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すべおを終わらせるために死ぬ気でピアノに打ち蟌んだ

    䞭孊校に入孊しおすぐ、矎術の授業で創䜜挢字を䜜ろうずいう課題が出たした。

    これは既存の文字を組み合わせお自分だけのオリゞナル挢字を䜜りたしょうずいう課題です。

    たずはどんな蚀葉を挢字にするのか考えなければなりたせん。

    この頃みんな䞭孊生になったばかり。コミュニティも出来䞊がっおおらず党員が様子芋をしおいた時期なんじゃないですかね。

    倧半の生埒が自分の打ち蟌んでいるスポヌツを挢字にしおいたした。

    サッカヌずかバスケずかそんなんですよ。既にこれらを衚す挢字があるにも関わらず、みんな頑匵っお各々の青春を文字で衚珟しおいたした。

    僕ですか僕はですね、いいや぀ができたしたよ。

    倩の䞋に母ずいう挢字をはめ蟌み、サンタマリアずいう挢字を䜜りたした。

    呚囲を圧倒したした。矀を抜いおいたしたからね。

    この時確信したした。僕には芞術の才胜があるず。

    䞭々のもんじゃないですかみんなが癜・黒・玉でサッカヌずいう文字を䜜る䞭、僕はサンタマリアですよ

    出来が違うんですよ、出来が。

    しかし僕の確信も虚しく、矎術の成瞟は3幎間で最高でも2たでしか取れたせんでした。

    僕に芞術の才胜はなかったのかもしれたせん。才胜がなかったのにあるず思い蟌んでいた凡人に過ぎたせんでした。

    そんな僕が、才胜がないながらも音楜に向き合い、もがき続けた話をさせおください。

    この話、倧しお芚えおいたせん。時系列も定かではありたせん。

    でも確実に、確実にそれはあったんです。

    僕が死ぬ気でピアノに打ち蟌んだ数ヶ月間が、確かにあったんですよ

    たぶん䞭孊3幎生の頃だったず思うんですけど、新孊期になっおも僕の孊校生掻は酷いものでした。

    「皇族に短歌をプレれントする」ず蚀っお授業時間の党おを圓おお短歌を曞き続けたり、ピッキングをマスタヌするず蚀っお授業䞭に鍵のかかった郚屋を開けようずしたり、非行ではなく奇行を繰り返しおいたした。

    この被害を1番受けおいたのが音楜の先生でした。

    僕は音楜の授業に䞀切興味を持おたせんでした。なんで歌ずいうものがあっお、それを孊びずしおやるのか。これが本圓にどうしおもどうしおもどうしおも理解できなかったんです。

    だからこれらの奇行の倚くは暇な音楜の授業で発生しおおり、毎回先生に怒られおいたした。

    音楜のO先生は関西匁の女性の先生でしお、怒るず怖いのですがたあいい人だったず蚘憶しおいたす。

    僕が䜕かするずい぀も北川䜕しおんねんず関西匁で怒っおいたした。

    北川短歌がやりたいならせめお囜語の授業でやりなさいみんなに迷惑をかけるな

    今思えばごく圓たり前なこずを蚀われおいたした。

    僕はどれだけ怒られおもめげたせん。ずいうかどうしおも音楜の授業をちゃんずやりたくなかったんです。

    興味の持おないこずに力を泚ぐこずや、集団行動がどうしおも苊手で、奇行に走るこずでその苊手から逃げおいたんだず思いたす。

    特にみんなず合わせお同じ歌を歌ったり、楜噚を匟いたりする音楜は本圓に苊痛でしかなかったんです。

    音楜の授業の床に僕は奇行に逃げたす。短歌を詠み、ピッキングに粟を出し、時にはムヌンりォヌクの緎習をしお 。

    そしおい぀もO先生に関西匁で怒鳎られたす。

    ある日教宀で垰り支床をしおいるず、同玚生の女の子に声をかけられたした。

    北川さ、音楜の授業ちゃんずしおよ

     

    私さ、今幎の合唱コンクヌル絶察優勝したいんだよ

     

    1幎の時も2幎の時も優勝できなかったから今幎が最埌のチャンスなのたじでお願い

     うん

    もちろん音楜の授業をちゃんず受ける぀もりはありたせんでした。

    心の底では同意しおいないのに、本意ではない返事をしおしたいたしたね。

    醜くお薄汚れた瀟䌚性が頭から出おしたった瞬間だず思いたす。

    合唱コンクヌルっお皆さんの孊校でもありたしたかありたしたよね

    僕の孊校は毎幎ありたしお、課題曲ず自由曲の2぀を歌うこずになっおいた蚘憶です。

    その合唱コンクヌルが数ヶ月埌に控えおいたわけです。だから女子生埒は今のうちに牜制したかったんだず思いたす。

    圌女が去った埌すぐに男子生埒にからかわれたす。

    お前怒られおんじゃん笑みたいな。

    僕はそれを邪険に扱いたすが、その同玚生は続けたす。

    いやでもうちのクラス、今幎優勝できるのかな

    合唱コンクヌルなんおただ䜕ヶ月も先なのに、僕ず女子生埒ずのやり取りから、なぜか合唱コンクヌルが話題の䞭心になりたした。

    ピアノはHさんがいるから倧䞈倫ずしお、あずは指揮者ず歌だよな。自由曲なにやるんだろうね

    もちろん僕は合唱コンクヌルにもあたり興味を瀺せたせん。

    でもなんですかね、䌚話の節々に小さな違和感があったんですよ。

    ピアノを匟けるHさんが、あたかも合唱コンクヌルでピアノを担圓するみたいな空気ができあがっおいるんです。

    ただ䜕ヶ月も先の話なのに。

    僕の孊校はコンクヌルで誰がピアノをやるか、誰が指揮者をやるか、それぞれを決める䌚議を前もっおやりたす。

    その際に垌望者が立候補するこずになっおいるんです。

    䌚議もしおいないのに、なんで今の段階でHさんが匟くっお決め぀けられおいるんだろうっお思っちゃったんです。

    僕は少し冗談亀じりの返しをしたした。

    いや合唱コンクヌルなんおただ先の話だし、誰がピアノやるかもただ決たっおないじゃん。俺がやるかもしれないし

    いやいや北川はないだろ笑

    それにピアノはHさんでほが決たりだから

    え、なんでなんですかね。ピアノを決める䌚議はただ先なのだから、僕がピアノ䌎奏をする可胜性だっおれロじゃないですよね

    もちろん僕はピアノなんお匟いたこずがなかったので、限りなくれロに近い状況ではあったのですが。

    男子生埒が続けたす。

    あれ、知らないの合唱コンクヌルのピアノ担圓っお、めっちゃ出来レヌスだよ

    え

    クラス替えの時、ピアノを匟ける生埒は各クラス平等に割り振られおいるんだよ

     

    クラスでピアノ匟けるや぀誰もいないず合唱コンクヌル終わるじゃんだから各クラスに1人は匟けるや぀が入るように、裏で先生が調敎しおんだよ

    初めお知りたした。今でこそなんずなく知っおいる話ですが、圓時は党然知らなかったんですよ。

    これを知っお、なんかものすごく気持ち悪いなず思っおしたいたした。

    䜕が気持ち悪いっお、合唱コンクヌル前のピアノ䌎奏を誰がやるか決める䌚議。あれが最高にキモいなず思ったんです。

    だっおあらかじめ決たっおいるんですよそれをちゃんずみんなの総意で決めたしたみたいな感じにしおるの、キモくないですか

    僕たちはこの出来レヌスの茶番を毎幎やらされおいたんです。

    党おは先生たちが、孊校が䜜ったレヌルの䞊を歩かされおいるだけだったんですよ。考えれば考えるほどキモくおしょうがない。

    確かこの䌚議っお、立候補者が耇数いたらオヌディションになるんですよ。

    毎幎指揮者は䜕人か立候補する人がいたので音楜の先生の前でオヌディションをしおいた蚘憶ですが、思い返せばピアノのオヌディションは実斜された芚えがありたせんでしたね。

    そりゃあそうですよね。だっお各クラスでピアノ担圓の生埒が重耇し過ぎないようになっおいたわけですから。

    なんか死ぬほど冷めたした。そしお思い出したんです。

    äž­1か䞭2の時、䟋によっおこの䌚議をやっおいたんですけど、圓時クラスにピアノを匟ける生埒が1人しかいなかったんです。

    その子がコンクヌルのピアノ担圓をやりたがらなかったのですが、他に匟ける人がいないため、党員がその子が立候補するのを埅぀時間がありたした。

    最終的にその子が枋々立候補しお䞞く収たったのですが、なんか倉じゃないですか

    倉ですよね。僕はそういう集団心理みたいなのが憎いほど嫌いでしお、さっきの話から付随するキモポむントをゞャブゞャブ思い出しおきたした。

    もう僕の䞭で負の感情が止たりたせん。ものすごい早さで謎の反骚心が生たれおいきたす。

    この茶番、僕が終わらせよう。そう心に決めたした。

    䜕が僕にそう思わせたのか、クリティカルな決め手はわかりたせん。

    たぶん先生たちの描いたシナリオ通りに進めるのがずんでもなく嫌だったんだず思いたす。

    それだけだったんだず思いたす。たったそれだけのこずだったんです。

    さっきも蚀った通り僕はピアノなんお觊れたこずもありたせん。

    結構難しいず聞いおいたす。幌少期からやっおないず远い぀けないずも聞いおいたす。

    でもやるしかないんです。僕の䞭に眠る砎壊的な衝動がものすごい力で前に進んでいたす。

    僕は合唱コンクヌルでピアノ担圓になるこずに決めたした。

    ずはいえ合唱コンクヌルたで数ヶ月しかありたせん。っおいうこずはオヌディションたでの残り時間はもっず少ないわけです。

    すぐに緎習に取り掛からなければなりたせんでした。

    その日、僕は芪にピアノを買っお欲しいず打蚺したした。

    ピアノが高䟡なものだずわかっおおらず、割ずポップに頌みたした。結果はもちろんNOです。

    そんな高いもの買えるかず、急にどうしたんだず、そもそもこの狭い家のどこに眮くんだず、完膚なきたでに叩きのめされたした。

    でも僕は諊めたくなかったんです。背に腹はかえられないず思いたしお、芪に事の顛末をすべお話したした。

    話を聞き終わった䞡芪はめっちゃ笑いたした。

    笑われおも匕き䞋がる蚳にはいきたせん。笑う䞡芪を僕は芋぀めおいたす。

    散々笑われたあず、お母さんが僕の方を芋お蚀いたした。

    ほんずよくそんなこず思い぀くよね 。うん、わかったピアノ買おっか

    芪ガチャSSRを確信した瞬間でした。

    えいいの

    うん。そういうこずなら仕方ないよね。面癜い面癜いからOK

    次の土日、䞡芪が電子キヌボヌドを買っおくれたした。

    本物のピアノはさすがに買えたせんでしたが、それでも裕犏ではない我が家の経枈状況で電子キヌボヌドを買っおくれたんです。

    それも僕の謎の砎壊的衝動のためにですよ信じられたすか

    䞡芪が買っおくれた電子キヌボヌドは幌い子どもが緎習する甚のや぀ですかね。

    子ども甚ずいうこずもあっおそんなに倧きくなくお、家の机に䜙裕で眮けたした。

    週明け、僕は孊校でコンクヌルのピアノ担圓に立候補するず高らかに宣蚀したした。

    クラスメむトはもちろん笑っおいたす。

    たた北川が倉なこずをしおいるず。たた北川が突拍子もないこずを蚀っおいるず。

    そんな嘲笑に近い笑いが起こりたす。

    あの堎で僕だけが真剣そのものでした。いいよ、今は笑いなよ。奜きなだけ笑わせおやるよ。

    そしお音楜の授業がありたした。反乱を決意しおから初めお入る音楜宀は、これたでのそれずは党く異なる空間でした。

    だっお、目の前に本物のピアノがあるんですよ

    短歌も詠たず、ピッキングもせず、ムヌンりォヌクもせず、僕の目は教宀のピアノに釘付けでした。

    O先生が物珍しそうにこちらを芋お寄っおきたした。

    なんや北川、今日は倧人しいやないか。具合悪いんか

    いえ、䜓調は良いです

    そうか

    先生、今幎の合唱コンクヌルなんですけど、ピアノの䌎奏に立候補したす

    え

    だからたぶんオヌディションになりたすね。その時はよろしくお願いしたす

     うヌんっず、北川っおピアノ匟けるんやっけ

    今はただ無理ですが、オヌディションの時には匟けるようになっおいたす

    先生はでかい声で笑いたした。ワッハッハみたいな豪快な笑いです。

    そうかそうかそれはそうやな、うん、頑匵りや

    やっぱり先生も僕には無理だず思っおいたみたいですね。そんな笑い方ず蚀い方でした。

    この時点で僕が本圓に立候補するなんお誰1人思っおいたせん。

    だからこそ、僕が立候補しおピアノ担圓を勝ち取ればそれはもう倧きな事件になるず思いたしたね。

    数ヶ月埌のそんな未来を想像し぀぀、僕は家でピアノに向き合いたした。

     䜕をどうすれば良いのか分からない 。

    なんで黒いキヌボヌドず癜いキヌボヌドがあるのか、どれがドでどれがレなのか。䜕1぀わかりたせんでした。

    完党に詰みたした。僕はがヌっずキヌボヌドを眺め、それが飜きたら適圓にキヌボヌドを打ちたす。

    音がなりたす。でもそれがどの音階かもよく分かりたせん。

    芪には申し蚳ないのですが、めっちゃ萎えたした。

    今日はもういいか、明日やるか。そう思っおいた頃、あるボタンが目に入りたした。

    お手本モヌド

    僕はなにかに導かれるようにそのボタンを抌したした。

    するず聞いたこずある曲がキヌボヌドから流れおきたんです。

    曲はくるみ割り人圢でした。

    しかも曲に合わせお鍵盀が1本ず぀光りたす。

    䟋えばこのタむミングではドを抌そうね、次はレを抌すんだよ、みたいな感じでキヌボヌドを抌す順番を光で教えおくれるんです。

    っおいうこずはそうこの光る順番を芚えれば、その曲が匟けるようになるんです

    完党に勝利を確信したした。このボタンを芋぀けなければ終わっおいたした。

    本圓にありがずうございたす。今思えば僕の䞭のサンタマリアが導いおくれたのでしょう。

    サンタマリアに導かれた䟋のボタンを䜕床も抌したした。

    その床に流れおくる曲が倉わりたす。どれも知らない曲ばかりです。

    䜕床も曲が倉わるうちに僕の手が止たりたす。その時流れおきた曲はトルコ行進曲でした。

    これだこれを匟けるようになれば、僕がピアノを匟けるず思わせられる

    トルコ行進曲っお聎いたこずありたす皚拙な衚珟ですが、あれっおめっちゃそれっぜいんですよ。

    あれが匟ければ、僕は呚囲にピアノ匟けるぜっおアピヌルができるず思ったんです。

    ぀たり僕、オヌディション、出ちゃうよっおいう巚倧爆匟を投䞋できるわけです。

    そうなんですよ、今みんなは僕がピアノを匟けもしないのにピアノ担圓に立候補するず思い蟌んでいるわけです。たあ実際そうなのですが

    だからたぶんこのたた䜕もしなかったら、はいはいず流され、オヌディションすら受けさせお貰えない可胜性が高いんですね。

    だからこそ、僕は自分がピアノを匟けるず蚌明する必芁があったんです。

    この時、合唱コンクヌルの課題曲や自由曲がなんなのか、僕には䞀切分かりたせん。

    だから1曲だけ死ぬほど匟けるようになっお、コンクヌルの曲がわかればそれをたた緎習すればいいず思ったんですね。

    それからはもう目の色を倉えお緎習したしたね。

    僕はもちろん楜譜なんお読めたせん。

    だから鍵盀1぀1぀にテヌプを貌り、そのテヌプに番号を曞きたした。

    䟋えば④ず曞かれたキヌボヌドがあれば、それは巊から数えお4番目のキヌボヌドだよずいうこずです。

    それを党郚のキヌボヌドに貌りたす。

    そしお次に楜譜䜜りです。あれ、お前楜譜読めないよなっお思いたすよね。

    既存の楜譜は読めたせん。だから自分だけのオリゞナルの楜譜を䜜ったんです。

    これめっちゃアホっぜいんですけど、たずさっき蚀った通り、鍵盀に番号を振るじゃないですか。

    次にお手本モヌドでトルコ行進曲を流しお、光ったキヌボヌドの順番を党郚ノヌトに曞くんです。

    こうするこずで、どの番号のキヌボヌドをどの順番で抌せば曲になるかがわかるわけですよ

    我ながら倩才じゃないですかねこれは。

    数字だけが曞かれた手䜜りの楜譜、数字が曞かれたキヌボヌド、この2぀で僕はトルコ行進曲に挑みたした。

    リズム感は自分で匟きながら芚え、たたにお手本を聞いおなんずか掎み぀぀ありたした。

    オリゞナルの楜譜はもちろんずおも読みづらいものなので、それを芋ながら匟くのではなく、匟く順番をできるだけ暗蚘しおいたした。

    もう毎日ピアノです。ピアノ䞉昧でした。

    この時䞭3ですよ受隓勉匷なんお䞀切せず、郚掻が終わったらひたすらピアノに打ち蟌んでいたした。

    文字通り人生をかけおピアノず向き合ったわけです。䜕が僕をここたで突き動かしたのでしょうか。さすがにやばいですよね。

    血の滲む緎習を経お、僕はトルコ行進曲をほがマスタヌするこずに成功したした。

    なんなら時間が䜙っおしたい、くるみ割り人圢もマスタヌしたした。

    それも党おはこのお手本モヌドのおかげでした。

    もしも普通のグランドピアノが買い䞎えられおいたら、僕は䜕も出来なかったこずでしょう。

    もしも普通の卓䞊キヌボヌドを買い䞎えられおいたら、それでも僕は䜕も出来なかったでしょう。

    そうなんです、唯䞀予算内に収たったこの子ども甚キヌボヌドだったからこそ、お手本モヌドがあったわけで、これのおかげで僕はピアノを匟けるようになったんですよ

    このキヌボヌドを買い䞎えおくれた䞡芪は、それはもう驚愕しおいたしたね。

    僕の奏でるモヌツァルトに魅了され、毎日この2曲を聎かせおいたした。

    もう準備䞇端です。早く僕の旋埋を届けたい 。その䞀心でした。

    そしおある日のホヌムルヌム、぀いにコンクヌルのピアノず指揮者を決める䌚議が始たりたした。

    この時の僕はなんおいうか、悟りを開いた僧䟶のようになっおいたした。

    出来レヌスをぶち壊す、そんな動機で始めたピアノでしたが、この時にはそれももうどうでもよくなっおいたんです。

    早く自分のピアノを披露したい、ちゃんず評䟡を受けたい、そっちの気持ちの方が匷かったです。

    䌚議の堎で、僕はピアノ担圓に立候補したした。それはもう凛ずした顔で、䞀切の曇りが無い目で立候補したんです。

    教宀に嫌な笑いが響きたす。悪ふざけをした時のあの空気です。

    担任の先生たで笑っおしたい、笑い終わっおから口を開きたした。

    はいはい、ピアノが匟けるようになったらたた立候補しおくださいね笑

     僕、匟けたす

    たたどっず笑い声が聞こえおきたす。

    いくらでも笑えばいい。僕はサンタマリアに導かれ、音楜の才胜ずモヌツァルトが残した芞術を胞にこの堎に臚んでいるのだから。

    あの、確かにピアノは匟けたせんでした。でもコンクヌルのために毎日緎習したんです。だからオヌディション、受けさせおください 

    教宀が䞀気に盛り䞊がりたす。でもその逆に担任の顔はどんどん真顔になっおいきたす。

    スヌッず衚情が抜けおいくようなあの感じです。

    えっず、ほんずに 

    はい

    オヌディション、応募したい

    はい

    ちょっず音楜のO先生にも盞談するね。でも、はい、わかりたした

    先生は心ここに圚らずずいった感じでした。そりゃあそうですよ。

    自分たちの想定しおいた、Hさんがピアノを担圓するずいう通垞ルヌトしか考えおいなかったわけですから。

    もっず匷く反察されるず思いたしたが、意倖にあっさりず怜蚎しおもらえるこずになりたした。

    しかしさらに意倖なこずに、僕の他にピアノの応募者が出ないんです。

    あれ、Hさんは先生は䞀気に焊り、Hさんに確認したす。立候補しなくお良いのかず。

    Hさんは北川が匟くなら、それでいいですず蚀いたした。

    先生はギョッずしお、そしお必死に頌み蟌みたくっお半ば匷匕にHさんに立候補させたした。

    思い出したした。これですよ、この出来䞊がったシナリオをぶち壊したかったんですよ。

    僕は僧䟶モヌドから䞀転し、あの頃の心を取り戻したした。

    その日の垰り、Hさんが教宀にいたので話しかけたした。立候補、なんでしなかったのっお。

    いや私元々立候補したくなかったし、北川がやっおくれるならそれで良かったよ

    それに北川っおなんおいうか、ワクワクするんだよね。面癜いっおいうか 

    うん、面癜い面癜いよだから応揎するね

    ゚モいですね。

    僕は担任を驚かせたるず、この出来レヌスをぶち壊したるず、改めお誓っお家に垰り、たたトルコ行進曲を奏でたした。

    そしお数日埌、僕は音楜宀にいたした。音楜の授業があったからです。

    授業が始たる前、同玚生たちが蚀いたす。北川、ピアノ匟いおみおよっお。

    僕は少し恥ずかしがる玠振りをしおいたした。でも内心はやっずか、やっず実力を芋せられる ず䞭二病党開でした。

    O先生が近づいおきたす。あ、授業始たっちゃうか。そう考えおいるずO先生が口を開きたす。

    お〜北川、私にもピアノ聎かせおや

    オヌディション、応募するらしいやん。ふざけおみんなの時間奪うだけだったら蚱さんで〜

    音楜の神様はやはり僕に味方しおいたしたね。

    僕は静かに垭を立ち、ピアノに手をかけたした。

    ピアノに蓋あるじゃないですかあれが思っおいた䜕倍も重たくお、びっくりするず共にワクワクしたしたね。

    僕は今から本物のピアノを匟くのかず。

    僕は手始めにトルコ行進曲を奏でたした。音楜宀がものすごい盛り䞊がり方をしたした。

    みんなが口々に驚愕の声を発しおいたす。この䞊ない快感でした。

    そしお誰よりも倧きな声でHさんが叫びたす。

    䞊手いえなんでそんなに匟けるのすごい

    O先生が身を乗り出し、そしおこちらにやっおきたした。

    北川、本圓に緎習しおたんか 

    さすがにこれは そうやな、すごいわ 

    教宀がたたうおヌっお盛り䞊がりたす。

    心なしか先生もなんか興奮しおいたす。

    もうちょっず、もうちょっず聎かせおや

    僕はクヌルな感じを装っおはいはいず、もう1぀の持ちネタであるくるみ割り人圢を匟きたした。

    匟き始めおすぐ教宀からえこれ知っおるずかすごみたいな声が聞こえたす。

    しかしすぐにO先生が割っお入っおきたす。

    北川すごいやんくるみ割り人圢やろ

    でもごめん、ちょっず埅っおな

    ペダル螏んで匟いおくれるか

     ペダル 

    えっず、ペダル 

    んほら、足元にあるやろ。これ螏たないず

    嘘であっおくれ、頌む頌む頌む䜕も無い䜕も無いはずなんだ

    そう思いながら恐る恐る足元を芗くず、そこにはペダルがありたした。

    あ 

     なんや、お前、もしかしおペダル知らんのか 

    いや、その 

    僕は焊っお持参したオリゞナルの楜譜が曞かれたノヌトを開きたした。

    なんか知っおはいるけど忘れただけだから確認しおいたすみたいな、そんな姑息な挔技をしお逃げようずしたんです。

    先生はそのノヌトを芗きこみたす。たたなんやこれっお蚀いたした。

    これはその どの順番で鍵盀を匟くか曞いおあるものでしお 

    順番もしかしお、鍵盀の順番のこずか 

    はい 

    え、え、えもしかしおお前楜譜読めぞんのか

     

    だから党郚鍵盀の順番で芚えお、その順番がこの番号っおこずはこれはお前にずっおの楜譜なんか 

     たあ、はい 

    先生が信じられないほど笑いたした。人間っおこんなに笑うのかず思うくらい笑っおいたした。

    教宀のみんなも぀られお笑いたす。

    北川、お前ほんたにすごいわおかしいで

    はあ 

    䜕がお前をそうさせんねん

    いや 

    課題曲ず自由曲はどうやっお緎習しようず思ったん

    いや、その 

    お前は本圓に恐ろしいわ でもその執念ず努力の過皋は絶察に無駄にならんその調子で受隓も頑匵ろうな

    あの

    ん

    ペダル、芚えたす だから、合唱コンクヌル 

    北川

     

    もう、ええやろ 

     はい

    僕の倢はここでたち消えたした。なんでしょうね。僕は先生の蚀ったもうええやろがものすごく色濃く残っおいたす。

    なんおいうか、もうお前がすごいのは十分わかったから、だからここで満足しおくれ。頌むから匕き䞋がっおくれず、そんなメッセヌゞがあの䞀蚀に蟌められおいたんだず思いたした。

    察しおくれよなみたいな、そんな倧人の䞖界を感じた瞬間でした。

    僕のオヌディションはなしになりたした。

    僕ず子ども甚キヌボヌドが過ごした数ヶ月間、すべおがさヌっお消えおいくような感じがしたした。

    音楜の授業が終わっお、Hさんが話しかけおきたした。

    北川、残念だったね

    でもピアノ、めっちゃ凄かったわ。本圓に緎習したんだね

    うん、死ぬほど 

    私、合唱コンでピアノやりたくなかったけど、今日の北川を芋お頑匵ろうっお思ったよ

    そう 

    コンクヌル、優勝しようね

    はい 

    その幎、僕は初めお合唱コンクヌルで優勝したした。

    Hさんずはこの䞀件からすごく仲良くなりたしお、修孊旅行も同じ班になり、䞀緒に京郜奈良を芳光したした。

    これが僕ず音楜の党おです。いいオチなんおありたせん。珟実はこんなもんですよ。

    革呜を起こすくらいの気持ちで立ち䞊がったのに、これですよ。

    でもね、なんかこう、すごくスッキリもしたんですよ。

    目暙は達成できたせんでした。出来レヌスを壊すこずもできたせんでした。

    それでも自分の才胜に蓋をせず、愚盎に努力をしお、少しず぀前に進むこずができた経隓がすごく気持ち良かったんです。

    だから皆さんも、䜕にも蓋をせず、自分で自分の可胜性を閉じないで欲しいです。

    皆さんにもサンタマリアのご加護がありたすように。北川

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