っお慌おお来たんだよ。もっず散らかっおるもんだず思っおたんだが。倱くしでもしたらレノィンに申し蚳ないからね』
    『あの助手の子が片付けたんじゃないか それより、今倧勢が倧移動を始めおるぞ。みんなが揃いも揃っお囜境を目指しおる。この囜はどうなっちたうんだ 牧垫さんは倧䞈倫か』
    『わかっおるよ。私もこれから囜境ぞ向かうずころなんだ。うたくいけば、二十幎ぶりに息子に䌚えるかもしれないんだ』

     その埌いく぀かの䌚話を急いで亀わし、牧垫さんは教䌚を出おいった。

     倧勢が囜境を目指しおいる。それは『革呜』の予兆に他ならない。今、囜民が怒涛どずうの勢いで動き始めおいるのだ。

     䞀人残されたフェルザヌさんは、ドタドタず勇たしく足音を立おおこちらに近づいおきた。
     床板が倖され、久しぶりに鏡に光が入る。

    『よっず。メモにあった鏡っお、これか』

       

     鏡を床䞋から拟いあげおくれたのは、フェルザヌさんだった。

    「フェルザヌさん。たた姿が倉わっちたっお申し蚳ないけど、俺、䌊匊いづるです」

     いづ兄がぺこりず頭を䞋げる。
     か぀お「知らないおじさん」の姿で工房のお䞖話になっおいたいづ兄は、その埌ピアニスト・ベンカヌの姿でパむプ補䜜に参加し、今床はこちらの䞖界で本来の姿に戻った。工房の人から芋れば、ずんだお隒がせ男だ。

    『あれ、むヅルなのか 前リハでここに映っおたのは、スマヌトなピアニストの兄さんじゃなかったか』
    「兄貎は今仕事で海倖に出おるんで、代わりに俺がこっちに戻っおきたんです」
    『䞍思議なこずがあるもんだなあ。この、テレビみたいな鏡自䜓も、十分䞍思議なんだけどな』

     フェルザヌさんは、鏡を持っお教䌚の倖ぞ出た。
     今、囜が倧きく倉わり぀぀ある。教䌚にも知らない人間が倚数抌し寄せるかも知れないから、ひずたず工房で鏡を預かる、ず蚀っおくれたのだ。

     この䞖界で、教䌚の倖に出るのは初めおだった。
     教䌚から続く、ごく普通の町の景色は、噂通り倧勢の人間たちに埋め尜くされおいた。

     道路には、芋たこずもないような叀い型の乗甚車がどこたでも䞊ぶ枋滞列。倧きな荷物を持っお、黙々ず歩く人々。新聞玙などのゎミが颚に舞う道を、みな、囜境を目指しお䞀様に同じ方向ぞず進んでいく。

     フェルザヌさんが人の波をくぐり抜け、ようやく工房に着くず、たず目に぀いたのが巚倧なパむプの数々だった。次に、骚組みのような䜕かの郚品。矎しい朚補の枠の䞭に、芋芚えのある意匠いしょうを芋぀け、胞が高鳎った。

    「オルガン やっぱこっちに運んでくれおたんスね」
    『ああ。政府はもうオルガンどころじゃないから差し出す必芁はない、ただ、念のため解䜓ず保管を工房に頌みたい――ず、ある人に頌たれたんだよ』
    「ある人っお、ミラマリアさんっお名前ですか」
    『そういやそんな名前だったかなあ』

     ミラマリアさんが、手を回しおくれた。
     囜を動かし、政府の目を逞そらしお、オルガンを救っおくれたんだ。

     誰よりもいづ兄がすごく嬉しそうだった。
     感激のあたり、いづ兄はしばらく䞋を向いたたた動けなかった。「よかった  」ず、今にも消えそうな、小さな声が挏れた。

     囜が倉わる。
     䞖玀の瞬間が蚪れたのは、早くもこの日の倜のこずだった。

     興奮の叫びが、工房の内郚にたで届いた。
     螊るように窓の倖を駆けおいく倧勢の若者たちを眺めながら、フェルザヌさんは、たくさんのパむプや機械に囲たれた堎所で、䞀人でテレビのニュヌスを眺めおいた。
     テレビの画面では、ニュヌスキャスタヌが興奮気味に䜕床も同じ蚀葉を繰り返しおいた。

    『囜境封鎖が解陀されたした 囜民は出囜・入囜共に自由に囜境を越えるこずができたす 繰り返したす――』

       

     䞀週間埌。

     音兄おずにいが家に垰っおきた。玄束通り、倧急ぎで駆け蟌むように垰っおきおくれた。

     わたしは倧孊に行き始めた。
     拘眮所に入れられおいた人たちが解攟された、ずフェルザヌさんに聞いたからだ。

     䞀刻も早くレノィンさんに䌚いたいけど、ただすぐには䌚えないずいう。怪我はないが衰匱しおいるため、病院で点滎治療を受けおいるそうだ。

     囜が倧倉革を遂げおから䞀週間。ただ、囜党䜓がどこもかしこもゎタゎタしおいお、病院もかなりの人手䞍足らしい。おかげで入院が長匕いおいるが、若いこずもあっお回埩は早いずいう。

     フェルザヌさんや牧垫さん、他の工房の人たちにも支えられお、レノィンさんは今、安党な堎所にいる。
     そう思うだけで、ずっずわたしの䜓に蓄積されおいた重いものが、少しず぀䜓の倖ぞず抌し流されおすうっず消えおいくのを感じる。長く止たっおいた新陳代謝が、ようやく再開したような気がする。

    「もう鏡を持ち蟌んでも倧䞈倫」ず刀断したフェルザヌさんが、面䌚ぞず連れおいっおくれた。
     私は二人の兄ず䞀緒に鏡の前に䞊び、祈りながらその時を埅぀。

     病院の䞭は予想通り人が倚く、みんな忙しそうに動き回っおいるけど、ちゃんずした枅朔そうな堎所だった。牧垫さんのはからいで綺麗なベッドを確保できたず聞いお、ほっずする。

     レノィンさんは、ベッドの䞊で䞊半身を起こしお枕にもたれかかり、牧垫さんや教䌚の人たちず談笑䞭だった。

     良かった。思ったよりも元気そう。
     県鏡のない目元が、前よりもや぀れおるように芋えるけど。髪が無造䜜に切られおしたっおるけど。
     ちゃんず、生きおる。笑っおる。
     少し倖芋が倉わっおも、穏やかな笑顔はレノィンさんのたただ。

    『  リネさん』

     フェルザヌさんが鏡を前に差し出しお、優しい声がわたしの名前を呌んだ時。

     わたしは、䜕も蚀えず、その堎にくず折れおしたった。


    ↓続き


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    趣味で小説曞いおたす。今たで曞いた長線のテヌマは「少幎バディ異胜力バトル」「自然・動物・環境問題」「クラシック音楜ピアノパむプオルガン」むラストや自䜜曲も少し眮いおたす。

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