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はつこいをさらせ

    くりす

    『そんで、くりす!
     お前は誰が好きなんだよ?』

    「えっと、、、美星さん(仮名)かなぁ」

    小学校の修学旅行。
    消灯時間を過ぎてからのヒソヒソ話は、
    ベタだけど『好きな女子話』だ。

    美星さんとは同じクラスだけど、
    連絡事項以上の話をしたことはない。
    いや、それは美星さんに限ったことじゃなく、
    女子と必要以上のことを話すなど、
    陰キャ小学生のくりすには夢物語だ。

    実を言うと、話したいとか仲良くなりたいとか、
    そんな欲望だって別にない。

    『誰が好きなん?』

    そう聞かれて絞り出す名前は、
    必然的に『陰キャにも優しい女子』になり、
    美星さんが、そうだったというわけだ。

    ・・・まぁ、見た目も好きなんだけど。

    『美星さんって確か、
     サッカー部の牧原が好きなんだぜ。
     バレンタインにチョコあげてたよな』

    だから、そんな情報を聞いても何ともない。
    ただちょっと、モヤっとするだけだ。

    そうそう、わかってるんだ。

    小学生で女子と仲良くなれる男子なんて、
    クラスで人気者な数名だけだ。
    陰キャの自分には恋話なんて、
    漫画やアニメの中の話と同じで、
    現実感なんて、これっぽっちもありゃしない。

    でも将来、好きな人が出来たとして、
    俺って『告白』とかできるのか?
    『誰かに告白する』とか、
    そんな自分は、全く想像できない。

    でも、『誰かから告白される』
    そんな自分は、さらに想像できない。
    小学生の俺は、何より自分に自信がない。
    もう少しでも自信があれば、
    美星さんに話しかけるくらいなら、
    出来たのかもしれないけれど・・・

        ・
        ・
        ・

    『くりす先輩、
     どこの高校にいかれるんですか?』

    中学校の卒業を数日後に控えたある日。
    名前も知らない後輩から、
    家に電話がかかってきた。

    憧れの先輩の進学先を知りたいようだ。
    ネットもスマホもない時代。
    情報を得るには本人に突撃するか、
    家に電話するしか手段はないが、
    とっても勇気がいることだ。
    名前も知らない後輩だけど、
    その健気さは愛おしい。

    でも君は、大事なことを間違えている。


    君が進学先を知りたい先輩は、
    名簿で俺の1つ下のヤツだよっ!
    (普通に人違いw)


    同じクラスにいたのだ。
    自分と同じ名字で陸上部で長身の、
    かっこいいヤツが。

    やっぱりそうだ。
    子どもの頃からモテるのは、
    クラスでトップ層の人気者だけだ。

    でも『女子の方から言い寄られる世界』
    漫画の中とかだけじゃなく、
    身近にもちゃんとあるんだと思えた。
    そりゃまぁ、当たり前なんだけど。

    小学校の修学旅行の夜、
    その場の話に付き合うためだけに、
    名前を出した美星さん。
    彼女は中学から別の学校に進んだので、
    小学校を卒業してから、
    姿を見ることはなくなった。

    『くりすは、誰が好きなんよ?』

    中学の修学旅行でも、そんな話はやっぱ出た。

    「・・・えっと、美星さんかなぁ」

    出てきた名前は、変わらず美星さんだった。
    卒業以来、姿を見たことすらなく、
    ただの1度も雑談1つできず、
    きっともう、2度と会うことはない女の子。
    なのに、またも自然に名前が出てきた。
    いくら考えても、他の子の名前は出てこなかった。

    やっぱり俺、美星さんが好きだったんだな。

    この時、初めて自分の中でそう思った。
    話しかけるくらいすればよかった。
    そう後悔したのも、確かこの頃。

    同じクラスだった小学校の教室で、
    気付けば目で追いかけていた。
    あの頃は、それが初恋だなんて思わなかった。

    今思えば、認めてしまうと寂しくなるから、
    認めたくなかっただけかもしれない。

    『初恋の人は誰だった?』

    今、そう聞かれたら迷わず言える。

    「俺は美星さんが好きだったなー
     雑談1つできなかったけどねw」

    初恋だと、自覚するのも遅かったけど。
    アレが間違いなく、自分のはつこい。

    #はつこいをさらせ

    *所属している書く部にて。
     『はつこいをさらせ』
     をテーマに書こうぜ!と盛り上がったので、
     勢いに任せて書きましたw

    こんな筆者の初彼女から結婚までを、
    自伝として過去に書いてます。
    下記マガジン中の【婚活編】(全16話)
    拙い有料記事ですが、よかったら是非。

     
     
     
    子供の頃は小説家になるのが夢だったおじさん。 日常をエッセイにしたり、小説にしてみたり。 面白おかしく書いてけたらと思います。 社歴25年の事務員なので、事務職にまつわることも。

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