芋出し画像

しゃかしゃかしゃかしゃか

鄙ひなびた枩泉がわたしには粟䞀杯である。
スヌパヌ銭湯や健康ランドはわたしには華やか過ぎる。
たくさんの裞䜓がいっぺんに芖界に入るず、目が回っおしたうかもしれない。

そもそもが、平日たるたる䞀日仕事がない
ずいう貎重な日に出掛けるこず自䜓が、
出䞍粟のわたしには玍埗がいっおいない。

明け方、雚の音で目が芚め
あ、今日のお出掛け䞭止かもラッキヌ。
ず思いながらもう䞀床寝た。

しかし、うちの人は数日前から
「熱いお湯が奜きぬるい方がいいんだっけ」
「人がいない方がいいんだよね。23人ずかなら倧䞈倫」
「犬をどこかで遊ばせおからの方がいいよね。どのルヌトで行こうかな」
などず楜しみにしおいた。圌はどのような枩泉でも奜きだ。

雚はわたしたちが起きる頃には䞊がっお、これから回埩しおいくのだずいう。

芳念した。

簡単な朝食の埌
仕方なく、バスタオルずフェむスタオルを甚意した。
髪は掗わない。出先で掗髪ずか、面倒。
自分の家でやるのがいちばん楜。

山あいはこちらより少し季節が先に進んでいるかもしれないず思い、い぀もより少しだけ厚着にした。

出掛ける準備をしおいるず
「持っお行くべきもの」ず「持っお行った方がいいもの」が䞀床に思い浮かんだりする。
するず、片方準備しおいる間にもう片方を忘れおしたう。
埌で忘れたこずに気づくず「あのずき思い浮かんでいたのに。」ず䞀局残念な気持ちになる。

それが分かっおいるから「アレずアレず、それからアレず・・・」ず思い぀いた順に郚屋䞭を動き回るこずになる。

圧倒的に非効率だ。
慣れない倖出の準備に手間取り、出掛ける前から疲れる。

これが出䞍粟の正䜓だ。

わたしがあたふたしおいるその間に
うちの人ず犬は、い぀も通り散歩を枈たせお垰っお来おいた。


犬は、気配を感じ取る。
圌女は倖出が倧奜きだ。今日もその気配を感じずっお
゜ワ゜ワしおいる。

さあ、行こうか。
二人ず犬䞀匹で、我が家の車に乗り蟌んだ。

◇ ◇ ◇

わたしの䜏む町からは、䞀床倧きな幹線道路に乗り
人気の倚い街を抜けお、山を登り、その先に目的の枩泉があるらしい。

その枩泉に蟿り着くその手前にも
小さな枩泉地がいく぀かあるので、
わたしたちが行く枩泉斜蚭たでは、あたり人が来ないのだず蚀う。
しかも、その枩泉斜蚭が䞀軒あるだけで、いわゆる枩泉地ずいうものでもないずいうから、おおよそ賑わいずいうものずはかけ離れたずころらしいのだ。
そしおその斜蚭は、管理人さんが高霢のため「そろそろ終い」ずいう話も出おいるのだずか。

人が来ないのなら、幟分かは気が楜だ。

途䞭、野菜炒めが矎味しいず蚀われおいる定食屋があるずいうので、そこで昌食を摂る予定だ。
車窓から皲架はさ掛けを芋たり、その田んがのひず区画の小ささを芋ながら
自分の䜏んでいる土地からの距離を感じ、懐かしい日本の颚景を思っおいた。

出䞍粟極たり無いわたしではあるが、
䞀床出おしたえば誰よりも楜しめる特技も
持ち合わせおいる。

◇ ◇ ◇

目的の定食屋さんが芋えた。
思わず「どういうこず」ず䜕床も口にしおしたった。
定食屋の暪に広い砂利敷きの土地があり、そこが駐車堎に䜿われおいるのはなんずなくわかるのだが、酷く違和感がある。
きっちりすれば車3台くらいは停められそうな砂利敷きの土地に、ぜかっず䞀軒家が眮いおある。そう。なんだか唐突過ぎお家が眮いおあるずいう感じがする。店舗はそれずは別に配眮されおいる。
違和感の正䜓がそのこずなのか、今ひず぀よくわからないで居た。

停めおある車はずいえば、あたりにも自由に、あちらにこちらに、あちら向きにこちら向きに停めおある。
これも違和感の理由のひず぀ではないかず思うのだが、
どういうわけか「どういうこず」「どういうこず」なのである。よくわからない、初めおの感芚だ。

犬に「お店行っお来るね」ず断りを入れお車を降りる。
い぀もず同じ声掛けに、圌女は安心し、理解もする。

築幎ほどず思われる叀い䜇たいの店に入るず、
すぐのテヌブル垭では、歳がらみのおじさんたちが人ほど平日の昌からお酒を召し䞊がっおいるようである。それぞれがこの土地の人のようで、この店の垞連さんのようであった。
奥の小䞊がり垭では、揃いの䜜業着を着た歳くらいの男性ず歳代の男性が既に泚文を枈たせお、埅っおいるずころだった。

お冷やがセルフサヌビスであるこずに気づいたうちの人は
店に入るなり絊氎機に盎行し、ふた぀のコップを手にしたたた奥の小䞊がりぞ進んで行くので、わたしも埌を぀いお行く。

メニュヌ衚がテヌブルに眮いおある。
早速芋るず、あった。野菜炒め定食。コロッケ定食も気にはなったが、人ずも野菜炒め定食を遞んだ。
奥からお店のおばさんが出お来おくれた。やさしく泚文を聞いおくれたが、物凄く酒焌けした声だ。さっきの垞連のおじさんたちず䌚話を楜しんでいる。なんのはなしですか。

泚文を終え、店内をきょろきょろ芋枡すず
正面の壁にカレンダヌが぀
きれいに暪䞊びにしお掛けおある。
すべお異なる皮類のカレンダヌが぀。きれいに。
すべお幎月の。党郚カレンダヌ。

いく぀ものずきの流れが、
この定食屋で亀差しおいるのだろうか


野菜炒め定食が来た。「うんた」
初めお蚀った。「うんた」
口から思わず。「うんた」
塙䞉兄匟の末っ子君がただ小孊生の時、本圓に矎味しそうに食べ蚀っおいた、あの「うんた」。
あれず同じや぀が、わたしの口からも出おいた。

いろいろずこの定食屋さんには
違和感があったように思うのだが
「うんた」ですべおが収たった。

◇ ◇ ◇

枩泉斜蚭に぀いた。鄙ひなびおいる。ずおもよい。
叀い朚造の建物。駐車堎は広くなく、先に停たっおいるのは台か。

うちの人は、二人分の受付を枈たせおすぐ、
倖に出お犬ず少し歩いおくるずいう。
先に枩泉に浞かっおいなさいず。

わたしは人が倚いずころは苊手であるが、
初めおのずころを䞀人きりにされるのも苊手である。

しかし、もういい倧人であるから、
苊手であっおもできるこずもある。

今日は䞀人でできるもん
野菜炒め矎味しかったもん

靎、じゃないサンダルを
朚でできた昔ながらの靎箱にしたっお
きょろきょろしないふりしながらきょろきょろしお
進む方向を確認した。
ひず぀暖簟をくぐるず六段ほど䞋る階段。
突き圓たりを右に行くず、巊手が男湯。右手が女湯。
右手だ。
よし、着いた。

斜蚭に入ったずきから、
採光の具合があたり良くなくお暗い。
階段を䞋ったあたりから、さらに暗くなる。
脱衣所はいっそう暗いわけだが、蛍光灯のおかげで幟分は良いか。
叀くはあるが、枅朔感に欠けるこずもなく、悪い感じはしない。

十畳ほどの脱衣所には、济堎でよくみるタむプの壁に取り付けられた棚が蚭眮されおいる。
䜿われおいる棚はひず枠。先客はひずり。倧䞈倫。ひずりなら、倧䞈倫。

壁に「ヒノキ颚呂」「露倩颚呂」二぀あるず掲瀺されおいる。


どちらにも入ろうではないか。
「ヒノキ颚呂」の効胜に五十肩ずある。ここのずころバカみたいに肩が痛い。
良いではないか。
「露倩颚呂」は筋肉痛によいずある。最近スマホで文章を打぀ようになっお、痛いよ右の芪指。
良いではないか。

よしよし。自分の棚に䞁寧に自分の脱いだ服を眮いおおくんだ。
そうすれば、出お来たずきにすんなりたた着られるからね。えらいね、わたし。

ガラガラヌ。
济宀ぞの磚りガラスの戞をひくず、济槜だけでも八畳分くらいありそうだ。ゆったりずしおいお、良かった。

先客はおばあさんであるこずがわかった。
しゃかしゃかず䞀番奥で頭を掗っおいるから
顔は芋えないのだけれど、
腕や背䞭の様子で、䞃十歳代埌半くらいのおばあさんだろうず思った。
おばあさんではあるが、现身の䜓にある皋床の筋肉を感じるし、背筋もピンずしおらっしゃるので、しっかりずした方なのだろうなず想像した。

わたしも济槜に入る前に、䜓を掗い流しおっず。
わたしは髪は掗わないんだ、面倒だから。

ヒョむっず。あヌ、ヒノキだ。ヒノキ。
源泉掛け流し、ずっずお湯が出おいる。
おヌおヌ、そうか、ヒノキ颚呂は底たでもヒノキか。
そうかそうか。
ずいぶんぬるめのお湯だけど、んヌ気持ちいいな。
ふヌ、ずいぶん倧きな窓あるな。倖は山の朚々か。
いい景色。
あのおばあさんの奥にある扉が、露倩颚呂に通じおるんだな。
あずで、行こう。今は五十肩を劎ろう。

しゃかしゃかしゃかしゃか

んおばあさんただ頭掗っおんの
わたしが入っお来たずきには、もう掗っおたよね

しゃかしゃかしゃかしゃかしゃか

あれヌただ終わらない
分分
気になっちゃうなヌ、どんだけ掗うんだろう

あたり芋おいおもよくないな。
どうしよう。あ、瞑想しよう、瞑想。

しゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃか

・・・できるわけないよね。
普段からしおないしね。瞑想。

しゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃか

・・・あ、お湯に虫萜ちちゃったじゃん。
はちじゃないか。ほら、助けおあげるよ。
お湯ず䞀緒に運んで、
ほら、颚呂桶の淵に居れば倧䞈倫でしょ。
おヌ倧䞈倫じゃん。
䜓、足で拭いたりなんかできるじゃん。
あヌ飛んだね。倧䞈倫だ。よかったよかった。
でも、どこ行くかねあの虫。

しゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃか

あヌ、だめだ。おばあちゃんただしゃかしゃかしおる。
終わんない。最埌たで芋たい。
窓の倖でも芋おる感じでいようかな。

しゃかしゃかしゃか。ゞャヌ

あシャンプヌ流し始めたシャワヌで流しおるよ。
よかった、終わったヌ。

えなにそれ、䜕のボトル
巊手に出したのはそれ、䜕



シャンプヌヌヌヌヌヌヌ

しゃかしゃかしゃかしゃか

もうだめだ。
いくらぬるいお湯でも茹だっちゃうよ。
諊めた。露倩颚呂行こう。指の筋肉痛を劎りに。
おばあちゃんの埌ろ通るの、ちょっず気たづいけど。
倱瀌しお。

ガラガラヌ。

・・・。カラッカラ。からっ空。からっ枯。
露倩には湯が匵っおない。
なんのはなしですか。
そんなお知らせ芋おないけど。
わたしの右の芪指は・・・。たぁ、いいか。

しゃかしゃかしゃかしゃかしゃか

おばあさんの埌ろ通っお、元に戻んなきゃ。
気たづいっお。
おばあちゃんは露倩颚呂がカラッカラなの
知っおたよね。
はずっ。わたし、なんか恥ずっ。

しゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃか

もういいか。最埌たで芋るか。
おばあさんのしゃかしゃか。
なんで芋おんのか、よくかわからんけど。

しゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃか

・・・もうするこずないから、ずっず芋ちゃうよ。

しゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃかしゃか

もう、髪にシャンプヌ぀いおないじゃん。
みんな背䞭に萜ちちゃっおるよ。

しゃかしゃかしゃかしゃか

耳の䞊も頭頂郚も埌頭郚も襟足も

しゃかしゃかしゃかしゃか

・・・・・・・・・。

しゃかしゃかしゃか、ゞャヌ

あシャワヌだ流すね、もう流すよね。終わりだよね。
うんうん。もう終わった。そうだそうだ。
分分腕疲れないのかな
あヌあの筋肉の感じは
シャンプヌで鍛えられおるのヌ

ゞャヌゞャヌ、バァヌヌヌヌッ

䜕
なんでシャワヌでいいじゃん。
どうしおわざわざお颚呂怅子から降りお
䜓ぺったんこにしお、蛇口の氎で頭濯ぐの
シャワヌでいいでしょ

バァヌヌヌヌヌッ バァヌヌヌヌヌッ
バァヌヌヌヌヌッ バァヌヌヌヌヌッ
キュッ。

終わったヌ党郚終わったんだ。
わたしは最埌たで芋たんだ。
やったぞぉ


おばあさんはわたしずは離れたずころで济槜に浞かっお、
䞀分。
出おいっお、䜓を掗い始めた。
うそん。

もうだめだ。わたしは、出たす。

◇ ◇ ◇

家に垰っお、ひず䌑み。
犬も、疲れお足元で寝おいる。

あヌ、面倒だけど、髪掗わなきゃ。
今日はシャワヌでいいよねヌ。
自分の家が楜だねヌ。
しゃかしゃかしゃかしゃか






短めの #なんのはなしですか
↓↓↓


いいなず思ったら応揎しよう

くろいるすけ ◇お読みいただきありがずうございたす◇心の糧です◇蚘事の賌入に䜿わせおいただきたす◇郚屋を圩る花になるかもしれたせん◇犬のおいしいごはんやおもちゃになるかもしれたせん◇いただいたお気持ちを倧切にいたしたす◇