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昔話『善意の鬼』

    むかしむかし、あるところに、男の多い村がありました。
    村の真ん中には夜ごと灯りのともる酒場があり、若い男たちはそこへ集まりました。
    仕事を終えた男たちは酒を飲み、笑い、恋の話をし、別れた女の話をしました。
    誰が誰を好きだったか。
    誰が泣いたか。
    誰が裏切ったか。
    そういう話は、囲炉裏の煙のように村じゅうを巡りました。
    女たちは少なかったので、一人の娘の恋愛は、いつのまにか村みんなの話になりました。
    それが、この村の習わしでした。

    *

    その村には、善意の翁がおりました。
    翁は金を持っており、若い男に酒を飲ませるのが好きでした。
    悩みを聞くのも得意でした。
    「まあまあ、人生いろいろだから」
    そう言って肩を叩けば、たいていの若者は少し元気になりました。
    翁は話も面白く、世の中のことをよく知っていました。
    だから村人たちは皆、翁のことをこう言いました。
    「あの人は面倒見がいい」
    「あの人は優しい」
    「あの人は理解がある」
    翁自身も、自分を良い人だと思っておりました。

     
     
    読んでこっそり応援してくれたら、あなたも今日から“最高の彼氏”。やり場のない悲喜交々を心の中の彼氏にだけ「うんうん、頑張ったね」って聞いてもらうような場所です。仕事がんばる系副業OLが、がんばった日の夜に話しかけます。

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