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ふしぎ探偵事務所 <第4話 潜入捜査開始!>

    Kunoot

    <第4話 潜入捜査開始!>

    美月と別れた後、俺は事務所に買い置きしてあるカップラーメンにお湯を
    入れ、遅い昼食を食べつつ、事件のことや美月のこと等、今日の出来事を
    振り返っていた。
    (今までも幽霊らしきものを見たことは多少あったけど、あんなにはっきり見えて喋れたのは初めてだったな。
    それにしても、まさか幽霊から依頼がくるとはね・・・。
    あんなに可愛くてきれいな女性が幽霊だなんて残念すぎるよ。それにしても、改めて考えるとなんだか夢だったような気もしてくるなぁ・・・。)
    そんなことを考えながら、目の前にあるPCで何気なく美月の事件のことをWeb検索してみると、確かに美月から聞いた通りの日時で、砂森公園の車中で若い女性が練炭自殺した記事が載っていた。美月とのやり取りは、やはり夢ではなかったのである。

    俺はQueenButterflyの連絡可能な時間の17時迄、事務所で仮眠をとりつつ
    待機した。17時になり早速、QueenButterflyに電話をかけると、
    スマホから迫力のある低い男性の声で、
    「はい、QueenButterflyです。お電話ありがとうございます。」
    と聞こえてきた。
    俺は、少し緊張気味に「私、求人募集の広告を見て連絡致しました。
    歩志儀大樹と申します。担当の海堂さんはお手すきでいらっしゃい
    ますでしょうか?」と言った。
    「あぁ、ホールスタッフの面接希望の方ですね。私が担当の海堂です。」
    「あ、はい。どうぞよろしくお願いいたします。」
    「では早速ですが明日15時30分に、履歴書を持参いただいてウチに来て
    頂けますか?」
    「はい。ありがとうございます!伺わせていただきます。」
    俺は元気よく返事をした。
    電話を切った後、まだ少し緊張は残っていたが、俺はまずは面接まで無事にこぎつけたことに安堵した。
    その後、俺はスーツを着たまま近所のコンビニに出かけ、コンビニ前にある証明写真機で履歴書用の写真を撮影した。写真の映りはイマイチ気に入らなかったが、美月はよほどのことがなければ即採用されると言っていたし
    問題ないだろう。ついでにコンビニで夕飯を購入し、事務所に戻った俺は、久々の履歴書作成に取り掛かった。

    キャバクラQueenButterflyは池烏駅西口近くの繁華街の古びたビルの地下にある。ビルの外観は地味だが、美しいキャバ嬢の写真つきの派手な看板が
    地下階段横に掲げてある。
    面接当日、俺は面接時間15分前に店の前に到着し、若干緊張しつつビルの入り口付近にある階段から地下へ降り店内に入っていった。

    店内には山口という名札を付けた20代前半位の短い茶髪に黒いスーツを着た男性がいて、俺と目が合うと、「いらっしゃいませ」。とさわやかな笑顔で挨拶してきた。俺は
    「すみません、本日15時30分から面接していただく予定の歩志儀と
    申します。よろしくお願いいたします。」と一礼して挨拶をした。
    山口は「あぁ、面接の方ですね。ではこちらへどうぞ」と俺をクロークの
    奥にあるstaff only と書いてある部屋へ案内してくれた。

    部屋の中には、海堂という名札をつけた、色黒で強面、背が高くガタイの
    良い、オールバックの短い黒髪にちょび髭を生やしたスーツ姿の男性が椅子にどっしりと座っていた。海堂は見た目30代半ば位で年齢的には歩志儀と
    それほど変わらないように見えたが、長身やせ型の歩志儀と違ってなんとも言えぬ迫力がある男だった。

    俺は内心、海堂の迫力に少しびびりながらも、
    「失礼します。私、歩志儀大樹と申します。よろしくお願い致します。」
    と平静を装い深々と頭を下げた。
    「君が歩志儀くんだね、僕が昨日電話で話した海堂です。よろしく。
    まぁ座って。」
    俺は海堂に言われた通り、向かい側の椅子に「失礼します」と言って
    腰を掛けた。
    「じゃあ早速だけど、自己紹介をお願いできるかな。」
    俺は(警戒されて調査しづらくなると困るから探偵であることは
    伏せておこう)と思い
    「私、歩志儀大樹、年齢は33歳です。前職は不動産会社で10年ほど営業職をしておりました。学生時代は居酒屋等の飲食店でアルバイトしていた経験もあります。どうぞよろしくお願いいたします。」と簡単に経歴を話した。
    海堂は腕を組みながら、俺の方をじっと見て
    「ふぅん。飲食店のアルバイト経験があるんだ。なかなか即戦力になって
    くれそうじゃないか。」と嬉しそうな様子で言った。
    海堂は、美月が言っていた通り、強面だが優しい人物なのかもしれない。
    俺は少し安堵して「ありがとうございます。」と照れ笑いした。
    海堂は続けて
    「それから、歩志儀くんの趣味とか特技を教えてくれるかな?」と言った。
    「えぇと、趣味はゲームと動画鑑賞です。と、特技は・・・さ、皿洗い
    です!」(しまった・・・!焦ってでまかせを言ってしまった。)
    これといって特技がなかった俺は、焦って、思わず口からでまかせを言ってしまったのである。
    海堂は一瞬、少し驚いて目を見開き、「えっ、特技が皿洗い?」と言った。
    海堂は笑いをこらえている様子で「・・・歩志儀くん、きみ面白いねぇ。
    じゃあ、志望動機も教えてもらえるかな?」と言った。
    俺は挽回しようとなんとか気を取り直して、
    「はい、御社のような明るく風通しの良い社風のキャバクラで、私が
    いままでの接客業や営業職等の職務経験で培ってきた接客のスキルを
    活かして、お客様を癒す一助になれたたと思い志望致しました!」
    昨晩考えて暗記してきた志望動機を力強く語った。

    海堂は腕を組み、少し考え込むようなポーズをしている。
    俺は(美月からよほどのことがなければ誰でも受かるような話を聞いてはいたが、いざ面接なるとやっぱり緊張するなぁ・・・海道さんの顔も怖いし・・・。)と一抹の不安を覚えていた。
    しばらくの間の後、海堂は、
    「よし!君を採用することに決めたよ。いつから来れるかな?」といった。
    俺は(よかった!受かるとは思っていたけど一瞬ひやひやしたよ・・・)
    と安堵しつつ
    「ありがとうございます。今日からでも働けます!」と元気よく答えた。

    俺は早速今日から体験入店させてもらえることとなった。
    海堂からは、シフトや仕事の大まかな流れやルールについて説明を受けた。海堂の説明の中に、男性スタッフがお店の女の子に手を出すのは絶対にNG。違反すると高額の罰金が請求される、という説明があり、
    俺は心の中で泣いた。説明を一通り終えた海堂から、片桐という30前後位の見た目で長身、色白で中肉中背の、長髪を後ろで束ねた、迫力ある切れ長のつり目が印象的な黒服のサブリーダーを務める男を紹介された。
    「片桐です、よろしく。」片桐はそういうと右手を差し出し握手を
    求めてきた。しかし、握手を求める態度とは裏腹に片桐の表情は硬く、
    目は笑っていなかった。
    (こいつが指導が厳しいと噂されている片桐か。なんだか油断できないな。)と思いながら俺は笑顔で握手に応じ
    「歩志儀大樹です。本日からよろしくお願い致します」と言って一礼した。

    QueenButterflyの店内は白とベージュを基調にした壁で清潔感があり、
    豪華なシャンデリアに座り心地のよさそうな革張りの黒いソファが
    置かれている。全体的に薄暗い照明が落ち着いた雰囲気を醸し出している。
    そこそこ高級感のある上品な雰囲気のお店だ。

    俺は片桐から制服に着替えて店内を清掃するよう指示を受け、
    開店前の清掃を行った。
    俺は真面目に掃除していが、片桐は一見するときれいに見える場所でも、
    細かな汚れを見つけだしては都度俺を呼び出し、「お客様は高いお金を払ってウチにきてくれるんだ。こんなんじゃお客様に失礼だろ!」等と怒りだし、執拗に掃除のやり直しを指示してきた。
    俺は、(やれやれ・・・これは美月から聞いた通りだな。初日でこれじゃ
    先が思いやられる。)と思い辛い気持ちになったが、これも捜査のためだと思い直し、片桐への怒りを抑え内心とは裏腹に
    「はい、申し訳ありません。」と新人らしく元気よく謝罪した。そして、
    片桐から指示された通りにトイレや洗面台、キッチン等の水回りを始め、
    床からテーブル周りまで念入りに掃除していった。

    そうこうしている内に、お店の裏口から数人の女性たちが出勤してきた。
    ふと時計を見ると17時30分過ぎであった。
    キャバ嬢たちは早めに出勤し18時の開店時間に間に合うようにヘアセットや着替え等の準備をするようだ。
    出勤するキャバ嬢たちに紛れて、ひときわ美しい女性、雪山美月の姿が
    あった。美月は俺と目が合うと、笑顔で手を振り、こちらに向かってきた。
    「歩志儀さんこんばんは。先日は本当にありがとうございました。
    早速お店で働いてくれてるんですね。」
    美月がきてくれたことは嬉しかったが、片桐に怒られているカッコ悪い姿を見せたくなかった俺は少し戸惑いつつ、
    「今日面接を終えていま体験入店しているところなんだ。」
    美月に状況を伝えた。
    「おい、歩志儀、何ぼーっとしてるんだ?ちょっとこっちに来い!」
    片桐が俺を大声で呼んでいる。俺は美月に
    「仕事中だからゆっくり話せないけど、来てくれて心強いよ。
    それじゃ、またね。」と別れを告げて足早に片桐のもとへ向かった。

    片桐は俺を店の隅に呼び出すと「清掃お疲れさん。初日にしてはまぁ
    頑張った方だな。うちのお店は18時開店だから、これから開店した後の
    仕事の流れについて説明する。一度しか言わないからよく聞けよ」
    と言って、開店後の業務について説明し始めた。俺はしっかり覚えようと
    メモを取りながら聞いていた。
    片桐の話によると、俺の仕事は清掃とホール業務で、一般的な居酒屋の
    それとさほど変わらないような印象だ。黒服の、「付け回し」(お客様の
    タイプやテーブルの雰囲気に合わせたキャスト配席する業務)や
    キャバ嬢たちの相談に乗ったりするのは俺のような新人ではなくベテランのスタッフが担当するらしい。

    18時過ぎると早速数名のグループ客が1組来店してきた。グループ客はみなスーツを着ており、内一人に過剰に気を使っている様子だ。
    おそらく会社の接待か何かだろう。
    黒服の山口が店内の席までグループ客を案内していた。
    その後も少し時間を空けて複数の客が来店してきた。数名のグループ客が
    多い印象だが、中には一人で来店する客や、キャバ嬢と一緒に来店する客の姿もあった。いわゆる「同伴(※1)」というやつだろう。
    俺は片桐から指示された通り、空いたグラスや灰皿を下げて片づけたり、
    食器洗いや汚れた箇所の清掃を行ったりしていた。そしてそれらの業務を
    こなしつつ、なるべく不審な客やキャバ嬢がいないか、目を配り、
    耳を澄ませるよう努めていた。
    店内には、美月の死後から1週間ほどしか経過していないこともあり、
    亡くなったことを知らずに美月を指名してくる客や、美月の死を哀しみ、
    思い出話をしている客が複数名おり、美月が沢山の客から慕われていたことがよくわかった。さすが売れっ子キャバ嬢だっただけのことはある。
    そんな客の様子を見ていると俺までなんだか物悲しい気持ちになった。

    美月は、先ほど店内で挨拶してから俺の仕事を気遣ってか話しかけて
    こなかったが、営業時間中は店内をうろうろし、客やキャバ嬢の様子を
    うかがっている様子であった。おそらく情報収集しているのだろう。
    そうこうしている内に、特に手がかりがつかめないまま閉店時間の24時を
    過ぎ、お客さんがいなくなった。キャバ嬢たちの退勤時間だ。
    一方多くの黒服たちは、閉店後も店内の後片付けや清掃、ミーティング等
    の業務があり、2時頃に勤務終了となる。
    24時を過ぎに、俺は片桐に呼び出され、今日は体験入店だから帰宅するように言われた。捜査で気を張っていたことと、慣れない仕事でヘトヘトだった俺は安堵した。
    退勤前に海堂が俺のそばにきて「歩志儀くん、初仕事お疲れ様。」と声を
    かけてくれた。俺も「海堂さん、ありがとうございます!」となるべく
    疲れを見せないよう笑顔で応えた。
    「初仕事どうだった?うちで続けていけそうかい?」
    (片桐の指導は正直きつかったが、お店では周知の事実なのかもしれない。長く働く訳じゃないし、多くは語るまい)そう思った俺は
    「あ、念願の皿洗いもできてとっても楽しかったです。
    今後ともよろしくお願いいたします。」と冗談を交えて答えた。
    「あぁ、皿洗いね(笑)。歩志儀くんみたいな優秀な人が来てくれてお店としても助かるよ。じゃあ次回もよろしくね。」
    俺は海堂と片桐に挨拶して、お店を出る準備をしようとした。
    そこに、美月がやってきて、「歩志儀さんお仕事お疲れ様です。」と言い
    ペコリと頭を下げた。
    そして、店の奥のスタッフ専用ルームに入ろうとしている20代半ば位の
    クールな印象の美女を指さして、「あの子が、親友の長瀬静香です。」
    と俺に伝えてきた。
    静香は身長160cm位で黒いストレートのロングヘアの女性だ。
    細身だがグラマーで、胸元がV字に大きく開き、足元にスリットの入った
    身体のラインにフィットする黒地にゴールドのラメが入ったロングドレスに
    身を包んでいる。
    美月とはまったく違うタイプの魅力的な女性だった。
    俺は思わず、静香の美しさに見とれてしまった。
    「そうか。ありがとう。早速声かけてみるよ」俺は美月にそう伝えると
    静香に声をかけた。
    「あの、長瀬さん、僕今日からここで働くことになった歩志儀と言います。よろしくお願い致します。」静香は振り返ると俺の方を見て
    「あぁ、歩志儀さんね。私は長瀬。源氏名は一ノ瀬 麗華よ。こちらこそ
    よろしく。」と挨拶してくれた。
    「あの・・・、つかぬことを伺いますが、ここで働いてた雪山美月さんってご存じでしょうか?」
    「えぇ、私は知ってますけど。あなたもご存じなんですか?」
    静香は少し驚いた表情をした。
    俺は一瞬、正直に事情を話そうか迷ったが、犯人が誰かわからない中で
    探偵と打ち明けるのも得策ではないと思い直し、
    「はい。・・・実は僕と美月さんは趣味のサークル仲間で、仲の良い友人だったんです。」と嘘をついた。
    「そうでしたか。」静香は意外そうに言った。
    「それが今回、あんなことになってしまい、本当に残念で・・・。」
    「えぇ、本当にそうですよね。美月は仕事も頑張っていて人生これからって時だったのに・・・。」静香は悲しそうに言った。
    「美月さん、長瀬さんのこと親友だって言っていて、サークルでもよく
    長瀬さんの話をされてましたよ。」
    「まぁ、そうでしたか。確かに私は美月と生前とても仲良くさせて頂いて
    おりました。」
    「そうですよね。・・・実は今度、サークル内で美月さんの死を偲ぶ会を
    行う予定なんです。それで、もしよかったら、生前の美月さんの仕事ぶりについて、事前に長瀬さんにインタビューさせて頂けないかと思いまして。」
    「あら、そうなんですか。・・・私でよければいいですよ。」
    静香は快く引き受けてくれた。
    「ありがとうございます!ぜひよろしくお願いします。」
    「でも、美月がサークルをやっているなんて知らなかったわ。
    一体何のサークルなんですか?」
    「それは、・・・テニスサークルです」俺はとりあえず頭に浮かんだ
    サークル名をとっさに答えた。
    「そうですか。楽しそうなサークルですね。」静香は微笑みながら
    そう言ったあと、スマホでスケジュールを確認し
    「私は明後日、29日の午後、昼過ぎから1-2時間位なら都合がつきます。
    不思議さんのご都合はいかがですか?」と言った。
    「ありがとうございます。僕ならもちろん、大丈夫です!」
    こうして、俺は静香とプライベートで会う約束を取り付けた。

    今日は、話を訊きたかったキャバ嬢のアゲハも出勤しておらず、美月も俺も店内の様子を観察していたが怪しい人物の情報は得られなかった。
    (まぁ俺も片桐に怒鳴られながらも初仕事をよく頑張ったし、静香と会う
    約束も取り付けることもできたことだしよしとするか。)
    俺は今日の成果を前向きに考えることにした。
    俺と美月はQueenButterflyを出ると、お互いの労をねぎらいつつ、
    途中まで一緒に帰宅した。そして美月は自宅マンション、
    俺は事務所兼自宅にそれぞれ帰宅して休むことにした。

    ※1 同伴:勤務時間前にキャバ嬢とお客さんと待ち合わせて一緒に食事等をし、そのまま一緒に入店すること。


     
     
     

    Kunoot

     
     
    最近趣味で小説を書き始めたのでNoteに投稿してみることにしました。小説を書くのも投稿するのも始めたばかりで読みづらい点やツッコミどころは沢山あると思いますが、あたたかい目で見守っていただけますと幸いです<(_ _)>

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