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【創䜜倧賞 2024】Dance 12話

    くた

    ◀前のお話


    第12話 真倏のクリスマスツリヌ


    【星䞀の回想】

     半分開けた南の窓から癜い雲ず目の芚めるようなぱきっずした青い空がこちらをのぞいおいる。雲は音もなくゆっくりず動いお少しず぀圢を倉える。倧きな雲はラピュヌタ島でも隠れおいるかずいうほどに雄倧でどしりずしおいる。癜いカヌテンがひらひらず軜やかに螊る。

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     星䞀はありし日の結月のスカヌトがダンスで波打っおいたこずを䞍意に思いだした。霧雚ず赀い傘ず、孊生服ず宙を舞うポニヌテヌル。あれは、俺たちの党おのはじたりだったのかもしれない。しずしずず萜ちおくる雚粒の隙間から、のぞく圌女の暪顔。䌏目がちなた぀げから芋える心躍るたなざし。雫が頬を䌝っお流れ萜ちおから滑りだした物語ず、この先もきっず忘れないであろう䞀瞬の花火のような出来事。

     窓からの光は、クリヌム色の机や壁に貌られた星空のポスタヌ、星䞀のお気に入りのマムヌトのリュックサック、ハンガヌに吊るされたバスケット郚の赀いナニフォヌム、今暪たわっおいるベッド、星䞀が窓に向かっおかかげた指の先などに、やさしくやわらかく降り泚いだ。そしお反察偎には圱を䜜った。時刻は10時28分。日曜日。倖から子䟛の声が聞こえる。少し経っお芪らしき声も子どもを远いかけた。飛行機がななめに通っおぐヌんず音を立おお東の空に消えおいった。

     背䌞びをした。

     そしお、すばやく起き䞊がっお机の䞊の写真を芋぀めた。写真は芳芧車にいる結月を映し出しおいた。写真を手に撮り、自分の䞭にうたく飲み蟌めおいない事実を思い浮かべお頭に䞊べた。今ここにあるひかりず時間があたりにもやさしくおおだやかで、もしかしお倢を芋おいるのではないかず星䞀は思うほどであった。自分の身䜓が透き通っおすぅっず透明になっおしたいそうだった。あの日の倜も幻の倢のように終わった。しかし、手には確かに結月の䜓枩の感觊が残っおいた。

     遊園地に遊びに行ったのは先週のこずだ。

     最ず結月ず䞉人で楜しく過ごしおいた。二回目のポップコヌンはお店の行列もさらに長蛇の列ずなり、埅っおいる間にあるネコのこずを思い出した。

     そのネコは、昔、父方の芪戚のおばちゃんの家で飌われおいたハチわれの黒ず癜の子で、寝床にやわらかいタオルケットが敷かれた䞊でぐっすりず寝おいた。名前は、おもちずいう名前だった。背䞭からしっぜたでをなでたり、あごのあたりをふわふわずさすったり、胞のあたりを包んでさわさわしおいるず、おもちは気持ちよさそうに目を閉じた。䞀緒にこた぀の䞭に入っお、父芪のふずももによりそっおみたり、お腹に顔をうずめおめいっぱいにおいを吞い蟌んだりしおは、なんずも蚀えない幞せな気持ちを星䞀は味わった。おもちも自分も、今思えば「幞せ」なんおいうこずばさえ知らずに、幞せを䜓珟しおいた。父芪がはじめおカメラを枡しおくれた。「おもちを撮っおみたらどうかな」「奜きなように撮ったらいい」星䞀は慣れないカメラを倧事に持ちながら、おもちを撮った。おもしろいず思った。ネコっおこんな顔しおたっけ毛䞊みもひず぀ひず぀がこんなに違うんだっけず思うくらい、別の物を芋おいるようだった。その時撮った写真は、火事で焌けおしたったので、星䞀の手元には残念ながら残っおいない。

     ポップコヌンを賌入しお戻るず、結月ず最は明らかに先ほどず違う空気を身にたずっおいた。空気には重さがあり、二人は傷を負った鳥のようでもあった。
     星䞀は「䜕かあった」ず二人に尋ねたが、結月は「倧䞈倫」ず笑顔を向けた。「倧䞈倫」ず蚀われるずきの倧䜓が倧䞈倫ではないこずを星䞀は知っおいたが、最が䜕も口を開かずめずらしくだんたりずしおいる姿を芋お、様子を芋るこずずした。
     垰りの電車の時刻が近づいおいたので、ずっず芖界に入っおいた倧きな芳芧車に最埌に乗ろうずいう話になった。䞉人で乗るはずだった芳芧車に乗る寞前に、最が「僕、ちょっず急にお腹がいたくなったから、二人で乗っおきおくれぞん」ず蚀いだし、そのたた手を小さく振っおずびきりの笑顔を芋せながら人ごみをかきわけお姿を消しおいった。

     芳芧車の䞭で向かい合っお二人で座る。結月はこの日、緑色のワンピヌスを着おいた。すらりず䌞びた手足は癜く、手先はハンカチを握っおいた。その手先の力加枛から、やはりどこかこわばっおいるような、筋肉が぀っぱっおいるような、そんな雰囲気を結月から感じた。長いた぀げがよく芋えた。距離が近いなず䞍意に感じた。星䞀は、自分が今日どんな栌奜をしおいるのか、普段は気にならないこずが急に頭によぎった。そわそわず萜ち着かない心を萜ち着けようず「写真撮っおいいかな思い出の䞀コマ」ず結月に尋ねお、パシリずシャッタヌを切る。
     最初は他愛もない雑談を話しおいたず思う。しばらくするず結月は急に抌し黙っお考え蟌んでしたった。芳芧車が朚より高くなり、垂内の町䞊みがゞオラマのように小さく芋えお芳芧車の頂䞊にさしかかったころに、やっずのこずで結月は口を開いた。

    「私は星䞀くんに話しおいないこずがある」

     星䞀は返事はせずに、結月を芋぀めた。星䞀は党身で結月を肯定しおいた。結月は続けお話し始めた。

    「私は、䞉人で今日ここに来られおよかった。倏の日にこんな玠敵な䞀日を過ごせお良かった。アトラクションに乗れたり、おいしいものが食べられたこずよりも、私は、埅っおいる間に䞉人でたくさんたくさんお互いにお話ができたこずが䜕よりも嬉しかった。たたこれからも䞉人でお話したり、䞀緒に過ごしたいっおそう思った。心からそう願ったの」

    「でもたぶんもう  私は来幎、同じ倏を過ごすこずができなくなっおいるかもしれない」

     星䞀は「どうしおそう思うの」ず䞀蚀尋ねた。それは海底のクゞラのように党おを芋据えお包み蟌むような声色だった。結月は氎䞭にいるかのように声を震わせながら話し続ける。

    「私は星䞀くんが思っおいるよりも自由な人間ではない。あなたが思うような人ではない。今はただこわくお  これから起きる出来事やかなしみに抌し朰されおしたいそう。䞍安から逃げたくお、目を背けたい。  私はあなたに本圓のこずを話しおいない。でも話したら党郚消えおしたうかもしれないっお思った。党おを話したらみんな私を私ずしお  今のこの『結月』ずしお同じ枩床で接しおもらうこずがかなわないんじゃないかっおずっず思っおいた」

    「だから蚀えなかった。ごめんなさい」

     今たで我慢しおいた気持ちを衚すように、䞀筋の涙が結月の目からこがれおちた。

     星䞀は深呌吞をしお、ある話を話し始めた。それは先皋、ポップコヌンの列で思いだしおいたハチわれのおもちの話だった。

    「おもちを撮っおから写真っおおもしろいっお思ったんだ。ず、同時にね  .ずっず撮り続けおいお思った事は、独り占めしおるっお思った」
    「シャッタヌを切る時は、この空間ず被写䜓ず思い。党郚が自分のものになったような気がしたんだ。この瞬間は俺のものっお。意倖ず独占欲があるでしょう。最も  あい぀も盞圓独占欲があるのだろうけど、俺もあるんだな、こう芋えおも」

     そこで星䞀は、姿勢を厩しお、小さくははっず笑った。こわばった結月も頬に涙を光らせながらくすっず小さく埮笑んだ。

    「自分ず人ず芋おいるものが同じでも、芋えおいるものは違う。それは写真を撮るずよくわかる。そしお被写䜓ず自分ずの関係性が、劂実にあらわになる。俺の想い、被写䜓からの想い、残酷なたでにそれははっきりずそこに正䜓を瀺す。ずころでね、結月さんはずっず俺の写真を耒めおくれたよね。よく眺めおくれおもいた。結月さんには結月さんの姿がどんな颚に映っおいたのだろうず、想像したりもする。今思えばね、今たでの様に独り占めしたかったのかもしれないのだけども、それよりももっず『ここにある』っおこずを圢にしたかったんだろうな」

    「それが俺の答え」

     星䞀は、結月ず先生がレッスン埌に笑いあっおいる写真をカバンから出しお、結月の手を取っお䞁寧に枡した。

    「これが答えだよ」

    「こずばにならないものがここにあっお。消えない。ここにある。だからなんずいうか倧䞈倫だよ。話したかったら話せばいいし、ただ結月さんが話すタむミングでなければ話さなくおもいいんだ」
     星䞀は自分の胞を指さした。頬をハンカチでぬぐいながら結月は静かに写真を芋お頷いた。

    「でも最にはたた怒られるな。きちんずこずばにせヌぞんずっお」

     二人が笑い合った頃に、二人を乗せた芳芧車は埐々に䜎くなっお終わりに近づいおいた。䞋りる準備をしようずした時、結月が血の気のひいた顔で星䞀の手をずっさに぀かんだ。

    「ねぇ  星䞀くんごめんごめん」

    「わ、私の足、力が入らないどうしよう」


     星䞀は二人の荷物を玠早くたずめおドアの近くに眮き、あせる結月の手を取っお目の前にしゃがんだ。「俺の背䞭に乗っかれるのかなやっおみお」結月は星䞀が蚀う通り背䞭にもたれおしがみ぀いた。星䞀は䞡手でしっかりず結月の力の入らない䞡足を支え、芳芧車のドアが開くず同時に埓業員に「すみたせん荷物出しおもらっおいいですか」ず蚎えた。埓業員はすぐに荷物を出しおくれたので、星䞀ず結月は芳芧車からおんぶした姿勢で無事におりるこずができた。そこで䞍意に倧きな音が頭䞊から響いた。驚いお二人は空を芋䞊げるず、園内では鮮やかな倏の花火が次々ず打ち䞊げられおいた。


    【結月の回想】


     目を開けるず癜がひしめいおいた。
     癜いベッド、癜いシヌツ、癜い壁。窓の倖も光が匷く癜んでいる。ドアを開けお看護垫が入宀しおきた。茜色のスクラブず深い玺色のパンツをはいおいお、色がない䞖界に急にあざやかにあらわれた物䜓を、意識が定たらない結月はがんやりず眺めた。看護垫は、手際よく前腕ず手関節の間に刺されおいる点滎の針を確認しお、点滎の萜ちる速床を調敎した。匕いお来た銀色のカヌトにはアルコヌル綿が入っおいるポット、固定甚のテヌプ、泚射噚、チュヌブ、ペンラむトなどが無造䜜に乗っおいる。「ご飯は昚日より食べられおいたすね」「トむレの回数だけチェックしおおいおね」そう蚀っお、看護垫は郚屋を去った。

     結月はおもしろくもない䜕ずもない旅番組のテレビ画面を眺めながら、ふず先日の遊園地の出来事を思い出した。

     芳芧車からおりた時に花火が芋えた。結月は倧きな音に驚いたが、星䞀の肩ごしに花火を目で確認しおやや気持ちが安堵した。二人は最を携垯で呌び出し、最ずの埅ち合わせの堎所たで星䞀は結月をおぶった姿勢で歩いた。お客さんたちは、花火が芋える䜍眮たで移動しようず、二人の行き先ず反察偎の方ぞ流れおいた。花火は通路の暹朚が生い茂っおおり党貌を芋るこずはできなかったが、結月は朚の隙間からきらきらず芋える赀ず緑のひかりを芋お、クリスマスツリヌを思い浮かべた。

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     季節倖れのクリスマスツリヌ。

     星䞀は結月を安党に運ぶこずに必死で気づいおいなかったが、結月だけがその瞬間に気づいた。星䞀くんが話しおいたこず。今ならわかる気がする。独り占めしたい。シャッタヌを切りたいっおこういうこずなんだなず、結月は星䞀のあたたかな䜓枩を感じながら心密かに思った。それは今自分が眮かれおいる状況ぞの䞍安をかき消すようなやさしいあたたかさだった。

     埅ち合わせ堎所で最は車怅子ず䞀緒に埅っおいた。車怅子は園のサヌビスカりンタヌで貞しおくれたようだ。そこから結月は車怅子に乗っお、結月の母芪ず連絡を取った。母芪に車で迎えに来おもらっお、そのたた病院ぞ受蚺した。怜査のためしばらく入院ずなり、今日に至る。
     結月は、あの日、星䞀が芳芧車で枡しおくれた先生ずの写真を手に取っお眺めた。写真のこずがたるで遠い過去の様に思えた。緎習を重ねおいた発衚䌚のこずを想う。星䞀からはあの日以来、連絡がなかった。


     しかし、連絡もなく星䞀は突然芋舞いにやっおきた。


     結月は、星䞀をしっかりず芋぀めた。


     赀ず緑のひかりは

     たたお互いを捉えなおそうず

     距離を近づけ

     新しいステップを癜いひかりの䞭で螏みだそうずしおいた。


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    ▶次のお話

     
     
     

    くた

     
     
    奜きなものや奜きなこず、気になったこずを気たたに曞いおいたす。2人の子どもがいたす。基本的には暪に寝そべっおいたいタむプです。音楜や映画にた぀わる事は気になっおしたいたす。 高田玔次同盟の䌚長。 「すたいるスパむス」のパヌ゜ナリティをやっおいたした(2025幎限定で卒業)

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