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迷いを抱えたあなたへ|第20話「光の残る場所」The Cottage of Glowing Herbs

    第20話|光の残る場所


    朝。

    空は澄み渡っていた。

    窓を開けると、冷たい風が部屋へ流れ込む。

    秋の始まりだった。

    エリンは机の前に座っていた。

    手元には一枚の便箋。

    都市の診療所への返事。

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    昨夜、何度も書き直した手紙だった。


    深呼吸をする。


    そして最後にもう一度読み返す。

    『お誘いいただき、本当にありがとうございました』

    『悩みました』

    『ですが私は、この村に残ることを決めました』

    短い文章。

    けれど、

    その一文には今までの迷いも、不安も、全部込められていた。


    ペンを置く。

    不思議だった。

    胸が軽い。

    未来は分からない。

    成功する保証もない。

    でも、

    自分で決めた。

    それだけで十分だった。


    昼頃。

    エリンは村の郵便屋へ手紙を渡した。

    封筒が運ばれていく。

    それを見送りながら、

    少しだけ寂しくなる。

    でも後悔はなかった。


    帰り道。

    広場では子どもたちが走り回っていた。

    マーガレットが手を振る。

    「エリン!」

    「聞いたわよ」

    「何を?」

    「あなたがここに残るってこと」

    エリンは驚く。

    「なんで知ってるの?」

    「村をなめちゃだめよ」

    マーガレットは笑った。

    周りの村人たちも微笑んでいる。


    「よかった」

    誰かが言った。

    「安心した」

    別の誰かが言う。

    エリンは思わず笑った。

    こんなふうに喜ばれるなんて思っていなかった。


    夕方。

    丘の上。

    あの一本木の場所。

    エリンは一人で空を見ていた。

    すると後ろから足音が聞こえる。

    振り返らなくても分かった。

    オーウェンだった。


    「返事したのか」

    「うん」

    オーウェンは隣に立つ。

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    風が吹く。

    薬草畑が揺れる。


    しばらく沈黙。

    それが心地よかった。


    やがてオーウェンが言う。

    「後悔するかもしれないな」

    エリンは笑う。

    「そうかも」

    「失敗するかもしれない」

    「そうかも」


    二人は顔を見合わせる。

    そして同時に笑った。


    「でも」

    エリンは空を見上げる。

    夕日が村を金色に染めていた。

    「それでも、自分で選んだから」

    風が頬を撫でる。

    祖母の言葉。

    村の人たち。

    光る薬草。

    全部が胸の中にある。


    夜。

    コテージの窓から灯りが漏れていた。

    机の上には祖母のノート。

    その最後のページを開く。

    今まで気づかなかった一文が書かれていた。


    『光は薬草の中にあるのではない』


    エリンは息を止める。


    『人の心に残る』


    窓の外。

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    薬草が静かに光っている。


    でもエリンには分かった。

    本当に光っていたのは、

    薬草だけじゃなかった。

    村の人たち。

    祖母の想い。

    オーウェンの優しさ。

    そして、

    少しだけ前を向けるようになった自分自身。


    夜風が吹く。

    優しく。

    穏やかに。


    光は消えない。

    誰かから誰かへ、

    静かに受け継がれていく。


    その灯りがある限り、

    このコテージは、

    今日も誰かを迎えてくれるだろう。


    終


    作者より

    ここまで読んでくださり本当にありがとうございました。

    あなたの毎日にも、小さな灯りが届きますように。

    #創作大賞2026
    #ファンタジー小説部門


     
     
    マヤ暦/スピリチュアルライター/Webライター 「本来の自分に整い、はじまりから生きる」をテーマに、魂の声を言葉に綴っています。 マヤ暦・スピリチュアル・ライティングの世界を融合させた発信を行っています。 SUZURIでオリジナルブランド 「ima koko style」販売中。

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