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第17章 奪還の道 第17節 北詰を奪え

昼を少し過ぎた頃、僕たちは再び川沿いの石段にいた。

朝に確かめた道。

ここから北詰のすぐ脇まで近づける。

ルナシウス「配置は変わっておりません」

先に様子を見ていたルナシウスが戻ってくる。

セリザ「角笛も?」

ルナシウス「同じ男が持っています」

クリスが弓へ手を添えた。

クリス「任せて」

最初に警報を止める。

次に北詰を崩す。

そして荷車をこちらの防壁へ変える。

やることは決まっている。

クレフ「リゼさん」

リゼ「今のところ、魔人と思われる反応はありません」

クレフ「分かりました」

いないとは限らない。

それでも、今は目の前の相手に集中する。

僕は四人を見る。

クレフ「行こう」

石段を上る。

先頭は僕とルナシウス。

少し遅れてセリザとリゼさん。

クリスは射線を取れる位置に残る。

あと数歩で北詰へ出る。

兵たちの声が聞こえた。

誰もこちらには気づいていない。

セリザが小さく指を三本立てる。

三。

二。

一。

飛び出した。

ゾマー兵「なっ――」

角笛へ手を伸ばした兵の腕を、光の矢が弾いた。

角笛が石畳へ転がる。

クリス「吹かせないよ!」

同時にルナシウスが前へ出る。

最初の槍を剣で外し、相手の体勢だけを崩す。

その脇を抜けた。

クレフ「退いてください!」

剣を抜く。

向かってきた盾を斜めに受け流し、その肩へ柄を打ち込む。

一人が倒れる。

だが、残った兵たちはすぐに隊列を作ろうとした。

ゾマー兵「敵襲! 橋を押さえろ!」

セリザ「左から来ます!」

声に反応して半歩退く。

槍先が目の前を通り過ぎた。

そこへリゼさんが入り、二本の刃で槍を挟む。

リゼ「クレフさん、前を」

クレフ「ありがとうございます!」

踏み込む。

一人。

二人。

倒す必要はない。

武器を落とさせ、立てなくすればいい。

けれど、時間をかければ南側から援軍が来る。

ルナシウス「クレフ様!」

振り向く。

橋上にいた兵たちがこちらへ走り始めている。

もう気づかれた。

セリザ「予定より少し早いですね」

クレフ「北を先に取る!」

盾兵が二人並ぶ。

その前へルナシウスが出た。

剣が鋭い弧を描く。

二人の盾が外へ弾かれた。

生まれた隙間へ僕が飛び込む。

一人の剣を受け、踏み込みながら押し返す。

もう一人の足を払う。

残る兵が後ずさった。

ゾマー兵「くそっ……!」

セリザ「今です!」

杖先から放たれた光が石畳を走る。

眩しさに兵たちが目を逸らした。

その一瞬でルナシウスが間合いを詰める。

剣を落とす音が続いた。

北詰に立っているゾマー兵はいなくなった。

クレフ「荷車!」

休む暇はない。

セリザと一緒に荷車へ走る。

リゼさんも反対側へ手をかけた。

三人で押す。

重い。

クレフ「っ……!」

リゼ「もう少しです」

車輪が軋み、荷車の向きが変わる。

ルナシウスはその間、橋側を見張っていた。

ルナシウス「来ます!」

橋上から五人。

さらにその後ろにも兵が見える。

クリスの矢が飛び、一番前の兵が持っていた弓を弾き飛ばした。

クリス「急いで!」

クレフ「これで――!」

荷車が横を向いた。

木材も引き寄せ、その後ろへ重ねる。

さっきまで僕たちを止めるために置かれていたものが、今度は南から来る敵を止める壁になる。

セリザ「北詰、確保しました!」

その言葉を聞いても、喜ぶ余裕はなかった。

橋上の兵が迫っている。

クレフ「ルナシウス!」

ルナシウス「承知しております」

師匠が一人、橋の中央へ向かって歩き出す。

狭い橋。

横へ広がれない敵。

ここからが、この場所を選んだ意味だ。

僕も剣を握り直した。

クリスが石段から上がってくる。

クリス「警報役は?」

セリザ「抑えました。ただ、南側もこちらの動きに気づいています」

遠くで兵たちが動き始めている。

対岸からさらに人が橋へ出てきた。

リゼさんが南を見つめる。

クレフ「ヴァルグは?」

リゼ「まだ分かりません。ただ――」

一瞬だけ、表情が変わった。

クレフ「どうしました?」

リゼ「向こう側から、魔力が動きました」

ヴァルグなのか。

人間の術なのか。

まだ分からない。

でも、敵もこちらを迎え撃つ準備を始めた。

セリザ「クレフ様」

クレフ「うん」

北詰は取った。

最初の一手は成功した。

けれど、国境大橋はまだ半分も取り戻していない。

橋の中央では、ルナシウスが迫る兵たちへ静かに剣を構えていた。

第17章第18節へ続く。

第17章第17節を読んで頂きありがとうございます。

ついに始まった国境大橋の攻略戦。

五人は正面から兵数を競うのではなく、死角から北詰を急襲しました。

警報を封じ、敵の障害物を防壁へ変え、最初の一手は成功。

しかし、橋の向こうでは新たな魔力が動き始めています。

国境大橋を取り戻す戦いは、ここからが本番です。

次回もよろしくお願いいたします。

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